第3話 辺境保安局

千景「ここで待っててくれ。」


何やら広い部屋。ここで私は待たされる。

…感謝状、か。こんなにめんどくさい事になるんだったら無視しておけばよかった。


数分経った。あの保安官が来た。隣にいる人は上司かな。


千景「…感謝状とか渡したことないんだがどうやって渡すんだ?」


犬飼「…本気か?」


感謝状を渡すだけなのに何故か膠着してる。早くしてほしい。


犬飼「…はぁ、俺がやる。渡せ。」


この保安官は上司らしき人に感謝状を渡した。

上司らしき人は一度咳払いをして、感謝状を読み上げた。


犬飼「黒羽 澪。あなたは危険を顧みず、悪党から職務質問リストを取り戻し、その勇気と行動力、そして正義感は、多くの人に希望と安心をもたらした。ここに感謝の意を表する。今後もその力で人々を支え、より良い未来を築くことを、心より願っている。」


そして感謝状を渡される。テンプレートに私の名前を貼っつけただけだと思う。


…未来、か。


私は感謝状を懐に仕舞って、辺境保安局を去った。

外に出ると、昇り始めた朝日が私の顔を照らす。ただ、その朝日は、何故か心地よかった。

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犬飼「お前…まさか感謝状の渡し方を知らないとは…。」


「仕方がないだろ!?保安官だぞ保安官!」


犬飼「だからこそ渡したことあるんじゃないか。」


私は運がいいのか悪いのか、保安官人生で感謝状を渡す機会がなかった。ずっと平和だったからではない。誰かが救ったのを目撃したことがなかった。


犬飼「まあいい、もう朝だ。一回帰って休め。」


「じゃあまたな。」


私は朝日に照らされた帰路を歩く。

今回の保安官業務はかなり長く、濃いものだった。私は家に着くなり、ベッドに飛び込んでそのまま意識を手放した。

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スマホを開いて『辺境保安局』と調べる。あの組織は一体なんなんだろう。警察と何が違うのか、私は気になった。

国境や未開拓の辺境地域を警備・監視する治安組織。ここは国境でも未開拓地でもない。…なんで?


私はスマホをポケットに仕舞い、帰路を急ぐ。何故か気持ちよかった朝日とはいえ、直に太陽に照らされるのは嫌い。だから太陽が昇り切る前に家に着きたかった。


曲がり角を急いで曲がった時に通行人にぶつかってしまった。しかも柄の悪い。


柄の悪い男「あぁん?どこ見て歩いてんだよ、チビ。

ぶつかった拍子に骨折れたわー。治療費、よこせよ。渡さねぇと警察に言うぞ?」


随分とめんどくさい人に絡まれた。いや、ぶつかったのは私の方だ。


「…悪かった。前を見てなかった。」


柄の悪い男「謝罪が欲しいんじゃねぇよ。治療費だよ!治・療・費!ガキだからまだわかんねぇか?」


攻撃しようにも、こちらから攻撃をすれば即豚箱行きになる。かといって、ぶつかった手前言い返すのも違う。膠着状態だった。

迷っていた時、間に一つの身体が滑り込む。

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疲れて寝てたかったのに、やけに外が騒がしい。そのまま寝落ちしたせいで、服装もそのまま。とりあえず様子を見に行くことにした。

玄関を開けると、目の前で何やら男が騒いでいた。相手は――澪。あの子から意図的に手を出すとは思えない。本当に短い間だけの関わりだったが、そう思える。

私は間に滑り込んだ。


「状況を説明してくれないか?」


柄の悪い男「このガキがぶつかってきて骨折れたんだよ!治療費も渡さねぇ。その服装、国家の犬だろ?逮捕しろよ。傷害罪かなんかで。」


…よく見るやつだ。ネットでも典型的な。本当に存在したんだな。

私は澪の方を見る。何があったのか意見を聞きたかった。


澪「…前方不注意でぶつかった。」


澪は男の方を見る。


澪「改めて悪かった。」


柄の悪い男「だ!か!ら!治療費を渡せって言ってんだよ!分かんねぇのかこのアマァ!」


男は私を押し退けて、澪の右頬を勢いよく殴った。澪の体が少し蹌踉めいた。


私は素早く男に近づき、両手を後ろに持ってくる。かちゃっ、と手錠をかける音。


「暴行罪で来てもらおうか。」


私は男を徒歩で連行した。辺境保安局に。短い休暇だった。

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保安官と男の背が角を曲がって消える。私は横を見た。


「…ここがあの保安官の家。」


普段こんなことは気にならないのに、何故か覚えてきたかった。

私は改めて帰路を歩く。家に着くなり、ソファに横になる。すぐ眠気は来て、そのまま私は睡眠を取ることにした。

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柄の悪い男「離せよ!」


辺境保安局の地下、世間一般には知られてない場所。

私はそこで尋問をすることになった。事の経緯は――

私は犬飼に電話をかけた。


「もしもし、見覚えのあるやつを捕まえたんだが――」


特徴を伝えた。


犬飼「何?本当か?」


「あぁ、捕まえた。」


犬飼「尋問しろ、情報を聞き出せ。」

で、今に至る。


「君は、マフィア『レター』の一員だろ?」


男は目に見えて顔が青ざめた。そりゃそうだ。知っている者はかなり少ない。マフィアだからだ。


柄の悪い男「な、なんで知って――」


私は言葉遮って続けた。


「情報を言え、知っていること全部。」


柄の悪い男「む、無理だ!殺される!」


「なら法で裁くしかないか。それとも…拷問がお好みか?」


柄の悪い男「わ、分かった!話す!」


私はこっそり犬飼と電話を繋げ、情報を筒抜けにした。


数分後。


話を聞き終わったなら用済み。かといって逃す訳にもいかない。私は法的機関に任せることにした。


柄の悪い男「m待て!話がちg」


言い終わる前に連れ去られていった。


辺境保安局は見た目に反してかなり大きい。外から見たら普通のスーパーマーケット程のサイズだ。

ただ、大目玉は地下にある。

射撃訓練場、尋問室、居住区、監獄など、

かなり幅広い施設がある。私も入りたてはびっくりした。よく迷子にもなった。

ただ、世間一般には地下施設のことを知らされていない。

告げ口する者もいない。何故なら広めてしまうと、と入りたての頃に言われたのだ。一種の脅迫だ、そう唱えた頃もあったが、どうやら上からの指示らしい。

誰に伝える訳でもないが改めて辺境保安局ってすごいってことが分かる。


はぁ、長居しすぎたな。そろそろちゃんと休もう。あいつもちゃんと休めてるといいが。

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