Liner Notes‐Case.1

【白昼吸殺事件】


・世界観紹介も兼ねて、特殊設定ミステリとしてわかりやすくしようとの思いから「吸血鬼が日光の差す空間で人を殺した」という謎に思い至った。


・「吸血鬼の生首を持ち歩く」というネタは不死者であるという設定を活かしたトリックで気に入っているのだが、実は近年に刊行された某短編集収録の特殊設定ミステリに酷似した発想のトリックがある。


・ヰ坂が当該作品を読んだのはこのネタを思いついた後である。ミステリの肝はトリックの新奇性よりも物語にどう活かしたかであって、そこで差別化できているならトリックの被りは大した問題ではないと思いたい。


・この話のトリックを読んでこう思われた方はいないだろうか。「吸殺の時に牙がリュックの布地を貫通してるんだからその穴から日光入って死ぬやんけ」と。


・ヰ坂もそう思う。


・それはそうと、倒叙プラス叙述トリックでメイントリックを強調した構成だとか、生首と少女の共犯関係だとか、全体に上手いこと話を作れたなと自分では気に入っている。ミステリなんか全部クイズでいいと宣うパズル原理主義者もいるが、荒唐無稽なトリックを実現するためだけの設定を肉付けし、それを他の要素と繋げるストーリーが思い浮かんだ時の快感はミステリ執筆で一番楽しい部分だし、読者もそこに美しさを感じるからワイダニットというジャンルがあるのだろう。


【加賀美ライラ】


・名前の由来は『吸血鬼ドラキュラ』に先んじて発表された『吸血鬼カーミラ』とアラビア語で「夜」を意味するライラから。原典のカーミラがレズビアン設定なためライラと真昼も女性同士のパートナーシップを意識させる描き方になった。


・ストーリー的には真昼の存在感が大きく、彼女は半ば道具みたいな扱いだが、「自分の命が最優先という姿勢への罪悪感」は本作全体に横たわるテーマの一つでもある。


【佑月真昼】


・不合理な犯行に臨む必然性と、話の雰囲気からして同情できる犯人でなければという要請からひどい境遇を背負わされた人物。本作のメインテーマが「正義には何ができるのか」という問いかけなため、彼女は「正義では救われない被害者」になった。


・彼女の問いに果たして太陽と月生げっしょうは答えられたのか、最後まで見守っていただけたら幸いである。


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