第2章:同じ屋根の下、異なる2つの孤独

月曜日の朝、2年B組はいつものようににぎやかだった。私は窓際の後ろの席に座ってヘッドセットを装着し、クラスメートたちがバスケットボール部や休暇、あるいはネットで話題になっているドラマについて熱く語り合うのを聞いていた。呼ばれたらうなずくだけで、すぐにまたプレイリストに戻った。机の上の小説は単なる盾に過ぎず、私の視線はむしろスマホに注がれ、曲を探していた。


『Arctic Monkeys』の『Cornerstone』の皮肉めいたメロディーが私を昨日の午後に連れ戻した。音楽店であかりさんと予期せぬ再会を果たし、小さな言い合いをして、彼女の心からの笑顔が頭から離れない。たぶん、彼女は私の好きな音楽を理解してくれているからだろう。


「やあ、琉依!」


大輝は突然、私の隣の空いている椅子を引き寄せた。いつものように、カバンをテーブルの上に放り投げた。


「また『Cornerstone』聴いてるの?」


大輝は肘を椅子の背もたれに乗せ、深い好奇心を込めて私を見つめた。


「まさか、あかりさんのせいじゃないよね」


私はヘッドセットを外し、無表情で彼を見つめ、自分が尋問されたくないということを彼に理解してほしいと願った。


「ただの偶然だよ。たまたまこの曲を聴きたかっただけ」


大輝は信じない様子だった。顔には計算高い薄笑いが浮かび、いたずらっぽい目が輝いている。


「あのレコード店の女の子、あかりさん……だよね? 綺麗だったよな? 昨日はすごく長く話してたね。普段なら新しい人と会っても黙ってるくせに」


私は肩をすくめて気にしていないふりをした。でも、顔が少し熱くなっているのを感じた。


「彼女から話しかけてきたんだ。僕はそれに応えただけさ」


「おい、でも、お前は彼女と話すとき、すごく親しげに見えるよ。そこがポイントなんだ!」


大輝は小さく笑いながらテーブルを軽く叩いた。


「お前の好み、わかってるよ。髪が長くて、変わったインディーズ音楽が好きで、すごく明るい子だ。その組み合わせで、きっとドキドキしたんだろう?」


「そんなことない。ただ曲の話をしただけ」


大輝は目を細めて、私がうそをついていると分かっているような表情をした。


「おい、琉依。昨日はいつもと違う様子だった。なんか、いつもほど退屈そうじゃなかった。2-Aの教室で探してみたら? もしかして、あの子一人かもしれない?」


彼の当て推量にうんざりして、私はため息をつき、スマホに戻った。


「なんで?あの子とは用事なんてない」


「好きにすればいいけど、また会ったら教えてね。気になるから」


私はただ首を横に振ってヘッドセットを再び装着した。『Cornerstone』の曲がまだ流れている。でもなぜか、今日は、出会いと希望についての歌詞がより鋭く、生き生きと感じられた。


昼休みはいつも避けていた。うるさくて、人があふれていて、くだらない会話ばかりの食堂は、頭が痛くなる。いつものように私は、静かで落ち着いた場所である屋上へと逃げ込んだ。そこは、私のサンクチュアリだった。錆びた柵の近くに座り、温かい壁に背をもたせかけ、そよ風の心地よさを楽しむ。


私はノートを開いた。最後のページには、『Echoes of Silence』に触発されて、書きかけの歌詞が走り書きされていた。


ヘッドセットをつけ、『Outside』を再生した。柔らかなボーカルが静寂を満たした。昨日あかりさんが言っていたことを思い出した。このインストゥルメンタルはミニマルだけど、だからこそ感情が豊かだと。目を閉じ、メロディーに身を任せた。しかし彼女の笑顔の残像が、音符の隙間に忍び込んできた。


思考は楽器店へと戻った。彼女の笑顔、軽やかな笑い声、そして『505』の方が断然いいと言い張る姿。なぜ彼女のことをずっと考えている?


おそらく、彼女が音楽を理解してくれるから。あるいは、彼女には何か違うものがあるのかもしれない。他の誰からも感じたことのない何かが。


「あ、琉依くん?」


目を開けた。驚いて、ヘッドセットが片耳から外れた。


あかりさんが目の前に立っていた。風に揺れる髪、背後に輝く太陽の光。その逆光の中で、彼女のシルエットが光を放っているようだった。昨日と同じ、あの笑顔を浮かべて、大きなお弁当箱を持っていた。


「またこんなところで会った!この屋上、秘密の場所なのに。なんで知ってるの?」


私はゆっくりと頷き、突然の彼女の存在を処理しようとした。


「ただ……ここが好きなんだ。静かだから」


あかりさんは頷いた。そして、許可も求めずに隣に腰を下ろし、同じ壁に背をもたせかけた。甘さと香ばしさが混ざり合った香りが風に乗って運ばれてくる。チーズかな?彼女の持つお弁当箱から来ているのかもしれない。


「同じ!賑やかさから逃げたい時にここに来るの。いつもは友達と来るんだけど、今日は一人になりたくて」


彼女は好奇心から、私のスマホを覗き込んだ。


「何聴いてるの?」


「Echoes of Silence。Outside」


「え、本当に!あの曲……ボーカルが悲しいのに大げさじゃないよね。そこに誠実さがある」


こんな音楽の繊細なところを理解してくれる人は滅多にいない、ましてやそこまで細かいところまで。


「悲しい曲が好きなの?」


「うん、なんか共感できるから」


「私も。悲しい曲って誠実だよね。まるで『私は大丈夫じゃない』って正直に言える人みたい。そう思わない?」


その目に重さが宿った。見覚えのある何か、隠された悲しみ。しかし彼女の視線はすぐに空へと向けられ、それを隠した。


あかりさんはまだ開いたままの私のノートに目をやった。書きかけの乱雑な歌詞が見えていた。


「自分で曲を書いてるの?」


「たまに。ただの……逃げ場だよ。本気じゃない」


「すごい。いつか聴いてみたいな。もし聴かせてもらえるなら」


返事はしなかったが、胸の中に温かい波が広がった。自分が曲を書いていると知ったら、他の人はたいてい変な顔をするか、変わってると思うだろう。でもあかりさんはただ「すごい」と言って、少しも押しつけがましくなかった。


あかりさんがお弁当箱を開ける、視線が自然とその中身に向いた。弁当箱はチーズを使った食べ物でいっぱいだった。カリカリのチーズスティック、何層にも重なったチーズサンドイッチ。


「あなた……チーズがすごく好きなんだね」


あかりさんは口元にチーズスティックを持ったまま私を見つめ、臆面もなく満面の笑みを浮かべた。


「これがないと食べた気がしない。変かな?」


「変じゃない。ただ……個性的」


「チーズは食べ物の形をした幸せだよ。食べてみる?」


彼女は特製のサンドイッチを一口分取って差し出した。食べてみると、塩気のある旨みがちょうどよく絡み合い、絶妙な味わいを生み出していた。


「これ……すごくおいしいと思う」


「ほらね? 言った通りでしょ!」


ちらりと彼女を観察した。一口一口を本当に噛みしめているような、彼女の食べ方に何かがあった。


食べ終わると、あかりさんは空を見上げた。陽光が彼女の顔に反射した。その表情は穏やかに、深く変わり、まるで自分の思考に流されているようだった。


「屋上にいると……何かを忘れられる気がする。たとえほんの少しの間でも、全部大丈夫な気がして」


私は彼女を振り向いた。いつも纏っている明るさが完全に消えていた。その目に小さな亀裂があった。あの眩しい笑顔の裏に隠された、小さな亀裂が。


「何を忘れたいの?」


あかりさんは黙り込んだ。その沈黙はとても長く感じられた。唇が少し開きかけたが、すぐに閉じた。喉に引っかかって、口にするには重すぎる言葉があるかのように。


「わからない。時々ね……この世界が息をするには騒がしすぎると感じる。要求が多すぎて。でもここでは……」


あかりさんはゆっくりと息を吸い込み、肺に冷たい空気を満たした。


「……こんな静けさの中にいると、まだ息ができることを思い出させてくれる」


胸が締め付けられた。何かが引っかかって、まだ言葉になっていない問いがそこにあるようだった。


「話してよ。何かあるんじゃないかと思って」


あかりさんが振り向いた。視線が合った。一瞬、その目に大きな恐怖と疲れが見えた。年齢には重すぎるほどの。しかし彼女はその脆さを、明るい仮面の下に隠した。


「後でね。今は……あなたと一緒に音楽を聴いていたい」


もっと聞きたい気持ちは強かったが、堪えた。無理に聞けばこの時間を壊してしまうし、彼女への見方が変わってしまうかもしれない。


「わかった。いつでも準備ができたら」


「ありがとう、琉依くん」


彼女は壁に背をもたせかけ、目を閉じた。肉体的にも精神的にも、とても疲れているように見えた。私たちは心地よい静寂の中で黙っていた。風がゆっくりと吹いていた。ヘッドセットから流れる音楽が、私たちの気分のサウンドトラックになった。


「あかり!」


その声が沈黙を打ち破った。あかりさんはびっくりして立ち上がり、まるで誰かに現実へと引き戻されたかのように、息が途切れた。その表情は罪悪感に満ちていた。お菓子を盗んでいるところを見つかった子供のように。


屋上のドアが勢いよく開いた。一人の少女が入口に立っていた。腰に手を当てている。肩の長さの黒髪。姿勢は真っ直ぐで、何も恐れない人間のオーラを放っていた。


「どこにいたの?探したんだよ」


あかりさんはぎこちなく笑おうとした。「怜、ここにいたよ。少し休憩してただけ。新鮮な空気が欲しくて」


その少女は怜さんだった。一歩一歩が確かな音を立てながら近づいてきた。その鋭い視線が、まっすぐと私に向けられた。ちょうど私の前で足を止め、威圧的な姿勢で立った。私より背は低いが、そのオーラが私を圧倒した。


「その男、誰?」


あかりさんは少し焦った声で急いで私を紹介した。


「こちらは琉依くん。今、音楽の話をしてるんだ。彼、すごくかっこいいんだよ。音楽に詳しいんだ」


「あなたじゃなくて、彼に聞いてる」


私は冷静さを保とうとした。攻撃的に返すのをこらえながら。


「琉依。静己琉依、2年B組」


「それで、なんであかりと一緒にここにいるの?」


「ただの偶然だ。僕たちは音楽が好きで」


怜さんはしばらく私を見つめ、正直かどうかを見極めようとした。やがて動いて、私とあかりさんの間に物理的な壁として座り、完全に私を無視した。


「怜、お願い。琉依くんは大丈夫だよ。何もしてないから」


怜さんは答えなかった。もう一度冷たい視線を私に向けてから、あかりさんを見た。


「大丈夫?」


声のトーンが激変し、より柔らかく、心配に満ちたものになった。何か隠れたものを心配しているようだった。


「うん、ちょっと疲れてるだけ。少し時間が必要だっただけ」


「疲れてる?お昼ご飯は食べた?」


「食べたよ」


足元の近くにあった空のお弁当箱を指差しながら。


「ほら、全部食べた」


怜さんはチーズだらけの弁当箱の残骸を見て、ゆっくりと首を振った。安堵と苛立ちが入り混じった表情で。


「そりゃそうだろう、お前、チーズばかり食べてるんだから」


「チーズ・イズ・ライフ」


あかりさんは作ったような真剣な顔で言い、場を和ませようとした。怜さんはため息をつき、薄く微笑んで時計を見た。


「もうすぐベルが鳴る。教室戻ろう。グループの課題あるの、覚えてる?」


「あ、そうだ!忘れてた。行こう!」


あかりさんはすぐに立ち上がり、慌てているようだった。怜さんはあかりさんの手を引き、手首を所有するように握り、私のことはもう一顧だにしなかった。


「待って、怜」


あかりさんが振り返り、素早く私の肩を手でポンと叩いた。


「琉依くん、明日続きしようね。新しい曲があるんだ!」


「わかった。また今度にしよう」


「じゃあね!」


あかりさんは手を振りながら、怜さんに引っ張られて屋上の扉に向かっていった。


ふたりの声が聞こえた。あかりさんは音楽について相変わらず熱心に話し、怜さんはしっかりと保護するような声で答えていた。まるで妹を守る姉のように。


屋上のドアが閉まった。


ひとりの静寂に戻った。あかりさんのお弁当箱が残されていた。しばらくすると、ドアが少し開き、あかりさんが赤面した顔で現れた。


「あ、忘れてた!」


お弁当箱を取りながら、ぎこちなく笑う。その後ろで怜さんがドアのところに立ち、焦れた様子で警戒するような目を向けていた。


「早くして、あかり。時間を無駄にしないで」


「うん」


あかりさんはもう一度小さな笑顔で手を振り、去っていった。


怜さんの反応は奇妙だった。単に友好的でないというより、無関心で疑い深い感じだった。しかし彼女があかりさんを見る目……その目を覚えている。深い心配に満ちていた。まるであかりさんのことを、私には理解できない何かから心配しているかのように。


その後、私たちは学校でよく会うようになり、ついに携帯の番号を交換することにした。

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