第7話 佐々木の力
「では、早速学園に問い合わせてみましょうか」
柳田のその言葉に、佐々木はコトリとグラスを置くと「う〜〜ん」と首を傾げる仕草を見せた。
「どうしました」
「いや、この学園どう見たって私立のお嬢様学校だろ。ま、先入観って言われちゃたまんねぇから今から検索すっけど」
佐々木はサクサクと調べ上げると、柳田の方に向けて画面を示した。
「ほらやっぱり。クリスチャンのお嬢様学校だ」
「流石、女性のこととなると見事に勘が働きますね。で、佐々木さん、何故首を傾げたのです?」
「学園に直接問い合わせるのは、どうも気が引けたからだよ」
「何故です? 論理的に説明していただけますか」
柳田がよく求める『論理的な説明』にいつもはタジタジの佐々木だが、彼にも譲れない唯一のものがある。それは、『人の心』というものだ。
「論理的に説明するのはちょっとムズいかもしれん。ただ、感情論で申し訳ないが一応先輩として今回は一言言わせて貰う」
「何でしょう」
「例えば、この子にモデルになりたいという夢があるとする。でも、学校的にはNGだとしたら?」
「僕はそんなミスは犯しませんよ。最初からどのような誓約があるか調べ上げた上で進学します」
「はい、そういうとこだぞ。マイナス一億点っ」
「⁉︎」
柳田は佐々木から放たれた言葉に、細めの三白眼をこれでもかと見開いている。
「誰もがお前みたいに論理的に物事を処理できるわけじゃねーんだ。大抵は、コソッと内緒で働いたりするわけよ、柳田ちゃんっ」
「……」
佐々木は学生時代、顔バレしないよう店長に伝えた上で、接客ではなく裏側で調理の担当をしていたのだという。
「なるほど。学園には黙った状態でモデル業をしている可能性があると言いたいわけですね」
「おうよっ♪ ってことは、俺たちが学園に問い合わせたりなんかした暁には、この子は夢を失う可能性があるってことだろ。厳しい学校なら処分もそれなりだぜ」
犯人ならともかく、ただ単に調査の段階でそこまで踏み込むべきでは無いと、人情派の佐々木は持論を展開した。
「分かりました。佐々木さんのおっしゃる通り、学園への連絡はやめておきましょう」
「お、やけに素直じゃねぇか。俺の良さが染み付いてきたんじゃないか?」
「マイナス一億点お返しします」
「⁉︎」
感情をカモフラージュさせるようにシレッとした態度で減点を下した柳田だが、実は、佐々木の細かな配慮に感服していた。
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