第11話 エデンとアモン


 アレクとゴードンはドルマの遺跡に到着し探索する。遺跡は冒険者達が入り口を探しても見つからず諦めて帰還して行った。ゴードンは元冒険者だった自分を見ているようで腹立たしかった。依頼の目的を達成した時点で依頼主が終了を言い渡しても浅ましく中に侵入しようとする。自分も同じ金目当てで死にかけた。アレクは察してゴードンに言う。

「そんなに怒らなくてもいいさ。俺達は命と引き換えに力を得ただけで彼等と同じ人種だったんだ。俺だってこんな遺跡を見つけたら興奮して中に侵入してお宝を探すさ。たぶん命を落とすだろうけどな。それぐらい冒険者家業は切実なんだ。」

ゴードンが言う。

「解ってるんだ。俺も同じだって事は、だが馬鹿な事で命を落とす必要なんてない。気づいて欲しかっただけなんだ。無駄死にはもう見たくない。」

アレクがゴードンの肩を叩く。

「また冒険者に戻って組合長になればいいさ。指導してやれば理解するさ。」

ゴードンが怒る。

「戻る訳ないだろ。今の方が楽しいんだ。それならシルヴィと二人で旅に出た方がいい。あんな素人冒険者の面倒なんて見てたら俺が死んでしまう。」

アレクが笑う。

「ゴードンが旅に出るのは困る。食料調達の人材は貴重だ。そうだ皆で狩りに行く約束がまだだ。エピンに集合して何処かに行くか?」

ゴードンが喜ぶ。

「アレク。それはいい。オーディス兄にも会いたい。ガヴェインも呼んで競うのがいい。ダルスの弓も見てみたい。イザークも凄腕だ。アグニスが曲者だな。」

アレクが楽しそうなゴードンを見て嬉しくなる。

「中に入ってみるか?」

ゴードンが聞く。

「危ないんだろ。古代兵器なんだろ。」

アレクが言う。

「危険な物だろう。だが確認しないと俺以外が使用して世界が滅ぶのは困る。この遺跡の延長線上は大切な人達がいる何処を攻撃されても困る。そうだろ。」

ゴードンが頷く。

「ああ。ラースは目の前だ。一番危険な所だ。確認しよう。」

アレクが黒霧で遺跡を覆い中を確認する。何処も進入できない。アレクが話す。

「この遺跡は建物ではなく。兵器の一部か兵器そのものか。だとすると動かす別の物があるはずだ。少し周囲を探る。ゴードンは周囲の警戒を頼む。」

ゴードンがアレクを守るように周囲を警戒する。アレクが感知能力を高めて周囲の異物を調べる。密林の中をアレクの感覚が飛ぶ。樹木の異変などを確認し遺跡から全周囲を調べる。少し先に樹木のせり上がった根が建物を包んでいる場所を見つける。

「怪しい物があったぞ。この先だ。」

アレクがゴードンと見つけた建物に向かう。その建物は半地下になっていて屋根の部分は樹木が根を生やして育っている。見た目には岩の上に生えた樹木に見える積もった土を除けると窓が現れる。硝子で外を監視するように出来ているが硝子が一般の物と違い分厚く硬い、しかも透明度が高く中が丸見えだ。アレクは建物の入り口を探し窓の裏に階段を見つけ生い茂る草木を除去して入り口を開ける。

バシュゥゥゥゥゥ

ゴードンが聞く。

「変な形の扉の取手だ。中の空気が凄い勢いで出てきたぞ。」

アレクが言う。

「気密性が高いんだ。中に空気や水が進入しないように出来てる。入ろう。」

アレクが中に入る。中は広くはないが大人が十人は入って窓から外を覗ける広さだ。隣に地下に続く扉がある。外に出ている部分は窓のある部屋だけだ。アレクは部屋を確認すると窓の手前に古代文明の城で見た機械が並んでいる。迂闊に触れば発動してしまう可能性がある。ゴードンに何も触らない様に言い。地下の扉を開ける。

バシュゥゥゥゥゥ

「おいおい。この下にも同じように気密性の高い部屋があるのかよ。」

ゴードンが心配になる。アレクが言う。

「ここから遺跡に行けるんじゃないか?」

ゴードンが言う。

「俺の大きさじゃ通れないぜ。ここで待ってるよ。狭いと暴れたくなる。」

アレクが言う。

「ああ。直ぐに戻る。ドルマが来たら追い帰してくれ。見てくる。」

アレクが地下に下りて行く。地下にはアレクが一人通れるくらいの道が続く。ゴードンでは途中で動けなくなる狭さだ。この通路は移動用ではなく緊急用の通路なのだろう。先に進むと扉が現れる。地上の位置だと遺跡の真下辺りだろう。アレクが扉を開ける。

バシュゥゥゥゥゥ

ここも気密性の高い部屋がある。アレクは中に入り確認する暗闇の中に点滅する光が見える。近づいて確認すると指で押した痕が残っている。アレクは押す。

パチパチパチパチ

部屋を照らす光が続けて点いて行く。アレクが目を凝らし確認する。

「なんだこれは?四角い箱が大量に並んでいる。いったい何に使うんだ。」

アレクは説明書や資料がないか探す。机と書棚が一つずつ置いてある。書棚を確認し資料を見つける。資料を確認し読み始める。

「永久電池・永久動力・永久融合炉。此処にあるのは永久電池だ。永久動力もある。ここは飛行艇に使われる動力の製造所なのか?だか工場には見えない。この電池が繋がっているのは上の部分に向かっている。飛行艇の動力線に似ている。上の階に何かあるな。」

アレクは上の階に上がる通路を探す。動力線の先に扉を見つけ開ける。

バシュゥゥゥゥゥ

アレクは中に入り上に昇る梯子を見つけ上の階に向かう。

ガコンッ

梯子の最上部の扉を開けると部屋の中は温度が高く動力が流れている事が解る。

「ここは稼働したままだ。下の動力が流れたままなんだ。」

アレクは熱源を探り近づく。古代文明の城の地下にあった機械と同じ物が熱を帯びた状態で放置されている。アレクは危険な物だと確信する。

「城の地下の物は動力が生きていなかったが、ここの機械はいつでも動かせる状態だろう。射程に入っている場所は生命が消える。これは破壊するべきだろう。だが何故か残さなければいけないとも思える。サイファの血が教えてるのか。」

アレクは悩みながら答えを出す。

「これが動力を必要とするなら地下の永久動力を外して無力化しておけばいい。動力は飛行艇に使わせてもらう。この施設から全て外せば起動できないだろう。もしここを使う必要があればここに動力を戻せばいい。ロックと相談する必要があるし秘匿しないと危険な物なのは確実だ。ダロスの他の場所にもあるのだろう探すのが大変だ。」

 アレクは地下に向かい永久電池と永久動力を外し上の機械を無力化する。運搬用の出入り口が無い施設は特殊な金属で土魔道が使えない。特殊な合金でアレクには理解できないのだ黒金剛のような鉱物であれば金属として扱えるが金属が編み込まれたような造りで理解できない。ドワーフにも作れないかもしれない金属板をアレクは参考用に一枚持ち帰る。

運搬用の通路も無い為、通って来た狭い通路に風魔道で永久動力を送りゴードンが受け取る窓の部屋が動力で満杯になり残りは後日にする。

 アレクは建物を偽装し超硬質化して誰も進入できない様にする。アレクとゴードンは一度エピンに帰還して飛行艇で回収する事に決めドルマを後にする。ゴードンはラースにシルヴィを迎えに行き。オーディスに今回の大戦の話しをしてエピンに向かう。アレクは先にエピンに向かい飛行艇の準備をする。アレクはリアとカリナと話す。

「リアもカリナもドレルの飛行艇が出来上がるまではエピンに滞在するか?スィードに戻るなら送るぞ。お前達の好きにしていい。暫くは悪意も動かないだろう。気になる所はあるがサイファに任せておく。」

リアが答える。

「私はロックの飛行艇を待ちたい。エピンに残る。」

カリナが言う。

「私も残る。スィードも心配だけど私達が戦力を連れ帰ればサイファ姉も喜ぶ。」

二人が拳を合わせる。アレクが言う。

「好きにしていいが仕事もしてもらうからな。タダ飯は無しだぞ。」

二人が笑いながら返事をする。

「「はぁい。アレク兄さんに従いまぁす。」」

 アレクがネリーナ達に会いに向かう。白い屋敷に滞在しているネリーナ達はアレクの帰還に喜び抱きつく。ネリーナが妹達を叱りつけアレクに謝る。アレクがエデンでの戦闘を一部始終報告し皆は涙する。ネーセルとネスレムが霊安室で眠っている事を告げ皆が帰還を望む。アレクは直ぐにでも出発する事を告げるとネリーナ達が準備を始める。アレクはゴードンの合流を待ってエデンに向かう事をバーンとアグニスに告げ出発の準備に入る。


 ゴードンがラースからシルヴィに騎乗してエピンに到着する。アレクはエデンに出発する事を話し貨物室にシルヴィを乗せてゴードンが飛行艇に乗る。アレクが飛行艇に同乗する皆に言う。

「今回はエデンに向かいネリーナ達を送り届け今後の話し合いをする。その後はアモンに寄り今後の話し合いだ。最後にドルマに着陸して飛行艇の材料を回収する。危険な場所は三か所ともだが一番の危険地帯はドルマだ。戦闘になれば対応は各自で動いてもらうが、今回は最少人数で動く緊急時は近隣から援軍を頼む。何処からも強力な援軍が到着するが大事になると気づかれたくない事が周りに知られてしまう。それは避けたい。」

アレクが確認する。

「リアとカリナは飛行艇の操縦と周囲の警戒を担当してくれ。ゴードンは俺の護衛と戦闘時には敵殲滅を任せる。ビートは黒雲と同行してくれ。上空からの監視は任せる。」

アレクがネリーナ達の到着を待って飛行艇を出発させる。飛行艇の動力、魔道石はアレクが充電し最大の状態で搭乗員も少ない為、往復分は十分に足りる。ネリーナ達が驚く。

「アレク様。この飛行艇は魔道で動いているのですか?」

アレクが話す。

「たぶん。ネリーナ達の古文書にも飛行艇の事は載っていると思う。それは良い話では無いと思うが参考になるから調べるといい。道具は使う者次第なんだ。人を傷つける物にしてしまうのは使う者の心が悪意に負けて衝動を抑えられなくなるからだ。最初から無ければ、そんな事も考えないが人間種は好奇心には逆らえない哀れな人種なんだ。」

ネリーナ達が頷き自分達も同じだと話す。

「私達もエデンの外を見てみたくて悲劇に遭いました。エルフ族も同じです。」

アレクが頷き話す。

「ネリーナ達は間違ってないよ。自分達が望む世界を見たいと思う心を大事にしてほしい。今回は酷い目に遭ったとしても、それは世界が病んでいたからだ。俺達が出会えた事は君達の想いの手助けになるし俺達も君達を知る事が出来る。これから始まると考えてほしい。ネリーナ達は長命種だ。もっと世界を知るべきだ。だから強くなってくれ。」

ネリーナ達は抱き合い強くなることを誓う。リアが近づいて言う。

「アレク兄さん。あまり女性に優しくしないように。」

カリナも操縦しながら言う。

「サイファ姉が悲しむから黙ってるけどね。」

ゴードンが笑う。アレクが困りながら言う。

「外交担当を増やすのが一番だ。俺はもうやらないからな。」

皆が笑う。アレクは呆れる。ゴードンが大笑いする。

「お前、笑い過ぎだ。お前も早く結婚しろ。」

ゴードンが格納庫に向かいながら言う。

「シルヴィ。アレクに怒られたぁぁぁ。」

皆が笑い。アレクがゴードンを小突く。

エデンが近づきビートが先行して確認する。ビートが安全を確認しカリナに合図する。

「皆。着陸するよ。森だらけだから枝に当たると破片が飛んで来るから注意してね。」

カリナは見事な操縦で森の隙間に飛行艇を着陸させる。

アレクがカリナの頭を撫でて言う。

「流石だよ。カリナもリアも天性の操縦士だ。周囲の警戒は怠るなよ。」

カリナとリアが応える。

「ああ。警戒してる。」

アレクがビートに言う。

「上空から監視を頼むぞ。飛行艇を守ってくれ。」

ビートは手を振り合図をする。アレクはネリーナ達とゴードンとエデンの大樹に向かう。


 アレク達が大樹の前でネイルスに出迎えられる。ネリーナ達が父親と抱き合い慰め合う。アレクとゴードンが大樹の迎賓室へ通される。ネイルス達が地下の霊安室でネスレムとネーセルに別れの祈りを捧げてから、迎賓室に入室する。アレクはエデンとダロス西域の今後の対応を決める。会議の場にはエデン側からネイルスと重鎮達が並ぶ。

 アレクがエルフ族の今後の確認をして意見交換をする。エルフ族の重鎮達は人間種との交流に反対しネイルスが説得する。今大戦を止められなかったエルフ族には戦後処理の権利が無い事を話す。だがエルフの重鎮達は聞く耳を持たない。石頭のネイルスが更に石頭の重鎮に頭を抱える。アレクが話しに加わる。

「エルフ族の重鎮達よ。黒竜王アレクである。俺の話を聞いて欲しい。」

ネイルスが頭を下げて礼をする。重鎮は黙してアレクを見る。アレクが話す。

「エルフの重鎮達よ。エデンを解放する必要は無い。このまま鎖国してダロスの行く末を見守ればいい。世界の終わりを見届けるのもエルフ族の使命なのだろう。俺達人間種は未熟な種族で短命だ。生まれて死ぬまでに悪に染まり周囲を混乱に巻き込む哀れな種族だ。だが未熟な種族にも世界を守る意志はある。エルフ族にはあるのか?」

エルフ族の重鎮は沈黙したまま話さない。ネイルスが話す。

「アレク王が言われる世界を守る戦いとは過去の竜種同士の対決の事でしょうか?」

アレクが答える。

「貴方達にはダロスの歴史を記録した人も書物もあり、エルフ族そのものがダロスの生き字引だ。俺が話さなくても知っているしこの先の未来も解っている。ネスレムの暴走も結果を解っていても放置した。それはダロスの意思では無い。エルフ族が傲慢なんだ。長命である事をいいように解釈し事が過ぎるのを待っている。解決する知識も力もあるのに何もせず、刻が過ぎるのを待っている。ただ長生きしている植物と一緒だ。」

重鎮達が怒りだす。

「何を偉そうに話している。この人間種ごときが。悪意の申し子達人間種がダロスを滅ぼすのじゃ。我等は滅びの日を生き抜いてダロスを再び蘇らせる使命があるのじゃ。」

アレクが笑う。

「何だ。置物じゃないのか?喋れるじゃないか。」

重鎮達が顔を真っ赤にして吠える。

「この悪魔達め。エデンから出て行け。人間種はエデンに進入させない。」

アレクが呆れて話す。

「おい。エルフ族の爺さん達。顔が若過ぎて爺さんに見えないな。お前達は未来を見えてないぞ。世界の終わりの日が来てエルフだけ、エデンだけが生き残れるわけないだろう。勝手に自分達の都合で未来を解釈するな。」

重鎮達が驚く。ネイルスが確認する。

「アレク王。その未来は必ず来るのですか?」

アレクが話す。

「今は分岐点にいる。ダロスの未来が決まっているのは竜種同士の対決が近いという事だけだ。だが今までのように何方かが勝ち、世界が動き出す繰り返しの未来では無い。」

重鎮が騒ぐ。

「何故、そうなる。何百何千と同じ事を繰り返している。エデンはただ待てば時代が動き出す。我等は記録して見守ればいい使命なのだ。」

アレクが話す。

「幾百幾千幾万幾億と繰り返す未来なんて望まない。その渦の中にある悲劇を繰り返す人々を救うのが俺の使命だ。それは竜達の想いでもある。お前達の守護神ドルガルも同じ想いだ。彼等には安らかな眠りが必要なんだ。」

重鎮が畏れる。

「アレク王は竜種の代弁者なのですか?」

アレクが話す。

「エルフ族の重鎮達よ。この世界の揺り篭を記録する賢者達よ。お前達の役目は記録する事でも見守る事でもない。その長命種の役割は全ての世界に己の見て聞いて知った事を伝え、不幸を繰り返させない様に導く事だ。森に籠って生き残る事では無い。」

ネイルスが聞く。

「アレク王はこのダロスの歴史を止めるのですか?」

アレクが話す。

「繰り返す負の連鎖と渦を止めるんだ。ダロスをダロスに生きる人々や生き物達に託すんだ。天の意思はいらない。」

重鎮が怯える。

「アレク王。お止め下さい。ダロスは天のものです。逆らってはいけません。」

アレクが話す。

「俺は天に逆らうわけではない。ダロスを独り立ちさせて欲しいだけだ。その為にも竜を解放し俺を天に知ってもらう。エルフ達も天司族とは因縁があるのだろ。」

重鎮達は黙ってしまう。ネイルスが聞く。

「天司族とは、どんな因縁があるのですか?」

重鎮達は話さない。アレクが話す。

「天の使い。天司族はエルフの原種。羽を持つ者と持たぬ者。地上に縛られたエルフ族は天の使いだ。役目は違うが同じ種が別れた者達だ。」

重鎮が聞く。

「アレク王は何故それを知っているのですか?」

アレクが話す。

「俺はザウザーの眷属だ。」

重鎮が席から立ち上がり床に平伏す。

「知らぬ事とは言え、無礼な物言い。心から謝罪します。御許し下さいませ。」

ネイルスが驚く。アレクが話す。

「エルフの賢者達よ。席に就け。話しはまだ終わっていない。」

重鎮達が慌てて席に座る。アレクが話す。

「エルフ族が天の意思に逆らえないのは種族の血だろう。その魔道力があれば世界も制する事ができるがエデンから動けない。中には縛りが薄れ外界に出る者達も産まれるが、結果悪意に晒されて今回のように大戦の引き金になる。真面目なエルフ族だったネスレムが暴走した原因に繋がる。だがエデンに縛られる事はエルフ族には良い事では無い。」

重鎮が聞く。

「ですが我等はここから動けないのです。エデンを守る事が使命のはずです。」

アレクが話す。

「それは自己暗示だ。長命である為に自ら縛り付け動けなくなっただけだ。若いエルフには縛られている者は少ない。それが事実だ。賢者であるが故、自分達以外の話を聞かぬ石頭になっているだけだ。その知識の使い道を自ら探せば、エデンは帰るべき故郷として世界を旅し見聞を広め更なる大賢者になれるのだ。長命種の役目を果たせ。」

重鎮達が己の至らなさに嘆く。アレクがネイルスに言う。

「重鎮達はこれからも良き指導者でいてくれるだろう。ネイルスはエデンを統括して若きエルフ族を纏めて欲しい。俺よりも皆年上なんだから世界の流れは理解できるだろう。エデンは鎖国していてもいいが緑竜ドルガルは動き出す。大樹が皆を守っているから大丈夫だ。巨大な魔道石も俺が代わりを見つける。」

ネイルスが応える。

「はい。エルフ族を纏めます。重鎮達も協力してくれます。ただ、問題があります。」

アレクが話す。

「ダークエルフとの関係だな。」

ネイルスと重鎮が頷く。

「はい。アモンに出向き、彼らに対する謝罪をしなければならないと思っています。」

アレクが話す。

「お前達が忌み嫌うダークエルフ族は元は同じ一滴なのにな。」

ネイルスが驚く。

「そんな・・・我等とは違う人種だと聞いています。」

アレクが話す。

「そんな訳ない。肌の色が違い得意な魔道が違うだけだ。同じ種が源流にいるんだ。」

重鎮も聞く。

「我等の古文書にも別種族とあります。」

アレクが言う。

「ならお前達の起源は何処にある。俺の知識の種には全ての生命は古の竜が産み出しているんだぞ。人間種も魔道が使える者達が存在する意味がそこに繋がる。流れた刻が違うだけで成長と進化が変わっているんだ。賢者なら気づいているはずだが、それも石頭が邪魔してるんだ。もっと柔軟に考えて世界と関わってくれ大賢者達よ。」

重鎮達が頭を下げて反省する。

「アレク王の言われる事。御尤もです。我等の石頭を反省しています。」

アレクが話す。

「ダークエルフ達とは後日、席を設けて話をしよう。謝罪もすればいい。俺が調停だ。」

アレクがゴードンと席を立つ。

「ネイルスは交流の為の窓口になる外交官を選出してくれ。ダロス西域との会談に参加してもらう。頼むぞ。俺はダークエルフと話してくる。また伺う。」

アレクが大樹から出て飛行艇に向かう。アレクの元にネリーナが駆け寄って来る。

「アレク様。私はエデンの外交官になってダロス西域会議に参加します、必ずエデンと世界を繋げてみせます。」

アレクが頷きネリーナと別れ飛行艇に搭乗する。アレクが言う。

「次はアモンだ。向かってくれ。」

カリナが返事をする。

「あいよ。飛行艇上昇。アモンに向け発進。」

エデンの森から飛行艇が上昇し進路をアモンの大樹に向ける。黒雲が先行し飛行艇が進む。エデンの森は戦火に焼かれた場所も回復し緑が埋め尽くしている。


 絶壁の谷底を流れるテイリュ川の支流を超えアモンに入る。中央の大樹が近づく。アレクが大樹の近くの開けた場所に飛行艇を着陸させる。ビートに周囲を警戒させて、アレクがゴードンとアモンの大樹に向かう。大樹の前でデルニスとデリータが出迎える。アレクが二人に挨拶をする。

「デルニスもデリータもご苦労様。エルフ族と話をしてきた。」

デリータが挨拶をする。

「アレク様。御無事でなによりです。エルフ族は何と言っていますか?」

アレクが話す。

「ダークエルフの主要な者達と話をしよう。集められるか?」

デルニスが頷き、アレクとゴードンを会議室に通す。

会議室にはデルニスの他に重鎮らしき者が三人とデリータと三兄弟も出席している。

「ダークエルフの皆には今大戦で被害に遭った事を人間種の代表として謝罪する。」

アレクが皆に頭を下げる。デリータが止めさせる。アレクが続けて話す。

「エルフ族は今後も鎖国を続ける。お互い干渉しない事になる。俺はエルフ族もダークエルフ族も自由に生きてくれればいいと思っている。」

デルニスが話す。

「エルフ族から今大戦の謝罪はありましたか?」

アレクが頷き話す。

「ああ。こちらに出向いて謝罪すると言われたが、会談の場を設けてお互い話し合いをするように言い聞かせた。その時に謝罪するだろう。」

デルニスが頷き席に座る。アレクが話す。

「今後のダークエルフ族に俺からの要望だ。今後もアモンは自然と共に生きてくれていいがダロス西域との外交も築いて欲しい。情報の共有をしてもらえればいい。」

デリータが話す、

「私が外交を担当します。」

ダークエルフの長老達が話す。

「人間種の王よ。ダークエルフは世界と関わる気はない。此度は救ってもらい感謝しているが今後もアモンから誰も出す事はない。デリータもアモンから出てはならん。」

デリータが反発する。

「爺様達は古すぎる。今大戦で一方的に攻められたのも世界の情報が無いからエルフ軍が侵攻してくる事が解らなかったんだよ。」

長老が話す。

「それはダロスが決めた事、受け入れる事も我等ダークエルフの使命だ。」

デリータが怒り長老を睨む。アレクが話す。

「それもダークエルフが滅びる原因だ。生きているのに生きていない。」

重鎮達が睨み言う。

「我等は自然と共に生きる種族だ。それで滅びるのであれば受け入れるのみ。」

デリータが怒り重鎮に言い返す。

「私達は滅びたくない。勝手に決めないで下さい。」

長老が叱る。

「デリータよ。ダロスの意思に逆らう事はならん。死も受け入れよ。」

デリータが悲しむ。アレクが長老を叱る。

「爺さん。命をなんだと思っている。お前達の物ではないぞ。勝手に決めるな。」

重鎮が睨みつけ話す。

「人間種の王よ。それが本性なんだろう。失礼な奴だ。」

アレクが話す。

「自分達の身内の、家族の命を大切にしない爺に礼儀はいらない。救う事もせずに偉そうに自分達の決め事で子供達を縛る。外敵以上に悪意の塊だ。アモンを滅ぼしても良いと言うその心が既に死人の考えだという事が解らぬ生ける屍だ。」

冷静な顔だった長老たちが怒りを露わにする。

「生ける屍だと?短命種の分際でこのダロスの生き証人を愚弄するか。」

デリータが心配になりアレクに近寄り宥める。アレクがデリータに合図して話す。

「何を偉そうに言う。何も出来ない爺が、長生きはお前達の種族特性だ。お前が努力や鍛錬で得た物では無い。長生きした所で無駄な刻を過ごしているだけだ。短命種の一日にも満たない空っぽの人生だ。」

デリータが固まる。重鎮がアレクに向かって魔道を飛ばそうとする。アレクが言う。

「そんな簡単に会談相手に魔道を飛ばそうとする低能ぶりを自分で証明してどうする。」

アレクが長老たちの魔道を解除する。驚く重鎮達。

「闇魔道を極めれば魔道を解除することも出来る。」

三兄弟が跳び上がり聞く。

「アレク様。ぜひ御教授下さい。」

アレクが笑いながら注意する。

「今は長老達と話している。」

デリータが怒り。三兄弟が反省する。アレクが話す。

「長老達よ。お前達は長く生きて何を得た。ダロスを見て来たように言うがアモンにいて世界が、ダロスが見えるのか?俺の感知でもダロス全域は見られないぞ。」

重鎮達が沈黙する。アレクが続ける。

「ダークエルフ族は闇魔道を継承する種族。全ての魔道属性を極める事の出来る唯一の種族。お前達は長い年月を生きて闇魔道を極めていないのか?何をしていた。」

長老達が恥ずかしそうに項垂れる。アレクが続ける。

「ダークエルフの使命は解るが、それが全てでは無い事を知って欲しい。長老達は間違ってはいないが片側だけを見ているんだ。」

長老達が訊ねる。

「アレク王。片側とはどういう意味ですか?」

アレクが話す。

「エルフ族にも話したが長命種の役割は生き延びる事や眺める事では無い。その知識と力を世界に伝え導く事が本当の使命だ。その為にも本当の世界とダロスを知らなければならない。ここアモンにいてそれができるのか?魔道を極める事が出来たのか?ダロスの果てで起きている戦いを記録できたのか?ただ長く生きていては何も得られない。」

長老達が目を瞑り自分達の無駄な刻を反省する。デリータが聞く。

「ではダークエルフがするべき事は何でしょう。」

アレクが話す。

「今まで通りアモンで自然と共に生きればいい。だが世界を見て知る事も使命だ。短命種の世界を知る事も次の時代に伝える必要な事だ。知識を得て魔道を極め世界を知りダロスを伝える。長命種にしか出来ない使命だ。長老達なら理解できるだろう。」

重鎮の長老達が頷き返事をする。

「アレク王に謝罪します。我等は長命である事に慢心し過ぎておりました。御許し下さい。今後は次の世代の相談役に下がりアモンには口を挟みません。」

アレクが言う。

「それではダークエルフの財産が埋もれる。長老達がアモンを変えればいいんだ。貴方達ならできる。簡単な事だ。世界と関わる為に踏み出してくれればいい。」

長老達が席を立ちアレクに頭を下げる。アレクが言う。

「若い世代のダークエルフが世界を知り、長老達が更に若い世代を育てる。それはダークエルフ達が繋いで行くダロスの歴史となるんだ。俺達の一生では語り継げない。貴方達にしか出来ない使命だ。」

長老達が頷く。デルニスとデリータも頷く。アレクが話す。

「これで問題は無いな。デリータが外交担当になればダロス西域と交流が生まれる。三兄弟も世界を見るんだ。長老とデルニスが厳しく監視すれば間違いは起きないだろう。」

皆が笑顔で笑い合う。アレクが長老に謝罪する。

「長老達に失礼な事を言いました。御許し下さい。賢者の目を覚まさせないと話になりませんので、無礼な振る舞いを謝罪します。」

長老達が笑う。

「アレク王の戦略に嵌りました。此方こそ失礼な言動を謝罪します。」

アレクがデルニスに言う。

「俺は一度ルーマに帰還する。会談の日時が決まれば迎えを送る。また会おう。」

アレクとゴードンが席を立ち大樹を後にする。デリータと三兄弟が後を追う。

「アレク様。ありがとうございました。長老が許してくれたので私達は世界を見に行きます。弟達も成長できると思います。」

アレクがデリータに手を振り合図する。飛行艇に搭乗して次の目的地に進路をとる。

「カリナ。次はドルマだ。危険地帯だ。頼むぞ。」

カリナが言う。

「了解。飛行艇上昇。目的地はドルマ。全周囲警戒だよ。発進。」

ビートが黒雲と先行しドルマ上空から監視する。飛行艇は遺跡を目指し飛行する。


 ドルマ上空に入り遺跡に近づく。低空で飛行し周囲を警戒する。アレクがカリナに着陸する場所を指示する。着陸した場所は周りを木々が囲み、ドルマに襲われれば迎撃は難しい。アレクは着陸と同時にゴードンに周囲を警戒させてリアには飛行艇の防御を任せる。格納庫を開けてシルヴィをゴードンの元に向かわせ。アレクは遺跡から永久電池と永久動力を運び込む。一気に大量の電池と動力を格納庫に詰めて、用意した搬出分を全て回収し格納庫を閉める。アレクがカリナに言う。

「いつでも飛べるように待機していてくれ。ゴードンを呼んでくる。」

カリナが不穏な気配に気づく。

「アレク兄さん。囲まれてる。」

アレクが言う。

「カリナは上空で待機。リアは防御。俺とゴードンで排除する。」

カリナは緊急浮上し上空に待機する。飛行艇を無数の矢が襲う。リアの風魔道が全ての矢を弾き飛ばす。リアが言う。

「アレク兄さん。敵の中に南方の蛮族がいる。毒矢が混ざってるよ。」

リア達は海賊との戦闘経験が多い。見慣れた矢に直ぐに気づく。アレクが言う。

「リアはそのまま防御に集中。ゴードンと俺で一掃する。ゴードン。」

ゴードンがシルヴィに騎乗して答える。

「おお。周りを囲んで毒矢を仕込んでる。外道集団だ。全部潰す。」

アレクが言う。

「聞き出す事がある。何人か南方の者は捕らえる。分かったな。」

ゴードンが言う。

「おお。任せろぉぉぉ。」

 ゴードンがドルマの兵士達をシルヴィと蹂躙する。南方の兵士が毒矢を放つがゴードンは重力を発動したまま移動している。毒矢は全て届かずに地に落ちる。ゴードンは毒矢で狙った南方の兵士に狙いを定め襲いかかる。相手は自分の矢が通用しないゴードンに恐怖し絶命する。ゴードンは叩き潰した南方の兵士を見せしめに大斧にぶら下げ敵を追い込む。ゴードンとシルヴィの恐ろしさにドルマ兵はオーディスの姿が重なり逃げ出す。とり残された南方の兵士が眼前のゴードンに怯えて気絶する。ゴードンが南方の兵三人を拘束し残りを消して行く。ゴードンが掃除を終えて戻って来る。

「アレク。ドルマは逃げたが南方の奴等は逃げなかったぞ。三人拘束した。」

アレクが言う。

「たぶん、ドルマが逃げ出したのが誤算だったんだろう。後ろから毒矢で悪さをするような連中だ本当の戦いなんてしたことが無いんだろう。泥棒集団だ。」

ゴードンが納得する。飛行艇が降りてくる。

「アレク兄さん。南方の奴等はどうなった?」

アレクが答える。

「捕らえたから尋問する。カリナとリア達はエピンで待機していてくれ。情報を聞き出したら二人に教える。頼んだぞ。」

カリナとリアが返事をして飛行艇をエピンに移動させる。アレクがビートに確認する。

「ビート。上空からドルマの動きは確認できるか。」

ビートが答える。

「いえ。先程もいきなり現れました。何かの妨害効果が発動してるのでしょうか?」

アレクが話す。

「俺の感知も反応しなかった。南方の術かもしれない。今から尋問して吐かせる。」

ビートが返事をする。

「私は上空から最大望遠で監視します。ドルマの動きは見えますので連絡します。」

アレクがゴードンと拘束中の南方兵を尋問する。

「こいつらは下っ端だろ。何も知らないんじゃないか?」

ゴードンの意見にアレクが答える。

「そうだな。知ってる事だけ吐かせて指揮官を探しに行くか。」

アレクが黒霧で三人の南方兵に尋問する。

「お前達は何処から来た。」

南方兵が答える。

「南の海洋王国アルマキア。」

アレクが聞く。

「その国の王の名は何と言う。」

南方兵が答える。

「南海王ネモニス。」

アレクが聞く。

「お前達が侵攻した目的は何だ。」

南方兵が答える。

「エルニアの復興。」

アレクが不機嫌になり聞く。

「お前達が使った妨害の術は何だ。」

南方兵が答える。

「光魔道による光の迷彩効果。」

アレクが聞く。

「それはどのような仕組みでどうやって発動しているのだ。」

南方兵が答える。

「光の魔道士から魔光石に魔道を溜め込み各兵士に配られています。光魔道により周囲の探索から姿を消す事ができます。光による視覚の妨害と聞いています。」

アレクが攫われた光の魔道士が利用されている事を確信する。

「お前達の指揮官は何処にいる。」

南方兵が答える。

「ドルマの南方居住地に待機しています。」

アレクが聞く。

「他の地域にも侵攻しているのか。」

南方兵が答える。

「ドルマが成功すれば他にも侵攻する準備をしています。」

アレクが聞く。

「何処まで侵攻する予定なんだ。」

南方兵が答える。

「最終目標は海洋アルノのスィードです。その後は聞いてません。」

アレクが聞く。

「お前達の主力はどのような部隊か話せ。」

南方兵が答える。

「私達の軍は各部族が独自の攻撃方法で戦います。海洋での戦いは中型船で敵船に襲撃して戦い。陸上では毒矢で敵を弱らせて戦います。全ての兵が肉弾戦です。」

アレクが聞く。

「お前達は竜種を使役しているか。」

南方兵が答える。

「はい。海竜種で鰐竜を複数使役しています。」

アレクが聞く。

「お前達は略奪が生業だな。女子供はどうする。」

南方兵が答える。

「女は自分の物にするか上官に貢ぎます。子供は売り飛ばします。」

ゴードンが動き出すのをアレクが止める。アレクが聞く。

「それ以外はどうする。」

南方兵が答える。

「全て殺します。食い物が足りなくなるので殺します。」

アレクはゴードンを自由にさせる。南方兵は消滅する。アレクが言う。

「最悪な展開になる前だったな。全域に警戒態勢を布かせる。海岸線と河川からの侵入に警戒させ広域の偵察を厳重にさせる。問題は魔道による妨害だ。対策が必要だ。」

ゴードンが聞く。

「俺は奴等の指揮官を摑まえに行くがアレクはどうする?」

アレクが話す。

「ゴードンはそれでいい。海岸線に待機している船を俺がビートと潰す。」

ゴードンが聞く。

「ドルマはどうする?馬鹿な奴等だが利用されてるだけなのも問題だろ。」

アレクが答える。

「南方に押しつけるか、ゴードンが決めてくれ。滅ぼすには哀れな民族だ。」

ゴードンが言う。

「ドルマの首領と戦って決めるか。とりあえず南に向かう。」

アレクが言う。

「俺も上空から監視する。南で合流しよう。」

アレクはビートを呼び、黒雲でドルマの南に移動する。狙いは南方の船団の拿捕だ。


 アレクは思念でイザークとガヴェインに連絡する。南方兵が海岸から侵入をする動きがある事を伝える。アレクが敵の感知妨害について説明する。

「二人共、南方兵は感知能力を妨害する魔道を装備している。感知に頼らずに気配を探ってくれ。風魔道による索敵が可能なようだから大気の流れを探れば異物に気づけるはずだ。視覚の妨害で実態が見えないからな。」

イザークが応える。

「解りました。大気の流れで探ります。外洋の船は落としますか?」

ガヴェインも確認する。

「アレク王。此方にも何隻か船が見えます。どうしますか?」

アレクが二人に指示する。

「船は俺が拿捕して其方に届ける。再利用してくれ。何にでも使えるからな。」

二人が返事をして海岸で索敵を開始する。

 アレクはゴードンがドルマの南の集落に到着したのを確認して沖の船団を強襲する。黒雲を上空に待機させてアレクが船に降下する。甲板に静かに着地し船員達には気付かれていない。潜入部隊を送り沖で待機している部隊に警戒心はない。アレクが必要ない船員を始末して海に沈める。甲板の船員は殆どいなくなり残った南方兵が驚いて叫ぶ。

「なんで誰もいないんだ?何処にいったんだ?」

アレクが話す。

「お前達が隠れて潜入した事と同じだ。見えないんだろ。」

声しか聞こえない南方兵が怯える。アレクが残りの船員を黒霧で操作する。

「お前達は操船の為に残した。指示通り動け。」

残された船員は素直に指示に従う。

 アレクは他の船も制圧し支配する。黒雲に乗り新国スプラードの沖に向かう。沖に待機している船は三隻、いずれも中型船で南方兵を移動させる為の船だ。黒雲を上空に待機させて先の船と同じように制圧し支配する。沖から潜入して行く南方兵を確認すると海岸でイザークが対峙していた。

 イザークはアレクから指示されていた通り海岸で潜入してくる南方兵を索敵していた。言われていた感知に反応しない敵兵を視覚と聴覚、嗅覚で確認する。視覚は阻害されているが僅かな歪みがイザークには見える。風が南方兵の位置を教える。イザークは高速の動きで潜入した南方兵を斬り払う。黒い長剣が南方兵を次々と襲う。いきなりの攻撃に自分達が隠れている事を忘れて騒ぎだす。だがイザークは構わず斬り払い続ける。鮮血が飛び散り視覚阻害も浴びた血で解除されていく。イザークが言い放つ。

「南方兵よ。隠れているつもりだろうが全て見えている。逃げ場も無い、戦って散れ。」

イザークの威圧に武人との戦いを知らない南方の泥棒達は恐怖し動けなくなる。海岸線は赤い砂浜に変わり潜入部隊の南方兵は全て消え去る。

 アレクは黒雲に乗り次の船団を強襲する。新興国自由貿易国アルノの沖に三隻の中型船が待機している。アレクが制圧し支配しガヴェインの様子を確認する。南方兵が薙刀に斬り刻まれて海岸線に積み重ねられている。ガヴェインに感知妨害しても意味が無い事を知らないで、隠れて潜入した南方兵が全て消え去る。ガヴェインのような武人に潜入や潜伏の真似では通用しない。足音や大気の流れで存在は認識できてしまう。隠れて行動するなら全ての存在を消さなければ、達人の領域にいる武人を躱すこと等できない。

「ガヴェイン。見事な掃討だ。この中型船は港に送る。船員は拘束して尋問でもするといい。できれば潜入部隊が所持している魔道石、魔光石を回収してくれ。」

ガヴェインが応える。

「アレク王の連絡のお陰で潜入されずにすみました。今後も警戒します。魔道石、魔光石は回収しておきます。中型船は自由に使っていいのですか?」

アレクが答える。

「戦利品だ。好きに使ってくれ。また会おう。」

アレクは先の船団に戻りジェイドに船を管理するようにイザークに伝える。港に船を送りアレクはドルマの海岸に戻る。

 海岸でゴードンとドルマの首領らしき男が対峙していた。首領の足元には南方兵の指揮官らしき者の亡骸が転がる。ゴードンが相手をしているドルマの首領はゴードンよりも大きな男で二メードを超えている。両手に棍棒のような巨大な武器を持ち振り回している。ゴードンも相手に合わせて大盾を外して背負っている黒斧と大斧を両手に持ち構える。相手を真似るように大斧と黒斧を振り回して挑発する。ドルマの首領が黒い顔を赤らめて怒りを露わにする。

「そんな顔したって強くはならないだろう。南方兵まで殺して逆上してるのか?かかって来いよ。受けてやる。」

ドルマの首領が言う。

「人間種が・・・俺に勝てる・・・と思ってるのかぁ。」

ドルマの首領が両手の巨大な棍棒をゴードンに振り下ろす。

ガッゴ

ゴードンの大斧と黒斧が棍棒を受け止める。ゴードンが言う。

「なんだ?それで全力か?デカいだけの偽物かよ。」

棍棒を振り払い。ゴードンが武器を手放し挑発する。

「素手で十分だ。来いよ。」

ドルマの首領が逆上して襲いかかる。棍棒を重ねてゴードンに叩きつける。ゴードンが足に部分強化をして棍棒を拳で撃ち抜く。

バァァァン

棍棒を破壊した拳の軌道上にあったドルマの首領の顔が吹き飛ばされる。ゴードンが言う。

「うわっ。貫通したか・・・悪い。」

ドルマ首領が倒れ、後方で見守っていたドルマ兵達がゴードンに怯える。一部のドルマ兵がゴードンに平伏す。怯えていたドルマ兵も平伏す。ゴードンが悩む。

「アレク。こいつ等なんか戦意が無いけど何なんだ?」

アレクが笑いながら言う。

「ドルマがゴードンの配下になった。どうする。ドルマの首領になるか?」

ゴードンが言う。

「ドルマの頭になっても戦力にならないだろ。」

アレクが話す。

「お前が鍛えればいいんじゃないか?身体能力は高い民族だ。面白いと思うぞ。」

ゴードンが言う。

「それでもいいが、意思疎通ができない。何とかしてくれ。」

アレクが話す。

「では俺がドルマの知能を高めよう、言語を得ればドルマも変わるだろう。」

アレクが南の集落全域に広範囲の黒霧で包み込む。ドルマ達が脳を活性化されて苦しむ。男も女も老いも若きも苦しむが、子供達は順応している。適応能力は子供の方が高いのが解る。苦しんでいたドルマ達が落ち着き、初めて話し出す。

「貴方は神の使いですか?神の遺跡を守る守護神なのですか?」

遺跡でゴードンを見たドルマ兵が話す。

「私達は言葉を覚えたのですか?人間種の言葉が解りますし話せます。」

女のドルマが話す。ゴードンが答える。

「お前達は黒竜王アレクによって成長し進化したんだ。空の王様に感謝しろ。」

ゴードンが黒雲に乗るアレクを指さす。ドルマ達がアレクに祈りを捧げる。アレクが言う。

「ドルマの民よ。そこの竜戦士ゴードンに従い、更に成長するがいい。蛮族の蛮行は頭から消し去れ。民を守り、弱き者を救う勇士の民族に変わるのだ。」

ドルマ族がアレクの言葉を理解し感謝する。

「これからの我等ドルマは竜戦士ゴードン様に従い。ドルマの民を守り弱き者を救います。蛮族から成長し勇士になる事を誓います。」

ゴードンが話す。

「では俺がお前達ドルマの戦士を鍛えよう。俺の部隊は突撃が主戦術だ。ドルマの戦士には合ってるだろう。」

アレクが言う。

「ゴードンは暫くドルマで楽しんでくれ。沖の船は新国スプラードに送る。ゴードンが強化した部隊を楽しみにしてるぞ。」

ゴードンが言う。

「ああ。隣国に橋を架けてもいいんだろ?移動し易くなる。」

アレクが言う。

「ラースには俺が話しておく。ゴードンの好きにしていい。アモンには架けるなよ。」

 ゴードンはアレクに手を振りドルマ族に指示を出す。ゴードンはドルマ族の戦士を鍛える為に部隊編成をする。今までのドルマに組織的な戦術戦闘がない。突撃を繰り返すだけの戦術ともいえない衝動的攻撃だ。兵種を決める為にそれぞれの得意な事を確認する。十人一組で部隊を作る。その長を十人長。その十組を纏める百人長を指揮官にして一団とする。盾と剣を装備した突撃部隊の一団と中長距離の支援部隊になる弓部隊を一団とする。騎馬隊がいれば完成だがドルマの地には馬が少なく今は無理だ。その分、歩兵部隊を鍛える事にする。弓部隊の為に上等な弓矢の調達を考えなくてはならない。ゴードンは一度ラースのオーディスに相談に向かう事にする。


 アレクがラースに向かい。久しぶりにオーディスと再開する。ラース騎士団の本部の屋上に黒雲で到着しガインとオーディスに会う。アレクにガインが挨拶をする。

「アレク王。息子を御救い頂き感謝します。」

オーディスがアレクに目で合図する。アレクが話す。

「ああ。ガインの息子ガヴェインは強かった。だが感謝しなくていい。ガインには申し訳ないがガヴェインは一度死んでいる。避けられない戦いだった。すまなかった。」

ガインが苦しみながらも応える。

「はい。オーディスから聞いています。あの馬鹿息子が意地を張らなければ戦わなくてもよかった戦闘だと聞きました。」

アレクがガインの肩に手を当て話す。

「ガインよ。ガヴェインはオーディスとガインと同じ武人だ。自分の決めた忠義には背けない。意地を通して生きる武人なんだ。あの闘いは俺とガヴェインの命を懸けた会話なんだ。だからガヴェインは自分から重荷を降ろして本当の忠義を守れたんだ。」

オーディスもガインを支える。ガインが言う。

「間違った道に進ませた自分が許せなくて、オーディスにも無理をさせてしまった。」

オーディスが言う。

「アレク王が動いてくれたので俺が殴らなくて済んだんだ。俺は何もしてない。」

アレクが話す。

「いや。オーディスが陸アルノを攻略したからガヴェインも納得できたんだ。氏素性の解らない俺が説得しても本心では信じてもらえない。家族の絆は偉大だ。」

三人はガヴェインが蘇り、本当に忠義を尽くせる王に仕官できた事を喜ぶ。

アレクが二人にドルマの状況を話す。

「今のドルマはゴードンが統括する事になった。俺はそれを伝えに寄ったんだ。」

二人が驚く。冷静沈着なオーディスが驚いている姿がアレクには新鮮だった。

「ゴードンがドルマを制圧したのですか?」

オーディスが聞く。アレクが答える。

「ああ。今し方、ドルマの首領を倒して制圧した。ゴードンに従えるように言ったら、意思疎通が出来ないと言われたので少しだけ成長の手助けをして人間種の言語を習得させた。ゴードンはドルマ族を鍛えて戦力にするだろう。」

ガインが聞く。

「ラースに侵攻することは無くなりますか?」

アレクが答える。

「はぐれ者はいるので人間種の悪党と変わらないが、部族が扇動されて攻撃してくる事は無い。国境を厳しく管理すれば外交と交流のできる国になるだろう。侵略の脅威よりも和平の準備に入る方がラースの為になる。ドルマを通過して海岸に出れば南の海と繋がる。ラースが独立し国となれば独自の流通が必要になる。未来が広がるだろ。」

オーディスもガインもアレクが目指すラースの未来とルーマの未来に感動する。

「そうですな。友好国になればラースの軍事費も減り交易が増えればラースが豊かになります。辺境の地ラースが独自の流通を確立すれば未来は明るいです。」

アレクが話す。

「まだ確定ではないがラースでダロス西域会議を開こうと思っている。」

オーディスが訊ねる。

「王都ではなく。ラースで開くのですか?」

アレクが話す。

「ラースはダロス大陸の中心に近い。この先の交流の中心地になると思っている。先の大戦でエルフ族とダークエルフ族も会議に参加する事になった。ドワーフ族はまだ決まっていないがロックとドレルの代表ドムは参加してくれるだろう。友好関係を築く場になると俺は思っている。小さな事でもいいんだ。皆が一歩でも進むことが世界を変える。」

オーディスとガインは感動し奮い立つ。

「では会議の場もしっかり造らなければロックは文句を言いそうですな。」

オーディスが頷く。アレクが話す。

「そんなに気負わなくていい。代表者が二人か三人で集まって意見交換できればいいんだ。ルーマ代表と新興国アルノと新国スプラードと海洋アルノ。ドレルとアモンとエデン。最後にドルマはゴードンになるか。それぐらいだろう。人数が増えるようなら連絡するよ。その時は国を挙げての建設になるから郊外に建築する事にすればいい。」

二人が頷く。アレクが続ける。

「それとドルマとの国境に橋を架けるから守衛所を設置して出入りを管理してくれ。冒険者達がドルマを漁るのが目に浮かぶ厳しく管理してもらう。」

ガインが応える。

「はい。ゴードン殿に聞いております。一部の冒険者達は欲に流されますので組合にも厳しく言い渡します。」

オーディスが確認する。

「アレク王。エスレインから聞きました。緑竜ドルガルが目覚め決戦が近いと。」

アレクが話す。

「オーディスにも関係がある。八翼が揃えば始まる。準備はしておいてくれ。」

オーディスが頷く。ガインが心配する。

「アレク王。それは危険な戦いなのですか?」

アレクが言う。

「これは他言無用。ガインはオーディスの親父殿だ。知っておくべきだな。竜種同士の戦いは王都決戦で垣間見ただろう。あれは死闘ではない。決戦は何れかが滅びる戦いだ。生き残る事が至難だろう。だが俺達はダロスを滅ぼすような事はさせない。必ず勝利し、皆に平和な世界を託すと誓う。オーディスには付き合ってもらう。」

ガインがアレクの意味深な言葉に息を呑む。オーディスがガインの肩を叩き言う。

「俺は幸せだぞ。あの闘いで命を懸けなければラースはルーマの王族に滅ぼされたのは確実だ。アレク王に救われラースの自由を手に入れ。アリシアに子供まで授かった。俺が大切な者達の為に戦う事は俺の使命なんだ。力ある者の宿命だ。」

アレクが話す。

「俺だけでは勝てない。集まった仲間達の力を借りる。この借りは来世で返す。」

アレクがオーディスと握手をする。

 アレクは騎士団本部から飛び立ちドルマの国境に巨大な橋を架ける。ガインが直ちに監視する為の守衛所を設営し何方の国からの通行も厳しく管理する。対岸のドルマ側にも管理する守衛所ができドルマ側でも厳しく管理される。ドルマの森林は木材の資源となる。ドルマの産業が木材の管理と輸出になれば国としての財源になる。未開の地は少しずつでも文明を取り入れて良き成長をするように隣国も支援する。蛮族国ドルマは文明国家となり他国との交易を得て成長する。


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