第10話 エデン決戦


 エピンにハーディ達砂竜部隊と傭兵達の別動隊が集結する。アレクに言われた通り、リアとカリナが格納庫に砂竜部隊を収容しアモンに輸送する準備をしていた。アレク達が帰還して出発するように指示を出す。地上戦の可能性は低いが対抗する部隊を配置しなければ相手のけん制にならない。先にハーディ達を送り次の便で傭兵達を送り込む。地上戦の防衛部隊として配置する。傭兵達はハーディが指揮して動かす。地上部隊を送り終えればバーン達魔道部隊が登場する。今大戦の主力の一つだ。

 バーンは黒紫竜シエムに連絡しいつでも加勢できるようにアビス山脈群の南に潜伏する。バーンが魔道部隊の編成を支持する。バランとウェザーを主力として攻撃と防御の魔道士を配置する。残りは充電担当の動力部隊になる。攻撃はバランの火焔部隊がエルフ軍を森ごと焼き身を潜める森林を焼き払う。視界を確保して敵の攻撃を完全に防御する。担当はウェザーが風魔道で敵魔道攻撃を防ぐ。相手の攻撃次第でバーンが介入して反撃する。魔道飛行艇団はこの戦略でエルフ軍を撃退する予定だ。

 エピンの近郊に飛竜騎士団が集結する。ランドとトリニドが中央広場に着陸する。ランド達は既に戦闘準備が完了している。飛竜騎士団は翼竜を増員した事により各都市に配備していた飛竜と翼竜を交代し完全飛竜騎士団となる。緑風部隊以外の飛竜部隊が集結する。赤の部隊改め赤き翼三部隊。青の部隊改め青き炎三部隊。黄の部隊改め黄の響三部隊。三体九部隊二十七体の飛竜が待機する。魔道士は乗せていない。騎士と飛竜の純粋な飛竜騎士団だ。攻撃能力は飛竜の咆哮と翼の斬撃、騎士達の高精度射手。高速攻撃と離脱の連続攻撃となる。多様な編隊飛行による変幻自在な攻撃。

 アレクはこの布陣による攻撃に突撃部隊としてゴードンとアグニスを待機させる。アレクが黒雲からの迎撃攻撃を追加してエルフ軍の最終兵器に警戒する。アレクがネリーナに聞く。

「最後に確認する。ネリーナ達の知る竜種の存在を教えてくれ。」

ネリーナが皆に話す。

「エルフ族の守護神である緑竜様がエデンには存在します。ただし緑竜様は温厚で常に瞑想されています。エデンの大樹の地下に住む緑竜様は誰も操る事はできないと思います。」

アレクが話す。

「ネリーナの話は通常時には正解だ。緑竜は賢者の竜。人種の世界に干渉はしない。だがネスレムの暴走は緑竜を動かす。竜種が魔道により暴走する事は実際に目にしている。魔道の精神攻撃により火竜は暴走して鉄竜を喰らい進化し更に暴走した。緑竜も同じだろう。耐性は高くても永続的に負荷をかけられれば強靭な竜種でも折れる。」

ネリーナが納得して心配になる。

「緑竜様はエルフ族の古文書に無限の命の復活をさせる竜種とあります。解釈は色々ありますが私達は死んだ者達を生き返らせる竜と考えています。」

アレクが頷き、納得する。

「それではネスレムの願望通りの竜種になってしまう。それも目的でエルフ軍を組織したのかもしれないな。」

ネリーナが聞く。

「それはどういう意味ですか。まさか・・・。」

アレクが言う。

「ネーセルの復活だ。」

ネリーナが驚き悲しみ力が抜ける。

「そんな事をしても妹は喜ばない。安らかな眠りを妨げて欲しくない。」

アレクがネリーナを支えて皆に言う。

「緑竜は出てくるが実態が解らない。仲間の竜種に確認してくれ。バーンのシエムなら詳しいと思う。俺は他の竜種に確認してみる。」

バーンが答える。

「はい。シエムの話を聞いてみます。緑竜の能力は魔道とは違う竜種独特の能力でしょう。初見では対応できないと思います。」

ランドがトリニドに聞く。

「トリニドの記憶に緑竜の能力はあるのか?」

トリニドが答える。

〈我の記憶には緑竜は現れていない。八翼の一翼でも全てが集まった事は未だにない。〉

ランドが話す。

「アレク王。トリニドは緑竜の記憶が無く、今まで八翼が全て揃った事は無いそうです。どうされますか?」

アレクが納得する。

「それで八翼を集めるように勧めるのか。ザウザーも狡いな。」

バーンがシエムに聞く。

「シエムよ。バーンじゃ。緑竜について教えてくれ。」

シエムが答える。

〈おお。緑竜か。あれは今まで動いた事がない。瞑想状態で伏せたまま。数百年経つ。〉

バーンが聞く。

「能力については知らないのか?」

〈緑竜の能力は未知ではあるが蘇生と不死の能力だろう。ただし生命が蘇るわけではない。魂の無い傀儡を蘇らせる悲しき能力だ。〉

バーンがアレクに話す。

「緑竜の能力をシエムが推察すると蘇生と不死の能力だと考えているようです。魂の無い傀儡を蘇らせる悲しき能力だそうです。」

アレクが納得して皆に話す。

「二人共、助かる。俺なりに理解できたから皆に話しておく。緑竜は生命を復活させる能力ではない。植物などには有効な能力だろうが魂のある生命には心のない物体の蘇生になり死体を動かす能力だろう無情な能力だ。不死の軍団が生まれてしまう。」

ネリーナが悲しむ。

「アレク様。緑竜様は本来はそんな悲しい能力を使われる竜種ではないですよね。」

アレクが話す。

「そうだね。緑竜の本来の能力は植物を育てる能力だ。自然の復活が本来の能力だと思われる。魂の器である人体や動物の為の蘇生の能力ではない。悲しい竜種ではないよ。」

バーンが話す。

「主よ。緑竜が出て来ましたらどう対処しますか?」

アレクが話す。

「緑竜は止めたいが何を生み出すか解らない。エデンに眠る過去の生物が生まれればそちらが対象に変わるだろう。緑竜まで届かない可能性もある。蘇生の能力で生まれたものによって対応を変えよう。バーンもランドも臨機応変に動いてくれ。緊急事態になればゴードンもアグニスも投入する。頼むぞ。」

二人が頷き対応を考える。リアとカリナが地上部隊の輸送を終え帰還する。

二人がアレクに話す。

「アレク兄さん。アモンの地上部隊は前線を圧し返したよ。竜戦士ゴードンがエルフ軍を吹き飛ばしてエデンに追い帰してた。あれは怪獣だな。」

「大斧振り回してエルフが飛ばされてた。武器の使い方が変だよ。」

アレクが笑って言う。

「竜戦士だからな。相手には竜にしか見えないさ。それより本番の魔道部隊を頼むぞ。」

バーンが二人に話す。

「リア殿もカリナ殿も飛行艇をお願いします。我等は攻撃と防衛に集中します。」

カリナが言う。

「バーンさんも魔道士達も安全帯は必須だよ。自分で落ちない様にしないと振り落とされるからね。後、充電担当は魔道石に充電しておいてよ。途中で失速すると落されるよ。」

リアが頷き。バーン達が飛行艇に乗り込んで行く。アレクが話す。

「リアもカリナもバーン達と飛行艇を頼むぞ。緊急時は上昇して上空に待機しろ。」

リアが応える。

「はい。アレク兄さんの言う通り上昇して待機するよ。相手の竜種が脅威なんだろ。」

アレクが話す。

「ああ。バーンから詳しく聞くといい。俺の指示には従えよ。まだ本当の戦いでは無い。戦力の損失は敗北と同じだ。命を守るんだぞ。」

リアもカリナも頷き、アレクに手を振り出撃する。ランド達飛竜騎士団も出撃する。

アレクがネリーナ達に話す。

「君達はまだエデンには戻らない方がいい。どこまで被害が出るか解らない。俺は戦いを止めたいが最後の問題をネスレムが起こせば俺は全力で対処する。それは無慈悲な行動になるネリーナ達には知っておいて欲しい。緑竜を悪用すれば世界が破滅の道に進む。」

ネリーナが頷き応える。

「アレク様の御話しは私達が記録します。必ずエデンの民に話します。ですが緑竜様を御救い下さい。エデンの守り神なのです。お願いします。」

アレクが黒雲に乗り告げる。

「必ず緑竜を助ける。エルフ軍には寝てもらうが被害が無いわけではない。すまない。」

ビートに指示を出しアモン上空に向かう。ネリーナ達が祈るようにアレクを見送る。


 ダークエルフ族の国アモンでエルフ軍を撃退したゴードンとアグニス達がハーディ達を出迎えて今後の打ち合わせをする。地上部隊の指揮はアグニスが担当しゴードンはアレクの指示でエルフ国エデンに突撃する。二人共、地裂竜ゴレアと烈火竜フェイザーは近くに潜伏させて待機する。ハーディ達は圧し返したエルフ軍が再び侵攻した場合、排除する為に布陣する。エルニアの元傭兵達が増員され。砂竜部隊と元傭兵部隊で地上戦は制する。

 アレクはアモンの部族長デルニスとデリータとエルフ軍本隊との全面対決について話し合いアレク軍がアモンに布陣した事を事後報告し、今後の決戦について話す。

「デルニス殿。アレク軍はエルフ軍との全面対決に入る。アモン国境とエデン国境での魔道決戦になると予想している。ダークエルフ族に被害を出さない為に戦闘には参加しないでくれ。これ以上ダークエルフ族が減る事はダロスにとっての損失になる。」

デルニスが不思議そうにアレクに訊ねる。

「アレク王はダロスの意思で動かれているのですか?」

デリータが真剣な顔でアレクを見る。アレクが話す。

「俺はダロスの意思で動いてはいない。ただダロス大陸に存在する種族には意味があると考えてる。各地に生息する生物も同じだ。種族が滅ぶ事はダロスの揺り篭から消える事だ。悲しいじゃないか。悪意に染まり悪事を働いた訳でもない種族が、ダロスの仲間が消えるなんて俺には耐えられないよ。」

デリータが泣いてしまう。アレクが肩に優しく手をのせ言う。

「人間種の悪意によって始まった戦争は人間種の俺達が終わらせる。ダークエルフの中にも人間種を許せないと思っている者もいるだろう。俺達が戦争を終わらせた後はデルニスとデリータに任せる。交流を望むが反対派が多ければ、またアモンを閉ざせばいい。我々は立ち入らない。自然と共に生きる自由な種族ダークエルフが再び繁栄する事を願う。」

アレクが二人と別れ前線に向かおうと振り向くと三人のダークエルフが邪魔をする。

「君達は何がしたいのかな?」

アレクが三人に聞く。慌てたデルニスが三人を注意する。

「お前達、アレク王の邪魔をするんじゃない。」

三人の一人が話す。

「俺はデニムスと言う。人間の王よ。今回の戦争の原因は人間種の悪行が発端だ。」

アレクが聞く。

「そうだ。それで俺に何用かな?」

他の二人が言う。

「そんな人間達の自由にはさせない。早くアモンから出て行け。」

「自分達で起こした戦争を自分達で止めて恩を着せる気だ。」

デリータが怒る。

「お前達。アレク様は関係の無い人間種よ。エルフ軍の暴挙を見兼ねて救援に来てくれたのになんて言い種なの、謝りなさい。」

アレクがデリータを止める。

「なるほど。俺達が気に入らない事は解った。君達も怒りが収まらないのだろう。俺が君達に殴られてもいいが、それでも解決はしないだろう。どうする殴るか?」

デリータがアレクの前に立ち止める。アレクがデリータに言う。

「いいんだ。彼等も辛いんだ。仲間が大勢死んだんだから怒りは収まらない。」

デリータが言う。

「ですが、アレク様に救われた者も大勢います。」

アレクが三人の前に立ち話す。

「お前達の怒りが何処にも吐き出せないのは辛いだろう。三人共、俺と前線で戦え。」

三人が驚く。デリータが心配する。デルニスは悩んでいる。

「どうした。怒りをぶつけたいんだろ。エルフ軍が直接的な復讐の対象だぞ。」

三人が怯んでいる。デリータが三人を見て首を振る。

「ああ。行ってやる。俺がエルフ軍を殺してやる。」

「俺も殺ってやる。」

「俺だって。」

デリータがアレクに懇願する。

「アレク様。馬鹿な弟達を許して下さい。」

アレクがデリータを横に移動させて三人と対峙する。

「お前達の力を見てやろう。戦える力があれば参加させる。」

アレクの挑発にデニムスが飛びかかる。がアレクが簡単に捩じ伏せる。

「おい。弱過ぎて誰も殺せないぞ。」

残りの二人が一斉に飛びかかる。アレクが蹴りで二人を蹴り落とす。

「お前達、足だけで終わりだぞ。どうするんだ相手は歴戦の魔道戦士だぞ。」

アレクがデニムスを解放し二人にぶつける。

「痛っ。」

三人が重なり合い苦しむ。アレクが言う。

「魔道で攻撃して見ろ。その方が使えそうだ。」

アレクの再びの挑発で怒り心頭の三人が一斉に魔道を放つ。いずれも風魔道の上位、竜巻の攻撃だ。デリータが巻き込まれそうになりアレクが加護で守る。驚いているデリータの目の前でアレクに竜巻が三方向から襲う。アレクが竜巻に飲み込まれ愕然とするデリータ。

「馬鹿め。三人の風魔道は最強だぞ。魔道を使えば人間種なんて・・・。」

三人が喜んでいる目の前で三本の竜巻が消える。竜巻がアレクの手の中に吸い込まれて消える。座り込んでいたデリータが安堵する。アレクが更に挑発する。

「おい。ダークエルフ族の魔道はこんなに弱くはないぞ。お前達、鍛錬してないな。」

三人が我に返り更に強力な魔道を発動させる。

「人間種め。お前が悪いんだ。この最大魔道で消してやる。」

三人が闇魔道を発動させて周囲の物を黒い渦の中に吸い込み始める。三人の黒渦が重なり巨大な黒い空間が広がる。魔道が暴走した。デルニスが止めさせる。

「馬鹿者。魔道が暴走している。全てが飲まれる。止めるんだ。」

三人が慌てるが止められない。

「父上。止められません。魔道力が吸われています。助けて下さい。」

暴走した魔道によって術者の手を離れた闇魔道が三人の魔道を吸い尽くそうとする。デリータはアレクの加護により守られているが周りの者達は魔道力を吸われて倒れ始める。デリータがアレクを見て祈る。アレクが微笑み頷く。

「馬鹿な子供達だ。自分を制御できずに魔道は制御できない。どんなに優秀な人材も心根が腐っていれば大樹にはなれない。ダークエルフの若者よ。自分を鍛え世界を見ろ。」

アレクが両手を天に広げ最大の黒渦を発動させて三人の黒渦を飲み込む。

シュゥゥゥゥゥゥッ

辺りを吸い込み続けた三人の暴走した闇魔道はアレクの黒渦に呑まれて消える。

デリータはアレクの闇魔道に魅入られる。三人は意識が薄れた状態でアレクの奇跡を見る。デルニスは既に跪きアレクを拝む。アレクが三人を黒霧で包み回復させる。

「お前達は未来のダークエルフを導かなければならない逸材だろう。だが心が弱過ぎる。自分の感情に流され、今のように惨事を招く。それでは誰もお前達を認めないし従わない。どうする?このままのお前達が率いた部族は滅びるだけだぞ。大切な家族や生き残った仲間を失ってもいいのか?力を使いたければ自分を知らなければいけない。」

三人が自分達の未熟さに落ち込む。デリータがアレクに聞く。

「アレク様は闇魔道を極めているのですね。」

アレクがデリータと三人に言う。

「ダークエルフは天性の闇魔道使いだ。鍛錬し自分を高めれば俺の闇魔道を超えていく種族なんだ。デリータや三人が学び、鍛え、魔道を育てればダークエルフは繁栄し、再び蘇る。全てはお前達の心が正しいかどうかなんだ。判るかい。」

デリータが跪きアレクに頭を下げる。三人は平伏す。アレクが皆を立たせて言う。

「この戦いは必ず終わらせる。できればエルフ族との禍根は絶ってくれ。許さなくてもいいが、戦争には進まないでくれ。それぞれの国で生き、お互い干渉しないでくれ。」

デリータが返事をする。

「私がダークエルフ達を抑えます。禍根を絶つように努力します。」

アレクが革袋の中から最高密度化した魔道石の首飾りをデリータに渡す。

「次期ダークエルフ族の部族長デリータに俺からの贈り物だ。闇魔道の高みに近づく手伝いになる。これはデリータを加護する魔道を付与してある。君の力になるだろう。」

デリータが片膝を着き頭を下げる。

「私デリータがアレク王の想いを実現します。どうぞ御導き下さい。」

アレクがデリータを立たせて言う。

「俺はダークエルフ達の世界に干渉はしないが交流は望む。定期的に意見交換や支援情報を共有したい。できるかな。」

デリータが頷く。三兄弟が話す。

「アレク王に教えを請いたいです。どうぞお願いします。」

デリータが笑う。アレクが三兄弟に言う。

「いいだろう。若き魔道戦士ダークエルフの三兄弟よ。この大戦を終わらせダークエルフ族と交流を築ければ俺の元にくればいい。倒れるまで教えてやる。」

三兄弟が悩みながら頷く。

「ぜひ、お願いします。」

アレクがデリータに小声で聞く。

「ところで弟達は何歳なんだ?ダークエルフ達も長命種だろ。」

デリータが笑いながら答える。

「弟達は百歳です。」

アレクが笑う。

「さすが長命種。ダロスの生き字引だ。俺達の死後も歴史を繋いでくれるな。」

アレクは嬉しそうに皆と別れて黒雲に騎乗する。デリータ達に手を振り前線に向かう。

アレクがビートに言う。

「さあ。大掃除だ。緑竜は大問題だ。どうするか悩むな。」

ビートが応える。

「アレク王なら止められます。大丈夫です。」

アレクがビートの肩を叩き言う。

「今回は厳しいんだ。救いながら止めたいが無理そうだ。緑竜が暴走したままでは世界が滅ぶ。最後の手段は緑竜を消すしかないが、それは俺が嫌なんだ。」

ビートが難しい顔になる。アレクが続ける。

「やれるだけやるさ。仲間を信じるだけだ。行こう。」

アレクが前線に到着すると地上部隊のゴードン達が手を振る。飛行艇のバーン達も合図する。飛竜騎士団のランドも合図する。アレクが最前線に布陣しエルフ軍の潜む森を見る。


アレクはエルフ国エデンに向け告げる。

「我は黒竜王アレク。人間種ルーマ国の王である。故あってダークエルフ族に助力する者だ。これより西方に侵攻するエルフ軍は全て排除する。それは生死を分ける戦いになる。踏み込めば必ず死が待つ。直ちに侵攻を止め軍事行動を解除せよ。」

 アレクがエデンの森を感知する。反応するエルフ軍は千を超える数だ。アレクに向け無数の矢が襲う。魔道の付与された矢は全属性の矢で無数にアレクに放たれる。アレクはエルフ軍が引く気の無い事を知り落胆する。アレクが黒渦で全ての矢を消滅させる。

「エルフ軍よ。最後の機会だ。戦いを止め静かに暮らせ。自然と共に生きてくれ。」

 アレクは感知を高めてエルフ軍の指揮官を探す。最前線からは離れた森の中に大きな魔道力を持つエルフを見つける。ネスレムではないがアレクが見た残留思念に現れた仲間の一人だと解る。その魔道力はバーンに匹敵する。二波目の魔道の矢がアレクを襲う。アレクは弓を構え三本纏めて矢を放つ。襲い来る矢の軌道に矢が巨大な風を巻き通過する。敵の魔道の矢を引き連れ放たれた矢が巨大な魔道力のエルフに突き刺さる。が、全ての矢がエルフの障壁に止められ地に落ちる。エルフが話す。

「うむ。良い魔道だ。風魔道で矢を釣り上げる。魚釣りのような面白い魔道だ。」

アレクが思念で訊ねる。

「その卓越された魔道。最高位の魔道士とお見受けする。名は何と呼べばよいかな?」

エルフが応える。

「人間の王。黒竜王アレク。我はエルフ族四天の一人、風のネルリー。我と戦うか?」

アレクが言う。

「いや。もう終わっている。」

ネルリーに向け突然二本の矢が現れ、ネルリーの体を貫通して森を破壊する。

ゴオオオオン

「ゴホッ・・・ぐぅぅ。何処から矢・・・が。」

ネルリーが倒れる。アレクがエルフ軍に告げる。

「エルフ軍四天の一人、風のネルリーは落ちた。まだ戦うのか。」

アレクの言葉に反応して他の四天が一斉に攻撃を開始する。アレクは黒雲を上昇させて上空から開戦の矢を放つ。矢は三本。それぞれの残りの四天に向けて放たれた矢が全ての矢を巻き上げて残りの四天を襲う。アレクが全軍に告げる。

「アレク軍。全軍。攻撃。森を焼き払う。バーン。」

リアが反応して飛行艇を前進させてから横移動に艇を流す。

「バーンと魔道士達。出番だよ。横流しだ。船底を守って攻撃しておくれ。」

バーンが面白がって燥いで号令する。

「おほほぅ。バランよ。この流れに乗りながら敵前線の全面に最大火焔弾連続発動。ウェザーは船底を最大障壁で防御。他の魔道士は攻撃援護と防御援護。我等の魔道をエルフ軍に見せつけよ。人間種を見縊らせるな。」

バランが最大魔道で火焔弾を森に連続発動させ。森が焼け、燃え上がる。エルフ軍が水魔道で消火しているが火力が勝り森の火災は消火できない。反撃の魔道付与された矢もウェザーの風の最大障壁が厚過ぎて貫通できずに吹き飛ばされる。アレクが発する。

「ランド。飛竜騎士団で風圧と斬撃を連続攻撃。」

ランドが反応する。

「はっ。飛竜騎士団。二列編隊で連続攻撃。風圧で火災誘導。斬撃で森林破壊。突撃。」

飛竜騎士団の見事な編隊が二列で連続攻撃をエルフ軍に仕掛ける。森の火災が飛竜の風圧で燃え広がりエルフ軍は逃げ惑う。そこに飛竜の斬撃が襲い森林は切り刻まれエデンの前線が丸裸になる。隠れる場所を失ったエルフ軍が丸見えになりバーンが支援魔道を発動する。上空で雷雲が渦巻き、雷が溢れ出す。バーンが唱える。

「雷よ地の敵兵を貫け。雷千撃。」

雷雲から千の雷の矢がエルフ軍の前線に降り注ぐ。エルフ軍前線の丸見えになった兵士達が雷の矢を受け気絶する。千の矢が全て刺さりエルフ軍前線は沈黙する。アレクが告げる。

「エルフ軍よ。まだやるのか。この無意味な戦いを続ける必要などない。兵を退け。」

エルフ軍の四天の一人が現れて告げる。

「我は四天の一人、土のネオール。エルフ軍の力を見せよう。人間種の合戦には一騎打ちというものがあるのだろ。誰か相手になるか?」

アレクが話す。

「やる意味がない。もうエルフ軍に兵はいないのだろ。」

ネオールが言う。

「そうではあるが、我等にも意地がある。」

アレクが発する。

「ゴードン。」

アモン国境の地上部隊からゴードンが橋を途中まで創り、走り出す。

「おお。待ってたぜぇ。」

ゴードンが橋から跳び上がりエデンの上空に飛ぶ。ネオールの眼前に着地する。

ドガァァァァァン

土煙が舞い上がりネオールの前にゴードンが現れる。

「ふぅ。あんた土のネオールなんだってな。俺は竜戦士ゴードンだ。」

ネオールが話す。

「人間種の戦士か。では一騎打ちと行こう。」

ゴードンが大斧と大盾を構えて話す。

「ああ。エルフの魔道士。いざ。」

ネオールとゴードンの一騎打ちを両軍が見守る。ネオールが魔道を詠唱しながら弓を構え、距離をとりながらゴードンに狙いを定める。ゴードンは魔道を警戒しながら大盾で防御する。ネオールが距離をとり矢を放つと同時に放たれた矢と同じ速さで側面に移動する。

「なんだぁ?」

ネオールを見失ったゴードンが矢に集中する。既に眼前に迫る魔道の付与された矢を大盾で受ける。矢の着弾と同時に魔道が発動して土魔道による土砂がゴードンに叩きつけられる。その量がゴードン全体を覆い尽くしゴードンが土砂の塊になる。ネオールがゴードンの背後に現れて言う。

「なんと土砂の魔道で終わってしまった。背後に回ったのに終了とはあっけない。」

アレクが話す。

「土のネオール。油断し過ぎだ。」

ネオールが驚いて辺りを見渡す。だが何も見当たらない。ネオールがアレクに聞く。

「何も無いではないか。人間種の悪戯か?・・・うわぁぁぁ。」

ネオールの周りが陥没してネオールが逃げられずに穴に落ちる。ただの落とし穴ならば魔道で空に逃げられたのだが、ゴードンの最大重力による陥没した穴では身動きがとれずに地面に圧し付けられる。強烈な圧力によりネオールは意識を失い気絶する。

「おおおお。うおりゃああ。」

ゴードンが土砂の塊を破壊して現れる。土砂は細かな砂に変わり辺りから風に流されて消える。ゴードンが言う。

「ネオールの気配を掴むのに手間取った。突っ立ってくれて助かった。場所が解れば範囲内に落とせるからな。アレク王、終わったぜ。」

アレクが手で合図しゴードンを下がらせる。アレクが聞く。

「もう止めにしないか。四天も残り二人だろう。エルフにとって損害が増えるだけだ。」

四天の残り二人が現れて話す。

「我は火のネクタス。」

「我は水のネムリス。」

アレクが聞く。

「二人で戦うのか?やるしかないのか?」

二人が言う。

「我が友ネスレムの想いを遂げる為に止まる事はできない。人間種の滅亡は必要だ。」

アレクが話す。

「横暴な。何故そうなる。ネスレムではない貴方達の意見を聞いている。」

ネクタスが言う。

「人間種が悪の根源。生まれてくる悪意を消す為に存在を無くす。」

アレクが聞く。

「ダロス西域だけでなく大陸全ての人間種を滅ぼすのか?一人残らずにか?」

ネムリスが言う。

「当然。存在する事を許さない。」

アレクが怒り二人を威圧する。

「お前達は何様だ。何故人間種ではないダークエルフを虐殺した。お前達は都合の良い事を並べて遊んでる糞餓鬼だ。長く生きているだけで何も考えていない脳無しだ脳筋より酷いエルフ族の面汚しだ。ダロスの賢者を騙る糞蟲以下だ。」

二人がアレクの威圧に怯む。

「くっ。人間種如きが偉そうな。お前を消せば他はどうにでもなる。」

ネクタスが火焔魔道を最大で発動する詠唱に入る。

「我も合わせるぞ。」

ネムリスが氷結魔道を最大で詠唱を始める。アレクが無慈悲に言う。

「アグニス。消していい。」

アグニスが二人の背後に姿を現し一閃する。二人のエルフは詠唱中の言葉を呟きながら地面から自分の胴体を見る。斬り落とされた二人の首が絶命する。アレクが告げる。

「いつまでも隠れてないで姿を現せ。自分の手駒で遊んでるのか?洗脳して自分の復讐の道具にするお前こそ悪意の根源だ。ネスレム。お前を救う気はもう無い。」

エデンの大樹の地下から地響きが伝わる。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

アレクが飛行艇を後方に移動させ飛竜騎士団を上空に待機させる。

《人間種の王が我の復讐を邪魔するか。この全能の力を得た、このネスレムを救うだと笑わせる。お前達を消し、アモンを消し、ダロス西域の人間種全てを滅ぼしてやる。》

ブバババァァァァァァン

エデンの大樹が傾き、地面が吹き飛び、地下から深緑の物体が現れる。アレクが最悪の事態を目撃する。アレク軍全軍に告げる。

「敵首領ネスレムは緑竜と同化している。最悪の事態になった。竜騎士以外はアモンに避難。飛竜騎士団もランドとトリニド以外は後方で防衛重視。飛行艇は全面に防御障壁。リアとカリナは状況を見て撤退しろ。飛行艇と魔道士を守れ。」

リアが応える。

「承知した。飛行艇と魔道士は守るよ。」

カリナが聞く。

「アレク兄さん。勝てるの?」

アレクが言う。

「俺はダロスを守る。心配するな。」

ゴードンが地上から話す。

「アレク。俺達はどう動く。」

アレクが答える。

「同化したネスレムが緑竜の能力を使う。その対応を皆が考えろ。何が召喚されるか判らん。出てきたものに心はない、無差別に攻撃されるぞ油断するな。竜種も呼び出せ。」

ランドが言う。

「緑竜に仕掛けても良いですか?」

アレクが言う。

「今は場所が悪い。大樹から離れたら仕掛けてくれ。だが一撃離脱しろ。摑まると厄介だ。トリニドの機動力は必要だ。」

ランドが返事をして緑竜を監視する。バーンがアレクに聞く。

「シエムと最大寒波魔道で凍らせてはどうでしょうか?被害は少ないと思います。」

アレクが答える。

「バーンもランドと同じく緑竜が移動したら狙え。あの場所は守らなければ今後のエルフ族が滅びる。エデンは守らなければならない。」

バーンが返事をして飛行艇から飛び降りてゴードンの隣に着地する。

「おお。若いバーン殿は見慣れないから毎回驚くな。」

ゴードンがバーンに言う。バーンが笑いながら答える。

「お陰で体が軽くて何でも出来そうです。」

二人が話しながらも緑竜の動きに反応する。

「来る。」

緑竜と同化したネスレムが上空に飛び立つ。ゴードンが言う。

「なんだよ。上空戦じゃ出番がねえ。下で援護する。」

バーンがシエムを呼ぶ。

「シエム。頼む。」

北のアビス山脈から黒紫竜シエムが飛び立ちバーンを乗せ緑竜と対峙する。大樹から離れた緑竜をランドが攻撃する。

「トリニド。爆風の咆哮だ。閉じ込めろ。」

トリニドが緑竜に爆風の咆哮を撃ち込む。命中し閉じ込められた緑竜が障壁の中で斬撃と衝撃の攻撃を無数に撃ち込まれる。ランドが言う。

「直撃です。逃げられません。緑竜も無傷ではないはず。」

アレクが言う。

「トリニドは退避。中で回復されている。ネスレムは光の回復魔道を使っている。」

ランドがトリニドを退避させる。バーンが寒波魔道の詠唱を始めている。緑竜が障壁を破壊して無傷で現れる。ネスレムが言う。

《さすが竜種の攻撃だ。光魔道を全開でなければ回復が間に合わなかった。》

バーンがシエムと同時に寒波魔道で緑竜を凍結させる。バーンが言う。

「ほほう。同時に上下からの寒波では逃げられまい。凍って沈黙しておれ。」

シエムが言う。

〈バーン。緑竜が凍結の中から何かを召喚している。一時避難だ。〉

凍結し地上に落ちて行く緑竜を地上から巨大な木の根が支えて受け止める。アレクが言う。

「皆。始まったぞ。全周囲警戒。」

緑竜を受け止めた根が更に伸びて根の先が膨らむ。徐々に大きくなり巨大な卵のようになる。根が中身を吐き出す。

ドゴゴゴン

丸まっている塊が動き出す。全身骨だらけの竜。

「スカルドラゴン。」

アレクが吐き捨てる。バーンがゴードンに言う。

「ゴードン殿。スカルドラゴンは斬撃衝撃が弱点です。破壊して下さい。」

ゴードンが駆け出しスカルドラゴンの頭上に跳び上がる。

「こんなのが出てくるのかよ。潰れとけ。」

ドガッバババババ

スカルドラゴンの頭蓋が砕け散り全身が粉々になる。ゴードンが言う。

「大した事ないな。砕けば終わりだ。んっん。」

ゴードンが目を疑う。根が無数に伸び根の先に卵が大量に現れる。

「おいおいおい。全部、産まれてくるのかよ。数が異常だぞ。」

次の中身が吐き出される。黒く異臭を放つ塊だ。塊が動き出す。体が爛れて腐っている。

「ドラゴンゾンビ。」

アレクが言う。バーンがアグニスに言う。

「アグニス殿。火焔系で燃やし尽して下さい。ドラゾンは火焔が弱点です。」

アグニスが走り出しドラゾンに双剣を突き刺す。

「煉獄の炎。浄化せよ。」

ドラゴンゾンビが炎に包まれて焼失する。

アレクが言う。

「連続で産まれて来ないのは魔道力を大量に消費する為だ。召喚を止められなければ此方は疲弊して最後は負ける。凍結中の緑竜が動き出す前に対策しなければならないな。」

アレクは思案を巡らせ答えを探す。知識の種の中に攻略法がないか探す。


 膠着した状態が続き、緑竜が回復を始める。凍結した体をネスレムが光魔道を高熱化しながら溶かし、反動で焼け爛れた外皮を回復させる。ネスレムの光魔道は間違いなく最高位の魔道だ。アレクは緑竜の魔道力の流れを感知する。

「緑竜は大樹から魔道力の元である魔粒子を吸収している。あの根は大樹の根だ。緑竜と大樹を繋げている元を探してくれ。そこから始めよう。」

竜騎士達が緑竜と大樹の繋がりを捜索するが接触点が見つからない為、アレクが言う。

「俺が大樹を捜索してくる。その間、召喚される不死体を滅してくれ。バーンは凍結を強めて動きを止め続けてくれ。動き出されたら被害が拡大する。皆、頼むぞ。」

アレクがエデンの大樹に黒雲を飛ばして向かう。

アレクがビートに言う。

「俺は大樹の中を感知しながら緑竜との繋がりを捜索する。あの大きさだ簡単には見つからないだろう。ビートは大樹で待機しながら危険な時は退避しろ。上から地下まで全て調べてくる。行くぞ。」

アレクは大樹の真上から飛び降りて大樹に着地し感知能力を最大で発動する。一気に地表部分まで感知すると囚われている数人のエルフ族を見つける。アレクは大樹の最上部から近い所にいる囚人を見つけ、話を聞く。

「俺はルーマ国の黒竜王アレクだ。貴方はネスレムによって囚われているのか?」

囚人はエルフ族の中でも重要な人物なのが解る。監禁されてはいるが体は拘束されていない。敬意を持って軟禁されている事が解る。囚人が答える。

「私はエルフ族部族長ネイルスと言う。好戦派のネスレムによって囚われている。今外界はどうなっているか教えて頂きたい。」

アレクがネイルスがネリーナ達の父親だと解る。アレクが答える。

「今、外ではネスレムが緑竜と同化し暴走している。エデンは滅びる寸前だ。緑竜を止める為に大樹との繋がりを調べに大樹に来た。何か知っていたら教えてくれ。」

ネイルスが愕然とし力を落とす。アレクが続ける。

「しっかりしろ。時間が無いぞ。間に合わなくなれば世界が滅ぶ。」

アレクはネイルスを叱りつける。慌ててネイルスが答える。

「エルフ族の古文書に緑竜との契約の記述があり、ネスレムはそれを参考にしたと思います。ですが緑竜は数百年前から瞑想したまま目覚めません。何故同化など出来たのかも解りません。大樹の地下に緑竜の住処がありますので其処に秘密があるかもしれません。」

アレクが話す。

「ネスレムは貴方の娘ネーセルとの婚約者だったのだろう。」

ネイルスが驚く。

「何故娘の名を知っているのですか?」

アレクが答える。

「ネリーナ達は俺が保護した。だがネーセルは彼女達が攫われた時に亡くなっている。ネスレムはその時に復讐を誓ったのだろう。緑竜を利用して人間種を滅ぼす気だ。」

ネイルスが娘の安否を知り安堵し話す。

「ネーセルの遺体は見ました。ネスレムが連れ帰り大樹の地下の霊安室に眠っています。アレク王。ネリーナ達を救って頂き感謝します。行方知れずで心配しておりました。」

アレクが話す。

「この大戦が終わればエデンに送ると約束したが、このままではエデンが滅びるぞ。ネスレムを止める方法を探す。大樹の地下へ案内してくれ。」

アレクが軟禁されている部屋の結界を破壊する。ネイルスが話す。

「解りました。大樹の地下、緑竜の住処に向かいましょう。」

ネイルスが風魔道で強化し地下へ駆けて行く。アレクも続き最下層に到着する。

「ここから地下に進みます。途中に霊安室があり、その更に地下に緑竜の住処があります。エルフ族の聖地でもあるので本来は他種族は入れません。」

アレクが言う。

「それは判るが、時と場合だ。消滅すれば何も無くなるだけだ。」

ネイルスが頷き扉の鍵を解錠する。地下から霊気流れてくる。アレクには全ての者達が見え話を聞く。アレクがネイリスに言う。

「地下に眠る英霊が話してくれた。緑竜が苦しんでいるそうだ。地下に巨大な魔道石があるな。それが緑竜を支配して大樹と繋がっている原因だ。」

ネイルスが英霊と話すアレクに跪く。

「アレク王は交霊をされる偉大な魔道士なのですね。」

アレクが話す。

「ネイルス。今は先に進まなければ緑竜を止められないぞ。急ごう。」

ネイルスが頷き、立ち上がって地下に急ぐ。途中、霊安室を通過するが遺体は何も安置されていない。アレクがネイルスを呼び止める。

「おい。霊安室に遺体が無いぞ。確認してくれ。」

ネイルスが驚き、引き返す。霊安室に入り中を確認するがネーセルの遺体が無い。

「おかしいです。ネーセルを安置していたのに部屋には何もありません。」

アレクが言う。

「既に禁術を始めているかもしれない。死者蘇生だ。」

ネイルスが怯える。

「それは禁書に記された緑竜を使う禁術です。ですが死者に心は、魂は宿りません。」

アレクが頷き話す。

「ネーセルの魂は俺とネリーナが来世に送った。笑顔だったよ。」

ネイルスが泣きながら感謝する。アレクが話す。

「旅立った魂を戻す事は出来ないし、させない。魂の安らぎを邪魔させない。」

アレクがネイルスを立たせて地下に向かう。緑竜の住処に到着し、巨大な空間を見渡す。アレクが魔道石を発見する。大樹の根元に巨大な魔道石が埋め込まれて光を放っている。緑竜が眠っていたであろう場所の真上にそれはある。アレクは感知能力に反応した大樹の膨らんだ根の先に近づく。アレクが落胆しネイルスを呼ぶ。

「ネーセルは此処だ。」

ネイルスが駆け寄り悲しむ。

「何と酷い。大樹と同化している。これでは蘇生ではない、大樹に吸われて消える。」

アレクがネーセルと大樹を切り離す。ネーセルに絡みついた根を優しく剥がす。

「ネスレムも禁術を成功できずに暴走しているのだろう。自分でも止められない怒りに呑まれて堕ちてしまったのだ。俺は緑竜を救うがネスレムは救えない。」

ネイルスが答える。

「判っております。暴走した者を取り除かなければ緑竜まで暴走してしまいます。」

アレクが言う。

「あの魔道石はエルフ族の大切な象徴だろうが壊させてもらう。同じ物は存在しないが代わりになる物は俺が探してエデンに贈る。許してくれ。」

ネイルスが頷き、答える。

「はい。魔道石はまた探せば良いのです。それよりも緑竜様を解放する事が肝心です。」

アレクが思念でゴードン達と話す。

「ゴードン。外はどうなってる。」

ゴードンが答える。

「今、忙しいんだ。骨が三体も産まれやがって。アグニスもドラゾンが三体だ。」

アレクが言う。

「今から緑竜と大樹の繋がりを断つ。緑竜に注意しろ。」

ゴードンが言う。

「承知。」

アグニスが言う。

「承知。」

ランドが言う。

「承知。」

バーンが言う。

「承知しました。」

アレクが巨大な魔道石を黒渦で吸い込み消滅させる。消えた魔道石の残留魔道が大樹に吸い込まれる大樹が発光してエデンの地表全域が輝く。枯れた樹木や大戦で焼失し焦土化した緑が回復を始める。バーンが話す。

「主よ。緑竜の召喚が止まりました。根が地中に潜って行きます。」

アレクが話す。

「俺も地上に戻る。全周囲警戒のまま緑竜を監視し動きがあれば連絡してくれ。」

アレクはネイルスに言う。

「俺はネスレムと決着をつける。緑竜は目覚めなければ暴走しないはずだ。ネイルス達は大樹から一時避難しろ何があるか解らん。」

ネイルスが頷き、アレクは地上に駆け出す。


地上に出たアレクは産み出された竜をゴードンとアグニスが葬るのを確認し言う。

「残りは緑竜を操るネスレムだけだ。俺が同化している奴を切り離す。ランドが初弾を撃ち込め、次にバーンが氷結させて動きを止めろ。地上に落ちたらゴードンが重力で拘束しろ。アグニスは反撃に対応だ。各竜種と連携してくれよ。」

アレクが黒雲を呼び、跳び乗る。

「俺は上空から降下して奴の元に下りる。皆、行くぞ。」

アレクがビートに合図して上空に黒雲を上昇させる。入れ替わりにランドとトリニドが降下してすれ違う。ランドが言う。

「トリニド。爆風の咆哮で閉じ込めろ。」

〈おお。爆風の咆哮だ。〉

ギョオワォォォォォォォォ

爆風の咆哮が緑竜に着弾する。氷結していた緑竜とネスレムが切り刻まれる。氷結が解けたネスレムが光魔道を最大で発動している。また回復を始める。

 バーンがシエムと離れて緑竜を挟み爆風の咆哮が止むと同時に最大寒波魔道で両側から氷結させる。回復中のネスレムと緑竜は抵抗できずに氷結して動きを止める。木の根の上から落ちて地上に激突する。

ゴゴゴォォォン

緑竜がうつ伏せで地上に横たわる。ゴードンがゴレアを呼ぶ。

「ゴレア。緑竜を圧し伏せろ。俺は重力を上乗せする。」

ゴゴゴゴゴゴゴゴオオ

ブババァァァン

ゴレアが地中から飛び出し緑竜に両足を叩きつける。

ドゴオオオオン

ゴードンが上空から言う。

「ゴレア。どいてくれ。俺が打ち込む。」

圧力を残したままゴレアが後ろに下がる。ゴードンの最大重力が打ち込まれる。

ドドドオオオオン

動きを止めた緑竜がゴレアとゴードンの重力で地中に沈む。アレクが上空から話す。

「ゴードンの重力はそのままでいい。俺が奴を引き剥がす。」

アレクが黒雲を降下させて緑竜の真上から飛び降りて背に着地する。

ドオオオン

アレクが緑竜の背中に同化しているネスレムに聞く。

「既に何者でもないネスレムよ。目を覚ませ。」

氷結状態で眠っていたネスレムが起きる。

〈お前は黒竜王か。〉

アレクが言う。

「お前は怒りに呑まれ大切な事を忘れてしまった。今のお前はエルフでもない。」

〈そうだ。俺は緑竜の力を得た新人種だ。〉

アレクが言う。

「いや。人種では無い。竜種に寄生する蟲か植物だ。」

〈ふざけるな。俺は竜の力を得て最高位の光魔道使う。世界の主になる者だ。〉

アレクが話す。

「自分の人格も保てていないな。お前が緑竜の力を求めた理由は何だ。」

〈俺は・・・俺は・・・人間種を滅ぼす為に・・・。〉

アレクが話す。

「お前は大切な女性を蘇らせる為に緑竜の力を求めたんだ。思い出せ。」

〈俺は・・・ネーセルを・・・たすけ・・・よみがえ・・・。〉

アレクが話す。

「ネーセルの魂は来世に旅立った。安らかな笑顔だった。」

ネスレムが目を覚ます。

「ネーセルは旅立ったのか。笑顔だったんだ・・・よかった。」

アレクが聞く。

「ネスレムよ。竜種と禁術で同化したお前はこのままでは消えるだけだ。緑竜には残れるが意識もなく外皮と変わらない存在になるだけだ。それではネーセルと旅立てない。」

ネスレムが理解する。

「黒竜王。私を殺して下さい。ネーセルの後を追いかけます。」

アレクが頷く。

「ネスレム。ネーセルの命を奪いネスレムの心を砕いた人間種の悪党に代わり謝罪する。俺が未だに残る悪党と悪意を滅ぼし、お前達の怨みを晴らすと誓う。他の心正しき人間種達は関係ない。怨みを捨て許してくれ。」

ネスレムが答える。

「はい。他の人間種に怨みはありません。私も悪意に染まりました。責任を取れずに申し訳ありません。黒竜王が正して下さい。」

アレクが頷きネスレムの体を掴む。

「ネスレム。最高位の光の魔道士よ。幸せな世界で出会いたかった。見送ろう。」

ブチブチブチチチチ

ネスレムを緑竜から引き剥がし全身を取り出す。緑竜の神経とネスレムの背骨が繋がっている。アレクが黒霧でネスレムを包み、緑竜の神経を優しく剥がし分離する。緑竜の繋がっていた部分にも黒霧を流し込み治療する。ネスレムを緑竜の背に寝かせて聞く。

「緑竜から離れたぞ。まだ意識はあるか?」

ネスレムが言う。

「目はもう見えません。声も聞こえなくなりそうです。黒竜王に謝罪します。私の罪を御許し下さい。仲間も私が洗脳しました。兵士達に罪はありません。御救い下さい。」

アレクがネスレムの胸に手を当て思念で会話する。

「大丈夫だ。生き残った者達は解放する。安心しろ。」

ネスレムが笑い。旅立つ。アレクが手を当てた胸から光り輝く魂が天空に昇る。

ゴードンが重力を解除して話す。

「終わったのか?」

アレクが言う。

「エルフ軍は終わったよ。緑竜が残ってる。」

ゴードンが緑竜を見て言う。

「緑竜は眠ったままだぞ。起きる気配がしない。」

アレクがネスレムを抱きかかえて緑竜から飛び降り地上に寝かせる。アレクが緑竜の眼前に立ち話しかける。

「緑竜よ。起きてるんだろ。」

ゴードンが驚いて聞く。

「起きてるだって?眠ったままだろ?」

アレクが話す。

「緑竜よ。瞑想状態でも意識は世界を見ているんだろ。ザウザーと同じ状態なんだろ。」

緑竜の思念が周囲に飛ぶ。

《人間種の王アレクよ。我から異物を取り除いてくれて感謝する。他の八翼も久しいの。翼竜の転生竜以外は何百年ぶりか忘れたが皆息災なようだ。》

シエムが話す。

〈緑竜ドルガルよ。何故瞑想したままザウザー様の呼びかけに応えぬ。〉

ゴレアも話す。

〈ザウザー様が先の戦いで敗れたのもドルガルが加勢しなかったからだ。〉

緑竜ドルガルが思念で答える。

《先の戦いはザウザー様が起こさなかったのだ。我はザウザー様が必要とする時の為に長い年月を瞑想して力を溜めている。我の意志で拒否しているのでははい。》

シエムが聞く。

〈ではザウザー様は勝てぬ戦いを挑んでいるのか?〉

ドルガルが答える。

《知の竜シエムが解らぬとはザウザー様が悲しむぞ。先の戦いは我がいなくても勝てる算段だったのが三光の強化によって負けたのだ。天司族に加勢した者がいるのだ。》

シエムが頷き話す。

〈うむ。異常な火力の眷属が三光の力を増大させていた。奴等が原因か。〉

ドルガルが話す。

《結果は負けたがザウザー様は役目を果たしたのだ。ダロスは滅びずに今がある。それ故、その後の眠りも次の戦いの為に必要な休息なのだ。》

ゴレアが聞く。

〈ではドルガルの目覚めはいつ来るのだ。次の戦いも呼ばれないのか。〉

ドルガルが答える。

《力の竜ゴレアよ。ザウザー様の戦う相手が決まれば我は目を覚ます。相手次第なのだ。我が戦う相手は最後の敵と対峙した時に起こる無限が相手なのだ。》

シエムとゴレアが理解し沈黙する。アレクが話す。

「緑竜ドルガル。聞きたい事がある。」

ドルガルが話す。

《人間種の王アレクよ。聞くがいい。答えられる事には答えよう。》

アレクが話す。

「今回のエルフ達の行動はドルガルなら止められただろう。何故、同化までさせて静観したんだ。英霊には苦しんでいると訴えたんだろ。」

ドルガルが答える。

《ネスレムの希望は叶えられないが怒りの想いには応えられる。だが同化によって我にも魔道が流れてしまった。我の力が利用されてしまったのだ。魔道の力を侮っていたのだ、アレクに助けられた。申し訳なかった。》

アレクが話す。

「竜種は人間種の問題には干渉しない。俺達眷属の頼み事ならば聞いてくれる。利用した者が悪いのは判るが人間種よりも知能の高い竜種ならば結果は判るだろう。この無意味な戦いは始める必要なんてなかっただろ。俺は苦しいんだ。」

ドルガルが答える。

《アレクよ。人間種の戦いは何千年と続いている。竜種の介入も多々ある。小さな恨みごとで起きる戦いも多い。我等竜種が人間種を導く事は無い。協力し合い戦う事はあるが、生きる道を教える事はないのだ。ザウザー様達には出来ても我等には出来ない。》

アレクは理解しているが納得できないでいる。

「ドルガルが出来ないのは解るが、緑竜を神として崇めている者達が道を踏み外しているなら救うべきだと俺は思う。せめて抵抗してほしかった。」

ドルガルが答える。

《アレクの言う通りだ。我がエルフの魔道から逃げるべきだった。瞑想状態で動けなくても何かするべきだった。謝罪しよう。》

アレクが話す。

「いや。ドルガルは悪くない。俺が悔しくてドルガルに当たっているだけなんだ。竜の賢者に失礼な態度でした。心からお詫びします。」

ドルガルが話す。

《アレクは実に面白い人間種だ。過去のザウザー様の眷属にはいなかった想い人のようだ。アレクは何か聞いているのだろう。》

アレクが話す。

「最後の敵の事だろ。ザウザーもミレニアも覚悟してるようだ。ドルガルも目覚めの刻が近いんだ。これからどうするんだい。眷属を付ける刻だと思うがまだ瞑想するのか?」

ドルガルが話す。

《そうか。覚悟されているか。アレクよ。ザウザー様と話しがしたい。繋げてくれ。》

アレクが頷きドルガルの額に手を当て黒霧で包み込む。ザウザーが話す。

《ドルガルか。久しいな。まだ力を溜めるか。》

〈ザウザー様。御声を聞けて喜びで目覚めてしまいそうです。〉

《そうか。そろそろ目覚めるがいい。その力を使う刻が近いようだ。》

〈はい。アレクが言っておりました。ザウザー様とミレニア様も覚悟していると。〉

《アレクによって世界が変わりだしたのだ。我達の思惑が変わっていくのが面白い。》

〈はい。今までの人間種ではありません。〉

《ドルガルが目覚め、八翼が揃えば始まる。アレクに力を貸し決戦に備えるがいい。》

〈では瞑想から目覚め、アレクに従います。溜めた力は封印し決戦まで温存します。〉

《ああ。ドルガルに任せよう。我も復活の為に力を溜める。頼むぞ。》

ザウザーの意識が消える。アレクが聞く。

「ドルガルは眷属をどうしたい。俺はエルフ族から選ぶのがいいと思うが。」

ドルガルが目覚める。ゴードンが驚く。

「うわっ。緑竜が目覚めたよ。俺達の攻撃でも眠ったままだったのに。」

ドルガルが話す。

《おお。世界の明かりを数百年ぶりに見た。世界は美しい。》

アレクが話す。

「ドルガルには光魔道が付与できるエルフ族と契約してもらう。戦闘力は無くても光魔道の力はドルガルの力を増幅できるはずだ。」

ドルガルが話す。

《アレクに従おう。だが我の力は不死の力だ。生の種族には無慈悲なものだろうエルフ族には耐えられないかもしれぬぞ。》

アレクも考える。バーンが駆け寄り話す。

「主よ。人間種の中にも光魔道特化の者がいます。その者では駄目なのですか?」

アレクが言う。

「レイラは駄目だ。他の者なら考えてもいい。」

バーンが静かになる。アレクがドルガルに言う。

「ドルガルの眷属は少し待ってもらう。光の特化魔道士を探してみる。それでいいか?」

ドルガルが答える。

《アレクに全て任せよう。我はエデンの大樹の住処で待っている。他の八翼達も次戦は決戦のようだ力を強化しなければ、またザウザー様を眠らせてしまうぞ精進せよ。》

シエムが答える。

〈ドルガルが動くか。我も魔道を吸収しよう。バーンよ住処に戻る。また呼ぶがいい。〉

シエムが住処に飛んで行く。ゴレアが話す。

〈決戦が近い。我も戻ろう。ザウザー様に解放してもらう。ゴードンよ、我は次の段階に進む。ゴードンも鍛えておくといい。また呼んでくれ。〉

ゴレアが地中に潜っていく、ゴードンがゴレアに手を振り見送る。

「アレク。ゴレアが何か言ってたけど解るか?」

アレクが笑いながら答える。

「進化するという事だ。お前も鍛えないと契約を解消されるぞ。」

ゴードンが言う。

「なんだよ。アレクは冷たいぜ。シルヴィに早く逢いたいな。」

アレクがアグニスに言う。

「フェイザーの出番がなかったな。詫びといてくれ。緑竜が暴走していたら最後は消滅させるしかなかったフェイザーは最後の手段だった。」

アグニスが現れて話す。ゴードンとバーンが驚く。

「はい。解っています。フェイザーも理解しています。八翼が欠けるのは望みません。」

アレクがランドに言う。

「ランド。飛竜騎士団の皆。ご苦労。各自の任務に戻ってくれ。ちゃんと休息をとってくれよ。」

ランドが答える。

「はい。皆に休息をとらせます。エデンとアモンには何騎残しますか?」

アレクが笑う。

「ランド。当面はエデンとアモンに干渉しない。ダロス西域の空域管理だけでいいよ。」

ランドが敬礼して各地に帰還する。アレクがリアとカリナに言う。

「リアもカリナもご苦労様。バーン達を乗せてエピンに帰還してくれ。その後はハーディ達地上部隊を回収してくれ。アグニスが指揮してくれ。」

リアとカリナが答える。

「アレク兄さん。怪獣大決戦だったよ。何だいあれは?水竜様が沢山現れたみたいだ。」

興奮している二人にアレクが言う。

「バーンに色々聞いてくれ。俺はまだやる事がある。」

アグニスとバーンに合図して後を任せる。アレクがゴードンに言う。

「俺はネスレムを大樹に連れて行く。負傷しているエルフ軍を集めてくれ。動ける奴は手伝わせて一か所に集めてくれ。」

ゴードンが言う。

「四天とか言う奴も助けるのか?」

アレクが言う。

「約束したからな。生きてれば解放する。後は知らん。エデンが決める事だ。」

 ゴードンが頷きエルフ軍の生き残りを集め始める。アレクはネスレムを大樹に運びネイルスと合流して霊安室にネスレムとネーセルの遺体を並べる。アレクはネイルスと今後の話をする為にネリーナ達を送り届けた時に会談を開く事を約束する。その後、外に集められたエルフ軍の洗脳を解きネイルスに処分を任せてエデンを後にする。

 アモンに戻りデリータ達に戦闘の終結を知らせる。安堵するダークエルフ達に今後の話をする為、会談の日時を決める。アレクはハーディ達地上部隊を労い、地上戦に突入しなかった事を皆と喜び合う。リアとカリナが地上部隊を回収しアモンからもアレク軍は撤収し皆はエピンに帰還する。アレクとゴードンはドルマに向かう。


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