第3話 王都と聖女と勇者姫
○ 朝・野営地
朝日。
焚き火の残り火。
元気に朝食を食べる女魔法使い。
イチロー(昨夜の毒なんて、まるでなかったみたいだ。元気になってよかった。)
戦士が立ち上がる。
戦士 「よし! 今日中に王都に着くぞ!」
斥候 「街道に戻るか」
女魔法使いの髪へこっそり飛び移るイチロー。
イチロー (徒歩に付き合えるわけないしな。)
髪の毛へしがみつく。
イチロー (これが一番燃費がいい。)
イチロー (……石鹸の匂いする。)
少しだけウットリとする。
○ 森の中
移動中。
女魔法使いの髪にへばりつきながら、周囲を見るイチロー。
薬草を見つけ道端へ急降下。
針が柔らかく変形。
イチロー 「形状変化。」
薬草を丸呑み。
薬草が消える。
水たまり。
水も吸い込み収納。
イチロー (こういう小さな積み重ねが大事なんだよ。しかし、あのヘンタイ斥候のスキルが一番役立つとは)
〇回想
昨晩、剣士と斥候、男二人で絡み合うテントの中
イチロー(仲間の女の子が苦しんでいるのにこいつらは)
天誅!とばかりに股間あたりに針を突き刺し血を吸う……不味かった。とても不味かった
女魔法使いに毒消しを注入した後、落ち着いて検証してみる。
どうやら血を吸った相手の経験や記憶なども得られるらしい。
おかげで、この世界の常識が少しは理解できた
そして、スキルも、経験のうちに入るらしく大量のスキルをゲットできた。
イチロー(でもなぁ……)
得たスキル一覧
女魔法使いからは、「魔力制御」「属性魔法適正」「初級火魔法」「初級水魔法」「初級風魔法」「MP100%UP」
剣士からは「身体強化」「筋力増強」「金剛防御」「HP100%UP」
魔法が使えるスキルと、ステータスを数%アップしてくれる夢のようなスキルの数々。
この冒険者たち以外とランク高いのでは?
イチロー(……まぁ、俺のステータスが少数点以下じゃなければな)
HPもMPも100%Upしたところで、0.01が0.02になっただけ
その他のステータスアップも5%~20%アップするスキルだけど、0.01の20%アップなんて誤差の範囲。
唯一楽しみにしていた魔法も……
イチロー(MPがなきゃ使えないんだよなぁ)
初級火魔法「ファイアーバレット」 消費MP3
初級水魔法「ウォータークリエイト」 消費MP2
初級風魔法「エアブリーズ」 消費MP1
どれも……使えない
イチロー(まぁ、それに比べてこっちは……)
斥候から得たスキル一覧
「敏捷100%UP」「隠蔽」「隠密行動」「気配探知」「気配遮断」「鑑定」「罠感知」
イチロー(いかにも斥候というスキルが揃っているし、俺との相性がいいスキルばっかりだよなぁ)
敏捷100%UPのおかげで、唯一小数点以下じゃなかったスピードが10を超えたし、隠蔽や隠密行動のおかげで見つかりにくくなった。
だから女魔法使いの血も吸い放題だし。
しかも、○○100%アップは基本ステータスにかかるから、レベルが上がってステータスも上がれば天井知らずであがってくのだ。
イチロー(……基本ステータスが小数点以下の俺には意味ないけどな)
そして「鑑定」スキル
イチロー(これだよ、コレ!これで、世界三大スキルのうち二つを手に入れたぞ!)
異世界三大スキルとは「鑑定」「収納」「転移」である(*注 田中一郎調べ)
そして、道行く先々で落ちている素材を吸収し、魔物たちの血を吸ってスキルを得ながら王都への旅は続く……。
〇王都城門前
二日後、城門前に着いた冒険者たち…とイチロー
夕焼け。
巨大な城壁。
王都に入る人々の行列
イチロー 「……でっけぇ。」
冒険者たちが門をくぐる。
門番とは顔見知りで、気安く声を掛け合う
イチロー (やっと着いた。)
女魔法使いの髪から飛び立つ。
イチロー 「じゃあな。世話になった。」
〇王都の街。
石畳の大通り
並ぶ屋台。
パン。
果物。
香辛料。
怪しい肉。
雑貨類などなど……
イチロー 「おぉー!思ったより広い。……異世界だぁ!!」
噴水付近を飛ぶ。
駆け回る子供たち。
大道芸人が芸を披露し、吟遊詩人が曲を奏でる。
イチロー 「結構楽しそうだ。」
街を見て回るイチロー
宿屋へ近づくと突然苦しそうになる。
イチロー 「……っ!?」
ふらつく。
羽が重い。
イチロー 「なんだこれ!?」
建物から離れると回復。
イチロー 「治った。一体何だったんだ?」
建物の窓に設置された、虫除け魔道具。
イチロー 「……虫除けかよ!」
他のところも同じ。
イチロー 「ファンタジー世界なのに!!虫除けが充実しすぎだろ!!」
〇路地裏。
薄暗い。
じめじめしている
イチロー「こんなところが快適に感じるとは……はぁ。」
少女が座り込んでいるのを見つける。
やせ細った少女。
ぼろぼろの服。
イチロー 「……。まぁ、女の子だし。」
首筋へ近づく。
イチロー (女の子を見つけたら血を吸うのが礼儀だよな?)
少しだけ吸血。
イチロー 「……不味い。ちゃんと栄養とってるのかよ!」
鑑定を発動させると、血を吸って流れ込んできた記憶が流れ込んでくる。
親を失った。
飢え。
寒さ。
孤独。
復讐
断片的なイメージが流れ込んでくる
イチロー 「同情なんてする柄じゃないんだけどな。」
もう一度針を刺す。
亜空間から回復ポーションを少女へゆっくり注入。
少女の頬に少し赤みが戻る。
呼吸が少し楽になる。
イチロー「ついでだ」
栄養剤を生成し、注入
飛び去るイチロー。
イチロー 「元気になれよ。」
〇夕暮れの王都。
街の灯がともり始める。
小さな蚊が神殿へ向かって飛んでいく。
〇神殿前の広場。
多くの人々が行き交い、祈りを捧げている。
神殿から若いシスターが出てくる。
優しそうな笑顔で子どもや老人に声を掛けている。
※シスターの容姿
年のころは14~15。
長い銀髪で幼さが残る顔立ち。美少女。
特徴としては胸がでかい。
年齢に不釣り合いなほどに胸がでかい
上空から見下ろすイチロー。
イチロー「うわぁぁ……あんな可愛くてエロいシスターとエッチしたかったよぉ……!蚊に生まれなかったら、絶対に口説きに行ってたのに……!……イヤ、へたれて口説けなかったか? くそっ、どっちでもいい、全部女神が悪い!」
イチロー「せめて、血ぐらいは吸わせて。」
シスターの首元へ近づく
ブゥゥゥ……
そっと吸血。
ちゅる……
イチロー「うまっ!」
目を見開く。
シスターが立ち止まる。
シスター「……?」
周囲を見渡す。
シスター「何か邪悪な気配が……」
聖魔法を発動。
シスター「浄化の光よ!」
光が広場を包む。
イチローの羽が熱くなる。
イチロー「熱っ!!」
全速力で逃げる。
ブゥーーーーン!!
光が追いかけてくる。
イチロー「なんで見つかるんだ!?」
イチロー「気配遮断も、隠密行動も、隠蔽も全部使ってるのに!」
路地裏へ飛び込む。
壁に張り付きながら息を切らす。
イチロー「シスター恐ろしい……。」
遠くに見える神殿を見上げる。
イチロー「でも神殿には用があるんだよなぁ……。」
ステータス画面
その端に映る「寿命」の項目
「残り:6日」
イチロー「はぁ、どうするかなぁ……」
〇 路地裏
少女が目を覚ます
少女「あれ?体が軽い?空腹も少し収まってる……もしかして私死んじゃったのかな」
周りを見回す。
意識を失う前と光景は変わってない
少女「……まぁいいや。今のうちにギルドに行こう。依頼を受ければ……少しはお金がもらえるよね?」
ギルドに向かって歩きだす少女
この少女とシスターそして蚊の奇妙な関係が始まるのはもう少し先の話である。
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