第24話 まとめ直し

 残された佐々木は一人、これまでの捜査で得た情報をまとめ直していた。


♦︎ 金井は鳥グループに登録されていた女子高生と接触し、高額なバッグを買い与えていた


♦︎ 青酸カリを入手できる可能性があったのは、田川朋恵のみ(科捜研の報告により、盗難はなかったと証明済み)


♦︎ 鳥グループは皆、犯行時にアリバイがある


♦︎ アリバイがハッキリしないのは、田川朋恵の母親のみ(他の保護者のアリバイは成立)


♦︎ 犯行現場および地下ガレージの防犯カメラは電源が落とされていた


♦︎ 性犯罪があったかどうかの取り調べは行えていない


♦︎ ダイイングメッセージは『柴』


「だ、駄目だ。分かんねぇ……」


 青酸カリを入手出来ない限り、犯人にはなり得ない。鳥グループは、はなから関係などなく、金井は全く違ったトラブルでどこかの誰かに殺害されたのではないかと思うくらい、手掛かりになるものが見えてこない。


「はぁ、柳田の野郎、一体何してんだ」


 柳田がカフェインを摂りに出てからもう何時間も経過している。集中力が完全に切れ、机に足を投げ出した状態の佐々木の元に柳田が戻ってきたのは、電灯が煌々と輝きを見せ始めた頃だった。


「おい、どんだけカフェイン摂取するつもりだよ、遅せぇよ。致死量だろ」

「侵害です。ただカフェインを摂っていたわけではありませんよ」

「え?」


 柳田はすんとした涼しい顔をすると、佐々木の側に腰を下ろし、鞄の中から紙袋を取り出した。


「おいおい、こんな時にサブレか? なぁ、どうすんだよ捜査の続き」

「佐々木さん、マイナス100点です。あなたと同類にしてもらっては困ります」


 柳田は死神のような悍ましい視線を佐々木に送ると、紙袋の中から写真を取り出した。


「写真?」

「皆さんのお宅を回ってお借りしてきたんです。実は、当初からちょっと気になっていたことがあったものですから」


 柳田はそう言うと、手にしていた写真を佐々木に手渡した。


「どう思います?」


 佐々木の手には、鳥グループに登録のあった女学生やその家族の写真が握られている。


「どうって言われてもなぁ。でも、お前がそんな聞き方してくるってことは、重要なことが隠されるってことだろ」

「おや、察しが良くなっていますね。加点です」


 柳田は少しだけ口角を上げた。


「はは……皆この写真では良い笑顔してんな。こんな幸せそうなのによぉ」


 佐々木は眉を八の字にしながら溜息をついた。笑顔で写真におさまる者達は皆、体調不良や精神疾患、そして心労で、今や笑顔から随分と遠のいた生活を送っている。


「あれ……」


 佐々木は机に上げていた足を唐突に下ろすと、姿勢を正し直してもう一度しっかりと写真に目を凝らした。


「この子、朋恵ちゃんだよな」

「はい、そうですが。それが何か」


 柳田は密かに胸を躍らせながら、佐々木の様子を伺っている。


「これ、そんな前の写真じゃねぇよな」

「そうですね、ここ1、2年というところじゃないでしょうか」

「だよな」

「どうしました、先程から」

「ねぇんだよ八重歯が。ほら、見てくれよ」


 佐々木は、満面の笑みで写真に収まる田川朋恵の口元を指差した。

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