このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(281文字)
同じ雨の朝を、彼と彼女、それぞれの側から。髪が言うことをきかない朝の手触りも、車の水飛沫へのちょっとした誓いも、すごく具体的で体温があります。片方が黙っている仕草を、もう片方の視点でそっと拾える作り。声に出さない優しさと意地っ張りが、二つの「ぜんぶ、雨のせいだ」で重なります。なにより、彼が雨をやませたくない理由が——いちばん不器用なかたちの愛おしさで——沁みました。梅雨に読むのにこれ以上ない一編。
これは…映画的な視点を思い浮かべて観てみたい作品です。「彼の場合」「彼女の場合」と、同じ朝がそれぞれの視点から描かれていきます。とにかくこの二人、思春期も相まってか素直じゃない(笑)それがとてもチャーミングなんです。いろいろと憎まれ口を叩きながらも、根底には愛があるのがよく分かります。だるくて重くて、スッキリ晴れない気分の雨の朝というシチューエーションを、存分に活かした描写。楽しい作品です。
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