第8話 グループの女
その後、学園近くで張り込みをしていた二人は、そのイケメンっぷりが功をなし、下校途中の女子生徒たちのスマートフォンから、お目当ての学年写真データを入手することに成功した。
「へぇ、この学園さ皆んな可愛い子ばっかだね」
「え〜〜、そんなこと無いですよぉ。私なんて太ってるしぃ」
「どこが、それくらいが丁度良いんだよ、大丈夫。君は可愛いよ」
「え〜〜♡」
「ちなみにだけど、もっと分かりやすい画像とかある?」
「あるある、ちょっと待ってて下さいっ♡」
佐々木が放つキラキラした陽のオーラにすっかりのぼせ上がった女学生は、照れながらも、スマホに撮り溜めていた画像をいくつも見せてくれた。
「ねぇ、他にもまだ見てみたいんだけど、ちょっと友達とか呼んで貰える?」
「良いですよ、待ってて下さいねっ♡」
その後、幸運の女神が舞い降り、柳田と佐々木は例の女学生が田川朋恵であることを掴んだ。
「やっぱ飛び抜けて可愛いよな、この子」
シレッと入手した写真をまじまじと見る佐々木。
「まぁ、姉ほどではありませんが」
「ははは、そりゃもう異議なし」
女学生たちに礼を言い、学園を後にした二人はガイシャについて話を聞くため、田川朋恵の元を訪れることにしたのだが、応対したのは母親だった。
「あの、警視庁の刑事さんが何のご用で……」
玄関先に出てきた母親が、警察手帳を示している二人の前で完全に固まってしまっている。
「ニュースにもなっておりますが、亡くなったフォトグラファーの金井良太さんの件で二、三お嬢さんにお伺いしたいことが」
柳田が淡々と伝えると、母親は目を泳がせた。
「いかがなさいましたか。随分と動揺されているようですが」
柳田の抑揚のない言葉に、母親は冷や汗をかき黙り込む。そんな張り詰めた空気の中、佐々木が一言フォローを入れた。
「朋恵さんのお母さん、僕らはただ単に金井さんの携帯に登録のあった方に色々と話を聞こうと思いましてね、足を運んだだけなんです」
「そ、そうですか。あの、ここではなんですから中へどうぞ」
警戒心を一段階引き下げた母親は、二人を応接間に通した。娘をお嬢様学校に通わせるくらいだ、自宅も豪華絢爛で家具もセンスが光っている。
「あの、お珈琲かお紅茶を」
おかまいなく、そう佐々木が言おうとした矢先に、柳田が「珈琲で」と先に口を開いた。苦笑いしながら小さく礼をした佐々木は、出された珈琲をすすると、早速娘の朋恵と話がしたいと切り出したが、母親はなかなか応接間から出ていく素振りを見せない。
「どうしました? 先程から随分と渋られているようですが。そのような態度は逆効果ですよ。まるでお嬢さんを庇っているように見えます」
柳田は、空になったカップを置くと鋭い一言を吐き出した。
「あ、あの……」
「何か、気になることがあるんですね。良ければ聞かせて貰えません?」
佐々木の
「実は、朋恵は今学校に行けていなくて。塞ぎ込んでるんです。本当にいきなりだったんです。理由を聞いても何も言わなくて。だから、今日刑事さん達が来られて、もしかして何か関与していたんじゃないかって、私、不安になって……」
「なるほど、そういうことですか。話は出来そうにないですか?」
佐々木は朋恵との接触を目論んだが、母親は良い返事をしなかった。
「とても不安定なので、今はとても……」
「そうですか、分かりました。ちなみにお母さん、鳥グループについて何かご存知ないですか? 娘さん、そのグループに登録されていたんですが」
母親はすぐさまかぶりを振った。
「我が家は鳥は飼っていませんし、そもそも、フォトグラファーの方とどういった繋がりがあったのか……」
「何も聞かされてないということで間違いないですか」
柳田が口を挟んだ。
「は、はい、何も」
「ちなみにお嬢さん、アルバイトはされてらっしゃいますか?」
「いえ、学校で禁止されておりますから」
「なるほど、ではお小遣いはいかほどで」
「毎月5千円です」
柳田は何かピンときたのか、更に質問を繰り返した。
「とても裕福なご家庭に見えますが、お小遣いは一般家庭と大差ないように思えます。何か子育てにおいての方針などがあるのですか」
「方針というか……。主人が年頃の娘をちょっと気にしていたもので」
「減額したわけですね」
柳田は母親が話し出す前に、答えを導き出した。
「は、はい」
「ちなみにですが、ここ最近お嬢さんに何かプレゼントなさいましたか?」
「いいえ、誕生日はまだですし……」
母親は目の前にいる刑事の意図が読み取れず、どこか不安そうな顔をしている。
「では最後に一つ、『柴』について何かおっしゃっていませんでしたか」
「柴? いえ、聞いたことありませんけど」
「そうですか、今日はこの辺りでお暇します」
柳田は佐々木に目配せすると、田川朋恵の自宅を後にした。
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