第12話 黒鷹と黒豹

 アレクがエピンに帰還する。エピンの中央広場に着陸した黒雲に住民が集まって来る。黒雲の為に水と食料を用意する者達が群がる。ビートが対応するが困っている。アレクはビートに合図して飛行艇に向かう。リアとカリナが出迎える。

「アレク兄さん。南方の奴等の目的は何だった?スィードだろ?」

二人が興奮して聞く。アレクが答える。

「そうだ。海洋王国アルマキアの南海王ネモニスが狙っている。」

カリナが言う。

「なら直ぐに戻ろう。サイファ姉達が心配だ。」

アレクが言う。

「まだ戻らない。ダロスの各地に侵攻する部隊を消して来た。部隊が帰還しなければ失敗したと気づくから暫くは警戒して動かないだろう。此方も警戒してるから本気の攻撃以外は無駄だ。だからその間に軍備を整える。解るか?」

リアとカリナが頷いて言う。

「解ったよ。それで、アレク兄さんの言う軍備は何?」

アレクが飛行艇の格納庫を開ける。アレクが言う。

「この永久電池と永久動力を飛行艇に使って完全な飛行艇を完成させる。」

リアとカリナが驚く。

「これを回収してたのか。これは使えるの?」

アレクが答える。

「俺には解らないが、どれも生きている機械だ。ロックが知っている。」

リアが言う。

「直ぐにドレルに運ぼう。」

アレクが言う。

「これを全てドレルに渡せない。ロック達は信用しているが、ドワーフの中にも悪意のある者達がいる事は知っている。悪用される事は避けたい。」

カリナが言う。

「どこかに隠すの?」

アレクが悩んで答える。

「今は無理だが、各都市に一つずつ支給して電力に使いたい。魔道による明かりは魔道が枯れれば暗闇になる。スィードのガス灯のように一部でもいいから、街に夜でも明るい場所があれば心が怯えないでいられると思う。使用するなら秘匿して使うけどな。」

カリナが嬉しそうに言う。

「スィードは明るいから好きだ。エピンの夜は暗すぎて怖い。」

リアも言う。

「スィードは夜も出歩けるから酒浸りが多い。」

アレクが笑う。

「それは嫌だな。夜も警邏を増やして厳しくしないとな。」

二人が嫌な顔をする。

「それはそれで嫌だ。口煩いのが増える。」

三人は笑いながら飛行艇の出発準備を始める。アレクが言う。

「とりあえずドレルに向かい、ロックとアイレムに確認してもらう。お前達も他言するなよ。敵の手に渡れば飛行艇も使えなくなるぞ。」

二人は頷く。アレクの元にアグニスが現れる。

「アレク王。私は任務が無ければ一度王都に戻ります。」

アレクが話す。

「アグニスには色々動いてもらった感謝する。王都で休息をとってくれ。部下達も新たな部隊編成ができたらアグニスが管理して指示を出してくれ。エレノア達によろしくな。」

アグニスが笑顔で応え王都に向かう。バーンが現れてアレクと話す。

「主よ。我等も王都に帰還しようと思います。エピンの魔道士組合も担当官を配置しました。魔道学校も併設しましたのでエピンの魔道士も増えると思います。」

アレクが言う。

「バーン達も北から南に東までご苦労だった。報酬と休息をとってくれ。飛行艇は俺達が使うから急ぎの者は翼竜で帰還してくれ。悪いが他は馬車移動だ。」

バーンが頷き魔道士達と帰還の打ち合わせを始める。ハーディ達がアレクの元に来る。

「アレク王。我等、傭兵達の今後の話をしたいのですが。」

アレクが答える。

「ああ。ハーディ達が望む通りにすればいい。どうするか決まったか?」

ハーディが答える。

「はい。ここエピンが故郷の者達はエピンに住みアレク王の任務に従事したいと決めています。それ以外の故郷の者達は新国スプラードで仕事をしたいと決めています。」

アレクが頷き話す。

「ハーディ達、砂竜部隊はどうする?」

ハーディが答える。

「私達砂竜部隊はアレク王の部隊です。最後までお供します。」

アレクが答える。

「ハーディ達との約束は果たした。エルニアを滅ぼしハーディ達の呪縛は解けた。自由な身なんだ。死地に生きる必要は無い。」

ハーディが答える。

「アレク王のお陰で仲間達も救われました。私達は自由な意思で決めました。同行する事を御許し下さい。」

アレクが言う。

「ではハーディ達には引き続き砂竜部隊として動いてもらう。まだ任務中の傭兵達もいるだろう。救い出す仕事も残っている。ハーディ達の拠点はエピンでいいだろう。ダルスのエピン騎士団と連携するのもハーディの裁量で決めていい。エピンに常駐する元傭兵達も管理して仕事を任せるといい。新国スプラードと兼務して相互に常駐拠点を創って外敵に対応してくれ。今後の外敵は南方の蛮族国、海洋王国アルマキアだ。」

ハーディが驚く。

「アレク王。まだ外敵がいるのですか?」

アレクが話す。

「既に各所で撃退し警戒態勢に入っている。ハーディ達は支援に入ってもらう。」

ハーディが頷き返事をする。

「はい。外敵の排除に向かいます。」

アレクが話す。

「では戦略を話しておく。ハーディ達は新国スプラードに支援配備し海岸線の警備を重視してくれ。相手は魔道を装備して気配を隠して潜入してくる。砂竜達には通用しないから、ハーディ達が適任だ。嗅覚と聴覚。視覚は阻害されるが少しの違和感に気づけば看破できる。海岸線と河川の周囲を警戒すれば簡単には潜入できない。頼むぞ。」

 ハーディが頷き任務に就く部隊を編制する。元傭兵達も交代で動員する。新国スプラードに向かいイザークに敵の情報を聞き警戒任務に就く。出鼻を挫かれたアルマキア軍はアレクの予想どおり偵察の部隊を送り込むがハーディ達砂竜部隊が殲滅する。アルマキア軍はただ兵を失い魔光石を回収されるだけの侵攻を繰り返す。姿を消しても砂竜に発見されて消え去るだけの南方兵を哀れみながらも数十回と殲滅する。


 アレクは飛行艇でドレルに向かう。ビートが黒雲と先行して飛行艇が続く。ドレルに到着しアレクがロックとアイレムに相談する。

「ロックとアイレムだけに見せたい物がある。」

二人を飛行艇の格納庫に連れて行く。二人が格納庫の塊を見て驚く。

「こ、こ、これは永久電池と永久動力か?」

アイレムが言う。

「弟よ。資料で見た事がある。同じ作りだ間違いない。」

ロックがアレクに聞く。

「これを何処で手にいれたのだ?」

アレクが二人に静かにするように合図して話す。

「古代文明の遺跡で発見した。兵器に接続されていたのを外してきた。」

ロックが静かに訊く。

「これは生きてるのか?」

アイレムも静かに訊く。

「この数の動力だと相当な兵器だ。稼働状態なら危険じゃ。」

アレクが静かに言う。

「この倍はあった。俺は永久電池と永久動力を秘匿したい。ロック達も秘匿してくれるか?これが敵勢力に渡れば最大級の戦争になる。ダロスが消し飛ぶ。」

二人が即座に頷き言う。

「これは必要な分以外は隠すべきじゃ。飛行艇の分だけなら脅威も少ないが数が揃えば悪事に使用され人種どころか竜種も消し去るじゃろう。」

アレクが二人に聞く。

「この永久電池と永久動力は何に何方を使えばいいのか教えてくれ。」

アイレムが答える。

「資料には永久電池は消費する電力の少ない部分に使い永久動力は主要な機関に電力を送ると記されておった。飛行艇には永久動力を繋げるのじゃ。」

アレクが言う。

「では永久動力を必要な分ロック達に置いて行く。管理は頼む。」

ロックが答える。

「ああ。儂等も回りの連中には話さん。また悪さをする者が出てくると大変じゃ。」

リアとカリナが甲板から降りて来て言う。

「ねえ。ロック。私等の飛行艇はまだ出来ないの?」

アレクが二人に注意する。

「お前達、また叱られたいのか?」

二人が慌てて逃げ出す。ロックが呼び止める。

「御二人さんの飛行艇はこれで完成するわい。」

リアとカリナが急いで戻りロックとアイレムに抱きつく。

「やったー。これでスィードに戻れる。ロックとアイレム。ありがとう。今度、高級酒を大量に運んで来るよ。」

ロックとアイレムが喜ぶ。

「そりゃぁ楽しみじゃ。直ぐに届けてくれ。」

皆が笑う。アレクが永久動力の接続方法を確認する。アイレムが飛行艇の魔道石を外し、永久動力と交換して動力線を繋ぐ。

グオングオングオン

永久動力から供給される電力が飛行艇に繋がる。魔道で流した電力よりも綺麗な電力が飛行艇を完全に動かす。ロックが驚く。

「おお。これは凄い。同じ電力でも専用の供給によって完全な稼働を始めている。今までが八割程度の稼働だったが今は十割完全に動いておるわい。」

アレクが聞く。

「黒蝶や次の飛行艇に接続すると速度も速くなるのか?」

アイレムが答える。

「理屈はそうじゃが飛行艇がもたないじゃろう。バラバラになるのが落ちじゃ。」

アレクとリアとカリナが頷く。ロックが話す。

「今のところ、五番艇はまだ製作しとらん。永久動力は三個あればいい。また完成後に追加を持って来てくれ。」

アイレムも言う。

「そうじゃな。ついでに酒も頼む。」

リアが言う。

「私の飛行艇を先に頼むよ。」

カリナが怒る。

「リア。ずるいよ。私のもお願いだよ。」

ロックとアイレムがそれぞれ永久動力を持ち飛行艇に向かう。

工房に新型飛行艇が二艇並んでいる。二人は感動して何方に乗るか決めている。美しく黒く輝く飛行艇二艇が永久動力を接続され始動する。ロックが話す。

「御二人さん。いつでも発進できるわい。」

アイレムも話す。

「こっちもじゃ。発進可能じゃ。」

リアもカリナもまだ決められない。アレクが言う。

「早くしろ。もたもたしてるなら俺が貰うぞ。」

リアが言う。

「アレク兄さん。そりゃないよぉ。カリナ。先に決めてよ。獲られちゃうよ。」

カリナが決める。

「じゃあ。アイレムの方でいい。少し羽が長い。こっちにする。」

アイレムが言う。

「おお。気付いたか。少しだけ羽を延長してみたんじゃ。上昇と下降に癖がでるかもしれんが試験的に改造してみた。直ぐに戻せるから安心せい。」

カリナが面白がる。

「いいねぇ。アイレムの実験艇だ。試験飛行してみよう。アレク兄さん、いいよね?」

アレクが答える。

「ああ。アイレムと試験飛行して来るといい。」

アイレムが言う。

「では少しの試験飛行を楽しむわい。カリナ。無理せんでくれよ。」

カリナが嬉しそうに発する。

「飛行艇三番艦。発進。」

飛行艇三番艦が上昇して行く。永久動力を接続した新型艦が無音で上昇する。今までの魔道石での動力供給では雑音が混ざり電力を供給していた。僅かな不協和音が発生し飛行艇の移動中に雑音が耳に残っていた。アレクが言う。

「完全体の飛行艇は静かだ。素晴らしい。」

リアが言う。

「ロックぅぅ。私達も早く出発しようよ。」

ロックが言う。

「まだ三番艦が上におる。事故になるぞ。アレク王に没収されるわい。」

リアが悔しがる。

「ううううう。我慢する。」

カリナが上昇を止めてアイレムに言う。

「では試験飛行に行きますよ。三番艦前進。」

三番艦が徐々に速度を上げて行く。滑らかに加速する飛行艇はカリナの操縦で風に乗り無理なく加速し続ける。アイレムが言う。

「ほほう。カリナの操縦は風を摑まえて飛行するのじゃな。飛行艇に無理なく加速する。流石じゃ。速度を落とす時も羽で風を受ければ減速も早くなるじゃろう。」

カリナが言う。

「アイレム。船乗りは風が見えるんだよ。この羽、いいねぇ。速度を維持するのにも減速するのにも私好みだ。他の人には癖に感じるのが私は楽しい。」

アイレムが嬉しそうに笑う。

「ほほほぅ。カリナ好みか。ではこのままで三番艦はいいな。」

カリナが言う。

「また改造したくなったらアイレムに頼みに来るね。」

カリナとアイレムが握手する。三番艦が工房に帰還する為に反転すると、リアの操縦する四番艦が上昇を止め加速を始めていた。アイレムが言う。

「カリナ。競争するんじゃないぞ。アレク王に没収されるぞ。」

カリナが言う。

「分かってるよぉ。・・・危なかったぁ。」

カリナが冷や汗を掻きながら帰還する。アレクが言う。

「カリナ。お前、試験飛行で遊ぼうとしただろ。ばれてるぞ。」

カリナが笑って誤魔化す。

「あはははは。そんなわけないいじゃん。ねぇ。アイレムぅ。」

アイレムが笑いながら下船する。アレクが聞く。

「永久動力は問題ないかな?」

アイレムが答える。

「問題ないじゃろ。もし危険な状況になったら接続を抜いて魔道石に切り替えるといい。予備に魔道石を積んでおくのがいいじゃろうな。」

アレクが答える。

「そうしよう。まだまだ未知の代物だ。無理はなるべく避けるのがいい。」

アイレムも頷く。カリナが言う。

「アレク兄さん。この三番艦に名前付けてよ。」

アレクが頷いて考える。

「うむ。カリナの三番艦は黒鷹、コクヨウ。小型の猛禽類でカリナのように勇ましい。」

カリナが喜ぶ。

「黒鷹。いいね。空を自由に飛べそうだ。」

リアが四番艦と着陸して来る。ロックが感動して話す。

「永久動力は実に素晴らしい。無駄な電力の流れが無い。これは感動ですわい。」

リアが聞く。

「アレク兄さん。四番艦の名前は何だい?」

アレクが答える。

「リアの四番艦は黒豹、クロヒョウ。柔軟俊敏な猛獣、リアのように鋭利な強さ。」

リアが喜ぶ。

「黒豹。切れ切れの操船をするのが楽しみだ。」

アレクが二人に言う。

「リアとカリナは首都スィードに帰還しサイファの元に黒鷹と黒豹を配備し指示を受けよ。これより海洋アルノの防衛と戦闘の中心となる三艦の内の二艦の艦長とする。イリアと三人でサイファを守ってくれ。外敵を排除し海洋アルノが南海を平定するんだ。」

リアが応える。

「はい。アレク王に従い。サイファ女王を守り、外敵を排除し南海を平定します。」

カリナが応える。

「はい。アレク王に従い。サイファ女王を守り、外敵を排除し南海を平定します。」

アレクが嬉しそうに二人を抱きしめる。

「今の二人なら任せられる。頼むぞ。」

アレクが二人を黒霧で包み込む。二人の手に紋章が刻まれる。二人が驚く。

「アレク兄さん。なんか体が温かい。手に紋章?が光ってる。」

アレクが離れて言う。

「二人に加護を与えた。俺との絆だ。普段は消えてるから気にしなくていい。」

リアが聞く。

「私達、家族なのかな?」

アレクが頷く。カリナが聞く。

「なんか良いよね。家族だ。」

アレクがイリアの分の首飾りを渡す。

「ここにいないイリアに渡してくれ。俺の加護が付与してある。」

リアが受け取り言う。

「アレク兄さんはスィードに帰らないの?」

アレクが答える。

「俺は仲間を守らないといけないんだ。それはサイファ達と同じくらい大切な仲間達なんだ。サイファは悲しむだろうけど、俺は俺が世界の悪意と戦わないと皆を守れないことを知っているんだ。だから二人に頼む。俺の愛するサイファを守ってくれ。」

カリナがアレクに抱きつく。リアもアレクに抱きつく。アレクが話す。

「二人は今回の戦いで操縦士としても戦士としても数段も成長した。魔道も上位に近づいてる。更に鍛錬すれば全ての上位を習得できる。励めよ。」

アレクが二人を飛行艇に送る。二人が挨拶をする。

「アレク王。ロックにアイレム。それとコビーに感謝します。スィードに帰還します。」

アレク達が手を振る。二人は飛行艇を上昇させ発進する。アレク達が見送りながら言う。

「ロックとアイレムとコビーに感謝だ。海洋アルノが危険な状況だった。戦力が増えれば安心だ。俺が間に合わせる事ができそうだ。」

ロックが言う。

「まだ敵がおるのか?なんとも困ったもんじゃ。」

アイレムが言う。

「アレク王。飛行艇はあと何艇必要なんじゃ?」

アレクが答える。

「急ぎで二艇は欲しいな。できれば一番艦も改修してもらいたい。」

コビーが言う。

「師匠と先生が死んでしまいます。アレク王。少し休養をお願いします。」

アレクが笑う。

「当然だ。俺が高級酒を届けないとリアとカリナに怒られる。ルーマ国首都ソーサーに戻ってアルノから送ってもらうように伝えとかないとな。」

ロックとアイレムが喜んでいる。コビーが叱る。

「師匠も先生も休まないと倒れますよ。お酒はまだ無いんですよ。」

寂しそうにする二人が可愛く見えるアレクが笑う。

「ロックに魔道器を渡しておく。これは魔道を蓄積してある。俺との連絡手段に使える俺も魔道器に音声を飛ばすから相互で連絡出来る。使ってくれ。」

アレクが高純度の高密度化された魔道器をロックに渡す。ロックが話す。

「アレク王はドーワーフ国との同盟を危惧されてるのじゃな?」

アイレムも頷く。コビーは静かに見守る。アレクが答える。

「ああ。ドレルとガレルは友好的なのは判ったがバレルは俺の感が騒いでいる。」

ロックが答える。

「そうじゃろうな。今回の反乱で借りがあるルーマ国に対して同盟すらできないような連中じゃ。裏に何かおるのじゃろうな。我等には何も伝わって来ない。」

アイレムが言う。

「バレルは元々閉鎖的な首都じゃ。我等にも話してない事が多そうじゃ。」

アレクが話す。

「フロスティア。」

ロックが怯える。アイレムが蒼ざめる。アレクが話す。

「また当たりか。ロック達の関係者がいるんだな。」

ロックが話す。

「コビー。出入り口も窓も全て閉じてくるんじゃ。アレク王も飛行艇を工房に入れて下さい。外部と遮断します。」

アレクが急いで飛行艇を格納する。コビーも戸締りをして戻って来る、ロックが言う。

「天井を閉めてこの施設を隔離します。」

アレクは何が起こるのか見守る。コビーは不安気だ。アイレムが装置を押す。

ゴゴゴゴンゴゴンゴゴン

床が沈んで行く。飛行艇の格納部分以外の床が下がり天井に厚い扉が閉まって行く。

三重の扉が閉まり床が静止する。

ゴゴン

アレクが聞く。

「二十メード程下がっただけだが何かあるのか?」

ロックが側面の扉を開けてアレク達を招く。部屋は収納庫のような造りだが少人数なら生活出来る居住空間だ。アレクが話す。

「ここでドワーフ達が生き残ったのか?だがバレルが本拠地だろ?」

アイレムが言う。

「元々はドレルもバレルもドワーフ国の一つです。古代文明の時代から存在していましたが小さな町で今のような大きな都市では無かったのです。」

アレクが話す。

「では何方の街にも生存者がいたのか。それで何を警戒している?」

ロックが言う。

「天司族の介入を危惧しています。彼らは無慈悲な神の使いです。」

アレクが聞く。

「ここなら気付かれないのか?」

アイレムが答える。

「いえ。敵視していれば、この格納庫くらい突破してくると思います。実際には見ていませんが口伝てに語り継がれてきた古代文明との関係と滅びの経緯は、我等も子供の頃からの脅威で恐怖の話なのです。」

アレクが聞く。

「苦しませるが話して欲しい。俺の未来が関係している。皆の未来も同じだ。」

ロックが話す。

「儂が話します。それは古代文明の攻撃によりドレルもバレルも消滅する少し前の竜種同士の決戦が始まりです。古代文明の王が闇の竜との契約でフロスティアの古の竜を倒す為に大軍を率いて攻め入り勝利直前に撃退され始めます。その原因の一つが古の竜の配下三光の眷属がバレルから武器を手に入れてしまった事です。」

アレクが聞く。

「その話は何百年前の話しか解るか?」

アイレムが答える。

「ドレルが滅びたのが千年前かと思います。詳しくは伝わっていませんが推定するとそうなると思います。ドワーフの寿命は三百から五百年として三代前の方達が生き残りとされています。詳しい書物でも残っていればいいのですが、この格納庫に急いで逃げ込んだのでしょう何も残っていません。口伝てですので申し訳ありません。」

アレクが聞く。

「ふむ。それは前々回の竜種の決戦だな。先に其方を聞いておこう。それで三光の眷属に武器を流したドワーフは何者だ?」

ロックが話す。

「それはバレルに住んでいたとされるドワーフの英雄バーレル。都市の名の由来のドワーフの武人です。未だに生きていると言われています。」

アレクが納得する。

「少しずつだが話が繋がり始めたな。バーレルが三光を強化したのか。実際は三光では無いな。まだいるのだろうな。」

ロックが訊ねる。

「アレク王は竜の眷属ですが、古代文明の王と同じ道を行かれるのですか?」

アレクが話す。

「俺が塵屑のようにアビスに落ちて竜の眷属になり復讐を果たそうとした時は同じだっただろうな。最初、闇の竜はそれでもいいから眷属にして自分を復活させようとしていたのも解る。それがザウザーの宿命で使命だったんだ。だが俺が得た竜の知識の種は俺を変えたんだ。それは竜種達が眷属に与えている試練じゃないかと俺は思っている。だから俺は世界を変える戦いを始めたんだ。」

ロックが話す。

「古の竜と破滅の竜は伝説ですが必ず戦う事が決まっています。前々回も前回も闇の竜達は負けて眠りにつき、ダロスは混沌が蔓延しました。結果論ですが古の竜がこの世界にしたと言えます。ですからバーレルは儂からすれば悪と言えます。」

アレクが聞く。

「前回の決戦は何百年前か解るか?」

アイレムが答える。

「儂の祖父が子供の頃じゃから五百年前か?バレルの書物庫に史実書があるはずです。」

アレクが言う。

「ふぅぅ。どっちにしろバーレルが問題なのが解った。最強の竜種と古代兵器を所持した眷属が相手では簡単には勝てない。余計な事をしてくれる。どんな兵器を天司族に渡したか解れば教えてくれ。今のままでは俺は勝てる気がしない。」

ロックが答える。

「聞いた話では古代銃の強化された物で魔道のような攻撃をする銃です。以前のエルニアの古代兵器の縮小された物が解り易いと思います。」

アレクが悩む。

「それでは俺達には勝算が無い。ロックやアイレムが飛行艇を増産してくれても落とされるだけだ。かなり怒りが溜まるな。バーレルを消してやる。」

ロックが訊ねる。

「アレク王は楽しんでいるように感じるのじゃが・・・どうかされたのか?」

アレクが答える。

「ああ。腹が立つ程、怒りが溜まる程、楽しいね。必ず潰してやりたくなる。」

ロックが聞く。

「戦力的に勝てないのに楽しくて、潰したいと?」

アレクが話す。

「ロックもアイレムもコビーも、もう俺の家族だ。人生の先輩だし友人だ。俺が一人なら、お手上げでザウザーと心中してこの世とおさらばしていただろうな。」

三人が真剣にアレクを見る。アレクが話す。

「俺に仲間や家族がいる事が、この理不尽に立ち向かう力をくれるんだ。その試練を超えて行く力を貰えるんだ。先のエルニアとの大戦もそうだろ。俺一人で勝てるなんて思っていなかった。仲間が力を貸してくれたから戦い抜く事が出来たんだ。」

ロックが話す。

「アレク王の戦いに儂も御供したい。駄目じゃろうか?」

アレクがロックに手を差し出す。ロックが両手で握手する。

「ロックもアイレムもコビーも同じ飛行艇に乗ってるんだ。戦場にいなくてもその意志を乗せて戦ってるんだ。各々の出来る事で助けてくれればいいんだ。俺は感謝してる。」

ロックが言う。

「いや。ドワーフの勇者としてアレク王と共に闘いたい。バーレルを倒すのも儂等の役目だと思っているんじゃ。この世界の悪意はバーレルが原因の一つなんじゃ。三光に加担し竜種の均衡を崩し世界の流れを変えたのはドワーフの英雄。それが許せないのじゃ。」

アレクが想いを酌んでロックに言う。

「我、黒竜王アレクがドワーフの勇者ロックと義兄弟の契りを交わそう。これは主従関係でも支配する関係でもない。好きに助け、好きに離れる事が出来る契りとする。」

ロックが跪く。アレクが直ぐに立たせて言う。

「俺は仲間を縛らない。お互いの想いで繋がっていたい。ロックの好きにしていい。三人共、既に戦略の中にいる。だから三人共、好きに動いていいんだ。俺も好きに頼み事をしている。他の仲間も知ってるだろうが好きに動いてもらっている。皆、自分の世界を守る為に力を合わせているんだ。ロックが動く時は俺が手を貸す。」

ロックが応える。

「儂が戦場に向かう時に、アレク王が力を貸してくれる。こんなに心が躍る契りは初めてじゃ。まずは飛行艇を増産し、改良した古代銃を配備しましょう。極秘裏に。」

アイレムが言う。

「製造は儂とコビーが請け負う。できれば図面を手に入れてもらいたい。」

アレクが聞く。

「図面は海洋アルノから借りられるか聞いてみる。それと先の話の続きだがバーレルは竜種の眷属だろう。竜種は何か解るか?」

アイレムが答える。

「青銅竜と聞いております。その力は青銅の剣を無尽蔵に造り出す。フロスティアの麓を支配していると聞きます。その土地の鉱山から青銅を吸い上げているようです。」

アレクが言う。

「完全に物理攻撃系の竜種だな。力のぶつかり合いだ。ロックも重装備で闘わなければバーレルまで届かないな。俺と共闘して闘おう。」

ロックが頷き感謝する。

「それは有り難い。儂等のけじめに御力をお借りします。」

コビーが心配する。

「先生。闘わなければならないのですか?」

ロックが話す。

「そうじゃな。これはドワーフの問題なんじゃ。誰かが見せなければならない意地と意志なんじゃよ。ダロスに生きる種族としてのな。」

コビーが辛くなり涙する。アレクが話す。

「ロックは俺が死なせない。意地を通させるから安心しろ。」

アレクがコビーの肩を叩く。ロックもコビーの肩を叩く。アイレムが微笑む。

「では食事でもしながら戦略を練るとしよう。」

アレクが三人と決戦に向けての話しをしながら食事をとる。コビーはロックに泣きながら抱きついている。アレクには親子に見えて微笑ましい。アレクはアイレムと軍備の話と古代銃について話をする。試作品を完成させてガレルで秘密裏に増産させる計画を立てる。

 その後、ドレルの代表ドムと面会し、ドワーフ国との同盟計画を一時凍結するように伝える。その代り、ドレルとの民間交易を充実させ相互に助け合うように話し合う。対外的には交渉が決裂したように見せ、裏で動く為の手段だとドムには理解してもらう。ドムにはバレルに注意するように話し上手く立ち回せる。バレルはバーレルが必ず監視している。


 アレクはロック達に飛行艇の増産を任せて首都ソーサーに向かう。アレクは考えている。

”ミレニアが俺の考えと同じなら三光と他の敵竜種には話さないだろう。俺の感覚がミレニアを守っている竜種とその眷属が悪意を助長させていると感じている。バーレル以外にもいると感じる。鬼人族か。ヤマトのサムライか。天使族。”

 首都ソーサーに到着し軍営でヒュース達と簡単な会議を始める。アレクは自分の拠点をアークに移す事とルーマ国の王都の名称を首都ソーサーとする事を告げる。

「皆、各々の任務ご苦労。俺から連絡しておく。俺は拠点をアークに移す。それにより軍営の撤去を始めてくれ。それと王都の名称を首都ソーサーとする。皆は首都ソーサーに本部を作り任務を続けてくれ。ヒュースがルーマ騎士団とサーレ騎士団を統括して全権を任せる。ルーマ国の国政は治安維持と食料問題が安定した時点で各郡都の代表と協議して暫定政権を発足してくれ。当然、ジェイソンが暫定議長だ。」

ヒュースが答える。

「では本部に移行が完了次第、軍営を撤去致します。首都ソーサー、美しい名です。」

ジェイソンが答える。

「解りました。各郡都を視察しながら各代表と会議をしてきます。」

アレクがジェイソンに言う。

「ジェイソンが信頼できる人材を見つける事ができれば楽になるだろう。ルーマは先の国創りに進むんだ。ダロス西域連邦を始める準備だ。」

ジェイソンが頷きながら応える。

「いよいよですか。心配ですが、準備します。」

アレクが微笑む。ヒュースが話す。

「アレク王。仲間の紹介が遅れましたが、今からがよろしいでしょうか?」

アレクが頷き聞く。

「以前の会議でレブンと一緒にいた者達だろ。」

ヒュースが頷き話す。

「レブンは政務官、外交官として国政に携わります。ジョーイはサーレの警邏隊長にエイドは私の軍務補佐とし次期団長候補とします。ナディとデクスはジェイソン殿と同じく財務担当とします。ゼノンとディーノは任務継続中です。」

アレクが新規帰還者達に話す。

「諸君等はヒュースの良き理解者で同志だ。この先のルーマ国やダロス西域連邦に必要な人材だ。だが慢心するなよ。俺は皆を信じているが、同時に民と同じ目線で皆を見ている。その才能を発揮して今までの屈辱を自分の使命に変えてくれ。」

皆が頷く。ジェイソンがアレクに訊ねる。

「アレク王にお聞きします。私は軍務には口出ししませんが、現状の確認がしたいので御教え下さい。世界はどのように動いているのでしょうか?」

皆が同じ関心事に真剣に聞く。アレクが答える。

「では話そう。ルーマ国解放後、エルニアを攻略したがダロスの悪意は完全には消滅していない。エルニアの直接的な脅威は去ったが、奴等が撒き散らした悪意の種は各地で育っている。ルーマ国がそうだった様に各地に不穏な悪意は芽吹いている。エルフ族との戦いもその一つだった。今ダロス西域は少しの安寧を得たが南海は荒れている。次の戦いは南方の海洋王国アルマキアだ。」

一同が驚く。ジェイソンが聞く。

「南方が攻めて来るのですか?」

アレクが話す。

「現在も交戦中だ。」

一同が唸る。ヒュースが聞く。

「では我等はどう対処しますか?」

アレクが話す。

「ヒュースよ。俺は既にルーマ国から離れている。国政には参加するが軍務はヒュース達が独自に動けばいい。その為の仲間だ。新国スプラードに常駐している治安部隊も国が安定すれば帰還してもらう。今後のルーマ騎士団はヒュース達が導くんだ。」

ヒュースと仲間達が頷き気持ちを新たにする。アレクが話す。

「現在、ドルマは竜戦士ゴードンが制圧しドルマ族を指導して、以前の蛮族ではない。」

一同が唸る。

「ドルマを制圧ですか・・・。」

アレクが頷き話す。

「そうだ。ダロスの西域は纏まる土台が出来始めている。その南の海洋王国アルマキアが侵攻を始め海岸線で撃退している。隣の国々も同様だ。いずれも撃退している。」

一同が安心する。ジェイソンが聞く。

「ですがアルマキア軍の本隊は動いてないのですね。」

アレクが頷き話す。

「そう。本隊が動けば開戦に突入するだろう。俺は介入するが直接対峙するのは海洋アルノになる。アルノの外敵がアルマキアだ。俺の妻は怒ると怖いから滅ぼすだろうな。」

一同が苦笑いで蒼ざめる。ヒュースが話す。

「ではルーマとしては支援している新国スプラードに兵を送ります。名目は軍事演習とし練兵を兼ねての支援部隊とします。他は各国境警備を厳重にします。」

アレクが言う。

「ヒュースの考えで良いだろう。各国境と想定できる進入経路を警戒する事は重要だ。」

ジェイソンが聞く。

「理解しました。アレク王の情報をヒュース殿に伝えて頂ければ、今後はヒュース殿に確認致します。教えて頂き、ありがとうございました。」

アレクがジェイソンに話す。

「外交や各地の状況を知る事は重要な事だ。ジェイソンは正しいし誰に聞いてもいい。俺も聞かれれば必ず答える。皆が世界の現状を共有できれば平和も近づく。」

一同が頷く。アレクが続ける。

「緊急時には魔道器で連絡してくれ。俺からも連絡する。では俺はアークに戻る。」

アレクが皆に手で合図して軍営を後にする。飛行艇に乗り込みアークへ向かう。

ヒュースは見送りながらジェイソンに話す。

「アレク王はルーマ国を独り立ちさせる為に動いてるのだな。ジェイソンはこれからが大変だな。ルーマ騎士団も手助け出来る事は何でもするから言ってくれ。」

ジェイソンが応える。

「はい。治安維持が安定しましたら各街道整備の護衛をお願いします。魔道士組合に依頼しますが郊外作業になりますので首都ソーサーから延長される街道での警護、護衛をお願いします。北はドレル方面、南はサーレまで街道の幅も広げて拡張と整備を進めます。」

ヒュースが返事をする。

「承知した。各方面に配備する。魔道士を守らなければアレク王に叱られる。」

二人はルーマ国の内政と軍務の長である。連携できればルーマ国は盤石だろう。


 カイル達は魔道院の午後の授業、魔道研究を五人で進めている。エレンの魔道の映像化が順調に進んでいる。カイル達は研究を真剣に取り組んでいる班に配られた魔道石を使い映像と音声の収録を始めている。映像をエレンが光魔道で収め、ケインが風魔道で音声を収める。カイルとニヴンがそれぞれの補助をする。被写体はエステルだ。

「ねぇ。私が被写体なのが恥ずかしいのだけど誰か代わってくれない?」

エレンが答える。

「だめだめ。エステルじゃないと綺麗な絵にならないの。」

カイルが言う。

「どうせならエステルさんを記録に残す方が楽しいしね。」

エステルが言う。

「カイル。さんは止めて。皆、研究仲間でしょ。」

エレンが言う。

「そうよ。エステルは仲間なんだから、さん付け呼びは禁止よ。」

ニヴンが言う。

「ごめんよ。エステルだけじゃないんだ。カイル兄は軍属だったから抜けないんだ。」

ケインが言う。

「公私混同で切り替えられない。カイル兄の弱点だね。」

エステルが笑う。カイルが反省する。

「ごめん。口が勝手に言ってる。なんか魔道院も時々、任務中に思えるんだ。」

エステルが笑顔で言う。

「そうよね。カイルは王様から期待されてるから、いつも真剣だものね。」

皆が頷く。カイルが息を吐く。

「はぁぁ。中々切り替えられないな。許してくれ。」

皆が笑う。ルースが楽しそうなエレン達に話しかける。

「エレン。楽しそうだね。研究が進んでるのかい?」

エレンが答える。

「ルース院長。順調ですよ。映像を魔道石に収められました。後は音声です。」

カイルがルースに訊く。

「ルース院長は研究室にいていいのですか?」

ルースが悲しそうに言う。

「いいんだ。ここだけは死守したんだ。他の時間は書類の山で読みたくない書類だらけだ魔道に一切関係ない予算と支払いと収支と・・・俺を休ませてくれ。」

エレンが可哀想なルースの頭を撫でる。

「ルース院長はこの時間が休憩時間ですね。寝ていてもいいですよ。他の生徒も研究に没頭してるから、ルース院長の自由時間です。」

エステル達も笑顔で頷く。ルースが嬉しそうに席に戻って寝てしまう。

「ねぇ。ルース院長は直ぐに院長を辞めそうね。」

エレンが囁く。エステルが小声で答える。

「でもバーン様と王様に使命されてるから難しそうね。」

カイルも混ざる。

「他に適任者がいれば嘆願するんじゃないか?」

ニヴンも混ざる。

「適任者がいないから、あんな風になってるんだろ。」

ケインも混ざる。

「魔道院の運営を別にすればいいんじゃないかな?」

皆が驚く。エレンが聞く。

「ケイン。それはどういう事か教えてよ。」

ケインが答える。

「ルース院長は魔道院の院長の仕事をしてないんだよね。最後の決済担当なんて経営の仕事なんだから魔道士組合に丸投げすればいいんじゃないかな。」

エレンがケインの頭を撫でて喜ぶ。

「そうよね。魔道院は魔道を極める為の場なんだから先生達も魔道に携わらないと駄目よ。ルース院長に話してみよう。」

元気印のエレンが駆け出す。カイルがケインに聞く。

「ケインは的を射た話をするよな。何でだろう。」

ニヴンも聞く。

「そうだよな。そんなに勉強してるの見た事ないけど。」

エステルが言う。

「ケインは観察眼が高いのね。」

ケインが話す。

「解らないけど・・・皆の話を聞いてるだけなんだけどね。」

カイルが話す。

「エステルの言う観察眼は解る気がする。それは魔道とは違うケインの特別な力かも。」

ニヴンも頷きながら話す。

「時々、アリシア母さんの施設の事を思い出す。兄弟姉妹達が皆アリシア母さんから加護を貰っていたんじゃないかなって。」

カイルが言う。

「俺も感じてた。アリシア母さんは王様と何処か似てた気がするんだ。」

エステルが聞く。

「カイル達のお母様は魔道の適性はあるのかしら?」

カイルが答える。

「聞いた事がないけど俺は適性者だと思う。」

ニヴンも答える。

「俺も今なら判る気がする。アリシア母さんは特別な女性だと思う。」

ケインが言う。

「アリシア母さんは魔道を使ってたよ。たぶん無意識だと思う。」

皆が驚く。

「ケイン。どういう事だ。」

カイルが大声で聞く。研究室が大声で響く。ニヴンが言う。

「馬鹿だな。もう。」

「すみません。カイルが寝ぼけました。」

ニヴンが研究室の生徒達に謝る。カイルが反省する。

「すまん。ケイン、どういう事だよ。」

エレンが慌てて戻って確認する。

「何があったの?」

カイルが最初からエレンに話す。エレンが納得してケインに聞く。

「アリシア母様は無意識で魔道を使っていたのね。ケイン、どんな状況だったの?」

ケインが話す。

「弟達と施設の庭で遊んで大怪我した弟がいたんだ、御医者さんが来るまで痛みで苦しんでいた弟をアリシア母さんが抱きしめて落ち着かせてた時に光ったのを見たんだ。一瞬だったから自分の目の錯覚かと思ったけど、弟は痛いはずなのに直ぐに寝てしまった。今ならあれは光魔道だったと解るよ。」

エレンが話す。

「ケインが正解ね。だけど無意識の魔道だからアリシア母様に自覚は無いわね。」

カイルが聞く。

「それは良い事なのか、本人に教えた方がいいのか、どうすればいい?」

エレンが話す。

「私なら教えた方がいいと思うけど、今まで何かの害になっていないのなら黙って見守ってもいいかな。オーディスお父様に聞くのが一番いいわね。」

カイル達が頷く。エステルが話す。

「私は王様に相談してもいいと思う。きっと力になってくれる。」

エレンも言う。

「そうね。オーディスお父様に話して王様に連絡するといいわね。魔道の話だからね。」

カイルがニヴンとケインと確認して頷く。エレンが話す。

「それとルース院長が喜んでたわ。丸投げするみたいよ。」

皆が上手くいきそうで笑い合う。魔道院の研究室はルースが元気になり賑やかになる。


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続・竜戦記Ⅰ D.H @daidai007

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