第18話『幻影』

「マジでここでヤんの?さすがにアイツも気づいたらここまで来るんじゃね?それよりどっか宿連れ込んでやんべ?」


と場所を変えることを提案したが、

頭にバンダナを巻いている男はこう言った。


「いや、むしろここに来て彼女が犯されてた方が興奮しね?」


手を叩いて男たちは大喜びする。


「『間に合わなかった……』みたいな顔すんじゃ?んでもって俺たち全員が禍力でボコってそのまま愉しむとか最高だべ?」


「「「 いいねぇぇぇっ!! 」」」


と全員でその案に賛成した。


「てか、起きろよ?寝てたらつまんねぇからよ?」


リーダー格の男が眠るフィーナの頬をはたく。


「ぅ……っ……」


意識が朦朧とするフィーナの顎を片手で掴むと


「気合いはいってますかぁぁぁ!?」


と、エアマイクで4人を煽るリーダー。


「うええぇぇい!!」


と合いの手の合図から、恥ずかしいフリースタイルを歌い出す。


フィーナは頭がクラクラし大きな声が出せない。


「やめて…」


と意識が朦朧とする中フィーナは言うが、

そのか細い声は男たちの声でかき消され、

再び意識が飛んでしまった。


「とりあえず?クソデカ彼氏が来る前にぃ?ここらで一発ヤっちゃおかぁぁぁぁぁ(笑)!?」(チラッ)


「うぇぇぇい!」


「お前の彼氏ぃバカだからぁ?今からお前はまわされちゃう(笑)」(チラッ)


「うぇぇぇぇぇいっ(爆笑)!」


「あそこに突っ込め、ギルドたちぃ?誰からこの子を食べちゃうの!?」(チラッ)


「はーい」


と手を上げる一人。


「いやいや(笑)「はーい」ってノリやばない?どうしたお前ら………うん…あれ?君ぃ誰?」


(チラッ…)


今度は招かざる6人目が彼らに視線を突き刺す。

全員が一瞬で塊となって距離を取りヒソヒソと話す。


(こいつ…いつから…いた?)

(わかんねぇ…)

(このフード野郎!たしかこの女の席の後ろにいた奴だ!)


「ダサいね?群れなきゃイキれない隠キャ?」


フード野郎は5人を嘲笑した。


「はーいキレた、ぶっ殺死ころし決定ね?お疲れぇ!!」


男たちは一斉に手のひらから禍力を練り上げた。





フィーナを待っていたヴェトンが痺れを切らし店に再び入ると既に連れて行かれたあとだった。


先ほどのシートに麦わら帽子が置いてあった。

そして先ほど騒いでいたギルドの青年たちが全員いない。


(俺たちがここを出た時にはいたはず。そして店からは出ていないことを考えると…拉致られたか…!反省はそいつらを殺したあとでいい)


冷静に状況を見極めると、横を見ると地下に進むドアが開いていた。


(地下か……殴った方が早ぇな)


店が全壊しないように優しく地面を叩き割り、

人がひとり入れる穴を開け、落下したヴェトン。


着地して見渡すとそこには倒れているフィーナと、拉致したであろう青年も倒れていた。


「フィーナ!」


「ヴェ…トン…?」


「しっかりしろ!」


フィーナを抱きかかえて身体を確認するが特に怪我はなさそうであった。

しかし先ほどこの男たちにかけられた禍動によって未だぐったりしていた。


「なんだこれ?」


フィーナの手には何かを持たされていることに気づき、念のためそれを胸ポケットに入れる。


とにかく事情を聞くためというよりも、事と次第によっては半殺しにするため寝ているバンダナ男を持ち上げた。


「…!!」


思わずビクッとした。


バンダナ男の口の中は舌を残して

『何もなかった』。

目から血の涙を流し、かすかに息をしていた。


よく見ると、それ以外のやられ方も悲惨で、ヴェトンが今まで力任せに倒してきた敵と違い、

まるで家畜が肉屋に脱骨されるように淡々と壊されてしまっていた。


残りの男たちも同様で、もはや話すことは当分は難しいと諦めた時 ーー


物音がして振り返るとリーダー格の男は部屋の角で膝を抱えて虚な目で座っていた。


「おい、なにがあった?」


とヴェトンがズカズカ前に進むとリーダーの周りは水浸しだった。

独特の臭いからヴェトンは失禁をしている、と駆け寄る足を止めた。


その男はなにやらブツブツと言っている。



「自首します自首します自首します自首します自首します自首します自首します自首しま…」



と、何度も呟いているのである。

ヴェトンは生まれて初めて恐怖を覚えた。

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