第5話 魔王軍の将を倒したら、炎そのものを奪った
第5話 魔王軍の将を倒したら、炎そのものを奪った
町の上空。
魔王軍第六将ザルガの炎が、空を赤く染めていた。
雲は焼け。
大気は揺らぎ。
地上の建物からは、触れてもいないのに煙が上がり始めている。
『手加減ノ相談ダト?』
ザルガの全身から、さらに激しい炎が噴き上がった。
『我ヲ誰ダト思ッテイル』
「魔王軍第六将のザルガ」
『ソノ名ヲ知リナガラ、ナオ侮ルカ!』
「侮ってはいない」
俺はザルガの体を眺めた。
燃える鎧。
炎の大剣。
背中から伸びる黒い翼。
体内に蓄えられた魔力は、黒翼竜の数十倍。
王国でも、まともに戦える者はほとんどいないだろう。
一人で北部の砦を落としたという話も、恐らく事実だ。
「だから、どのくらいの力なら死なないのか聞いている」
『……』
ザルガの表情が消えた。
怒りを通り越したらしい。
『決メタ』
炎の大剣が持ち上がる。
『貴様ハ殺スマデ斬ル』
「殺したあとも斬るつもりだったのか?」
『黙レ!』
ザルガが消えた。
次の瞬間。
炎の大剣が、俺の首へ振り下ろされていた。
速い。
地上にいる冒険者たちには、姿すら見えなかっただろう。
だが。
俺には、あくびが出るほどゆっくりに見えた。
俺は人差し指を上げる。
大剣の刃を。
指一本で受け止めた。
ゴォォォォォン!
衝撃波が空を走る。
雲が円形に吹き飛び。
町を囲む森が、大きく揺れた。
地上から悲鳴が上がる。
ザルガの炎の大剣は。
俺の指へ触れたまま、止まっていた。
『ナ……』
「今のが本気か?」
『有リ得ヌ!』
ザルガが大剣へ力を込める。
炎が爆発的に膨れ上がる。
俺の指先を中心に、火柱が空高く伸びた。
だが。
熱くない。
終焉竜の炎より、かなり弱い。
「この程度なら、少し強く殴っても大丈夫そうだな」
『貴様ァ!』
ザルガが大剣を引く。
後ろへ飛び退き、両手を広げた。
町の上空に。
無数の炎の槍が現れる。
一本一本が、家屋を簡単に貫ける大きさだ。
数は。
千を超えていた。
『我ガ炎ハ、軍勢ヲ焼ク』
炎の槍が。
すべて俺へ向けられる。
『砦モ』
ザルガの背後に、巨大な魔法陣が展開される。
『街モ』
さらにその外側に。
二重。
三重。
四重。
巨大な炎の輪が広がっていく。
『国サエモ!』
ザルガが腕を振り下ろした。
『焼キ尽クセ――獄炎千槍!』
千本の炎が。
一斉に放たれた。
空が埋め尽くされる。
避ければ。
背後にある町へ直撃する。
俺は両手を前へ出した。
「止まれ」
《絶対命令》を使う。
本来は、自分より弱い魔物に命令する能力。
炎は魔物ではない。
止まるはずはなかった。
だが。
千本の炎の槍が。
俺の目の前で、ぴたりと停止した。
『何……?』
俺自身も少し驚いた。
《絶対命令》は。
魔物だけではなく、魔力によって作られたものにも作用するらしい。
「消えろ」
命じる。
千本の炎が。
音もなく消滅した。
町を覆っていた熱気も。
赤く染まっていた空も。
すべて消える。
青い空が戻った。
地上から。
歓声が上がる。
「炎が消えたぞ!」
「ハルトが止めた!」
「魔王軍の魔法を、言葉だけで……!」
俺は自分の手を見る。
《絶対命令》は思っていたより使える能力かもしれない。
だが。
ザルガは納得できていないらしい。
『我ガ炎ニ、命令シタダト……?』
「できたようだ」
『フ……』
ザルガが。
うつむいた。
『フハハハハハ!』
突然、笑い始める。
『素晴ラシイ!』
「何がだ?」
『貴様ホドノ人間ガ、存在シテイタトハ!』
ザルガの翼が大きく広がる。
『コレナラバ、我モ全力ヲ出セル!』
「今までは全力ではなかったのか?」
『当然ダ!』
燃える鎧に亀裂が入る。
鎧の隙間から。
青白い炎が漏れ始めた。
周囲の温度が。
一瞬で下がる。
炎なのに。
冷たい。
ギルドの屋根。
町の石畳。
建物の壁。
すべてが白い霜に覆われていく。
『我ガ真ナル炎ハ、物質ヲ焼クモノデハナイ』
ザルガの角が伸びる。
背中の翼が四枚へ増える。
体からあふれる魔力が、先ほどまでの数倍に膨れ上がった。
『生命ヲ』
青白い炎が、ザルガの手のひらに集まる。
『魔力ヲ』
炎が巨大な髑髏の形へ変わる。
『魂ソノモノヲ焼ク』
俺の目の前に。
青白い文字が現れた。
《対象の第二形態への移行を確認》
《推定レベル――1260》
《警告》
《対象は現在の世界基準を大幅に超過しています》
レベル千二百六十。
先ほどまでの推定レベルは八百六十四。
変身によって、四百近く上がっている。
俺より高い。
レベルだけなら。
終焉竜を倒したあと。
俺のレベルは千になった。
黒翼竜とゴブリンキングを倒し、多少は上がったが。
まだ千二百には届いていない。
久しぶりに。
自分よりレベルの高い相手だった。
『恐怖シタカ?』
「少し驚いた」
『ソウダロウ!』
「レベルが俺より高い」
ザルガの口元がつり上がる。
『ナラバ理解シタハズダ』
「何を?」
『貴様ノ敗北ヲ!』
ザルガの体が青い炎に包まれる。
次の瞬間。
俺の背後に現れた。
先ほどよりも速い。
炎の爪が。
俺の背中を切り裂く。
はずだった。
俺は振り向かずに。
背中側へ手を伸ばした。
ザルガの手首をつかむ。
『ナッ――』
そのまま。
前方へ投げる。
ザルガの体が空を横切り。
町の上を越え。
遠くの山へ激突した。
ドォォォォォン!
山の一部が崩れる。
少し待つ。
山の煙の中から。
ザルガが飛び出してきた。
鎧の一部が砕けている。
だが。
大きな傷はない。
「丈夫だな」
『貴様……』
「これなら、もう少し強くても大丈夫そうだ」
『今ノハ、何ダ』
「投げただけだ」
『我ノ方ガ、レベルハ上ノハズダ!』
「レベルだけならな」
俺は勇者パーティーにいたころ。
自分の能力値を調べたことがある。
レベルが上がれば。
普通は能力値も一定量ずつ上がる。
だが。
俺は違った。
レベルが一上がるたびに。
以前よりも多く能力値が上昇した。
レベル百のときより。
二百。
二百より。
五百。
五百より。
九百。
レベルが高くなるほど。
一回の成長量まで増えていた。
なぜなのかは分からない。
もしかすれば。
《荷物持ち》という職業に関係しているのかもしれない。
荷物持ちは。
持てる重量に上限がない。
訓練すればするほど。
より多くの荷物を持てるようになる。
その性質が。
体の成長にまで影響している可能性がある。
同じレベルなら。
俺の能力値は、普通の者よりはるかに高い。
多少レベルが上だからといって。
俺より強いとは限らない。
「レベルだけで強さは決まらないらしい」
『黙レェ!』
ザルガが両手を合わせる。
青い炎が。
体の中心へ集まっていく。
『ナラバ、コノ一撃ヲ受ケテミロ!』
炎が凝縮される。
小さく。
さらに小さく。
最後には。
拳ほどの青い球体になった。
だが。
内側に秘められた力は。
先ほどの千本の炎とは比べものにならない。
《警告》
《高密度魂魄破壊魔法を確認》
《直撃した場合、肉体の耐久力を無視して魂へ損傷を与えます》
肉体を無視する攻撃。
少し興味が湧いた。
今まで。
俺の体へ傷をつけられた魔物はいない。
だが。
魂への攻撃なら。
結果が違うかもしれない。
『消滅セヨ!』
ザルガが。
青い球体を放った。
音はしなかった。
衝撃もない。
球体はゆっくりと。
俺の胸へ触れた。
そして。
体の中へ吸い込まれた。
地上から。
悲鳴が上がる。
『フハハハハ!』
ザルガが笑う。
『直撃シタ!』
「そうだな」
『我ガ蒼魂炎ハ、肉体デハ防ゲヌ!』
青い炎が。
俺の体の内側で燃え上がる。
魂を焼く炎。
普通の人間なら。
一瞬で魂を失い。
抜け殻になるらしい。
俺はしばらく。
自分の体の変化を待った。
一秒。
二秒。
三秒。
何も起きない。
「これで終わりか?」
『……何?』
「少し温かかった」
『有リ得ヌ!』
ザルガが目を見開く。
『魂ガ焼ケテイルハズダ!』
「魂にも耐久力があるらしい」
『ソンナ人間ガ、存在スルハズガナイ!』
ザルガが再び炎を放つ。
二発。
三発。
十発。
青い球体が。
次々と俺の体へ入っていく。
少しだけ。
肩の辺りが温かくなった。
それだけだった。
「もういいか?」
『待テ!』
「今度はこちらの番だ」
俺は空を蹴る。
一瞬で。
ザルガの前へ移動した。
『速――』
ザルガが言葉を終える前に。
腹へ拳を当てる。
まだ殴らない。
拳を触れさせただけだ。
「確認する」
『何ヲ……』
「素材は、どこを残せばいい?」
『貴様ハ、マダ――』
「角か?」
『我ニ勝ッタツモリデ――』
「翼か?」
『話ヲ聞ケ!』
ザルガが炎の爪を振るう。
俺は体をわずかにずらして避ける。
「魔族の討伐証明部位を知らない」
『知ルカァァァ!』
「そうか」
仕方がない。
できるだけ全身を残そう。
俺は力を。
十兆分の一まで抑えた。
黒翼竜を消してしまったときより。
はるかに弱い。
「少し痛いかもしれない」
『何ヲ――』
拳を。
一センチだけ前へ動かす。
ドンッ。
小さな音が鳴った。
ザルガの体が。
空中で止まる。
『……』
表情が固まったまま。
動かない。
次の瞬間。
背後の空が割れた。
衝撃波が一直線に走り。
数十キロ先の雲へ。
巨大な穴を空ける。
ザルガの鎧だけが。
粉々に砕け散った。
体は残っている。
よかった。
手加減には成功した。
「生きているか?」
『……』
返事がない。
ザルガの目は開いている。
意識だけが失われていた。
俺は落下し始めたザルガの腕をつかむ。
そのまま。
町の中央広場へ降りた。
地面へ着地する。
広場には。
冒険者。
町の兵士。
住民。
そして勇者パーティーが集まっていた。
全員が。
気絶したザルガと。
俺を交互に見ている。
「終わった」
誰も答えない。
「どうした?」
「今……」
バルガスが震えた声を出す。
「魔王軍の将を……一発で?」
「一発ではない」
俺は訂正する。
「最初に投げた」
「そういう話じゃねえ!」
バルガスの叫び声が広場に響いた。
受付嬢が。
倒れたザルガへ恐る恐る近づく。
「生きて……いるんですか?」
「ああ」
「なぜですか?」
「手加減した」
「手加減で魔王軍の将の鎧だけを砕いたんですか?」
「素材を残す必要がある」
受付嬢は。
しばらく黙ったあと。
ゆっくりとうなずいた。
「報酬を学習した結果が、魔王軍幹部の生け捕り……」
「何か問題があるのか?」
「問題の規模が大きすぎて、分かりません」
俺にも分からなかった。
生きたままなら。
魔王軍の情報も聞ける。
素材も残っている。
良いことばかりだと思う。
そのとき。
人混みの中から。
レグルスが歩いてきた。
顔色は青い。
俺とザルガを見比べ。
口を開く。
「そいつは……本当に、第六将なのか?」
ゴブリンキングが。
大きくうなずく。
『間違イナイ』
「一人で、北部砦を落とした……」
『ソウダ』
「それを……」
レグルスが俺を見る。
「お前が倒したのか?」
「見ていただろう」
レグルスの拳が震える。
恐怖か。
怒りか。
どちらか分からない。
「私なら……」
レグルスがつぶやく。
「私なら、聖剣があれば……」
足元には。
聖剣エクスレイヴが置かれていた。
レグルスは。
先ほどから何度も持ち上げようとしたらしい。
だが。
剣は床へ張りついたように動かない。
「聖剣さえあれば、私でも倒せた」
誰に言うでもなく。
そう言った。
周囲の冒険者たちが。
冷たい目を向ける。
レグルスは気づいていない。
あるいは。
気づかないふりをしている。
「ハルト」
レグルスが俺へ手を伸ばす。
「聖剣を寄越せ」
「なぜ?」
「魔王軍と戦うには必要だ」
「使えないだろう」
「使える!」
レグルスが叫ぶ。
「私は勇者だ! 今は聖剣が混乱しているだけだ!」
「剣が混乱するのか?」
「お前が何かしたんだ!」
「俺は触っただけだ」
「それが原因だ!」
レグルスは。
本気でそう思っているらしい。
俺が聖剣を奪った。
自分から勇者の力を奪った。
そう考えている。
だが。
俺は最初から。
レグルスの何も奪っていない。
聖剣が。
本来の持ち主を選んだだけだ。
「必要なら持っていけばいい」
俺は聖剣へ手を伸ばす。
軽く持ち上げ。
レグルスへ差し出した。
レグルスが柄を握る。
俺が手を離した瞬間。
聖剣が地面へ落ちた。
ガンッ!
レグルスも一緒に腕を引かれ。
地面へ膝をつく。
「なぜだ……!」
両手で持ち上げようとする。
動かない。
顔を赤くし。
歯を食いしばる。
それでも。
聖剣は答えない。
「動け!」
レグルスの手のひらから血が流れる。
「私は勇者だぞ!」
その声が。
広場に空しく響いた。
リリアが。
レグルスへ近づく。
「もう、やめてください」
「黙れ!」
「聖剣はハルトさんを選びました」
「違う!」
「レグルス様」
「私は勇者だ!」
リリアは。
悲しそうな目でレグルスを見る。
「勇者なら」
静かに言った。
「どうして、町を守ろうとしなかったのですか?」
レグルスの動きが止まる。
「何……?」
「ザルガが現れたとき」
リリアは続ける。
「ハルトさんは、すぐに町の人々を守るため前へ出ました」
「それは、奴が強いからだ!」
「強さの話ではありません」
「では何だ!」
「あなたは、聖剣が使えないことばかり気にしていた」
レグルスが。
口を閉じた。
「町の人たちを逃がそうともしなかった」
「それは……」
「傷ついた冒険者を助けようともしなかった」
「私は重傷だった!」
「ハルトさんは、勇者を名乗っていません」
リリアは俺を見る。
「それでも、誰よりも勇者らしい行動をしました」
広場が静まる。
レグルスは。
地面へ落ちた聖剣を見つめている。
やがて。
小さく笑った。
「そうか」
ゆっくりと。
立ち上がる。
「全員、お前に騙されたんだな」
「レグルス様?」
「ハルトが、何かの魔法を使っている」
レグルスの目から。
理性が消え始めていた。
「聖剣も」
俺を見る。
「リリアも」
周囲の冒険者を見る。
「町の人間も」
そして。
地面に倒れているザルガを見る。
「魔王軍まで」
レグルスは。
俺を指さした。
「お前が操っているんだ!」
誰も答えない。
「そうでなければ、私よりお前が評価されるはずがない!」
レグルスが叫ぶ。
「私は王家の血を引く勇者だ! 幼いころから剣を学び、神殿に認められた!」
「……」
「お前は荷物持ちだ! 異世界から来ただけの、身元も分からない人間だ!」
胸の奥に。
怒りは湧かなかった。
もう。
レグルスに何を言われても。
何も感じない。
俺にとって。
この男は。
すでに過去の人間だった。
「好きに思えばいい」
「逃げるのか!」
「相手にする必要がない」
俺はザルガを持ち上げる。
「待て!」
「何だ?」
「私と戦え!」
レグルスが叫んだ。
「今ここで、どちらが本当の勇者か決める!」
広場がざわめく。
「やめてください!」
リリアが止める。
「今のレグルス様では――」
「黙れ!」
レグルスは腰に差していた予備の剣を抜いた。
聖剣ではない。
普通の鋼の剣だ。
「ハルト!」
剣先が。
俺へ向けられる。
「決闘を申し込む!」
「断る」
「怖いのか!」
「面倒だ」
「逃げるな!」
レグルスが。
剣を構えたまま走ってくる。
本気だった。
俺が断っても。
攻撃するつもりらしい。
「勇者の力を思い知れ!」
剣が振り下ろされる。
俺は避けなかった。
刃が。
俺の肩へ当たる。
カンッ。
金属音。
鋼の剣が。
中央から折れた。
折れた刃が。
地面へ落ちる。
レグルスは。
残った柄を握ったまま、固まった。
「……」
「終わりか?」
「まだだ!」
レグルスが。
折れた剣で殴りかかってくる。
俺は手のひらで受け止める。
少し押す。
それだけで。
レグルスは後方へ飛び。
地面を転がった。
力はほとんど入れていない。
怪我もしない程度だ。
だが。
レグルスは立ち上がらなかった。
「どうしてだ……」
地面へ拳をつく。
「なぜ、私が……」
涙が。
石畳へ落ちた。
「私は勇者なのに……」
誰も。
近づかなかった。
俺はレグルスから視線を外す。
終わったことだ。
今の俺には。
もっと確認したいことがある。
目の前に。
青白い文字が浮かんでいた。
《魔王軍第六将・獄炎のザルガの撃破を確認》
《対象は死亡していません》
《戦闘不能状態を撃破として認定します》
《対象の能力上限を捕食します》
文字が。
次々と流れる。
《炎属性上限を捕食》
《炎耐性上限を捕食》
《魔力量上限を捕食》
《魂魄耐性上限を捕食》
《飛翔速度上限を捕食》
《レベル上限が1999から3999へ上昇しました》
倍近く。
上限が増えた。
さらに。
《特殊条件を満たしました》
《高位炎属性能力を獲得します》
《固有能力――“獄炎支配”を獲得》
「獄炎支配」
意識した瞬間。
手のひらに。
小さな炎が生まれた。
赤。
青。
白。
黒。
色が次々と変わる。
普通の炎ではない。
燃やすものを。
自分で選べる。
物質。
魔力。
魂。
さらには。
炎そのもの。
ザルガの持っていた能力を。
完全に超えた力だった。
俺は小さな炎を消す。
同時に。
体の奥から力があふれ始める。
《レベルが上昇しました》
《レベル1028》
《レベル1057》
《レベル1091》
《レベル1134》
《レベル1188》
《レベル1251》
《レベル1320》
数字が。
止まらない。
ザルガの持っていた成長上限と。
膨大な魔力。
それらを吸収したことで。
一気にレベルが上がっている。
《レベル1400に到達しました》
空気が。
震えた。
地面に細かな亀裂が走る。
町の外にある山々が。
低い音を立てる。
俺は慌てて力を抑える。
前よりも。
さらに力加減が難しくなっていた。
《新たな世界基準を超過しました》
《神性獲得条件の一部を達成》
「神性?」
初めて見る言葉だった。
さらに文字が続く。
《高位存在による観測を確認》
《観測者数――五》
《観測者の敵意――極大》
五人。
恐らく。
神々だ。
終焉竜を倒したとき。
俺を排除すると宣言していた存在。
どうやら。
こちらを見ているらしい。
俺は空を見上げる。
雲の向こう。
普通の人間には見えない場所に。
複数の視線を感じる。
「見ているのか?」
返事はない。
だが。
視線が強くなった。
その瞬間。
空に。
巨大な亀裂が走った。
ガラスが割れるような音。
青空が二つに裂ける。
亀裂の向こうから。
金色の光があふれ出す。
町の人々が。
一斉に空を見上げた。
『下界ノ者ヨ』
男とも女とも分からない声が。
世界中に響いた。
『禁忌ヲ犯シタ個体ヲ確認シタ』
巨大な目が。
空の亀裂から現れる。
終焉竜が目覚めたときに見たものと同じ。
神の目。
『黒鉄ハルト』
俺の名前が呼ばれる。
『貴様ノ成長ハ、世界ノ秩序ヲ破壊スル』
「そうなのか?」
『直チニ力ヲ捨テヨ』
「どうやって?」
『我ラ神々ニ、全テヲ差シ出セ』
ずいぶん勝手な要求だった。
俺はザルガを倒した。
その結果。
自分の能力で力を得た。
誰かから盗んだわけではない。
「断る」
空の目が細くなる。
『拒絶ヲ確認』
金色の光が集まる。
『対象ヲ、世界ノ敵ト認定スル』
俺の目の前へ。
青白い文字が浮かんだ。
《神々から敵対指定を受けました》
《称号――“神敵”を獲得》
《神性存在への攻撃が可能になりました》
《神性存在を撃破した場合、その権能を捕食できます》
その文字を見て。
俺は少しだけ笑った。
神々は。
俺の力を奪うつもりらしい。
だが。
今の説明を聞く限り。
神を倒せば。
俺はさらに強くなれる。
「一つ聞いていいか?」
『何ダ』
「神にも、上限はあるのか?」
空の目が。
わずかに揺れた。
『……』
「あるんだな」
返事がない。
それで十分だった。
俺は空へ手を伸ばす。
手のひらに。
黒い炎が生まれる。
ザルガから奪った。
魂と魔力を焼く炎。
だが。
今の俺の炎は。
それだけではない。
「神を燃やしたら」
黒い炎が。
さらに濃くなる。
「どれくらい強くなれるんだろうな」
空の巨大な目が。
初めて。
恐怖に揺れた。
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