第6話 魔法

「ふあ~。おはようロー、ネオ。お父さん何やってるの?」


 メンマを助けて次の日。朝起きて二人に挨拶をすると、お父さんが木材で何かしているのが見えた。

 声をかけるとお父さんは木材を見せてニカッと笑う。


「いつまでも屋根のない所にローとネオを置いておけないだろ。小屋を作るんだよ」


 先に帰っていたお父さんは木材を集めていたんだ。先々を考えるなんてできる男だな~。

 それに引き換え僕はダメダメだ。ただただ連れてきて、お母さんに怒られる。

 メンマも連れてきた時はほんとに驚いてたもんな。


「コケ~!」


「あらあら。卵を産んでるわ! 初日で? 怪我は大丈夫なの?」


 メンマは家の中で卵を産んだ。ストレスがあると生まないような事を聞いたことがあるが、とりあえずは大丈夫みたいだ。

 怪我もすぐに治ったな。これも調教スキルの効果か……凄いチートだ。日に日に強くなっているような気もするし。


「白い線も増えてる」


 バナーさんの農場で見えた白い線。意識すると見えるようになった。

 通常は僕に繋がる白い線。意識して対象を一人にするとその子の力が強くなる。

 試しにローに5本の白い線を集中させる。すると彼は屋根の上に飛べるほどの跳躍を見せてくれる。

 あまりにも異常な光景にお父さんは驚いてるけど、ロバはたまにおかしな行動をする。そういう常識のおかげで何とかなった。僕が知ってるのはヤギだけどね。


「ロー、ネオ、メンマ、クロウとリコか……」


 この白い線は今までかかわった動物達の線だ。もっと増やせば強力になるのか。はたまたこれ以上強くならないのか。試してみないとわからないな。


「お勉強の時間よ。最近サボってたでしょ」


「あ。はい」


 色々考えているとお母さんが魔法書を持ってくる。

 魔法使いにしたがっているお母さんは僕が暇そうにしてるとすぐに持ってくるんだ。僕も魔法は使ってみたいからやりたいのは山々なんだけど、難しいんだよね。


「自分の得意な属性を見つけるの。そして、それを練り上げていく。私は水だからこの通り」


 お母さんは簡単に水を指から垂らす。魔法使いの彼女にしてみれば当たり前の力なのだろう。

 こればかりは前世の記憶を持っているとできない。魔法なんてない世界から来たから常識が出来ないと言ってくるんだ。


「ん~。アルフは頭がいいのに。なんでできないのかしら」


「ははは、アルフは騎士になるんだ。魔法なんていらないさ」


「あら! 騎士になっても魔法が使えた方が便利よ。水を出せたら荷物が少なくて済むしね」


 小屋を作っていたお父さんが休憩で戻ってくる。彼の言葉をお母さんが否定して話す。

 どちらにしても便利だ。僕も覚えたいよ。……あ! 白い線だ!


「ん」


 僕は白い線を思い出してやってみる。そう、僕に集中している白い線。動物たちの力を僕に使うことが出来るかもしれない。

 この力は最近気づいた力、できるはずだ。目を瞑って自分に集中。なんだか筋肉が盛り上がってくるような気がする。いや、気のせいじゃない。見た目は変わらないけど、体が軽くなってる!


「で、でた~! 雷だ!?」


「うお!?」


 体が軽くなったのを感じてすぐに魔法をやってみた。すると雷が指からバチバチと放たれる。

 お父さんの足元に落ちた小さな電撃。彼は驚いて僕を見つめてくる。


「な、なんだか凄いなアルフは。動物に愛されて魔法にも愛されるか?」


「ふふふ、私達も愛してるでしょ?」


「ああ、愛してる」


 大喜びのお父さんにお母さんが抱き着く。そのまま嬉しそうに唇を重ねる二人。仲睦まじい二人を見ているのは恥ずかしい。この様子だよ、妹か弟の誕生も遅くないだろうな。


「えっと、雷の魔法は相手をしびれさせて。って知ってるよ。現代人だもん」


 魔法書を続けて読んでいると属性についての説明が書かれていた。

 電撃の危険性などがあったけれど、あまり知られていない感じだ。雷は珍しいと明記されてる。調教スキルも珍しいだろうし、僕はチートだったんだな。もっと早く気づいていれば……。


「あ。あの狼さんも」


 川に落ちた原因の狼。あの子も友達になれたかもしれない。そう思うと残念だ。お父さんが倒してしまったから。

 革にして庭に干されていたっけ。何かに使うのだろうか。


「お~いランド。アルフ! いるか?」


 狼の革を見ていると声が聞こえてくる。この声はバナーさんかな?

 昨日の今日でどうしたんだろう?


「どうしたんですかバナーさん?」


「おお。市場と話がついたからな。早速野菜を売るんだよ」


「いいですね。頑張ってください」


「え? 運んでほしいんだが……」


「「え?」」


 バナーさんは不思議なことを言ってくる。市場に野菜を届けるのは僕らの仕事らしい。お父さんと首を傾げていると、バナーさんは野菜の入ったカゴが、どっさりと詰まれた荷車を指さす。


「うちは牛ばかりで馬はいねえ。頼めると思ってたんだけどな」


 しょんぼりするバナーさん。牛でも町には行けるけど時間がかかる。たぶん一日仕事になっちゃうな。

 そうすると彼の場合は農場に奥さんだけになる。どうにも回らなくなるね。


「あ~、俺は小屋を作らないといけないしな。アルフ一人じゃ人攫いに会うかもしれんから」


「そ、そうか~」


 お父さんは断ろうと呟く。バナーさんも諦めようとしてる。僕は行けるけど、人攫いは怖いな。


「では私が一肌脱ぎましょう!」


 お母さんがそう言って家から出てくる。そういえば、昨日の夜。お母さんも町に行きたかったって言ってたっけ。スカートを脱ぎ捨ててズボンをはくお母さん。

 すぐにネオにまたがって荷車と連結させる。行く気満々のお母さんをお父さんが止められるはずもない。

 バナーさんとお父さんが顔を見合って笑うと僕はローにまたがった。メンマもローのお尻に乗ってる。いつの間に。

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