1bit
変わらず今日も母親に起こされ学校に行く。
踏み慣れたアスファルト。
履き慣れた革靴。
見慣れた並びの建物。
嗅ぎ慣れた草と水とタイヤの匂い。
聞き慣れた同級生たちの声。
それから、
「おはよう。紬。」
10年間顔を合わすたび聞き続けた挨拶。
大切な幼なじみの声。
「おはよう。彩月、今日はなんかご機嫌?」
「分かっちゃう?朝ごはんがフレンチトーストだったの美味しかった。幸せ。」
彩月は幸せ探しの名人だ。
朝ごはんがフレンチトーストだった。たったそれだけで、ここまで幸せそうにするのだ。
彩月といれば道端の小さな花から晴れて欲しかった日の雨まで幸せに変わる。
「ねぇ、紬は幸せ?」
彩月はよくこの質問をしてくる。
私の答えは何時も変わらない。
「うん。幸せ。」
大切で憧れの幼なじみ。あなたが居れば何処でも私は幸せだから。
「帰りにさ、かき氷屋さん寄らない?春限定桜餅かき氷があったから食べたいんだよね。」
「いいけど、桜餅かき氷ってどんな味なんだろ。」
彩月は何でそんな不思議な味に惹かれたのか。
けれど前々から不思議な味のものをよく食べていた気がする。鮒寿司とかトマトに蜂蜜をかけてみたりとか。何でも面白いらしい。
「甘いかな、しょっぱいかな。甘いといいな。」
彩月は自他ともに認める甘党である。
私は甘いものが苦手な訳では無いが酸っぱいものが好きだ。
でも、変わらない、平和な日常、これが一番好きかもしれない。味ではないけど。
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