第4話 古典小テスト 


ついに、藤平薫子先生(ナンバーズ39・三田大学首席卒)が仕掛けた古典小テストは、以下の出題内容であった。

藤平先生は、熱く教壇で演説した。


全身全霊で某大公国の総帥かのような。



『畿内の秀才達よ、我がクエストに挑戦せよ。


起てよ、天才、秀才、そしてあまたの凡才達よ。


今こそ、青春の血潮を、古典にぶつけよ。』



出題範囲は『平家物語』の「敦盛の最期」より



平静京ハイエレガンススクール


月曜一限:国語小テスト


担当:藤平 薫子(ナンバーズ39)


範囲:『平家物語』~敦盛の最期~ (制限時間:15分)


【問題背景(システム・グリッド)】


次の文章は、一ノ谷の戦い(須磨)において、源氏方の武士・熊谷次郎直実が、平家方の若武者・平敦盛を組み伏せた場面である。

文章を読み、以下の問いに答えよ。


直実、あつうて(A)<u>おしへだてたる</u>波打ち際へ歩ませ寄せて、馬をば(B)<u>うち並べて</u>、むんずと組んで(C)<u>どうど</u>落ち、むちつけて(D)<u>組んで、抑へて</u>、首を斬らんとして兜を押し仰のけて見れば、年(E)<u>十六七ばかり</u>なるが、薄化粧して、かね(F)<u>黒ろ眼りたる</u>が、我が娘(G)<u>小次郎が齢</u>ほどにて、容顔まことに(H)<u>美麗なり</u>。直実、どこに(I)**<u>刃を立つべし</u>**とも覚えず。


【第一部:畿内共通テスト・パラダイム(基礎・構造ハック)】

問1(語句・解釈)

傍線部(A)「おしへだてたる」および(C)「どうど」の、この本文中における意味の組み合わせとして最も適当なものを、次の①~⑤から一つ選べ。

① (A)押し分けて進む (C)激しく

② (A)押し寄せてくる (C)どっと(笑うように)

③ (A)隔てられている (C)容赦なく

④ (A)押し分けて遮る (C)ドサリと(重々しく)

⑤ (A)遠く離れている (C)静かに


問2(文法・識別)

傍線部(F)「黒ろ眼りたる」の「たる」と、同じ文法的意味・用法を持つ「たる」を含むものを、次の①~⑤から一つ選べ。


① 満ち**<u>たる</u>月を見るに、昔の人の思ひ出されて。

② 官位高く、権勢あり<u>たる</u>人の、今は落ちぶれて。

③ 門の前に立ち<u>たる</u>武士、声を大にして名乗りをあぐ。

④ 雨の降り<u>たる</u>に、道は泥濘(ぬかるみ)となりぬ。

⑤ 摂政となり<u>たる</u>**藤原氏の栄華、目を見張るばかりなり。


【第二部:都の西北大学パラダイム(文学史・コンテクスト・ハック)】


問3(文学史・多重選択)


『平家物語』の成立、およびその享受に関する説明として不適当なものを、次の①~⑤から一つ選べ。


① 本書は、和漢混交文の傑作であり、盲目の琵琶法師が平曲として語り広めたことで、広く民衆にまで享受された。


② 本書の根底には、仏教的な「無常観」や、盛者必衰の理が流れており、冒頭の祇園精舎の鐘の声はその象徴である。


③ 敦盛が討たれたこの「須磨」の地は、平安時代中期の歌物語である『伊勢物語』の在原業平や、『源氏物語』光源氏の蟄居(流浪)の地としても文学史上に深く刻まれている。


④ 後世の能楽において、この場面を題材とした世阿弥作の二番目物(修羅能)『敦盛』が作られ、「人間五十年、下天のうちを比ぶれば……」の織田信長の舞でも有名となった。


⑤ 本書の諸本には、語り系の「覚一本」や、読み系の「延慶本」などがあるが、この世界線(平静京)においては、平家が勝利したため『平家勝利物語』として全39巻で再構成されている。


問4(読解・記述)


傍線部(I)「刃を立つべしとも覚えず」とあるが、熊谷直実がこのように葛藤した理由を、本文中の言葉(G)を考慮し、**「~から。」**という結びで33字以内で記述せよ。(※空欄・句読点を含む)


【第三部:三田大学パラダイム(インテリジェンス・論理ハック)】


問5(論理論証・適否判断)


次の【X】は、三田大学文学部国文学研究室が提示した、直実の行動に関する論理的分析である。


文中の空欄( ア )~( ウ )に入る言葉の組み合わせとして最も論理的整合性の高いものを、下の①~⑤から一つ選べ。


【X】直実が敦盛の首を斬ることに躊躇した背景には、単なる「外見の美麗さ」への惑溺ではなく、自らの息子である( ア )との年齢的シンクロニシティによる**「父性のバグ」**が生じている。


さらに、直実という「東国武士」の持つ泥臭い実利主義に対し、敦盛の放つ( イ )の美意識が、戦場という極限状態のコードを一時的に( ウ )したためであると考えられる。


① (ア)小次郎 (イ)西国平家 (ウ)ハック(無効化)

② (ア)小次郎 (イ)東国源氏 (ウ)調律(肯定)

③ (ア)与一 (イ)西国平家 (ウ)ハック(無効化)

④ (ア)小次郎 (イ)摂関藤原 (ウ)去勢(支配)

⑤ (ア)与一 (イ)東国源氏 (ウ)破壊(ノイズ)


藤平薫子からの採点基準(ロジック・グリッド)


「あら、解けたかしら? 去勢されたモブ生徒のAIなら、問1と問2の『共通テスト』の段階で脳波がショートしているわね。

詩織さん、あなたの『ジュピター(41番)』の知性なら、都の西北大学の文学史(問3)の罠は見抜けて当然よ。

零くん、あなたの『40番』の冷徹な数理で、我が三田大学の最高峰の論理(問5)をどうハックしたかしら?


……そして、最後列の那須くん。

問4の記述、制限時間は『33字』よ。あなたの西進模試の偏差値と同じ数値ね。


かつて一ノ谷(須磨)の海で散った我が祖先・平家のパッションを、あなたのその泥臭い裸眼でどう証明してみせるのか……楽しみにしているわ。

もし白紙だったら……分かっているわね? ネオ芦屋の補習教室ですわよ。


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