第3話 現場にて
「フォトグラファーの金井良太かぁ」
所持品の中にあった名刺を手に、ガイシャの前でそう声を漏らしたのは佐々木だ。都内にあるそこそこ大きなスタジオで、金井は無惨な姿で発見された。
「おそらく、青酸カリ中毒です」
化学班の新入りである伊藤は、死斑が鮮紅色をしていることからその答えを導きだした。
「青酸カリ?」
「はい。佐々木さんならご存知だと思いますが、通常、紫斑は暗紫色になります。しかし、このご遺体は鮮紅色をしてらっしゃいます。つまり、そういうことです」
「えっと、あぁ、そうだなっ。ご苦労さん」
佐々木は何かをはぐらかすような笑みを浮かべると、手帳にペンを走らせた。
「佐々木さんなら既にご存知だと思いますが、ダイイングメッセージは『柴』です」
少し後ろ側から佐々木と伊藤のやりとりを眺めていた柳田が、早速、伊藤を真似た物言いで近づいてきた。柳田と佐々木のパワーバランスは、後輩ながら柳田の方が随分と上を行っている。
「何だよ柳田ぁ。そんなシケた顔で物真似すんじゃねぇよ」
「ふふ、佐々木さんは揶揄いがいがありますから」
「全く、性格の悪りぃ野郎だぜ。サイコパス刑事なんて犯罪者より怖いだろっ。もっとクリーンな刑事になれよなっ」
「はいはい」
「ったくよぉ」
いつもの調子で会話を繰り広げる中、佐々木はさっそくダイイングメッセージに目を落とした。
「柴かぁ。とりあえず仲間内に『柴』のつく野郎がいないか調べるところからだよな」
「そうですね。今回も加点を目指して頑張りましょう」
柳田はトレードマークの三白眼を静かに光らせながら、右側の口角を少しばかり上げた。
「やめてくれよぉ、その笑い方。死神にしか見えねぇんだよ」
「早速減点ですか」
「ひぇっ、て、撤回する‼︎‼︎」
「仕方ありませんね。僕にも慈悲の心はありますので」
命拾いした佐々木は変な汗をかきながらも、情報収集に向かった。
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