舞台は冬になると海が氷で閉ざされる貧しい漁村。
少年カイルの人生は、やがて幼馴染のジナを妻に娶り、この村の土になるはずだった。この村の誰もがそうであるように。
しかしある時から彼の視線は村の外、地平線の向こうへと向くことになる。その視線の先に何かが見えているわけではない。それでも彼は村を出て行くのだ。
彼の部屋には鉛筆書きのラフスケッチが留めてある。それはかつてこの村を訪れたある冒険家が残していったものだ。群れから離れ、行き着いた死の谷で骸をさらす一羽のペンギン。
その姿を自分と重ね合わせたとき、カイルの進む道は決まったのだった。
◇
作者アオノソラ様による、14歳の少年少女を主人公とした物語。
作者様がその言葉を使っていないので本作を青春小説と括るのは適切ではないのかもしれませんが、それでも私は本作を青春小説として読みました。
14歳。大人のようでいて大人ではない、子供のようで子供ではない不安定な年頃。
ただ、それは単に自分の心情を言い表す適切な言葉をまだ持っていないだけで、本人は周囲が思うよりずっと深く、遠くまで見えているのかもしれません。
本作においては、主人公カイルの口から多くは語られません。
畢竟、読者はもう一人の主人公ジナの視線で彼を追うことになります。
カイルに対する強い思いを胸に秘めつつ、ジナの口からカイルに投げ掛けられる言葉はどこか常識的で、大人の言葉を代弁するようでもあります。
きっとその言葉では、道を決めたカイルには届かない。きっとジナもそれを理解しているでしょうし、ジナに視点を重ねて物語を追う読者もそれがわかるので胸が苦しくなります。
さて、カイルは貧しいながらも安寧の地に留まるのか。それとも群れを外れて孤高の道を進んだあのペンギンを追うのか。
結末はどうか本編にてお確かめください。
とてもオススメいたします。
ぜひ。
解答がない小説である。答えは冷たい空の向こうだ。
あなたが観たものをわたしも知りたい。
あなたが辿りつけなかった処へ、あなたを連れてわたしは行きたい。
寒村の遺物は、その者が来た方角、去った山へと、若者の想像を拡げただろう。
空っぽの舟は次の航海者を海へと誘う。
道半ばで折れようと、海に投げ出されて沈もうと、それでも彼らは岸辺から離れていくのだ、たった独りで骨と変わるために。
何もかもを放り出して放浪する人たちは現実にも一定数いて、生きているのか死んでいるのか、その行方は分からぬままである。
夜明けの地平線を想う時、この世界の何処かで、彼らの乾いた骨が風に鳴る。