農作業姿のおじさん
影神
優しい手
帰り道。
庭先に立ってたおじさんと、
目が合った気がして、頭を下げた。
すると向こうも深々と頭を下げた。
半分に折り曲げたくらいの綺麗な挨拶だった。
『挨拶は、しっかりしろ!』
何個か当たり前の様に。しつこいくらいに。
何度何度も話されてる内容はいつも決まっていた。
"田舎だから"
と言うのもあるだろうか。
小さなコミュニティだからこその弊害。
子供の頃には、分かりもしないそれを。
自分の親たちは煩わしい程分かって居たのだろう。
「あそこの家の人、感じが良かった。」
母「何処の家?」
「帰り道の所の」
父「あそこは、誰も住んでねえど?」
「、、。」
もう何回か、【挨拶】を交わした。
じゃあ、あの人は、一体誰なのだろう、、
怖いから、考えるのはやめた。
父「そろそろ"呼ばれる"から、
水遊びする時は気を付けるんだぞ?」
「はーい」
母「『おいでおいで』より怖いもんはねぇな、?」
そう言うと、僕の足を掴んだ。
温かい。優しい手。
「おーい!!大丈夫かよっ!誰かー!誰かー!!」
友達が助けを呼んでくれてる。
苦しい、、
誰かが僕の足を掴んでいる。
それは冷たくて、怖い手だった。
そんなに深くないハズの川底は、
不思議なくらい深く。
どんどん奥底へ引っ張られて行った。
遠くの方で友達が何かを言っている。
一生懸命に叫んでる。
恐くて下は見れないから、
水の中から太陽の光を掴もうとする。
もう、駄目だ。
そう諦めかけた時。
水面から、何かが入って来た。
ぼやけた視界は見覚えのあるシルエットを映し出す。
おじさん、?
おじさんの腕が僕の身体を抱き寄せ、
上から強い力で引っ張られるかの様に、
水面へと身体が浮き上がる。
「ぷ、はっ、!!
げほ、げ、っ、、!」
おじさん「大丈夫か?」
「げほ、っ、!!」
話したいのに、苦しくて話せなかった。
友達「お前、なにやってんだよぉ、、」
友達の声は震えて居た。
おじさんは優しく背中を擦ってくれた。
おじさん「もう大丈夫だ。大丈夫。
男の子だもんな?大丈夫。」
恐怖で震えていた身体は徐々に落ち着き。
ようやく喋れる様になった頃。
おじさん「じゃあ、またな」
お礼を言おうとしたが。
声が上手く出なかった。
友達「あれ、誰だ?
見た事ねえな?」
僕は知って居た。
帰り道にある家の庭先に立ってて。
僕が会釈をすると綺麗な挨拶を返してくれる。
農作業姿のおじさんだって事を。
農作業姿のおじさん 影神 @kagegami
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