『戦闘力ゼロの【プランター】スキルだけど、ダンジョンの最凶毒沼にネギ植えたら最高級の聖域が爆誕した 〜追放された園芸職人、絶滅種のモフモフ魔獣たちに囲まれて無自覚に神の野菜を育てる〜』
第6話 神のトウモロコシと、元ギルドの無謀な再訪
第6話 神のトウモロコシと、元ギルドの無謀な再訪
「ポテト、そこ掘るのちょっと手伝ってくれ」
「ワン、ワン、ワン!」
新入りの三つ首ワンコ、ポテト(元・冥府ケルベロス)が、三つの首を器用に動かしてふかふかの土を掘り返している。
すっかり聖なる炎の神獣へと浄化されたポテトの毛並みは、まるで陽だまりのように温かく、撫でるだけで指先から至福の癒やしが染み込んできた。
「よし、ありがとな。次はこれだ――『トウモロコシの種』!」
夏野菜の王様、トウモロコシ。
これも俺のリュックの奥に眠っていた、園芸店時代の秘蔵の種だ。
【プランター】の魔力で拡張された神聖な土壌に種を蒔き、仕上げにクリスタルの聖水をたっぷりと注ぎ込む。
『ピキィィィィィィン!』
お約束の心地よい空間のひび割れ音。
一瞬にして太い茎がぐんぐんと天を目指して伸び上がり、人間の背丈を軽く超える立派な緑の柱となった。
そこへ実ったのは、一粒一粒が本物のイエローダイヤのように眩しく発光する、規格外の特大トウモロコシだ。
驚くべきことに、放たれる黄金の光が菜園全体をまるで昼間のように明るく照らし出している。
「うわあ、綺麗だな……よし、これだけ立派なら、やっぱり『焼きトウモロコシ』の一択だ!」
俺はすぐさま魔導コンロに網を乗せ、皮を剥いた黄金トウモロコシをセットした。
熱が通るにつれて、パチパチ、とはじけるような音が響き、一粒一粒の甘みが極限まで凝縮されていく。仕上げに、すっかりお馴染みとなった特製醤油を刷毛でたっぷりと塗る。
ジューーーーーッ!!!
香ばしい焦がし醤油の匂いと、トウモロコシの圧倒的に濃厚な甘い香りが、クワの木の生け垣を越えてダンジョンの奥深くまで爆発的に広がっていった。
「ガ、ガルルン……(この香りは反則なの……よだれが止まらないの……)」
「きゅきゅーっ!(お腹の虫がオーケストラみたいに鳴ってるのー!)」
「ワン! ワン! ワン!(ボクも、ボクも食べたいの!)」
フェンリル、バニー、そしてポテトが、完全に魂を奪われたような顔で網を見つめている。
焼き上がったトウモロコシを等分して、みんなで豪快にガブリと齧りついた。
シャキッ、じゅわああああああっ!
「っ!?!? う、美味すぎるっ……!」
口の中で、弾けた粒から「飲むコンポタージュ」とでも言うべき、とんでもなく濃厚な甘みの果汁が溢れ出してきた。醤油の香ばしさと合わさって、もう手が止まらない。
『個体名フェンリル、ヴォーパルバニー、ポテトが【太陽の
「ふぅ、美味かった! 最高のベジタブルブレイクだな」
みんなで口の周りを醤油だらけにして満足感に浸っている、まさにその時。
ドゴォォォォォンッ!!!
突然、菜園の入り口――クワの木の生け垣のゲート付近で、大きな爆発音が響いた。
「ん? なんだ? また誰か迷い込んできたのか?」
「……主、どうやら今度の人間どもは、少し様子が違うの。あからさまな殺意と、不遜な魔力を感じるの」
フェンリルが、口元の醤油をペロリと舐めながら、冷徹な神獣の瞳でゲートの向こうを睨みつけた。
◇
生け垣のゲートの前には、十数人の重装備の集団が立っていた。
その中心にいるのは、金色のフルプレートアーマーをピカピカに輝かせた男――俺を無能扱いして追放した、天穿ギルドの国内支部長その人だった。
「ハァ、ハァ……! なんという神聖な魔力の奔流だ……! 前回の調査隊の報告は本当だったようだな!」
支部長は、生け垣の隙間から漏れ出る黄金の光と、暴力的に美味そうな焦がし醤油の匂いに、狂ったように目を血走らせていた。
彼の背後には、かつて俺を「ゴミスキル」と罵った元仲間たちの姿もある。
「支部長、あの無能のハルトが、このデスゾーンを最高級のパワースポットに変えたというのは本当なんです。あいつのスキルには、俺たちが気づかなかった隠された価値があったんですよ!」
「フン、所詮は戦闘力ゼロの園芸職人だ。脅せばすぐに泣いて従う。この『神の菜園』と『未知の最高級食材』は、すべて我が天穿ギルドが接収し、世界の富と名声を我が物にするのだ!」
支部長は傲然と笑い、腰の魔導大剣を抜いた。
「おい、ハルト! 中にいるのは分かっているぞ! お前のような無能には過ぎたる領域だ、今すぐここを明け渡し、我がギルドの奴隷として一生野菜を育てるがいい! さもなくば――」
彼らが無謀にも、クワの木のゲートへ一歩足を踏み入れた、その瞬間。
「……さもなくば、何だって?」
生け垣の枝がサラサラと左右に開き、俺がひょっこりと姿を現した。
俺の膝にはバニー、右にはフェンリル、そして左には、三つの首を獰猛に光らせたポテトが控えている。
「ハ、ハルト……!? お前、その背後にいるのは……ッ!?」
支部長の言葉が、恐怖で喉に張り付いた。
前回の報告で聞いてはいたが、実際に目にするSSS級魔獣フェンリルのプレッシャーは桁違いだった。しかも、その隣には、図鑑で見た『冥府ケルベロス』が、なぜか見たこともない神聖なオーラをまとって三つの首でこちらを凝視している。
「あ、元支部長。お久しぶりです。ダンジョンで野菜売る気か?って言われましたけど、見ての通り、めちゃくちゃ売れそうなのが育ってますよ。あ、これ、ウチの可愛いペットたちです」
俺がのんきにポテトの頭を撫でると、ポテトは「ガルン♪」と嬉しそうに尾を振る。
だが、その三つの口からは、触れるものすべてを消滅させる『神聖結界の炎』がチロチロと漏れ出ていた。
「くっ、調子に乗るなよ無能がァ! どんな魔獣を従えようと、お前自身の戦闘力はゼロだ! 囲め、力ずくで奪い取るぞ!」
支部長が狂ったように叫び、元仲間たちが一斉に武器を構えて突撃してこようとした。
――だが、彼らが次のステップを踏むことはなかった。
「きゅきゅー(主の邪魔をする悪い虫は、お片付けなの)」
俺の肩の上で、バニーが短い前足を『パチン』と小気味よく鳴らした。
その瞬間、突撃しようとした元仲間たち、そして支部長の足元の空間が『ぐにゃり』と歪んだ。
「な、何だ、身体が動か――」
「空間が……削れて――!?」
バニーの放った【空間跳躍(神位)】。それは敵を攻撃するのではなく、敵が身にまとっていた「最高級の装備」や「武器」だけを正確に、別空間へと転送する神技だった。
一瞬にして、金ピカの鎧も、魔導大剣も、すべての装備が消失。
支部長をはじめとする天穿ギルドの精鋭たちは、ダンジョンの深層で、一瞬にして全員『パンツ一丁(下着姿)』にされてしまったのだ。
「ぶふっ……!!」
思わず吹き出しそうになった。
「な、なな、何が起きた……!? 俺の特級鎧が……武器が……!?」
「冷え、冷える……! 深層の空気が、肌に痛い……!」
パンツ一丁でブルブルと震え、あまりの恥ずかしさと恐怖に顔を真っ赤にするギルドの面々。
「いやぁ、ダンジョンの深層でそんな格好をしてたら、風邪を引いちゃいますよ? ほら、ポテト、お見送りしてあげて」
「ワン!!」
ポテトが一つ吼えると、生け垣のクワの木から、今度は『超巨大な扇風機』のような突風(神聖魔術の暴風)が吹き荒れた。
「ギャァァァァァァァーーーーッ!!!(パンツがズレるーーーッ!!)」
支部長たちは哀れな悲鳴を上げながら、パンツ一丁のまま、暴風によってダンジョンの遥か彼方(安全圏の入り口)へと、文字通りゴミのように吹き飛ばされていったのだった。
「ふぅ、すっきりした。やっぱり、悪意を持った人が来ると菜園の空気が悪くなるな」
俺が苦笑いしていると、フェンリルが呆れたように鼻を鳴らした。
「主、あの程度の羽虫、我らが一噛みすれば一瞬だったのに、生ぬるいの」
「きゅきゅー(でも、おパンツ一丁で飛ばされる方が、ある意味一生のトラウマなのー!)」
こうして、俺を追放した天穿ギルドのトップは、全裸一歩手前の姿でダンジョン入り口に激突し、他の冒険者たちに大目撃されてギルドの権威が完全に失墜することになるのだが――。
「よし、お騒がせな人たちもいなくなったし、次は秋に向けてサツマイモの準備でも始めようか!」
「ガルルン!」
「きゅきゅー!」
「ワン、ワン、ワン!」
誰にも邪魔されない極上の聖域で、園芸職人ハルトと最強のモフモフたちの、自覚なし無双スローライフはどこまでも平和に続いていく。
―――――――――――――――――――
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
「面白かった!」「続きが読みたい!」と思っていただけましたら、
ページ下部にある【★】での応援や、作品フォローをいただけると嬉しいです!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます