第7話 ブレーメン
「風が気持ちいい」
ネオに跨って気持ちよさそうにしてるお母さん。僕は荷車の後ろからローに乗ってついて行く。野菜がどっさり乗っていてかなり重そうだ。だけど、ネオはまったく重さを感じさせてない。
「ネオもいい子ね」
「ヒヒ~ン」
ネオを褒めてくれるお母さん。彼も嬉しそうでよかった。
「やっぱり同じ女性だからかな。心が通い合ってるのよね~」
あ、彼女だったみたい。僕としたことが、だから前世でモテないんだよな~。
「コッコッコ!」
「ん? どうしたのメンマ?」
メンマが背中を突いてくる。振り向くと肩に乗ってくる。頬をスリスリしてきて可愛らしい。
「にゃ~にゃ~!」
「え!? 猫? ああ!? それで肩に乗って来たのか」
メンマを狙ってローに乗って来た黒い猫。もしかして、メンマが傷ついていたのはこの子のせいか? つけてきたんだな。
「ダメだよ! この子は家族なんだからね!」
「なう……」
「この子は言うこと聞かないな……。何が違うんだろう?」
猫は言うことを聞く様子がない。メンマを真ん丸の目で狙ってる。どうやったら調教スキルが反映されるんだろう?
「ニャニャニャニャ!」
「うわっ!? ちょっと!」
メンマを狙って襲い掛かってくる猫。僕はたまらずローから落ちる。しりもちをつきそうになった時、メンマが肩を持って羽根をバタバタさせてくれた。
普通の鶏は飛べないけど、調教スキルの影響を受けていると、メンマは飛べそうだな。
「ニャ~!」
「こら! ダメでしょ!」
「フ~!」
注意しても威嚇してくる猫。メンマを襲いたくて襲いたくて仕方がないといった様子だ。ロー達は最初からいい子達だった。この子は僕の近くに居ても白い線は見えないな。何が違うんだろう。
「その猫ちゃんお腹空いてるのかしら?」
「うん、たぶんそうだよ。仕方ないご飯をあげようか」
お母さんがネオから下りて心配してる。
干し肉を取り出して手渡すと警戒しながらも食べてくれる。
「ネオとローは草でいいわね。メンマちゃんはトウモロコシね」
「うん。……ネオとローとメンマ。あ!? そうか!」
僕はみんなの共通点を思い出す。そうだよ! 名前だ!
「君は今日からノラコだ!」
「ニャ?」
美味しそうに干し肉を食べる猫に名づけをする。すると白い線がノラコに引っ付く。
「やっぱりそうだ!」
「なにがそうなの?」
お母さんには見えていない白い線に、僕は興奮して声を上げる。
調教スキルは名付けで紐づけできるんだ! ということはクロウとリコにもついてしまったってことか。僕がつけたわけでもないのについてしまうんだな。
少し気を付けないといけないな。たぶんだけど、僕が名前を呼んだら紐づけしてしまうんだろう。勝手についてきたりしたら大変だ。
「ノラコ。襲っちゃダメだよ」
「ニャ~……」
ノラコは納得したように声を上げると荷車に乗って丸くなって眠りについた。現金な反応が猫すぎて調教スキルが聞いているのかわからないな。
しかし……こうやってみるとブレーメンの音楽隊みたいだ。馬はいなかったけど、ロバとネコと鶏がそろってる。
あとは犬でそろう。期待してしまうな~。
「お! 来た来た。アルフ君」
「あ! エディさん!」
クレソンの町の城門にやって来た。門の前でエディさんが迎えてくれる。
彼はお母さんと挨拶を交わして市場へと案内してくれる。
「この子がバナーの野菜を売ってくれる子だよ。名前はクレア」
「この間はどうもクレアだよ。イケメンのお兄さんじゃないんだね」
「え?」
元気に挨拶してくれるお姉さんを紹介してくれるエディさん。この人、エディさんのいる建物を教えてくれた人だ。
お父さんのことをイケメンって言ってる。お母さんがジト目で僕を見つめてきたので説明すると、納得したように頷いてくれた。どうにか夫婦喧嘩は免れました。
「結構新鮮な野菜だね。任せてよ。早速並べていきますね」
「ああ、頼んだよ。ちょっと軽い感じはすると思うけど、彼女はやり手だよ。あの若さで市場のすべての売り物を把握してるんだ。スキルの【記憶】を持っている子でね。指定した物事を覚えていられるんだ」
クレアさんはかなり優秀な人みたい。15歳くらいの少女なのに優秀なんて凄いな。僕と同じだから親近感湧くな~。
「アルフ君の能力のことは秘匿しておくから安心してね。親御さんにも言っていないんだろ?」
「あ、はい。僕もこの間エディさんに言われて知ったんで」
「ああ、そうだったね。じゃあ僕から伝えた方がいいかな?」
「いえ。大丈夫です。自分で言います」
エディさんは心配してくれて小声で話してくれる。
クレアさんとお母さんが二人で市場に野菜を並べて行ってる。
メンマは仲良くなったノラコの背中に乗って周りを警戒してくれてる。クレソンの町はあんまり治安が良くないからな~。
「お? なんだなんだ。可愛い女が増えてるじゃねえか」
治安が良くないと思ったら、坊主頭の男が仲間を引き連れて集まって来た。
お母さんとクレアさんをいやらしい目で見つめてきてる。
「ここは市場だよ。そういうことはやめてくれるかい?」
エディさんが間に入って仲裁してくれる。それでも男達はニヤニヤしてお母さんを見つめてくる。
「まったく……。グレイダ~! こいつらの股の下にあるものを食っちまえ」
「グルルルル」
エディさんが声を上げる。すると建物と建物の間の路地から唸り声が聞こえてくる。
姿を現したのはコリー犬。とても鋭い目つきで男達を睨みつける。牙から垂れ落ちる涎は肉を欲してる。
「ひ、ひぃ!? 犬怖い!」
「先に逃げるのかよ!」
坊主頭の男が我先に逃げると仲間達も逃走する。コリー犬、グレイダーは恐ろしい速度で追いかけて一人の足に食らいつく。怪我をさせない程度にくらいついてる。優しくていい子だな。
「いい子ですね」
「はは、ありがとう。君ほどじゃないけど、教えてはいるよ。でも、鶏や猫まで引き連れてくるとはね。君には色々驚かされる」
グレイダーを褒めると嬉しそうにはにかむエディさん。苦笑いで答えると彼はノラコを撫でてくれる。
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