第20話 ナイーブな問題

 数日後、柳田は佐々木、兵頭と共に会議室に籠っていた。@ロリオがいつどこから『柴』界隈のボスに連絡をつけていたか特定出来たのだ。


「なるほど、漫画喫茶やインターネットカフェからの発信というわけですね」

「あぁ、何とか身バレを防ごうとしてたんだろうな。色んな場所を転々として足がつかないように細工したつもりだろうが、ネットカフェの会員登録までは頭が回らなかったようだな。全く詰めが甘いよ」


 兵頭はふぅっと溜息を吐いた。


 これらの施設は利用する際、条例により個人情報の提出が義務づけられている。@ロリオが利用していた日に金井が訪れていたかを調べれば、おのずと答えが出るというわけだ。


 柳田と佐々木は兵頭に頭を下げると、受け取ったデータを元に、@ロリオが訪れていた施設へと急行した。


「ビンゴだな。ロリオは金井。全く、何だよロリオって。気色悪りぃ名前つけやがって」


 いくつかの店舗を回って確証を得た帰り道、運転席の佐々木が忌々しげに言った。隣で柳田は小さく笑う。


「ふふ、異議なしです」

「金井がヤバい性癖野郎だってことは分かったぜ。でもよぉ、どうやって犯人を炙り出すんだ? まぁ怨恨だとしてもだ、まさか鳥グループの一人一人に性被害に遭ってないか聞いて回って動機を炙り出すのか? それとも、入院している子に病院で検査でもして白黒ハッキリさせるとか?」


 佐々木はまた眉を八の字にして困り顔になっている。柳田は彼のその表情を見て、今どのような感情を抱いているのか聞いてみたくなった。


「そんな顔をして、一体どうしました佐々木さん」

「だってよ、もしそういう目に遭っていたとして、あの子達はそんな、ほら、分かるだろ。まだ少女なんだ。色々と知られたくないだろうし……」


 佐々木は『セカンドレイプ』になりかねないと、警鐘を鳴らした。


「やり方間違えると、場合によっては命に関わってくるぞ、ナイーブな問題だからな。同性の刑事を担当に当てた方が良いんじゃないか?」


 ここが彼の良いところだ。柳田は事件解決のためであれば、手段を厭わないところがある。だからこそ、スピード感があり犯罪者を野放しにせずに済む。それこそが全てだと思ってやって来たが、佐々木というバディに出会って、それだけではいけないということに気付きつつある。


「そうですね。ベテランの女性の刑事に依頼しましょう」


 佐々木は「おっ」という表情をした。いつも天邪鬼な柳田が、やけに素直だからだ。


「お前、良い弟になりそうだな。ま、ここにこんなにお手本になる良い兄ちゃんがいるんだもんなっ♪」

「はい?」


 柳田は「ふんっ」とそっぽを向いたが、その表情はどこか柔らかかった。

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