第4話 調査
「まずは、交友関係の洗い出しだな」
佐々木は早速、遺族の許可を得た上でガイシャの携帯電話の記録に目を通した。通常、ロックの解除には時間を要するが、有難いことに、ガイシャは忘れっぽい性格だったのか、IDやパスワードを手帳に書き残していた。
「ん? 鳥?」
「どうしました、佐々木さん」
好物の珈琲を片手に柳田が近づいてくる。早速、佐々木の出方を伺っているようだ。
「いや、『鳥』っていうグループがあるから何となく気になって。他は家族、友人、仕事っていうありきたりなグループなのによぉ」
「なるほど、目の付け所は良いですね。成長が見られます。とりあえず5点差し上げましょう。ちなみに中身は見ましたか」
「いや、これからだよ」
佐々木は5点という微妙な加点に苦笑いしつつ、柳田の前で『鳥』グループをタップした。
「何だ、可愛い子ちゃんばっかじゃねぇか♡」
「佐々木さん、語尾にいかがわしいマークがついていますよ」
「何だよ、これこそが健康な男の反応だろっ」
捜査ということを一瞬で忘れ、鳥グループのアイコンを夢中で眺めている佐々木に対し、柳田はまた大きな鎌を振り下ろしそうになっている。
「佐々木さん、捜査中ですよ。で、何か分かりましたか」
「そうだな、おそらくこの『鳥』ってのは可愛い子ちゃん達をイメージしたものだ。ピヨピヨちゅんちゅんした感じだろ♡」
佐々木は手を羽ばたかせ、鳥の物真似をしだした。
「マイナス500点です」
「ご、500⁉︎ い、一体何点満点なんだよ⁉︎」
「勿論、100点満点ですよ。佐々木さん、あなたは落第です」
「ま、待ってくれよ、お前さぁ、ちょっとはユーモアを理解してくれよ。全く面白みのない奴だなぁ」
「事件の解決にユーモアは不用です。佐々木さん、僕たちは殺人事件を追う刑事なんですよ」
「……」
柳田の正論に、佐々木はミジンコのように小さく縮こまった。
「このグループの写真を見て、何かお気づきになりましたか」
「何かって、皆んな超可愛い子ちゃんってことくらいしか……。あ、そっか、モデルの卵なんじゃねぇか? だから鳥なんだよ」
鳥と卵はワンセット。してやったりの表情をしている佐々木に、柳田は早速喝を入れた。
「佐々木さんの言論は、全て先入観によるものです。きちんと調査をしないうちから、勝手に答えを導こうとしてはいけません。まずは色々な角度から物事を見て、気になる点を吸い出すんです。何度目でしょうか、このセリフ」
「……お、おぅ」
「もう一度よく見てください」
佐々木はミジンコ状態で、柳田の指示に従った。しかし、皆こぞって美人だという点にしか目がいかない。
「……時間切れですが」
「そ、そんなぁ柳田ぁ」
佐々木はいつもながら、眉を八の字にして縋ろうとする。
「あのですね、事件の解決には正確さと共にスピードも必要なんです。良いですか佐々木さん、このグループは皆、制服を着用してらっしゃいます」
柳田はメンバーのアイコンを指差した。
「お、な〜るほど。化粧の具合からみて中学生じゃなさそうだな。ってことは女子高生だぜ♡ ならよ、モデルの卵ってのも案外的を射てるんじゃねぇか? すっげぇ可愛いし、なかなかいないだろ、ここまでの子」
佐々木は鼻を膨らませると、ふふんと鼻息を吐き出した。
「まぁ、どこまでが加工か分かりませんが」
「ったくお前ってやつはよぉ」
「現実主義なもので。では早速、詳しく調べ上げましょう」
「お〜〜♪」
「……」
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