日常

躍布顚さくら(ダンシングプリンサクラ)

☆ミ

今朝わたしは保育士の養成施設の入学願書に記入をしていた。

保育士になりたい。こどもに興味関心があるのだ。そういうとロリコン変態おばさんみたいですが違うので安心してくださいね。

世界中の愛をそのちいさい身体いっぱいに注がれることが当たり前な存在、こども。だからこそ、惹きつけられるのかもしれない。夜に花火してるとはなむぐりが火に飛び込んでくるみたいに。

こどもはかわいいだけではない、おもちゃ扱いされて飽きるまで遊び尽くされるから。

近づきすぎると、花火に焼かれるはなむぐりのように痛い目を見る。

冷めた目で本質捉えたことを淡々と告げてくることもある、舐めてかかってはいけない。純粋なぶん、大人特有の薄汚れたフィルターをかけずに世界を見つめる彼らの瞳にこそ真実は映る。

わたしは海で群れになって泳ぐゴンズイの群れ…ゴンズイ玉や、雨の日に濡れた靴が床に擦れてキュキュッと鳴る音に

生理的な拒絶をおぼえる。またたくまに鳥肌がたち顔の中心をムギュッと寄せるように顰めてしまうが、こどもというはまるでその対極に位置する生き物だ…庭を掘ったら出てきた石油より価値があるぞ。


そんなことを考えながら、願書の記入欄を埋めた。希望する履修科目を全て記入する作業が大変だった。あとは、卒業した短期大学から取り寄せた卒業証明書が揃えば、封をして提出できる。

わたしは自宅を出た。

街中の図書館へ向かう。図書館の閲覧スペースで本を読みたくなったからだ。


電車を乗り継ぎ図書館のある街へと向かう。車内は目を糸のように細めてしまうほど強くまぶしい日で照らされている。

ベビーカーの赤ちゃんが怪獣のように「んぎゃああああッ、きゃああーッ!」泣いていて、目の下にクマをひっつけた顔色の悪いママさんが焦ったようにベビーカーを揺らし赤ちゃんをあやす。

…暑くて居心地が悪いのだろうか?

他の乗客は咳払いしたり、ため息をついたり、舌打ちしたり、あからさまに反応してしまうくらいには大きな泣き声だ。わたしはパチンコ店の出入り口扉が開きそこから漏れる音すら嫌いだが、赤ちゃんの泣き声は耳を澄ませて聞き入ってしまう、必ずメッセージが秘められているからだ…できることなら一文字一句拾ってあげたい。

つまりわたしは車内という密閉された空間で赤ちゃんが泣いていても他の乗客のようにいらつかないし、慈愛に満ちており、こども好きの余裕ある人間であるということを伝えたい。わたしは一刻も早く保育士になるべきだろう。

目的の駅で降りて街に繰り出す。

図書館は駅から近いのでさっさっさっと早足で向かう。

やわらかいクッションみたいにもちもしした肌のこども連れファミリーであふれた街の様子に、ああ今日日曜日かと実感した。心なしか、夏の生暖かい風がミルクの香りを運んできた気がする。

図書館の入り口手前では薄い青の色付きサングラスをかけた強面のパパさんが「抱っこおー、抱っこおー」と主張する女の子を振り返り、苦い顔を向けていた。

女の子は両手をパパさんに向かってかかげている、首に巻きつける気満々だ。小さな指はピンと伸び、「もう限界!歩きたくないの!運んで!」と訴えているようだ。

困り眉になったパパさんが「仕方ないな」と

折れて、女の子をひょいっと持ち上げる。満更でもなさそうなパパさんの太い首を満足そうに女の子がきゅっと寄せる、そんな最高にスウィートな親子の様子を眺めていれば、日頃から抱えてるモヤモヤやストレスがコーヒーに入れた角砂糖のようにすーっと溶けて見えなくなるような快感を心の奥で感じた。

ずっと眺めてたい。

やはりこどもは愛されてこそ輝きを増す。そのように感じるわたしは保育士になるに相応しい人材だろう。

あーはやく保育士名乗りたい、めちゃくちゃモテそうだし。世間からのウケいいし。こどもは軽いから、現職の大人を抱える介護士の業務に比べたら肉体の負担少ないし。


図書館に入館する、すずしくて舞える…。

一直線に閲覧

スペースに向かうと席の一つ一つに注意書きが貼り付けられていた。図書館の資料を閲覧

する目的以外に席を使用したらだめっぽい。

まあバレんだろうとバックから私物のエッセイを取り出し、栞を挟んでいたページを開いた。

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