第10話 「夢からの来訪者」
夢を見ていた。そう、長い夢だ。
おれの個体が、何体も、同時に夢を見ていたんだな。
うん、そういうことにしておこう。
「うーん、いい朝だね。
さて、ノンリニアたん、今日の予定は?」
「あらゆることが可能です」
ノンリニアたんの目が、誇らしげに青く光った。
「そ、そう。じゃ、…」
言いかけた瞬間、
おれの枕元が(ぽん)と光った。
光の中から、
夢の中で、見たような気がしないでもないような…、
ふわふわ猫型の何かが飛び出してきた。
それは、言葉をしゃべった。
「とう! きたでぃ!」
「……は?」
そいつは、手のひらサイズで、
もふもふで、
目がまんまるで、
短い尻尾がもこっとして、
そして──
「おなかすいたー! ねむいー!」
……うるさい。
「夢の中で会ったでしょ!
今日からよろしく!」
「いや知らん知らん知らん! 知らんぞぉ?」
ノンリニアたんは、ちりっと青い目を光らせながら静かに言った。
「夢と現実の境界が、少しだけ破れました。
……よくあることです」
「うん、もう驚かない」
ふわふわ猫は、おれの顔面をよじ登る。
「ねぇねぇ! おれくん! おれくん!
きょうはなにするの? あそぶ? たべる? しぬ?」
「おれの顔を登るな…。いや、『おれくん』って何
え? 最後の、しぬって?」
ノンリニアたんが、すっと近づいてきた。
「……処理しますか?」
「え! うん? 待て待て待て!
処理って言うな。 かわいそうだろ! という気もするようなしないような…」
ふわふわ猫は、おれの頭の上で爪を研ぎながら、
「しょりってなにー? ごはんつくるのー?」
「ちょと、やめてやめて、あたま、頭に爪が刺さってる!」
ノンリニアたんは青い目を細めた。
「夢由来の存在は、安定性が低いのです。
放置すると、因果律が乱れます」
「いんがりつー? りつりつー。 りっつー」
「知らん! とりあえず落ち着け! で、おれの頭、こわさないで!」
ふわふわ猫は、ぴょん、とおれの膝に降りて、
胸を張ってこう言った。
「では、これから、わしがおぬしのしゅごてんしとなってやろうぞ」
「え? キャラ急変? 不安定すぎるだろ」
ノンリニアたんは、ほんの少しだけため息をついた。
「……新たな住人の誕生ですね」
「いや、認めるの? えさとかいるの? え、え」
「やっほー、りっつ、りっつー!」
こうして、おれは、新たな混沌を受け入れたのであった。
ノンリニアたんの青い目が、ふっと優しく光った。
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