美味しい果実
qmmkruz
本編
さくっとした、スナック菓子みたいな温度の言葉だった。
とても美味しい果実がある。
それは山の麓や海岸線、大きな川の流れる開けた場所に自生していた。
生育には、水と日光、そして養分が必要だ。
昔はそれほど数が多くなかったので、近隣との調整が必要であった。
近年は少し丈夫なハウスで育つ様になり、途中で枯れてしまう事も少なく、安定した収穫が可能となった。
だが、年寄り連中は決まって言う。昔は良かった、と。
昔はもっと野性味に溢れていた。力強い風味があった。
あの頃の方が、今よりもはるかに美味かった、と。
けれど私は今の、ソフィスティケイトされた味の方が好きだ。
産地によって異なる味わい、それを楽しむには、過ぎる野性味は邪魔になる。
まあ、私も歳を重ねれば同じ様なことを言うのかもしれない。
頑迷な老人などと、揶揄されてしまうのかもしれない。
それはそうと、今日からは我らの収穫月だ。
ドレスコードはフォーマルが鉄則。紳士たれ、淑女たれ。
マントを纏い、闇を従え。
さあ、出かけよう。
この果実は追熟しないので、鮮度が命だ。
白くて柔らかい果肉、その奥にあるたっぷりとした果汁。
ゆっくりと歯を立てる、溢れるそれを啜る。
「タスケテ、モウヤメテ、タスケ……」
私はこの果実の放つ、さくっとした、スナック菓子みたいな温度の言葉も大好きだ。
美味しい果実 qmmkruz @qmmkruz
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