第6話 白石先生
辺境保安局からの緊急配備。珍しいことだ、なんせ保安官だから。
重要指名手配犯が近くを逃走中、とのことだ。
私は急いで家を出、先回りをする。
重要指名手配犯、絶対に捕まえてみせる。
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サイレンがうるさい。外を見てみると、黒ずくめの男が一人、バイクに乗って逃げてる。その後を追う警察。目覚えのあるエンブレムもあった。辺境保安局。
私は家を出、男の進行ルートを予想して先回りすることにした。
何がなんだかわからないけど、やらないといけない気がする。
走っていると、千景とばったり会った。
千景「みっ、澪か。今は緊急事態なんだ、家にいた方がいいぞ。」
「…困ってるんでしょ。手を貸す。」
この保安官はポカーンとした後に頷いた。
千景「…澪なら頼もしいな!」
二人で先回りしようと走る。私は周りを警戒しながらレバーアクションをする。
開けた場所に着き、待ち構える。そして、その男は来た。
指名手配犯「ど…退けぇ!」
男のポケットから黒光りするモノが見えた。
「…!危ない!」
気づいた時には体が動いていた。千景の前に。
放たれた弾丸が私の右胸を貫く。同時に猟銃で男の太腿を撃ち抜く。
千景「澪!」
この保安官は私を支えるように手を添える。ちょうど警察が到着し、指名手配犯は逮捕された。
意識が遠のく。肺に穴が開いたのか、呼吸がままならない。
千景「しっかりしろ!澪!」
体を揺さぶられる。
「…名前、今まで聞いてなかった。」
この保安官は目が点になった。
千景「そ、そうだったか?」
私は頷く。
千景「辺境保安局の保安官、夜凪 千景だ。…って悠長に自己紹介してる場合じゃない!」
この保安官…いや。千景が救急車を既に呼んでいたからか、救急車が現着した。
救急隊員「右胸が…!今すぐ搬送します!」
救急隊員が千景を見る。
救急隊員「あなたも着いてきてください!」
千景も救急車に乗り、発進する。
病院に着く頃には私の意識は絶え絶えで、顔面蒼白。救急車から降ろされたのを節目に、私は意識を失った。
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「澪!」
澪を揺さぶる私の手を救急隊員が止める。
救急隊員「あとは私たちに任せてください。」
手術室に澪の姿が消え、「手術中」が点灯する。私は待合室で一人、待つしか無かった。
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「急患?はぁ…。」
手術室に向かう。
私は白石 凪。この病院の院長。急患が来たらしく、私の元に連絡が来てた。
オペ着に腕を通し、手術室に入る。
「状況は?」
麻酔科医「かなりまずいです。右の肺に穴が開いてます。しかも、肺の中には弾丸が残ってるように見えます。」
「撃たれたってこと。」
麻酔科医は頷く。既に麻酔は投与済みらしい。
「まずは弾丸を取り出す。」
助手が迅速に動く。
かなり手こずったけど、何とか弾丸は取り出せた。
「これだね。」
その時、アラート音が手術室に響く。
助手「院長!血圧が!」
「分かってる!」
その場にいる全員でこの子を生かそうと動く。
手術は数時間にも及んだ。
「…何とか終わり。お疲れ様。」
私は手術室を後にした。
手術室を出ると、一人の女性がしがみつくように近づいてきた。
千景「澪はどうなった!?」
「無事救った。」
この女性は膝から崩れ落ちて、一雫の涙が床に落ちる。
「あなたの名前は?」
千景「あ、あぁ。私は辺境保安局の保安官、夜凪 千景だ。君は?」
「院長の白石 凪。」
千景「澪を救ってくれてありがとう、白石先生。」
「…別に。」
私はその場を後にした。
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目覚めると白色の天井。そうか、私は確か千景を守ったんだっけ。
隣を見ると、壁に凭れかかって寝てる千景がいた。私が目覚めるまで、ずっとそこにいたのかな。
千景「うん…?お!目が覚めたのか!」
千景はベッドに腰を下ろす。
「…なんで私なんかにここm」
千景は私の言葉を遮った。
千景「澪のことが大切だからな。」
私は視線を逸らした。無意識に。
「お世辞ならやめて。」
千景「お世辞なんかじゃない。私は君と過ごす時間が楽しかったんだ、澪。」
「なに急に。」
千景「世知辛いな。とにかく、無事でよかった。」
「…そっちこそ。」
しばらく沈黙が落ちる。それを破ったのは一人の医師だった。
凪「盛んなところ悪いけど、患者の名前を聞かせて。」
「澪。黒羽 澪。」
凪「澪、ね。しばらく安静、また動くと傷が開くから。次はないよ、多分。」
「分かってる。」
私は千景のことを見る。
「…しばらく、お世話になるから。」
千景はぽかんとしたあと、にへらと笑った。
千景「任せな!」
医師は頭を抑えた。
凪「私の前でいちゃつかないで…。ともかく、不必要な運動は控えて。
あぁ、あと。私の名前は白石 凪。多分、君の担当医になる。じゃ。」
そう言って、白石先生は去っていった。
千景「担当医か。良かったな。」
私は少しだけ頷いた。
「…二度寝する。」
千景「そうか、ならなんか買ってきておくよ。」
「…ありがとう。」
眠気が来て数分後、私は意識を手放した。
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副院長「し、白石先生!」
副院長が院長室に飛び込んできた。
「はぁ…なに?」
副院長「院長宛にとんでもない量のフルーツが!」
「な、なんで。」
副院長「それが、「本当にありがとう、白石先生。これはほんの気持ちだ。 夜凪。」と書いてありまして。」
「たまにいるんだよね、こういうの。
まぁ、他の医者やら看護師やらに分けてあげて。副院長の分もあるから。」
副院長「あ!ありがとうございます!では!」
院長室から出るその背中は上機嫌に見えた。
「はぁ…めんどくさい。」
いつも通り、私は目の前にある書類の山を処理すべく、ペンを走らせた。
赤いマフラーと黒い羽 しれい @Sireionkyo
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