第5話 さよならは突然に
シルバーウルフは、ソラのことを全く見向きもしてなかったが、自分に向かってきた風が危険なものだと認識し、アイラからステップし離れる。
「アイラ!」
僕はアイラの前に立ち、シルバーウルフと相対する。
「ソラ。いまの」
「アイラ、君は僕が守るから」
アイラを守るため、ソラは戦うことを選んだ。
シルバーウルフは、急に出てきたソラを警戒していた。
先ほど自分に飛んできた風は、アイラが放ったものと違い、当たればただではすまなかった。
あれは危険だ。
そう考えたシルバーウルフは、先ほどまでの甘い考えをなくす。
シルバーウルフは、じりじりと前に詰めてくる。
あいつはどうすれば倒せる?
頭の中で考え、一つの方法が浮かんだ。
もう、これしかないだろう。
「アイラ、いまからいうことをよくきいてね」
そう言って、アイラに作戦を話す。
「でも、それだとソラがあぶないんじゃ」
「だいじょうぶ。これはぼくがきめたことだから」
そう、アイラを守りたい。
これが、今までの人生で初めてできた自分のやりたいことだった。
「アイラ、またね」
「ソラ!」
「こっちだ!」
ソラは、シルバーウルフに風を放ちながら、森の奥へと走る。
シルバーウルフは、それをよけながらソラを追って走り出した。
「ソラ!わたし、まってるから!」
アイラの叫び声も、ソラの耳には入らなかった。
そして、ソラは森の中へと消えていった。
ソラは、シルバーウルフを倒すより、まずアイラをシルバーウルフから離すことを優先した。
それに、この森にはあいつを倒すのにうってつけの場所がある。
「あいつをたおすには、あそこしかない。」
昔、ハーランがこんなことを言っていた。
「この森の奥に川があって、そこの流れがかなり急なんだ。もし落ちたりしたら危ないから、近づくなよ」
それを思い出したソラは、そこにシルバーウルフを叩き落せば、あいつを倒せるのではないかと考えた。
ソラは川に向かって走る。
それを追うように、シルバーウルフが走ってくる。
「はあ、はあ、あともう少しで」
川まであと数メートル。
あと少しで、といったところでシルバーウルフに追いつかれてしまう。
川にはついたが、川はソラの真裏。
あいつを落とすには位置を変えないといけない。
覚悟を決めろ。
いまあいつを逃がすと、次はアイラだ。
そう思い、ソラは体を低くした。
シルバーウルフもそれを感じ取ったのか、構える。
先手はシルバーウルフ、ソラを仕留めようと一直線に向かってくる。
ソラはタイミングを図る。
「いまだ!」
ソラは、突っ込んできたシルバーウルフを飛び越える。
そして、空中でシルバーウルフのほうに向き、
「これでも、くらえ!」
シルバーウルフに風を放とうとした。
だが、シルバーウルフもこちらを見ていた。
シルバーウルフは飛び越えられた瞬間、しっぽをソラの足に巻き付けた。
「ちょ、はな」
シルバーウルフはにやりと笑い、ソラとともに川へと落ちた。
「ごほ、がはっ」
川の流れは急で、息ができない。
気が付けば、足に巻き付いていたシルバーウルフもいなくなっていた。
しかし、冬で寒くなっている川で、お互い長く生きていられるとは思えない。
ああ、また死ぬのかな。
でも、今回は自分のやりたいことをできたから、まあいいか。
次はないんだろうな、と思考を巡らせる。
[助けてあげよっか]
頭の中で、変な声が聞こえる。
きっと幻聴だろう。
もう死ぬんだし、関係ないな。
だけど、もしも助かるなら、どれだけ運のいいことだろう。
[いいよ、助けてあげる]
そう聞こえたのを最後に、僕の意識は消えた。
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