第4話 『レター』
あれは私がまだ幼い頃だったか。マフィア『レター』と関わりを持つきっかけとなり、父を失った事件でもあった。
私が急いで父の元に駆けつけた頃には、父は胸から血を流し、顔色は薄く、白色のシャツは赤く染まって。地面には止まらず、血溜まりが広がるばかり。
私は泣きじゃくりながら、何とか止血をしようとした。助けたかった。
私は状況を父から知った。
舞台は路地裏。父は『レター』に絡まれてしまった。
構成員「おいてめぇ。例の男の関係者だろ。」
父「なんのことか。」
構成員「惚けんじゃねぇ。てめぇが『狼牙』の構成員と知り合いだってのは出てんだよ。ツラ貸せ。さもないと――てめぇの娘の命はないぞ。」
『狼牙』。三大マフィアの一つ。『レター』、『アップラー』。そして『狼牙』。この三つが、マフィアの世界でも覇権を握っていた。
私の命が危険に晒される。それを聞いた父は構成員を殴り飛ばした。
父「娘に手を出すつもりなら俺はお前をここで潰す。」
構成員「っ…てぇ…。てめぇぶち殺してやる!」
その怒号を合図に、死角に隠れていた他の構成員が胸を撃ち抜いた。
と、絶え絶えながらも震える私に知らせてくれた。
私は怒りでどうにかなってしまいそうだった。
父は、私の手をそっと握り、赤いマフラーをかけてあげる。
父「お前は絶対に…俺みたいには…ならないでくれ…。俺はお前を…愛している…。どんな道を歩んでも…お前は俺の…誇り…だ…。」
そう言い、息を引き取った。
私は無我夢中に泣いた。父のお腹に顔を押し付けて、声を上げて。
私はその時に、『レター』に対して強い恨みを持った。
何分間泣き続けていただろう。ようやく父から離れ、マフラーをぎゅっと握りしめる。
「…父さんの分まで、生きるから。天国から、見守っててくれ。」
私はまだ温もりが残っている父を抱え、その場を後にした。
次の日に私は父の葬式を行った。父は周りからも好印象で、いい役職にも着いていた。そのおかげか、式場はかなりの人数になっていた。何故か、私はその場では泣けなかった。でも、その場にいる中では一番、父のことを想っている。そう思えた。
私は家に戻り、父の部屋を整理することにした。『狼牙』との関わりはあるのかどうかも調べるためにも。
隅々まで探しても『狼牙』の文字はなかった。父のスマホの中にも。PCの中にも。
つまり父は人違いで『レター』に狙われた挙句、命を奪われたわけだ。
私は癇癪を起こしかけたが、父の遺影を見て落ち着く。
私はマフラーを撫で、自分の無力さを思い知った。
あの時、私に父を守ってあげる力があれば。
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