第2話 『時戻し』の懐中時計 弐
「玉藻様・・・良かったのです?」
「何が?」
「あれって
「あら!オサキちゃん詳しいわね!」
玉藻様は「偉い、偉い」と言いながら店員の女性ことオサキの頭をいい子いい子する。
さて、神造品とは、書いて字の如く、神の創りし品である。
男が大事に懐に仕舞い、借りて行った懐中時計『時戻し』は
「あの懐中時計って『時戻し』と銘打たれているて事は・・・」
「うふふふふふ、如何なのかしらね」
「いや、いや、神の創りし品ですよね?」
「そうね~」
「間違いなく何かが宿り、時を戻す力を持ってますよね!」
「そうねかもね~」
「そうかもではないですよ~!もし、時が戻せるとして、その源泉となるのは神力ですよね?」
「神力だけとは限らないわね~」
「ウワッ!それってヤバいヤツじゃないですか!!」
「ヤバいかもね~」
「絶対ヤバいですよね?」
「如何かしらね~」
店員のオサキは店主の玉藻様にジト目で問うが、玉藻様はどこ吹く風といった具合にニコニコしながらオサキちゃんの質問をはぐらかす様に答えるのであった。
★~~~~~★
懐中時計『時戻し』を手に入れた男の名は
「良い品を手に入れた!!」
店主であろう玉藻と呼ばれた女性からは色々とはぐらかされ、ストレスが溜まったが、最終的に「貸す」などと言いながら玉藻が自分にくれたのだろうと勝手に解釈し、ホクホク顔で店を出た刻人はもと来た道を戻り、大通りに出た。
「それにしても不思議な店だったな・・・」
そう言いながら振り向き、骨董店の方を振り向くと
「あれ?・・・店が消えた?・・・」
先程まで在ったはずの骨董店も道すらも消えており、刻人は壁を背に立っていた。
「さっきまで・・・」
刻人はゾクリと背筋に冷たい物を感じ、
「あ!・・・物はあるな・・・」
先程までの事は現物である懐中時計が自分の手元にある事から白昼夢などではないことを刻人は確認する意味でも懐中時計を取り出し眺める。
「うん!ある!!」
取り出した懐中時計を眺めながらにんまりと笑い、再度大事そうに懐に仕舞い、帰途に着くのであった。
次の日から刻人は何時もの日常に戻る。
昼過ぎに刻人の許に慌てた様子の社員男性がやって来た。
「社長、た、大変です!」
「如何した?」
「そ、それが・・・」
刻人はそれなりの規模の会社を営んでいた。
親から引き継いだ会社ではあるが、親の代よりも規模を大きくした自負もあり、巷でも敏腕社長としてそれなりには知られていた。
そして、今、秘書の一人である男が刻人に何か社にとって良くない報告を上げようとしていた。
「落ち着け」
「はい・・・」
「それで?」
「事故です!!」
「事故・・・何処でだ?」
「こ、工場で」
「工場・・・」
「はい、工場で火災が発生し、数人がそれに巻き込まれて・・・」
社にとってはかなりの大ダメージとなることは今の時点で理解した刻人は情報を求め急ぎ工場へと向かう。
工場周辺には多くの消防車が集まっており、消火活動が行われていた。
遠目からでも囂々と燃え盛る炎が見え、辺りは煙も立ち込めており、焼ける焦げ臭い匂いが立ち込めていた。
「爆発したぞ!!」
「ワッ!ヤバ!!」
「酷いな」
野次馬達の声が何だか遠くに聞こえながら、刻人は己が会社の工場の燃え盛る様を他人事のように眺めていた。
『これは拙いぞ!!ど、如何する!?』
その時、カチャリとスーツの内ポケットより金属の擦れる様な音がする。
それが何だか気になり、取り出してみれば、件の懐中時計であった。
それを見た瞬間、刻人は無意識に懐中時計の針を巻き戻していく。
丁度その日の朝の時間帯まで巻き戻し・・・
「社長、おはようございます!!」
「ああ、おはよう・・・」
先程まで火災現場である自社工場を遠目に眺める野次馬の中に居た筈であった。
しかし、気が付けば朝、己が机に座り、朝のルーティンとなっているネットでの新聞を読むことを行っていた。
「今日は・・・」
独り言のように呟きながらPC上の日付と時刻を確認する。
間違いなく、火災が起こった日付の朝である。
「戻った?・・・あ!」
刻人はあの不思議な店の店主、狐顔の美人を思い出す。
そして、「あの懐中時計の名は『時戻し』と言いましてね」という店主の言葉を思い出す。
「『時戻し』・・・本当に時を戻した?」
独り言である。
誰が聞くでもなく、その言葉が刻人の口から零れる。
そして、ハッとした刻人は慌てて叫ぶ。
「誰か工場に連絡してくれ!」
「社長?工場に何を連絡連絡するのです?」
「緊急点検だ!!」
「点検ですか?しかし、先々週に行ったばかりでは?」
「そ、そうだが・・・いや、社長命令だ!!何時も以上に隅から隅まで点検する様に伝えてくれ!!俺も現場に出るから今日の予定は全てキャンセルだ!!」
「わ、わかりました・・・」
その後、工場で配線の一部不備が見つかり、火事は未然に防がれる結果となるが、その事を知るのは・・・
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