第21話 防犯カメラ

 その後、ベテランの女性刑事が病院に事情を説明し、入院している佐野萌奈の検査を依頼したが、未成年であることに加え、本人からの了承を得られなかったということを理由に、断念せざるを得なかった。


「ごめんなさいね、お役に立てずで……。こればかりは任意だとなかなか……」

「いえ、お手数おかけしました」


 検査もできず、他の女学生への聞き取りも、皆体調不良という分厚い盾があって進まない。


「なぁ、どうすんだよ柳田」

「ではどうすれば良いと思います? 防犯カメラも、犯行のあった日は切られていたようですしね」


 佐々木は質問返しを受け、何も答えられずタジタジになっている。実は前々から防犯カメラの解析を依頼していたわけだが、犯行があった日、スタジオ内の防犯カメラの電源は落とされていた。ならばと、出入り口付近の外側からの映像を確認させて貰ったが、その日はスタジオがオフの日だったからか、金井本人以外訪れる者は見当たらなかった。


「八方塞がりだぜぇ」

「そうですか?」

「え⁉︎」


 まただ──


 佐々木はそう思った。柳田には解決の糸口に繋がる何かが見えているのだろう。余裕綽々なその態度を見れば、一目瞭然だ。


「佐々木さん、あの日、金井さんご本人以外スタジオには誰も出入りしませんでしたか?」


 黙り込む佐々木に対し、柳田は唐突にこんな問いかけをした。


「おいおい、お前も防犯カメラの映像確認したろっ。誰も出入りしなかったじゃないか」

「そうですか? 言い切れますか?」

「……な、何だよぉ」


 佐々木はまた眉を八の字にさせた。


「あの日、金井さんは裏口にある地下ガレージから車で出かけて、しばらくして戻られましたよね」


 そう、あの日金井は車でどこかへ出かけて、しばらくして戻ってきた。対角にあるカフェの防犯カメラに映っていたから間違いない。


「ちなみにですが、スタジオ内だけではなく、ガレージの防犯カメラも何故かあの日、電源が落とされていましたよね」

「おう、それは間違いない。俺も確認したからな」

「どうやら金井さんは、スタジオがお休みの日は電源を落とされているようです」

「ふ〜〜ん」


 佐々木はまだピンと来ていないようだ。


「全く、本当に察しが悪い方ですね。いちいち休みの日ごとに防犯カメラを切るなんて、そんな方いらっしゃいます? あと、金井さんはあれほどの高級車にもかかわらず、ドライブレコーダーをつけてらっしゃいませんでした」


 一般人ですら、何かが起きた際の証拠となるドライブレコーダーの設置を進んで行う時代に、かの有名なフォトグラファーがその設置をしない理由は何であるのか。また、防犯のためのカメラをわざわざ切る理由は何であるのか、柳田はそこを佐々木に対し訴えかけている。


「まさか……スタジオが休みの日を狙って……」


 その日なら、防犯カメラには勿論のこと何も映らない。しかも、何故電源を落としていたのか後々詰められたとしても、仕事が休みの日にはいつも電源を落としていると逃げ切ることが出来る。しかも相手は未成年だ。自分からわざわざ傷物だと言い出す子などいないと、鷹を括っていたのだろう。実際問題、未だ誰も口を割っていない。


「なんてこった……」

「ちなみに金井さんのお車ですが、高性能なフィルムを使ったフルスモークでした」

「おいおい、それ違法だろ。車検通らねぇし」

「おそらく、車検前に元に戻せば良いとでも思っていたのではないでしょうか」

「全く、とんだ野郎じゃねぇか」


 佐々木は呆れ返っている。


「佐々木さん、ではもう一度お伺いしましょう。あの日、本当に誰も出入りしなかったと言い切れますか」


 柳田の含みのある一言に、勘の悪い佐々木もようやくハッとした。

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