終幕
その夜、私は兄への手紙を書いた。
何を書いたのかは、もう憶えていない。ただ、書き出しの一語を選ぶのに、ひどく長い時間がかかったことだけを憶えている。
返事は、ひと月ほどして届いた。短い返事だった。それで足りた。
あれから長い歳月が流れた。
二つに分かれていた私たちの国は、ひとつに戻った。
あの日の映像は残っていない。記録のうえでは、乱入した機体など初めから存在しなかったことになっている。
それでも私には、夏の空を見あげる癖が残った。
深い青空のかなたに、寄り添うふたつの光を、つい探してしまう。
見つかったためしはない。
当然だろう。どれほど目を凝らしても、連星は、地上からはひとつの星にしか見えないのだから。
(了)
碧空の連星 尾形貴以 @Eygnip
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