第14章:マイ・ストーリー

2年が経ったが、私にとってはあの夜で時間が止まったかのようだ。目を閉じるたびに、すべてが始まったあの場所へといつも引き戻されてしまう。


ステージのライトがまさに私を照らし出している。スポットライトの光が肌を焼くように照らす中、指先から骨の奥まで冷気が染み渡る。


大輝は私のすぐ後ろに立ち、愛用のギターを手にしていた。乱れた金髪と、彼特有の気取らない表情が印象的だった。演奏開始の合図を待ちながら、彼はウォーミングアップのために指を弦の上で軽やかに動かし続けていた。


左側には怜さんがベースを抱えて立っている。その眼差しはいつものように鋭いが、今夜は何かが違っている。まるで彼女の目に不安が浮かんでいるようだ。あるいはそれは、単に私自身の不安が映し出されているだけなのかもしれない。


他のメンバーもすでにそれぞれの位置についている。


私の目の前には、数百人、それ以上の観客が広がっている。こんなに大きなステージに立ち、これほど多くの観客を前にすることになるとは想像もしていなかった。


私は深く息を吸い込み、空っぽになったような肺を満たそうとした。心臓は不規則に鼓動し、まるで胸から飛び出そうとしているかのようだった。


「今夜来てくれてありがとう。僕たちは……ええ、まだいいバンド名が決まってないんだ」


普段は小さな声の私だが、今回はその声が会場全体に響き渡った。何人かの観客が笑ってくれて、それが少し私の緊張を和らげてくれた。


「でも、それは重要じゃない。重要なのは、僕たちがなぜここにいるのかということ。このバンドは……」


私は一瞬言葉を切り、適切な言葉を探した。


「このバンドが存在するのは、僕たちの野心のためじゃない。このバンドは、僕たちにとってかけがえのないある人物の後押しがあって結成されたんだ」


怜さんが私の後ろで体をずらした。彼女も私と同じことを感じているに違いない、その言葉に込められた感情的な重みを。


「今夜僕たちが演奏する曲は……」


私は話を続けた。マイクスタンドを握る手が滑ったのは、汗のせいではなく指先が震えていたからだ。


「これからお聴きいただく歌詞は、私たちにとって非常に大切な人物によって書かれたものです。彼が、私たちがバンドを始める勇気を持つずっと前から、このバンドが結成された理由そのものでした。この歌詞を通して、彼は後悔を残さずに、誠実に生きる方法についてのメッセージを託してくれました」


目頭が熱くなるのを感じた。だめだ、今だけは。私はズボンのポケットの中の紙を握りしめた。何度も折りたたんで開いたせいで端が擦り切れてしまった、私のために、私たちのために書かれた手書きの歌詞の紙だ。


「曲のタイトルは……」


そのささやかな囁きは会場全体にはほとんど届かなかったが、私は目を閉じた。


「my story」


私は大輝のほうへうなずいた。彼は小さな笑みを返してくれた。


ドラムスティックの音が鳴り始めた。


ワン、ツー、スリー。


ヘヴィなギターのリフとともにドラムの轟音が炸裂し、ディストーションの音が夜の空気を満たして肋骨の奥まで響き渡るほど激しく反響した。


観客から歓声が上がり始め、ビートに合わせて次々と手が挙がっていった。


私は深く息を吸い込み、歌い始めた。速いテンポに合わせて私の声がアグレッシブに響き渡り、頭の中に完全に刻み込まれた歌詞が自然に流れ出した。


大輝は集中して演奏し、指がギターの弦の上で踊る。怜さんは深みのあるベースラインに集中している。すべてがシンクロしている。


最初のヴァースはあっという間に過ぎ去り、プリコーラスに入ると観客のエネルギーは最高潮に達した。この曲を初めて聴く人たちも一緒に歌い始めた。


コーラスが爆発し、ブレイクダウン。空中に掲げられた手がリズムに合わせて動いた。


2番のサビでは、私はより情熱を込めて歌っている。観客もより大きな声で歌い、目を閉じて音楽に浸る人の姿もある。


曲のテンポは徐々に遅くなっていく。


大輝のギターの音色はクリーンで雰囲気のあるものへと変わり、ドラムはただ静かに刻むだけとなり、怜さんのベースが柔らかくも深みのある土台を築く。


私は声をさらに低くし、観客は静まり返ってただ耳を傾ける。何人かはライトをつけたスマホを掲げ、暗闇の中に小さな光の海を作り出している。


私の声は、マイクに向かってささやき声に近い。一語一語が重く感じられる。


この静寂が、私を過去へと引き戻す。沈黙の中、私たちは同じ一曲に溶けていく。まるで、互いの鼓動がひとつになったかのように。


彼女が目を閉じて、まるでその曲が私たち2人だけが知る秘密であるかのように一音一音を楽しんでいるのを見て、私は奇妙な安らぎを感じた。


その瞬間、私は気づいた。音楽とは単なる音ではなく、2つの魂が出会う場所なのだと。


そして、私はそれを感じた。懐かしい温もり、長い間忘れていた何かを。


視界の隅で、誰かが私の後ろから歩いてくるのが見えた。


そのシルエット、足取りで彼女だと分かった。


彼女は……彼女は、静かに私の横を通り過ぎ、自分を見ることのできない観客の方へと視線を向けていた。体のすべての細胞が叫びたがっているのに、私は歌い続けた。


音楽が盛り上がり始めた。


ギターが再びゆっくりとディストーションをかけ、ドラムは徐々に激しさを増し、怜さんのベースはより深く響いた。


そして、彼女が歌い始めた。その声が曲を引き継いだ。観客には聞こえない。彼らには私の声しか聞こえない。でも、私たちにはその完璧なハーモニーが聞こえていた。


盛り上がりはさらに高まる。大輝の指は弦の上を速く動き、ドラマーはより強く叩く。


彼女は心を込めて歌っている。これが彼女の声だ。彼女の歌だ。彼女の物語だ。


私の物語。


観客は再び合唱し、手を高く掲げる。空気中のエネルギーは強烈で、誰もが何か深いものを感じているようだった。それが何なのかは分からなくても。


最後の音色がやんだ。永遠のように感じられる「沈黙のビート」


彼女は私たち全員の方を向いて振り返った。


あの優しい笑顔、私がいつも見ていたのと同じ笑顔。


彼女の体はゆっくりと蝶の形をした光の粒へと溶けていき、何百もの蝶の光が風に乗って夜空へ舞い上がっていく。


蝶たちはますます高く舞い上がり、やがて空の星々と溶け合っていった。


大輝は微笑み、怜さんは頬を伝う涙を浮かべて微笑んだ。


私は深く息を吸い込み、微笑んだ。


「ありがとう」


会場は割れんばかりの拍手と歓声に包まれた。


しかし、私はその声は聞こえなかった。夜空を見つめ、今や星々と溶け合った蝶の残光を追っていた。


心からの微笑みを浮かべて、私は最後のメッセージを囁いた。「さようなら、あかりさん。私の世界を変えてくれて、ありがとう」

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