第3話 陸アルノの崩壊


 オーディス達は陸アルノの王城手前の砦に到着する。最終地点前の最後の砦だ。ここまでゴードンの破壊攻撃で砦の敵兵達は最後の砦に大量に逃げ込んでいた。オーディスは籠城戦になり思案する。ゴードンによる攻撃で砦を破壊しても王城に逃げ込まれるだけなので、ここで敵戦力を減らす事を考える。一番理想的な展開はガヴェインが合流して敵兵を投降させる事だが、いまだにガヴェインとは遭遇していない。オーディスがゴードンに言う。

「どうせ籠城戦だ。少し様子見しよう。ゴードンが挑発してもいいが砦は破壊しないでくれよ。王城に逃げ込まれるのが一番面倒だ。」

ゴードンが応える。

「ああ。そうだな。ここで敵兵を減らしたいよな。オーディス兄の弟はまだ現れないな。アレクが同志になったような事を言ってたのにな。」

オーディスが答える。

「ガヴェインにもやる事があるのだろう。昔から勝手に動く奴だから放っておけばいい。そのうち現れるだろう。」

「おいおい。酷い弟だな。俺がいつ勝手に動いたんだ。お前の方が勝手に一人で狩りに出かけて獲物を独り占めしてたじゃないか。」

ゴードンが驚く。オーディスが二人いる。オーディスが言う。

「ほらな。現れた。久しぶりだな弟よ。」

オーディスが嬉しそうに言う。ガヴェインが応える。

「お前が弟だ。久しいな。相変わらずの迫力だな。昔と変わらないな。」

二人が近づいて拳を合わせる。ゴードンが嬉しそうに見ている。ガヴェインが話す。

「陸アルノの王城に寄ってサディアス王を救出して来た。今御呼びする。」

ガヴェインがサディアスを呼び連れて来る。オーディスとゴードンが片膝を着く。

「サディアス王ですね。アレク王から保護するように言われています。オーディスと申します。隣は竜戦士ゴードンです。」

ガヴェインに連れられてサディアスが応える。

「アレク王の忠臣で英雄オーディスと竜戦士ゴードンですね。お立ち下さい。」

二人が立ち上がる。サディアスが喜ぶ。

「凄い面々ですね。豪傑が三人も目の前にいるなんて物語の世界が現実にあるようだ。」

ゴードンが尋ねる。

「ガヴェイン殿はアレク王と闘ったのかい?」

オーディスも気になる。サディアスも気になっている。ガヴェインが答える。

「ははは。殺されました。しかも真っ二つです。」

ゴードンとオーディスが笑う。サディアスは蒼ざめる。ガヴェインが言う。

「サディアス王。すみません。驚かせる気は無いのですが事実なので御理解下さい。」

ゴードンが話す。

「王様。武人の闘いはそんなものですよ。英雄は命を懸けて戦った者の名です。」

サディアスが頷く。オーディスが聞く。

「ガヴェイン。血は燃えたか。」

ガヴェインが答える。

「ああ。生死の境を感じた。大軍との戦いでは感じない。魂の闘いを感じた。」

三人が笑う。オーディスが話す。

「俺もこのゴードンと命懸けの闘いをして感じたよ。命が燃える瞬間を感じた。」

ガヴェインが話す。

「二人で村を出る時に話した英雄に、本当の英雄になったんだな。オーディス。」

オーディスは頷く。ゴードンは二人が眩しく見える。サディアスが嬉しそうに聞く。

「オーディス殿はガヴェインと共に戦ってくれるのですか?」

オーディスが応える。

「はい。アレク王の希望です。陸アルノを制圧して正常化しエルニアを倒します。」

サディアスが頷き話す。

「私は正式にアレク王とお会いしていませんがオーディス殿に全権を委ねます。」

ガヴェインが止める。が、サディアスが話す。

「私は亡国の王になりました。父と母に廃位させられて、もはや王ではありません。陸アルノを復興させる事も難しいでしょう。私がこの国に出来る最後の仕事は兵士達を無駄死にさせない事です。一人でも多く投降させて戦場から去らせる事に力を注ぎます。」

オーディスが感心して褒める。

「サディアス王は素晴らしき若き王です。その決断に称賛します。降伏勧告をしていただければ敵兵もサディアス王に従うでしょう。救える者達が増える事は良い事です。残りの敵兵は前王派という事も解ります。お願いします。」

ガヴェインが話す。

「サディアス王。いいのですか?この先の陸アルノを守れませんよ。」

サディアスが応える。

「心配しなくていい。アレク王は全てを良くしてくれる。多数の意見を引きずっては変革など成せない。不要なものは早目に取り除くべきだ。先の良き未来の為にも。」

ガヴェインが片膝を着き言う。

「私、ガヴェインはサディアス王に忠義を尽くします。」

サディアスがガヴェインの肩に手を当て話す。

「有り難いが臣下はいらない。私の友になって下さい。ガヴェインを忠義で縛る事は望みません。武人は自由であるべきだ。私以外を助ける事も自分の意志で動いて欲しい。友であれば相手に対して我慢する事もいらない。ガヴェインには子供の頃から面倒をかけていた。忠義に縛られる姿も見て来た。もう足枷はいらないだろう。好きに闘って下さい。」

ガヴェインが微笑む。オーディスもゴードンも聡明な若き王に感動する。

「サディアス王の友になります。我、ガヴェイン。これより自由に闘い王を助けます。」

オーディスが拳をガヴェインに付き出す。ガヴェインが拳を合わせる。ゴードンも拳を合わせる。三人がサディアスに合図する。サディアスが拳を合わせる。

四人は砦前に並びサディアスが降伏勧告を告げる。

「陸アルノの兵士達よ。私はサディアスである。この戦いはエルニアによって仕組まれた無益な戦いだ。これ以上、アルノの兵士を失うわけにはいかない。直ちに投降して戦場から去るのだ。私は父と母と対決する。無駄な死は望まない。投降せよ。」

砦の兵士達が次々と逃げ出す。が部隊長のような輩が逃亡兵を刺し殺している。

サディアスが震えている。オーディスが弓を構えて矢を放つ。

ガッ

部隊長が即死する。サディアスが礼を言う。

「オーディス殿。申し訳ない。助かります。」

かなりの兵士達が逃亡して砦に残る者は前王の子飼いの兵だと判る。

オーディスがガヴェインに合図する。ガヴェインが単騎で前進する。

「我、ガヴェイン。サディアス王の友として言う。これよりは慈悲は無い。戦って決着をつける。いざ、参る。」

ガヴェインが砦の城門に突撃する。櫓から矢が放たれる。ガヴェインは馬を押して加速させる。矢はガヴェインの後方に抜けて行く。城門前に到着し馬から跳び上がり薙刀を回転しながら斜めに振り抜く。

ザバッ

砦の城門が斬り落とされて城門が倒れる。ガヴェインが中の兵士を睨みつける。

「刃向かえば生は無し、最後の慈悲だ武器を捨てろ。」

ガヴェインが一歩づつ歩き出す。敵兵が怯えて逃げ出す。砦の責任者に向かい進んで行く。

砦の中心に野営場所が広がる。ガヴェインを囲むように敵兵が並ぶ。

「ふぅぅぅぅぅ。いいだろう。お互い命懸けだ、参る。」

ガヴェインが薙刀を大きく振り相手の間合いを作らせない。ガヴェインが自分の間合いで次々と敵を斬り倒す。まるで人混みの中心に竜巻が発生して全員を吹き飛ばしているようだった。取り囲んだ兵士を沈黙させるのには時間はかからない。ガヴェインの準備体操にもならなかった。砦内に侵入して指揮官を探す。最上階にいた指揮官が言う。

「ガヴェインよ。前王に恩があるのにサディアスに付くとは不忠義者め。」

ガヴェインが答える。

「俺は命を懸けて忠義を尽くした。何人も俺を非難出来ない。お前の方こそサディアス王を廃位させた張本人に味方する逆賊だろうが。恥を知れ。」

ガヴェインが狭い室内で薙刀を振り回せない事につけ込もうとする指揮官に言う。

「俺の技は狭くても関係ないんだ。残念だったな。」

ガヴェインが渾身の力で薙刀を振り回し壁を斬り指揮官ごと建物を破壊する。砦の最上階が地上まで滑り落ちて行く。ガヴェインが悠々と皆の元に戻って来る。

「ガヴェイン。ありがとう。」

サディアスが敵兵を逃がしてくれた事に感謝する。オーディスが言う。

「相変わらず切れ味が鋭いな。建物ごと斬り飛ばした。壁の意味が無いな。」

ゴードンが言う。

「ガヴェイン兄も英雄だな。」

ガヴェインが言う。

「ゴードン殿は義兄弟なのかな。」

ゴードンが言う。

「俺が一番年下だから二人とも兄貴だろ。」

オーディスが言う。

「俺が一番兄貴だな。」

ガヴェインが折れる。

「もうそれでいい。此奴、絶対譲らないからな。」

サディアスが笑う。皆が笑う。

残す目標は陸アルノ王城のみ、四人は戦略を練る為に少しの休息をとる。


アレクはイザークを飛竜の空輸部隊に乗せてアグニスの元に向かわせる。

アレクがアグニスに思念を飛ばす。

「アグニス。これから新人を送る。武人だ。若いが将来有望だ。経験を積ませてくれ。隠密行動は無理だから潜入以外の任務を頼む。」

アグニスが応える。

「はい。分かりました。これからは破壊工作が主になります。そちらを任せます。」

アレクはイザークに言う。

「アグニスは隠密が主だが表の顔の武人としても優秀だ。よく学べ。」

イザークは頷き飛竜と飛び立っていく。ヒュースが見送りながら言う。

「大丈夫でしょうか?」

アレクが応える。

「若者が自分の道を進み出す。見送るしか出来ないだろうな。マリアの身内なのか?」

ヒュースが応える。

「はい。マリアの家系です。遠縁ですが心配すると思い不安です。」

アレクが言う。

「ヒュースも一度ラースに戻れ。副団長を任命して休んで来るといい。今しか休めないと思うぞ。エルニアが終われば大陸中を飛び回る。たぶん仕事だらけで過労死するな。」

ヒュースが悲しそうな顔をする。アレクが言う。

「だから今から行って来い。その為にゼノンやディーノが戻ったんだろ。」

ヒュースが喜んで応える。

「分かりました。アレク王に甘えます。飛竜に乗せてもらい家族に会いに行きます。」

アレクが言う。

「土産も忘れるなよ。子供達が悲しむぞ。奥方には特別な物を贈らないとな。」

ヒュースが困る。

「アレク王。そんな物はありません。私は持ち合わせもありません。」

アレクが言う。

「ヒュースは真面目だな。俺が今用意するから出発準備して待ってろ。」

アレクが幕舎を出て行く。ヒュースはゼノンとディーノに後を任せてラースに出掛ける準備を始める。子供達の為に王都にしか売っていない菓子を用意して飛竜騎士団の待機場所でアレクを待つ。アレクが魔道石で造った魔道器を二つ、ヒュースに手渡す。

「アレク王これは何ですか?以前の魔道器と似ていますが、それよりも大きいような気がします。映像が出るのですか?」

アレクが答える。

「そうだな。正解に近いが少し改良した。黒紫竜シエムの住処で回収した魔道石は高純度高密度で大きさが倍くらいある。あの鉱山は魔道士にとってお宝の山だ。これを加工して更に強化した小さな映像が送れる魔道器でヒュースが王都に戻っても連絡できるようにしてある。一つはヒュース家に一つはオーディス夫人のアリシアに届けてくれ。二人がいつでも話せるようになる。ヒュースも奥様と話したいだろ。」

ヒュースが驚く。

「そんな事が可能なのですか。以前はアレク王の魔道力でしかできないと言われましたが、魔道石が大きくなれば可能なのですか?」

アレクが言う。

「まだ実験段階だ。口外禁止だ。喋ったら没収だな。」

ヒュースが大事そうに抱える。アレクが笑いながら言う。

「少しだが、ゆっくりしてくるといい。」

アレクは飛び立つヒュースを見送る。アレクはジェイドの元に向かい出発の準備をする。


 アグニスがハーディの部隊と合流する為に移動を始める。アグニスはエルニアの魔道機関を破壊して囚われていた魔道士達を救出し、飛竜騎士団に郡都エピンまで送ってもらう。救い出せた者達はエピン騎士団のダルスが保護し一時的にエピンに滞在する。アレクはダルスに避難民の体調管理を頼み回復できない者は医療機関に入院させる。アグニスは次の標的の人身売買組織に潜入し様子を窺う。

 人身売買はルーマ国の貴族以外も隣国で行なっている。陸アルノも関係している。全ての大元にアグニスが潜入している、このエルニアの人身売買組織だ。アレクと打ち合わせした魔道研究機関と人身売買組織の関係者は一人残らず消し去る。

 アグニスは感知能力を高めて建物内を調べる。地上四階の施設には地下二階まである。確実に地下は牢になっている。アグニスは最上階から下に向かって隈無く調べて行く。最上階には組織の首領がいた。護衛の部下が厳重に警護していたがアグニスには関係なかった。首領の部屋に難なく潜入して護衛を始末する。アグニスは冷静に冷たく尋問する。

「お前は人身売買の大元だな。ここには商品がどれだけいるんだ?」

怯えながら首領が答える。

「地下牢に大勢います。人数は分かりません。」

アグニスが聞く。

「ここの売り上げはは何処に流れてるか言え。」

屑が答える。

「エルニアの王に流れています。ここには運転資金があるだけです。」

アグニスが聞く。

「何処にある?」

屑が答える。

「隣の部屋の金庫にあります。」

アグニスが聞く。

「帳簿もそこにあるのか?」

屑が頷く。アグニスが屑を連れて金庫に向かう。部屋に入り金庫を開けさせる。中の帳簿を確認するが偽物なのが解る。

「俺を騙そうとしてるのか?」

アグニスの殺気が屑に刺さる。怯える首領が謝りながら指をさす。

「そこの壁に隠し金庫があります。」

アグニスが隠し金庫を開けさせる。壁が動いて部屋が現れる。その部屋自体が金庫だった。

「開けろ。」

屑が部屋を開ける。書棚には大量の資料が積まれている。全て売買の帳簿だ。アグニスが調べながら話す。

「お前達、かなり貯め込んでるな。エルニア王に送る金額以上に持ってるな。横領か。王様も激怒するな。今なら全額渡せば生きられるかもな。」

屑が話す。

「はい。隣の建物に隠してあります。王様には御許し下さるようにお願いします。」

アグニスが聞く。

「それと陸アルノの顧客に王族はいるのか?帳簿には名は伏せてるだろう。」

屑が答える。

「はい。王妃の一族は皆顧客ですが部下や仲介業者が隠れ蓑になっています。」

アグニスがアレクに連絡する。アレクが応える。

「分かった。オーディスに伝える。今回は彼らに任せている。好きにさせる。」

アグニスが屑に言う。

「最後に聞く。お前達は人身売買で得た利益で何をするんだ。家でも買うのか?」

屑が答える。

「はい。でかい屋敷を買いました。」

アグニスが聞く。

「そこに女でも囲ってるのか?」

屑が答える。

「げへへ。そうです。買った女を集めています。」

アグニスが一閃する。刎ねた首を無数の斬撃で消し去る。

 アグニスがワンド達に連絡して全ての資料と資産を回収し地下牢に囚われていた者達を救出する。隣の建物から大量の資産を回収する。全てが空になった施設をアグニスが消し去る。まだ闇の部分が広がる悪意の塊にアグニスは消し去る事の難しさを感じる。

「この国を滅ぼしても全ては終わらないだろう。どこにでも現れる闇の悪意を消し去るには世界を変えなくてはいけないんだろうな。」

アグニスの言葉にワンドが答える。

「それをアレク王がなさろうとしている事なのですね。」

アグニスが言う。

「それは途方もない事なのかもしれないが誰かがしなければ始まらないんだろう。」

ワンドが答える。

「ですが自分達は救われました。アレク王がアグニス様を、アグニス様が私達を救われたのです。途方もなくても一歩ずつでも進んでいます。」

アグニスが振り向き言う。

「ああ。俺もそう思う。次に進むか。」

アグニスは救出した者と資料と資金を飛竜部隊に任せて次の標的に向かう。途中、イザークと合流しアレクの指示に従いイザークの実戦の補助に就く。


アレクが飛行艇に乗り確認する。

「ロック。操縦は他の者にもできそうか?」

ロックが答える。

「魔道士の腕力では、ちと難しいようじゃ。代わりが見つかるまで儂が操縦しよう。」

アレクが話す。

「すまない。俺が代わればいいが他にやる事が多くてな。ロックに貸しが増えるな。」

ロックが言う。

「がははは。アレク王に貸しが出来るなんてそれだけで褒美みたいなもんじゃ。」

アレクが感謝する。ロックが話す。

「アレク王に頼みなんじゃがいいかのう。」

アレクが言う。

「何だ。言ってくれ。」

ロックが話す。

「折角次の飛行艇を造るなら使いたい素材があるんじゃが。」

アレクが察して答える。

「黒金剛だな。」

ロックが頷く。

「ありゃぁ飛行艇の為の素材だと思うんじゃ。軽くて頑丈。強度がずば抜けておる。」

アレクが言う。

「隕石を見つける所からだから大変だぞ。どれだけの量が必要なのか解らないしな。」

ロックが言う。

「アレク王。飛行艇全部に使うわけじゃないからあるだけでもいいんじゃ。」

アレクが応える。

「そうか。部分的に使用して軽量化と強化を施すのだな。流石だ。だが大量に見つかれば全体に使用してくれ。一艇でも強力な飛行艇は必要になる。」

ロックが答える。

「アレク王が大量に見つけてくれれば完全体で造らせてもらうわい。」

アレクが笑う。

「俺次第か。解った。探し出してやる。それよりも黒金剛を熔かせるのか?」

ロックが答える。

「ドレルの工房は全ての鉱物を熔かす溶鉱炉があるんじゃ。何とかなるじゃろう。」

アレクが感心する。

「やはりドワーフ国とは友好国になり同盟を結びたいな。頼むよロック。」

ロックが応える。

「アレク王を儂は信じている。力を貸すのは当然の事じゃ。本国に圧力をかけてでも同盟を締結させるわい。」

アレクがロックと握手を交わす。アレクがバーンを呼び話す。

「バーンよ。飛行艇の動力を魔道石に蓄積して使おうと思っている。雷魔道の上級者を飛行艇担当魔道士に編制してくれ。ロックも動力に使えるか確認してくれ。」

バーンが返事をする。

「分かりました。編成します。それと主にお願いなのですが飛行艇の指揮官をバランかウェザーに任せたいのですがどうでしょうか?」

アレクが答える。

「ああ。今後そうなるが今はバーンが飛行艇の魔道士を纏めよ。まだその時ではない。いずれ飛行艇が増産されればバランとウェザーに一艇ずつ任せるだろう。魔道飛行艇団。」

バーンが感動する。

「魔道飛行艇団。甘美な響き。魔道士の可能性と魔道士の世界が開けるのですね。」

ロックが話す。

「バーン殿。失礼。アレク王。この魔道石は動力に使えますぞ。ただし消費が激しいので交換する予備の魔道石を複数用意しなければいけませんな。」

アレクが応える。

「ああ。そうだな。俺が高密度化させて魔道石の蓄積量を増やしてから使おう。」

ロックが話す。

「その方法なら交換も少なくなりそうじゃな。操縦に集中できるのが一番じゃ。」

アレクが魔道士部隊に告げる

「バーンは各魔道士の配置を確認するように防御魔道を専門にする者と攻撃魔道専門の者を交互に配置し。飛行艇の両側に配置。正面と後方にも配置。衝撃などで振り落とされないように安全帯を付けるように徹底しろ。」

アレクがロックに言う。

「ロック。もう少し手伝ってもらう。俺は黒雲で先行するが緊急時には切り離す。バーンと相談して独自に動いてくれ。バーンも頼むぞ。」

ロックとバーンが返事をして出撃準備に入る。

アレクがジェイドに話す。

「ジェイド。これからエルニアを終わらせて来る。その後は一緒に海洋アルノに向かうぞ。準備しておけよ。」

ジェイドが嬉しそうに返事をする。

「はい。アレク王の帰還をお待ちしています。万全に準備します。」

アレクが手を振り黒雲に飛び乗る。

ダロス大陸を牛耳るエルニアの落日は近い。


ランドがトリニドと翼竜捕獲に向かった烈火竜の住処の付近に到着し確認する。

「トリニド。翼竜達はいるか?」

〈ああ。いる。二十頭はいるな。〉

「どう捕獲する。群れの長を倒すか?」

〈いや。アレク王のように威圧を使えば従うだろう。〉

「ではトリニドに任せる。」

〈ああ。任せてくれ。〉

トリニドは翼竜の群れがいる崖の頂上に舞い上がる。群れは休んでいるようだったがトリニドが威圧の咆哮で服従させる。群れの長が攻撃を仕掛けてきたが足で捕まえてトリニドに従わせる。トリニドが翼竜の長に告げる。

〈我に従い。アレク軍に協力せよ。契約して飛竜の進化に進むのだ。〉

翼竜達はトリニドに従いアレク軍に参加する。飛竜騎士団は一気に二十頭の翼竜を得る。

「トリニド帰還しよう。俺達の闘いが待ってるぞ。」

〈ああ。エルニアには不穏な気配がある。アレク王の言う悪意の塊が蠢いている。〉

「そうか。上位竜の感知だ危険だな。」

〈ランドも覚悟する必要がある。簡単には終わらないだろう。〉

「解った。準備は怠らない。行こう。」

ランドとトリニドが翼竜を従えて王都に帰還する。

その後、アレクを追うようにエルニアに飛び立つ。


オーディスはアレクから連絡を受け悩む。

ゴードンとガヴェインが聞く。

「オーディス兄。何の話だったんだ。」

「オーディス。どうした。」

オーディスが話す。

「アレク王から報告があった。人身売買にサディアス王の母方の王族が関係している。」

ガヴェインが話す。

「王妃の一族は陸アルノの全土に蔓延る欲望の一族だ。先住民も私欲の為に滅ぼされたのだろう。全ての元凶はエルニアと王妃の一族なのだろうな。アレク王の情報で確定してしまった。サディアスになんと言えばいいのだろう。」

皆が悩む。

「気にしなくていい。母と父は既に一線を越えてしまった。止めるのも一族の使命だ。」

サディアスが現れて話す。ガヴェインが片膝を着いて話す。

「サディアス王。それでは貴方が傷つきます。何か良い案を考えます。」

サディアスがガヴェインを立たせて言う。

「それではアレク王に自分の意志を見せられない。躊躇せず。捕らえてくれ。捕らえる事が無理ならば結果は受け止める。それが先の未来に繋がる。私は大丈夫だ。」

三人が頭を下げ、サディアスに従う。オーディスが話す。

「陸アルノの王城を落とす。出来れば王族は捕らえるが徹底抗戦するのであれば生死は時の運だろう。ゴードンは王城を破壊してくれ。外周から破壊して中心を残してくれ。」

ゴードンが返事をする。

「おう。加減するぜ。」

オーディスがガヴェインに言う。

「ガヴェインは残った王城に侵攻して抵抗勢力を排除して王族に降伏勧告。」

ガヴェインが応える。

「ああ。配慮、感謝する。」

オーディスが言う。

「俺は王城から逃亡させないように外周を氷壁で囲む。その後三人で謁見しよう。」

三人は悲劇の戦闘に向かう。サディアスはラース騎士団が護衛し待機する。

 ゴードンは王城の外周部分を削り始める。大斧で斬撃と衝撃を載せて破壊する。崩れた王城を重力で押し潰す。王城を一周回る頃、オーディスの氷壁が王城を囲い完全に孤立する。ガヴェインは残った王城の中心に入城する。抵抗する兵士を一掃する。薙刀で振り払いながら進んで行く。誰もガヴェインを止められない。王の謁見の間に到着する。

 前王と前王妃が取り巻きのエルニアの手先の家臣と共に怯えて待っていた。ゴードンとオーディスが到着し、ガヴェインが降伏勧告をする。

「前王。前王妃。最後の降伏勧告です。既に残存兵はいません。降伏を。」

前王が言う。

「ガヴェイン。お前は誓ったはずだ。反乱なぞ不忠義は武人の恥だぞ。」

ガヴェインが話す。

「それは俺の問題です。貴方達は今、生死の境にいるのです。良き判断を望みます。」

前王が怯えながら言う。

「私は・・・降伏する。」

前王妃が怒り吠える。

「あなた。家臣も従えられないのですか。」

ガヴェインが話す。

「前王妃。貴方の一族は人身売買組織と関係していました。一族は誰も逃げられないでしょう。アレク王はそういう方だと解ります。貴方だけが生き残れます。どうしますか。」

前王妃が自分の状況を理解して言う。

「私は・・・降伏します。」

ガヴェインはエルニアの手先の前に立つ。

「お前達の悪行を全て話せ。温情があるかもしれないぞ。アレク王が決めるがな。」

四人を拘束して収監所へ送る。オーディスがガヴェインの肩を叩く。

「終わったな。だが陸アルノはこれからが大変だ。サディアスに付いていてやれ。」

ガヴェインが言う。

「ああ。助かったよ。解ってる。サディアスを守るさ。アレク王との会談もあるしな。」

ゴードンが言う。

「それじゃあ。俺達はエルニアを潰しに行こうか。」

オーディスが応える。

「ああ本番だ。陸アルノはサディアス王とガヴェインがいれば大丈夫だ。行こうか。」

ガヴェインが話す。

「戦勝を祈願している。陸アルノの国と民を踏み躙り、ダロス西域を混乱に陥れている悪意の元、エルニアを消し去ってくれ。」

オーディスとゴードンは手を振りガヴェインと別れる。

ゴードンがオーディスに聞く。

「これからエルニアに向かうが橋はアレクが破壊したよな。どうするんだ?」

オーディスが話す。

「アレク王に聞いてみればいい。多分、俺の考えと同じだろう。」

ゴードンが聞く。

「教えてくれよ。どうするつもりだよ。」

オーディスが言う。

「ゴードンが渡してくれるんだろ。」

後続のラース騎士団も気になっている。ゴードンが言う。

「解らんけど分かった。アレクに聞いてみるよ。」

ゴードンがアレクに思念を飛ばす。

「アレク。陸アルノは終わった。ここからエルニアにはどうやって行くのか教えてくれ。オーディス兄は知ってても教えてくれん。」

アレクが応える。

「ああ。オーディスは解ってるだろうな。ゴードンが橋を造ればいい。俺のを見てるだろ。同じようにエルニアに橋を架ければいい。お前がな。」

ゴードンが言う。

「俺が?橋を?架ける?どうやって?」

アレクが言う。

「お前、土竜の眷属だろ。土属性の最強種だぞ。」

ゴードンが気づく。

「俺の眷属の能力で造れるのか?そんなの知らんぞ。教えてくれよ。」

オーディスが笑う。

「ゴードン。俺がエスレインの力で氷壁を造ってるの見てるじゃないか。」

ゴードンが理解して恥ずかしくなる。

「うわっ。何度も目の前で見てる。恥ずかしいな。」

ゴードンは恥ずかしさを隠すように怒りながら壊れた橋の手前に手を着く。

「アレクの橋を思い描きながらゴレアの力を注ぐ。これで、どうだ。」

陸アルノ側の断崖から土の橋がせり出しエルニアの断崖に伸びて行く。巨大な橋が次々と伸び繋がる。

ゴゴオオン

強固な巨大な橋が完成する。一同が驚いてゴードンを見ている。

ゴードンが言う。

「出来た。本当に出来たぜ。橋が出来た。」

自分で造って驚いている。オーディスが尋ねる。

「強度が心配だからゴードンが確認してくれ。」

ゴードンが言う。

「オーディス兄。信用してないな。」

オーディスが答える。

「初めて造ったんだろ。ゴードンに責任がある。俺は怖くて渡れない。」

ゴードンは歩いて橋を渡り橋の中央で強度の確認をする為に強化した体で跳躍し着地する。

ゴオオオオオオオン

橋は振動するが壊れない。ゴードンが手を振りシルヴィがゴードンの元に向かう。

「オーディス兄。頑丈だ。問題無い。先に行くぞ。」

ゴードンがエルニアに侵攻する。オーディスがラース騎士団に告げる。

「これよりエルニア王城を目指し進軍する。我等の宿敵エルニアを滅ぼす。出陣。」

ラース騎士団が進軍する。ゴードンの橋は強固でラース騎士団百騎が同時に通過しても微動だにしない。騎士達が言う。

「ゴードン殿の着地は我等の重量よりも重いのか?我らが載っても橋は揺れもしない。」

オーディスが話す。

「ゴレアだからな。ゴードンの中にゴレアがいると思えば納得できるだろう。」

騎士達が納得する。オーディスがエルニアに侵攻する。

「ここからはラース騎士団の敵しかいないと思え。女子供は後に処遇が決まる。相手にするな。敵兵は容赦するな悪意の手先だ。ラースを苦しめた元凶だ。いくぞ。」

オーディスがゴードンを追いかけラース騎士団が追従する。

エルニアの王城は近い。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る