第1話日常
いつも通りカーテンから差し込む朝日でイリスは目を覚ました。うとうとしている体で顔を洗い、朝食を済ませる。寝室に戻り服を着替え、髪を整える(ショートヘアなのであまり髪をいじることはないが、横髪が伸びているのでそれを三つ編みにする)そうやって朝の支度をしているともぞもぞと隣のベットが動く。
「ローリエ朝だよ」
「うぅん…あとちょっと…」
「二度寝しようとするな!」
「うぎゃ!?」
いつまでも起きそうにないので勢いよく布団を剥ぐ。せっかくのキレイな翡翠の髪もボサボサだ。そして、ようやく起きて支度を始める。
「今日は都にいかなきゃなんだから早くしてよね」
「分かってるけど、やっぱり憂鬱。やる気でないな…」
そう文句を言いながらもパンをくわえて支度(いつものように三つ編みを輪にして結んで)している。イリスも憂鬱という気持ちは賛成だ。都に行けば周りから浴びせられる嫌な目線は逃れられない。
それは、彼女たちが“魔女”だからである。
魔女は昔から厄災をもたらす、悪魔と契約していると言われているが、実際そんな事は何一つしていない。しかし、そんな汚名は拭えぬまま理不尽な差別は人々に根付き今に至る。また、魔女の血筋の者は都の人間とは髪や目の色が違うので、都へ行くにも顔を隠す必要がある。食料や仕事としている薬作りに必要な物を得るため月に一度は行かなければならないのに迷惑な話だ。おまけに、都までの道程も苦労する。魔女の村はそれぞれ都から離れた山にある。魔女が居る山を通ろうとする馬車は無く、険しい道程を歩いていかなければならない。考えるだけで行く気が失せてきた…。
「イリス準備できたよー」
「分かった。今行く」
心と共に重い足を動かし、二人で家を出る。
魔女の村は東西南北それぞれ4つあり、私たちの村はその中の北である。村人はそこまで多くないが、お互いに支え合い分け隔てなく接している。私やローリエなど幼くして両親を亡くしている者たちからしたら感謝してもしきれない。
「おーい!イリス、ローリエ!都に行くんでしょ?これあげる」
そう言って少しの水とパンを持ってきてくれた。村長さんだ。
「ありがとう村長さん」
「あんた達みたいなのはもっと大人に頼ってもいいんだよ?」
「じゃあ、あたしたちの代わりに都に…」
「ちょっとローリエ!何いってんの!?」
「冗談だからそんな怒んないでよ〜」
村長さんの背中に隠れながら困り顔でこちらを見る。しばらく互いにガミガミ言い合っているとほかの村人達も集まってきた。
「都に行くって聞いたよ。何かお土産買ってきてよ」
「帰ってきたら、美味しいご飯用意しとくね」
「気をつけていけよ」
そんな言葉をもらいながら村から都へ繋がる山道に出る。憂鬱な気持ちもすっかり忘れていた。
「イリス、これ美味しそうじゃない?」
「何これ高っ!」
都のとある市場で必要なものはだいたい買ったのでそろそろ帰ろうとしていた時、ローリエが物欲しそうに巨大な果物を見つめていた。
「お嬢ちゃんお目が高いね!一つどうだい?」
「くださ―」
「いりません。ローリエ帰るよ」
「そんなぁ」
彼女の服を引っ張りつつ強制的に帰路につく。全く、魔女だとバレたらどうするんだ。
「ケチ、たまにはいいじゃん」
背中をポコポコ叩かれる。そんかことしても買わないし。あの値段は買えない。
「そんな余裕家にはないでしょ」
そう言うと、流石に反論できずローリエは黙り込んだ。だがすぐに「なら裏道で帰ろう」と言い出した。
「裏道のほうが家に近いでしょ。一つくらいお願い聞いてよ!」
ムスッとした顔でこちらを見つめる。
”裏道“か…。私達の家に直接繋がる道だが、草・木・虫が多い上ちゃんと整備されていないので危うい。しかも今日の様に荷物で手が塞がっている時にはあまり行きたくない。
ローリエのお願いを聞いてあげたくはあるが、リスクも考えると…。
「ねぇイリスあれ」
「えっ」
お互いの目に映ったのは、白いマントに腰には剣を携えた集団。
「今日は裏道で帰ろう。なるべくゆっくり」
「うん」
心配そう言な顔をしながらも頷く。
何もないことを心から願い、二人してフードを深く被って息を潜め帰路についた。
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