第26話『再会』

シルキーの営む店の扉はやや重い。


ゼンがその扉を開いた先にいたのは、

強面こわもての客たちが見慣れぬ顔のゼンを睨みつける光景だった。


(まるで悪党の巣窟だな……)


ゼンは見渡す限りの悪人面に胃もたれがしそうだった。


「いらっしゃいませ」


凶悪な雰囲気にそぐわない美しい声の主は、

間違まごうことのない青い目の同級生である。


その同級生は今も変わらず、むしろ美貌はさらに磨きがかかったような美少女である。


「まだやってるか?」


白々しく客を装い、席に着こうとするもオーナーである"ゼンスキー"ことシルキーは申し訳なさそうに謝る。


「申し訳ございません。本日のお酒はちょうど完売で…ただ、もしお食事だけなら時間を頂ければご用意しますので少しお待ち頂けますか?」


(本当にあのシルキーなのか?)


と、あまりに慇懃いんぎんで、慎ましい敬語にゼンは狼狽した。


シルキーは居並ぶ強面たちにも頭を下げる。


「ごめんなさいね、そういうことだから今日はもうお店閉めようかな?てへへ…」


とわざとらしく舌を出した。


その可愛い顔を見た強面たちは規律正しく食べた食器やグラスを次々に片付け出す。


その異様な光景を見ながらフィーナがゼンに漏らす。


「意外にも皆さん聞き分けいいですね?」


「いや…ただ単に飼い慣らしたんだろ…知らんけど…」





最後の客が帰ったあと、シルキーは看板を下ろした。


ゼンは久々の再会で少し気恥ずかしそうに突然の訪問を謝った。


「すまんな、久々の再会が…」


「100G」


間髪入れずにシルキーが右手の掌を出した。


「は?」


ゼンはシルキーの意図がわからない。

察しの悪いゼンにイライラさせながらシルキーは語気を強め、右手のポーズをゆらゆらさせて催促をする。


「100G!!」


「だから!なんだよその金は!?」


ゼンも段々とイライラして問いただすと、

シルキーは威勢よく言い放った。


の損害金!」


これにはフィーナが一番驚き、財布を確認した。


「えええっ!!あわわわ…!…お金取られちゃうんですねぇ……ひぃぃ……」


慌てるフィーナをよそにゼンはため息を吐いた。


「久々に会った元クラスメイトにそれか?」


「『』か……」


呟くシルキーが一瞬だけ見せた切ない顔を、フィーナだけが気づいた。


(……2人になんかあったのかな?)


少し沈黙が続いた後、ゼンは思い出したかのようにフィーナを紹介した。


「あ…えっと!あのぉ、私は…」


と言いかけるとシルキーが被せて言った。


「知ってるわよ。"お尋ね者のフィーナ"でしょ?今日買い出しでフチネに寄ったらあんたちの似顔絵が載った手配書が回ってたわよ。ゼンも合わせると合計2,800万Gか…ふふ、損害金より、あんたたちを捕まえてギルドに売り渡すのもいいかもね?」


身構えたフィーナに「冗談よ」と、ゼンに皮肉をこめてフィーナを安心させる。


「さすがに『!』の教え子にそんなことする気はないわ、それに今のゼンと戦っても勝負つかなそうだしね?」


学生時代より強くなっていることが一目でわかるほど、ゼンの体にまとわりつく禍動の力強さにシルキーは青い目を細めた。


そして次はフィーナを見据える。


「とりあえず、フィーナって呼び捨てでもいい?」


「は……はい!」


と、フィーナが緊張しながら返事をすると、しつこく皮肉で今夜の指示をした。


「フィーナは私の部屋で待ってなさい。ゼンは少しここに残って『!!』として、話し聞かせて?そのあと本当に匿うか匿わないかを決めるわ」


こうしてシルキーのペースで事がどんどんと決められて行った。


「フィーナは…」


ゼンが言いかけた言葉をシルキーは先回りした考えで被せた。


「わかってるわよ、弱いからひとりで大丈夫かって話でしょ?」


「お前な……」


「大丈夫よ?私のおうち結界だらけだから、その辺の魔族や禍動士が来ても一瞬で死ぬし」

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