日常
僕は今、夢を見ている。
そうハッキリと認識できたのは、それが現実ではありえない光景だったからかもしれない。
母さんと妹と僕が、笑顔で食卓を囲んでいた。
昨日まではこれが現実だった。だから、これだけならありえない光景ではない。
ありえないのは、その食卓にあの
家族四人で夕食を食べるごく当たり前の何気ない日常の風景。
心の底から憎んでいる父親の姿があるにもかかわらず、僕の口からは思わず「いいな」と、
手を伸ばせば届きそうなのに、僕の体はピクリとも動かない。
口をパクパクと動かしても、あっちの世界に僕の声は届かなかった。
夢であっても構わない。僕にもその幸せを分けてほしい。
そう懇願する僕の耳元に、『行くな』という現実からの声が聞こえた。
ここはお前の住むべき世界じゃない。お前は不幸でなければならない、と。
わかったよ。そこまで言うならもう望まないよ。
僕はあったかもしれない日常の続きを見ながら、絶望の中、朝が来るのをただただじっと待っていた。
◆
目を覚ましたのは、朝の四時を少し過ぎた頃だった。
起きたら実は夢落ちでしたといった三流小説並みの展開を期待していたが、やっぱり現実は非情だ。
ネットカフェの薄暗い天井を見つめながら、僕は今日の予定について思案していた。
結局、昨日の夜はなかなか寝付くことができなかった。最終的に僕と妹は家から持ってきた睡眠薬を服用した。
最後に時計を見たのは、昨日の二十三時頃だったと記憶している。
隣で眠る妹は、今もなお寝息を立てている。額には冷や汗が浮かんでおり、時折苦しそうに
このまま、妹の心臓に包丁を突き立てて殺してしまった方が、僕と妹は楽になれるのだろうか。
寝起きの思考がまとまらない頭に、弱気な自分がろくでもない提案を持ちかけてくる。
『最後まで、私は生きてたって実感が欲しい』
と、そこで昨日の妹の言葉を思い出した。
僕が妹に対して、「痛いのと苦しいのどっちがいい?」と聞いた時の返答だった。
「わかったよ……」
僕は妹の頭を撫でた。彼女の長いまつげには大粒の涙が貯まっていた。
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