第7話「“無能の村”が変わる日──俺たちは全員強くなる」

 翌朝。


 村の広場には、全員が集まっていた。


「……本当にやるのか?」


 誰かが不安そうに呟く。


 当然だ。


 昨日までただの農民だった連中が、いきなり“戦う”なんて話だ。


「やるに決まってるだろ」


 俺はあっさり言った。


「やらなきゃまた奪われるだけだ」


 空気が引き締まる。



「まずは――」


 俺は全員を見渡した。


「“役割”を決める」


「役割?」


「全員が戦う必要はない」


 俺は指を立てる。


「戦うやつ。支えるやつ。作るやつ」


「それぞれ得意なことをやれ」


 ざわつく村人たち。


「でも……俺たちに得意なことなんて……」


「ある」


 俺は即答した。


「見えてないだけだ」



 ――鑑定。


 意識を集中する。


 すると、村人たちの情報が浮かび上がる。



 名前:ガルド

 職業:農夫

 潜在能力:B

 特性:《持久力強化》


 名前:ミナ

 職業:主婦

 潜在能力:A

 特性:《回復適性》


 名前:トール

 職業:木こり

 潜在能力:A

 特性:《筋力補正》



「……やっぱりな」


 思わず笑う。


 この村、普通に“当たり”多いぞ。


「よし、決めた」



「ガルド」


「お、おう」


「お前は前衛だ」


「は?」


「スタミナ化け物だ。長期戦向き」


「そんなの分かるのか……?」


「分かる」


 断言する。



「ミナ」


「は、はい!」


「回復役」


「えっ、私が!?」


「適性高い。魔力少なくてもいけるタイプだ」


 ミナがぽかんとする。


 まあ普通そうなる。



「トール」


「おう」


「壁役兼アタッカー」


「壁……?」


「殴られても倒れないタイプだ」


「……なんか褒められてるのか分からんが、悪くねぇな」



 次々と割り振っていく。


 村人たちの顔が、少しずつ変わっていく。


 不安から――納得へ。


「……なんで分かるんだ」


 セリスが小さく聞く。


「だから言ったろ」


 俺は笑う。


「見えるんだよ」



「よし、じゃあ次」


 俺は手を叩いた。


「訓練開始だ」



 最初はぐだぐだだった。


 当然だ。


 武器の持ち方すら分からない連中もいる。


「違う違う、もっと腰落とせ」


「そっちじゃねぇ、左だ左」


「ミナ、今回復入れろ」


 だが――


 時間が経つにつれて、変わっていく。


「……お?」


 ガルドの動きが安定してきた。


「いけるじゃねぇか」


「……なんか、体が軽い」


「それが適性だ」



 ミナも、ぎこちないながら回復を成功させる。


「で、できた……!」


「いいぞ、その調子」



 トールは――


「お前、ほんと硬いな」


「はは、昔から打たれ強いだけだ!」


 笑いながら攻撃を受け止める。


 いや、それ普通じゃねぇからな。



 日が傾く頃には――


 明らかに“別の集団”になっていた。


「……すごい」


 リゼがぽつりと呟く。


「みんな、強くなってる」


「だろ?」


 俺は肩をすくめる。


「これが“正しい使い方”だ」



「あなた、本当に何者?」


 セリスが真顔で聞いてくる。


「だから鑑定士だって」


「それだけじゃ説明がつかない」


「……まあな」


 少しだけ考える。


「“導くやつ”ってとこか」



 その時だった。


「――あの」


 遠慮がちな声。


 振り向くと、見慣れない少女が立っていた。


 長い黒髪。


 整った顔立ち。


 だが、その目はどこか怯えている。


「誰だ?」


「……旅の者、です」


「こんなとこに?」


「……助けてほしくて」


 空気が変わる。



「何から?」


 俺が聞く。


 少女は少しだけ迷ってから――


「……追われています」


 来たな。


「理由は?」


「……“力”を、狙われて」


 セリスとリゼが反応する。


「……またか」


 俺は小さく笑った。



「名前は?」


「……エルナ」


「そうか」


 俺は一歩近づく。


「じゃあ、見せてもらうか」


「……え?」


「お前の“価値”をな」



 ――鑑定。



 名前:エルナ

 職業:精霊契約者(未覚醒)

 潜在能力:SSS

 固有スキル:《精霊支配》



「……マジかよ」


 思わず呟く。


 セリスとリゼがこちらを見る。


「どうした?」


「……いや」


 俺は笑った。


「また“とんでもないの”拾った」



 エルナが不安そうにこちらを見る。


「……追い返されますか」


「まさか」


 即答だった。


「むしろ歓迎だ」


「……え?」


「うち、人手足りてないんだよ」


 軽く言う。


「だから来い」


「……いいんですか」


「ああ」


 俺は頷く。


「その力、ちゃんと使わせてやる」



 少女の目に、光が宿る。


「……お願いします」


 小さく、でも確かにそう言った。



 こうして――


 村はさらに変わる。


 戦う者。


 支える者。


 そして――


 “規格外”が集まる場所へ。



「……これ、やばいな」


 俺は空を見上げる。


「完全に始まってる」


 セリスが頷く。


「止まらない」


 リゼも小さく笑う。


「……楽しい」



 無能と呼ばれた俺たちは――


 今、確実に“力”を集めている。


 それはもう、村の規模じゃない。


 やがて――


 世界を揺るがす勢力になる。

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