晩餐
蒼葉 明
晩餐【短編】
家族で晩ご飯を食べていた。
私が食べ始めたたまご焼きを見て、母が言った。
「端から食べてよ。汚い箸であちこち触らないで」
私は端からたまご焼きを食べた。他のたまご焼きに触れないよう、少し移動させてから箸でつまんだ。
「痩せようとか思わないの? 腹やば」
横にいた妹が言った。
自分でも太っているとは思っていた。それでも痩せられなかった。
昔から残り物を食べれば喜んでもらえると思っていた。自分の過ちに気づいたのはここ数年のことだった。
テレビから聞こえる笑い声に少しだけ耳を傾けた。
ふと、テレビの横にある写真を見た。それは家族でハピネスランドに行った時の記念写真で、母、妹、祖母が映っていた。私の姿はなかった。他に家族はいない。
私は食べ終えた食器を渋々シンクに持っていった。母や妹の食器は持っていかなかった。
そのまま階段を上がって自分の部屋に籠った。
吐き出すような嗚咽と泣き声を、口に当てた毛布で相殺した。しばらくすると鼻水が止まらなくなったので、何回もティッシュを出しては鼻をかんだ。
私は机へと歩いた。この机は小学校に入学する時に買ってもらった机だ。
引き出しを開けて、手紙を取り出した。
「サンタさんより」という書き出しから始まり、頑張っているのをいつも見ているよと書いてあった。当時は知らなかった。こんな近くにいたのなら、それはさぞよく見れることだろう。
私はその手紙を持ったまま、拳を机に振り下ろした。
そして握力を強めて手紙をキツく握った。しかしそれもすぐ諦めた。
手紙を広げてもう一度読んだ。一瞬ゴミ箱を見て、そして元の引き出しの中に戻した。
下の階からは二人が笑う声が聞こえていた。
晩餐 蒼葉 明 @akari_aoba
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