第44話 仙台 *純*

 福島駅まで転移して、時刻表を見たらまだ時間があった。


「仙台まで意外と時間が掛かるんだな」


 各駅停車で、近いのは白石で乗り換え。それで三時間は掛かりすぎだろう。


「って思うのは間違ってんだろうな~」


 空を飛び、転移出来る身となってしまった弊害か。汽車で三時間でも時代は便利になったんだからな。


「バイクで行くか?」


 国道を走れば二時間も掛からんだろう。仙台に車で日帰り出張した人もいたからな。


 陸王は一台、収納の指輪の中に入れてある。乗り方も東陽工業さんで教えてもらったのをまだ覚えている。とは言え、いきなりはさすがに心配だ。


 それに、今から向かっても夕方になるか。定治のところに泊まるわけにもいかんだろうし、とりあえず今日はバイクの練習をするか。


 人のいないところを探し、そこでバイクを出した。


 燃料は満タンにしてもらったから今日中に使い切るのは難しい。県境まで行ってみて考えるか。


 初めてではあるが、まあ、そう下手ではないはずだ。とは言え、なんか面倒だよな。もっと楽に運転出来ないものかね? 頭がこんがりそうだ。


「シフトチェンジがムズい」


 これならまだ車のほうが楽なんじゃないか?


 文句を言いながら県境まで到着。しかし、交通量が多いな。排気ガスも凄い。三月は運転してて楽しいのだろうか?


「服も排気ガスの臭いがこびり付いてそうだ」


 喉が渇いたが、商店も近くになさそうだ。もうちょっと先に行けはあるか?


 もうちょいがんばって進むと商店発見。よく冷えたラムネを買って飲んだ。


「美味い。もう一本」


 なんか自分の足で走るより喉が渇いた。明日は水筒を持参するとしよう。


 もうちょっと走り、白石に入って給油所を発見。ガソリンを満タンにしたら家に転移した。


 三月はおらず、異世界に行ってすぐに休んだ。


 ぐっすり眠り、用意を整えたら昨日、要石を置いたところまで転移。まだ暗いので走ることにした。


 二時間も走ると明るくなってきて、名取川ってところで朝日が顔を出していた。


「河川敷に畑があるんだ」


 こっちでは普通なんだろうか? 洪水で流れたりしそうなものなのに。


「鉄道の高架橋か?」


 みたいなのが見えたので、近付いてみたらそうだった。


 少し歩いたら駅が見えたので、仙台までどれくらいかを確認すると、もうすぐだった。まだ八時前なので、このまま歩いても仙台駅なら十時くらいに到着出来そうだ。


 さすがに腹が減ってきたので中華ソバの店に入った。


「三月は食えたかな?」


 福島だと町まで下りないとラーメンは食えない。どこかでやってはいるんだろうが、町に来たほうが確実だろう。屋台でやっているところもあったからな。


 店の感じからして仙台では古くから中華ソバが食えたんだろうな~。


「美味いな」


 中華ソバを食うのも久しぶりだ。こんなに美味いものだったんだな。


 さすがにこれだけでは満足出来ないので焼き飯も頼んだ。


 満足したら店のおばさんに原町苦竹ってどこかを尋ねたら、駅からバスに乗るといいと教えてもらった。


 まあ、仙台駅も見ておこうと向かうと、なかなか大きい駅だった。


 地図を見たら二キロくらい。充分歩いて行ける距離なので、バスは使わず歩いて向かった。


「都会だな~」


 福島の田舎とは全然違う。山形くらい発展しているところだった。


 畑が所々にあるが、あと数年もしたらなくなるんだろうな~。平成で仙台は政令指定都市になるとか。政令指定都市ってのがよくわからんが、とにかく東北では大きい都市になるそうだ。


 交番があったので、住所を尋ねたらもうちょいとのことだった。


「ここか、定治が住んでいるアパートは」


 最近出来たのか、真新しい感じがする。木造二階建てで、六部屋あるようだ。


「野川? 母親の姓に戻ったのか?」


 まだ仕事かと思ったが、誰かいる気配。とりあえず戸を叩いてみた。


「ごめんください。戸川純というものです。福島から来ました」


 そう名乗り、しばらくして定治に似た女性が出て来た。


「福島から来た戸川純です。定治とは疎開先で知り合いました。良二とも友達です」


「あー! あなたが純くんかい。良二くんの結婚式に一緒だった」


 お、知っていてくれたようだ。よかった~。


「良二から住所を聞いて訪ねて来ました。突然、すみません」


「いえいえ。遠いところご苦労様ね。まあ、中へどうぞ」


「ありがとうございます。これ、お土産です。去年のですが、良二のところで採れた米です。こちらの野菜はうちの畑で採れたものです」


 交番を出てから背負子を出して、米や野菜を積んで背負って来たのだ。収納の指輪とか説明するのも大変だからな。

 

「こんなに!? 重かっただろうに」


 まあ、三十キロは用意であるからな。消費出来るか?


「食べ切れないときはご近所さんにでも配ってください。また持って来ますんで」


「はは。次は少しで構わないよ。二人暮らしのところだからね」


 そのときは定治にも収納の指輪を渡すとしよう。


 中に入り、お茶を出してもらった。


「定治は元気ですか? 便りも出さずにいたもので今どうしているか良二から聞いただけなんですよね」


「元気にやっているよ。いい人も出来て、来年には結婚でもするんじゃないかね?」


「定治も結婚ですか。実は、オレも結婚することになって、その報告をしに来たんです」


「それは目出度いね」


 どこの人だいと、おばさんの尋問が始まってしまった。あはは……。

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