第28話 ”えぴろ~ぐ”

 その後のことを少しだけ、語ろうと思うの。


 ほんの少しの間、外の世界にひきずり出された私。

 その影響は甚大であり、同時に最小限でもあった。


 死者は枢機卿ただ一人。それも、紗雪の銃弾がとどめ。


 地下で姦淫にふけっていた聖職者や貴族達、そして、申し訳ない事に相手をさせられていた『神の子ならざる者』と定められた子達。彼らは皆、自力で起き上がることもできないほど衰弱しきっていた。


 強烈な濃度の魔力による中毒症状。

 魔法での治療は逆効果となるために施せず、ただ時間による休養だけが回復の手段。


 王都中もパニックとなり、幻覚に悩まされた人、黒い髪に金の瞳をした女の子の神様を見た、なんて言う人まで出てきた。

 でも幸いこちらも死者はゼロ。多少の混乱で軽傷を負った人はいるけれど、魔法薬で簡単に治る程度。


 大変だったのは聖浄心教。

 いくら『神の子ならざる』なんて主張してみても。聖職者、それも教皇までもがとんでもない乱痴気騒ぎに耽溺し、あまつさえ金と権力で拉致誘拐に人身売買を繰り返していた。


 さらには、これを機に、抵抗する意識も喪失した彼らの身辺を徹底的に洗いなおしてみれば、出るわ出るわ、犯罪行為の証拠の数々。


 特に致命的だったのは信者達が冥福を祈る鎮魂の儀式のため収めていた亡き家族の”心の核”の横流し。

 ゼノン枢機卿一派は教皇筆頭にこれに関与していたことが明るみに出された。


 結果、回復するなり教皇以下関係者は情状酌量の余地なく処刑され、断頭台の露と消えた。

 多くの枢機卿が亡き者となり、次期教皇の選出すらままならない。

 近々世界中の関係者を招集し、組織再編の大規模な調整が行われるらしい。


 私達はそんなこと知った事じゃない。と、旅に出てしまいたかったのだけれど……。


「逃走阻止」


「ふぇ……」


 ゴシックロリータファッションに身を包んだ小さな女の子が、銀の髪をなびかせる美少女の腰にひしと抱き着き、留める。


「イリスちゃん……いじめ、る?」


「困惑」


 蒼銀色の瞳に涙をうっすらと讃え、哀しそうな表情で、紫と青のオッドアイを見つめるルナリス。


 心の核が戻ったのは良かったのだけれど、取り戻した魂、感情の動きは『哀』にとんでもなく偏っていた。

 全体的に無感情なのは変わらないけれど、ちょっとしたことで哀しみがあふれて、涙ぐんでしまう。


 無垢な美少女のそんな姿は何とも嗜虐心をそそると同時に、とんでもない罪悪感を植え付けてくる特級の爆弾。

 聖女イリスすらタジタジとなり、アタフタしてしまう始末。



 聖女ルナリス。”銀月の御使い”の称号までも聖浄心教から戴いてしまっていては、特級冒険者の立場で勝手に抜け出すわけにもいかなかった。


 貴族にも大規模な粛清が行われ、風通しが良くなった代わりに、軍務卿までもが臥せっている聖王国マリシアは国力の低下、治安の不安を抱える事となり。

 だからこそ、旗頭となりうる強く清廉な象徴を欲した。

 ましてそれが悪の根源、ゼノン枢機卿に神罰をもたらした乙女ともなれば。




 かくて。

 大陸が混乱に包まれようとする中、私達はその中心を駆けあがる事を余儀なくされるのでした。




「いやぁ、ルナリスがかわゆすぎて、辛い」

「ナオ、悪趣味よ?」


「だって~あのうるうるお目目、最高すぎるでしょ! あーもう、早くこっちに戻ってきてもらって、ぎゅーってしたい。それで、ちょっとだけいい声で鳴かせてあげるの!」


 おてての指をワキワキさせる、私。


「もう……そんなこと言ってると、私がナオを鳴かせちゃうわよ?」

「わひゃぁぁ~!?」


 あ、あ、だめ、まって、それ本当ダメ。


 そこ弱いところだからぁぁぁ!!




 無数の色とりどりの小さな光が、星明りのように照らす居心地のいい薄闇の部屋に、少女たちの睦み合う声が響く。




 ――Fin.



 ……?

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【リメイク版】創造の魔女は美少女人形と同調する ~こっそり安楽椅子冒険者をしていたら聖女に推挙されてしまいました~ malka @malka

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