【レージside】
ヤバイ。
言い出しておいて、10分の遅刻だ。
何となくダラダラと過ごしていて、ふと思い立った。
『明日は買い物でも行くか』
するとカスミはあからさまに驚いた。
確かに俺から誘ったりすることは滅多にない。
だけど、ここまで心底驚かれると面白くなく。
目を丸くしているカスミにイライラして来て。
『もう行かない』
吐き捨てるように言った俺に、カスミが縋り付くように懇願して来て今に至る。
――まあ、いいか。
さして謝ることじゃないだろう。
俺は腕時計から顔を上げて
――そして……
ハッと息を飲み込んだ。
待ち合わせ場所は、スクランブル交差点を挟んだ向こう側。
そこにはカスミが居るのが遠目でも判る。
でもそこに居たのはカスミ一人じゃなかった。
スーツ姿の、見るからに怪しい男に詰め寄られている。
雑踏の合間から見え隠れするその光景に、焦燥は募るばかりだ。
――早く替われ!
そう急かしたところで、信号が青に替わる筈もなくて。
赤色が点滅する。
それすら遅く感じてもどかしい。
青になった瞬間、俺は人混みを掻き分けるようにして駆け出していた。
進め
進め
そう俺の背を押すのは、耳馴染みのあの唄。
通りゃんせ
通りゃんせ
ここはどこの
細道じゃ
天神さまの
細道じゃ
ちっと通して
下しゃんせ
御用のないもの
通しゃせぬ
この子の七つの
お祝いに
お札を納めに
参ります
行きはよいよい……
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