第6話「この村、狙われてる──そして俺は“戦う準備”を始める」

 それは、あまりにも分かりやすい異変だった。


「……多いな」


 村の入口付近。


 見慣れない連中が、数人――いや十人以上、うろついていた。


「冒険者……じゃない」


 セリスが低く呟く。


「ああ。あいつら、もっとタチ悪い」


 装備は整ってるが統一感がない。

 目つきも、どこか濁っている。


「……傭兵?」


「半分正解。残り半分は“ゴロツキ”だな」


 つまり――金で動く連中。



「来たか」


 俺たちに気づいたのか、一人の男が前に出てきた。


 他より装備がいい。

 多分、リーダー格だ。


「この村に用か?」


 俺が聞く。


「あるさ」


 男はニヤリと笑った。


「最近、この村が“妙に調子いい”って聞いてな」


 ああ、なるほど。


 広まるの早いな。


「で?」


「上からの命令だ。この村を“管理下”に置く」


 きたな。


 テンプレだが、ちゃんと来ると面白い。


「断ったら?」


「決まってるだろ」


 男の笑みが深くなる。


「力づくだ」



 周囲の村人たちがざわつく。


「そんな……」


「また奪われるのか……?」


 空気が一気に不安に傾く。


 だが――


「問題ない」


 俺はあっさり言った。


「……は?」


 男が眉をひそめる。


「この村は、もう奪わせない」


 静かに、だがはっきりと。


「はは、面白いこと言うじゃねぇか」


 男は笑う。


「お前一人でどうにかなると思ってんのか?」


「一人じゃない」


 俺は後ろを見る。


 セリス。


 リゼ。


「十分だ」



「やれ」


 男の一言で、数人が前に出る。


 武器を構え、こちらへ向かってくる。


「セリス」


「任せて」


 一歩前へ。


 だが――


「待て」


 俺は手で制した。


「……?」


「今回は、“いつも通り”じゃない」


 セリスが首をかしげる。


「どういう意味だ?」


「試すんだよ」


 俺は村の方を顎で指す。


「この村の“可能性”をな」



「リゼ」


「……うん」


 リゼが前に出る。


 まだ少し不安そうな顔。


「昨日の水路、覚えてるか?」


「……覚えてる」


「応用だ」


 俺は地面を指差す。


「この辺一帯、地形ごと“使え”」


「……地形?」


「そうだ。戦うのは“剣”だけじゃない」


 リゼの目が、ゆっくりと変わっていく。


「……わかった」



「遅ぇぞ!!」


 敵が一斉に突っ込んでくる。


 その瞬間。


「……動かす」


 リゼが手をかざした。


 地面が、うねる。


「なっ!?」


 足元が崩れ、敵のバランスが一斉に崩れる。


「うおっ!?」


「なんだこれ!?」


「セリス、今だ」


「了解」


 迷いなく突っ込む。


 完全に体勢を崩した敵に対し――


 一閃。


 二閃。


 三閃。


 無駄のない動きで、次々と戦闘不能にしていく。



「ば、バカな……!」


 リーダーの顔から余裕が消えた。


「魔法使い……いや、こんなの見たことねぇぞ!」


「そりゃそうだ」


 俺は肩をすくめる。


「“普通じゃない”からな」



 数分後。


 立っているのは――


 俺たちだけだった。


「……くそ……!」


 リーダーが歯を食いしばる。


「撤退だ!!」


 残った連中が慌てて逃げ出す。


 あっさり決着。



「……すごい」


 村人の誰かが呟いた。


「こんなの……初めて見た……」


「守られた……」


 ざわざわと、感情が広がっていく。


 恐怖じゃない。


 “希望”だ。



「なあ」


 俺は村人たちに向き直る。


「このまま、また狙われるぞ」


 空気が引き締まる。


「だから――選べ」


 ゆっくりと言葉を置く。


「このまま怯えて生きるか」


「それとも」


 一呼吸。


「自分たちで守るか」



 沈黙。


 だが、その沈黙はすぐに破られた。


「……やる」


 最初に声を上げたのは、あの老人だった。


「もう奪われるのはごめんだ」


「俺もだ!」


「戦う!」


 次々と声が上がる。


 いい流れだ。



「よし」


 俺は頷く。


「じゃあ訓練するぞ」


「訓練?」


「ああ」


 ニヤリと笑う。


「“全員強くする”」



 セリスが小さく息を吐く。


「本気か?」


「当たり前だ」


 俺は答える。


「この村、ただの村じゃ終わらせねぇ」


 リゼも静かに頷く。


「……面白そう」



 こうして――


 ただの小さな村は、“変わり始めた”。


 戦う力を持ち。


 守る意思を持ち。


 そして――


「……国家、作るか」


 俺の一言で、その方向が決まった。



 無能と呼ばれた俺は――


 今、確信している。


 これはただの成り上がりじゃない。


 世界を変える戦いだ。

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