第22話 犯人像
「高性能なフィルムなら、車内の様子はそう簡単には防犯カメラには映らねぇよな」
「ふふ。ようやく頭が働きましたか」
あの日金井は、誰かを車に乗せていた可能性が出てきた。スタジオには、地下ガレージから直接入ることが出来る作りになっている。
「佐々木さん、犯人は襲われて咄嗟に金井さんを殺めてしまったという正当防衛ではありませんよね。なぜなら毒殺なのですから」
元々殺す気で近づいたのは明らかだと、柳田は主張した。その主張に対し、佐々木は「異議なし」と言わんばかりの頷きを見せている。
「ところで佐々木さん、青酸カリはそう簡単には手に入らないという話は前にしましたよね」
「あぁ。覚えてるぜ」
青酸カリの入手ルートは限られている。法令による規定が厳しく、医療や製薬系の専門職、化学系の教職員、あるいは金属加工を手がける工業系のエンジニア。そうした特定の資格や環境を持つ者でなければ一般人が手に入れることは難しい。
「ってことは、あの子たちは犯人にはなり得ないじゃねぇか。まだ高校生だぞ」
「そこが盲点なんです。実はセントフォレスター学園には化学部がありまして、青酸カリも保管されていることが判明しました」
「そうだとしても、確か二重施錠で保管庫への保存が義務付けられてるんじゃなかったか?」
教師による鍵の管理は勿論、台帳管理もしているはずだと佐々木は訴えた。
「待てよ、まさか朋恵ちゃんとそのセンコーが付き合ってて、そのセンコーが復讐のために、とか?」
柳田は即座にかぶりを振った。
「化学部の講師はお孫さんもいらっしゃる御歳63歳のシニアです」
「いくら何でもありえねぇってか」
「まぁ、恋愛関係ではありませんね。ただ、朋恵さんは随分と信頼されて色々と任されていたようですよ」
柳田は、田川朋恵が美術部を主軸に動きながらも、そのずば抜けた成績の良さから化学部顧問にスカウトされ、籍を置いていたという情報を掴んでいた。
「今時のシニアは見た目こそお若いですが、やはり物忘れは避けられない時があるようで、色々なことを朋恵さんにお任せしていたようです。あってはならない事ですが、彼女はどこに何の鍵があるかも把握していたようです」
「だったらもう、犯人はその……」
佐々木はまた溜息をついた。一体何度目の溜息だろうか。
「それがですね、犯行があった日、朋恵さんは精神科に通院していることが分かりました。しっかりとしたアリバイがあるんです」
「えぇ⁉︎」
佐々木は何がなんだか話に全くついていけていない。
「ちなみに諸々調べあげた結果、鳥グループの女学生たちは皆、犯行時アリバイが成立しています」
柳田は先を見越し、グループ全員のアリバイも調べ上げていた。
「はぁ? なら誰がどうやって……」
佐々木はこの難解な事件に、根を上げそうになっている。
「こういう時こそシンプルに考えましょう。金井さんと関わりのあった子たちはまだ未成年です。言わば子供なんですよ」
「子供……」
佐々木は柳田の一言に、またハッとした表情を見せた。
「親か……」
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