「無理しなくていいのだ」の先にある恐怖
- ★★★ Excellent!!!
『KJ-017』は、SNSやアルゴリズム、デジタル鑑識といった現代的な題材を使いながら、孤立や不安、日常にたまっていく疲れを浮かび上がらせているところが印象的でした。
「自分を大切にする」「無理しなくていい」といった自己啓発・メンタルケア系動画の言葉が、人の弱った心に入り込み、少しずつ不気味な方向へ変わっていく過程に強い怖さがあります。
また、久世とミナという対照的な二人の配役もよかったです。現場感覚を重視する久世と、SNSやOSINT、映像・音声解析に強いミナが並ぶことで、事件を一つの見方だけでなく、多面的かつ断片的に見せています。真相がはっきりしないまま、複数の記録や証言、ログが積み重なっていく構成にもリアリティがありました。全体として、現代的な情報環境の不気味さと、人間が昔から抱えている孤独や不安の怖さがうまく結びついた作品だと思います。
SNS怪談・テクノホラーでありつつ、ニューウェーブSF的な「内宇宙」としても読めるではないでしょうか。推薦アルゴリズムや通知、コメント欄が、人間の認知・言語・自由意志を侵食する異物として機能していますが、恐怖の核は、呪いの動画ではなく、日常化したテクノロジーによる主体性の再プログラムにあると感じます。
日常的な情報の中に、救済めいた気配や破滅の予兆が潜んでいるようなキナ臭さも魅力的でした。読後も、SNSで流れてくる何気ない言葉を少し疑って見てしまうような、印象に残るホラーです。
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