ミアの不満

次の日、各国営学校の制服を着た生徒たちが押し込まれた送迎バスの中で、あと数週間でマジックス・ミラクルをやめるマイロがうれしそうに話していた。

「もうすぐ地獄からの解放だー!」

他の子どもたちが次々と声を上げる。

「いいなぁ」

「せっかくやめるのにまだやるの?」

マイロはうれしそうに答えた。

「うん、できる子はどんどん先に習わせてもらえる場所!」

職員たちにはナットから「マイロの発言が他の生徒たちのモチベーションを下げている。『やめられてうれしい』と言い始めたら話題をそらせるように」とスタッフ専用のチャットで送信されている。

「新しい場所は一対一とか少人数?」

運転は全自動のため、助手席に座って子どもたちの監督に徹するレイは一応やめさせようと試みた。あくまで表面上は。

「そう!人も少なかったり一人だから超快適」

マイロの笑顔はもっと大きくなる。

「それに魔法以外のことをあーだこーだ言われない」

「へぇ。自分もそんな感じで習ってた」

ずっとむすっとしていたミアが、話に入ってきた。

「なんか楽しそう。ぼくもやめたい」

そうだろうね。

心の中でレイは呟いた。


その日からミアは、ことあるごとに「ぼくやめるもん」「こんなとこ、やだ」と口にするようになった。ナットやフェーンは引き続き彼女の言動や態度を注意しつつ、「この間の羽根浮かしリレーの時楽しそうだったじゃない」「体験にきた子を優しく手伝ってあげたじゃない」と何かと成果をほめる。でもミアは相変わらず注意されるとむっつりと拗ねるし、ほめられても不機嫌そうに「うん…」「そうだね」としか言わなくなった。そしてついに、フェーン先生に廊下に立たされてしまった。

帰りのバスの中で、ミアは文句を言っていた。

「今日もすっごくつまんなかった」

できるだけミアの発言も別の方向に持っていくように、とチャットで通達があったが、レイはあえて無視していた。今乗っている生徒は彼女だけだ。

「先生みんなうるさい。ほめられてもなんかすっごいイヤ。魔法は好きだけど、マジックス・ミラクルは大嫌い」

そうだよね。ことあるごとに注意されて、ほめられる理由も見え透いて、楽しくもうれしくもないよね。レイはそう言いたかった。その代わりに、ちょっとした助け舟をだした。

「叱られの被害はマシにできるよ。先生らをほんの少しだけ満足させてあげたらいいだけだ」

「何それ?」

ミアはいぶかし気な目を向けた。

「注意されたことを見せかけだけ聞いてあげたらいい。本当はどう思ってるかなんて、言わなかったら大人でもわからない」

ミアは相変わらず疑り深くレイを見ている。

「よかったら手伝ってあげるよ」

「好きにすれば」

レイは勝手にそれをyesと取った。

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