第3話 恥の解像度
カズのSNSアカウントは、ある種の研究対象として非常に優秀だった。
彼がどれほど薄っぺらいプライドを積み上げ、どれほど無様なテンプレで女性の母性を釣り上げようとしているか。そのプロセスが、まるで陳列棚に並べられた見本品のように露わになっている。
彼は律儀だった。男の投稿には一切反応しないくせに、女性の投稿と見るや否や、光の速さで「お疲れ様」「元気?」とリプライという名の撒き餌を投げ込む。
その必死な姿には、もはや憐れみすら覚える。
ある夜、私は彼が別の女性に向けたリプライのログを見つけた。
『最近本当に辛いことが多くてさ。……実は、身体の相性の問題なんだけど、俺、射精ができなくて。慰謝料のプレッシャーもあるし、どうしても自分を殺して生きちゃうんだよね』
私は画面の前で、思わずコーヒーを吹き出しそうになった。
おいおい。それは、数ヶ月前に私に送ってきたセリフと一言一句違わないじゃないか。
その「射精できない」という言い訳は、彼の人生において何度目の再利用だ?
前の獲物にも、その前の女にも、同じテンプレを使い回して「可哀想な自分」という名の安っぽい酒を飲ませていたのか。
コイツ、アップデートすらしないのか。
彼は自分の人生を更新することから逃げ続けているだけじゃなく、他者を騙すためのスクリプトすら何年も前の使い回しで済ませている。
まるで、壊れて電源が入らなくなった旧式のゲーム機を必死にボタン連打して動かそうとしている子供を見ている気分。
そのリプライの裏側で、彼がどんな顔をしているか手に取るように分かる。
「俺って、なんて切なくて、繊細な男なんだろう」
と、鏡の中の自分に陶酔しているのだろう。
恥ずかしくないのか。
私には、彼が画面の向こうで全裸のまま踊り狂っている姿しか見えない。
誰からも見られていないと信じ込み、自分だけが華麗なステップを踏んでいると思い込んでいる。世界で一番恥ずかしいピエロ。
私は彼がせっせとリプライを投げ込んでいるコメント欄を、ただ無言で眺めた。
彼がどれだけ「繊細な心」をアピールしようと、その中身が「再利用品」であることは、観測者である私には筒抜けだ。
そろそろ、その古いOSを初期化してやるべき時が来たのかもしれない。
この滑稽なダンスの結末を、彼自身に突きつけてやる時間が。
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