第9話 再生

エピンではバーンが魔道士組合エピン支部を創設し指導していた。

「バーン様。エルニアからの避難民で魔道士の方達がここエピンに居住されるそうですが魔道士組合に加入して頂けるのですか?」

エピン支部の管理職が尋ねる。

「そうだ。一部の魔道士は軍事利用される事を拒絶している。生活の為の魔道を使いエピンと共に生きるそうだ。良い依頼を頼むといい。」

バーンは人体実験に利用された魔道士達の一時的に住んでいる大きな屋敷に向かう。以前は腐敗貴族が住んでいたエピンの異物で住民達には憎悪の象徴だった建物だ。バーンが無人となった屋敷を改修させてエピンに溶け込むように純白な外壁に塗り替え教会のように見える。住民の心も安らぐ為、再利用する事に反対はされなかった。

 バーンが屋敷に出向き救出された魔道士達と話をする。彼らはダロス西域の各都市から攫われてエルニアの魔道実験に利用された。バーン達魔道士には他人事ではない。バーンと弟子達が懸命に治療や今後の相談を聞き少しずつ気力も回復する。中には怯えたまま精神を病む者もいたがバーン達には成す術がない為、アレクの到着を待つ。特にエルフ族の魔道士達は人間種よりも酷い扱いだった事が解る。体には傷跡が無数にあり中には部位欠損している者もいる。

 エルフ族の魔道士達は最初に救出された時も人間種を信用していなかったので話もせず震え怯え仲間同士で固まっていた。バーンが自分も魔道士でルーマ国では蔑まれる立場であった事を話し、現在はアレク王によって魔道士達が認められる存在になっている事を誠実に話し少しずつ理解してもらう事ができた。今ではバーンと魔道の話で盛り上がる程の仲になっていた。バーンがエルフ族の魔道士達の代表に聞く。

「ネリーナ達は何故エルニアに捕まったのか教えてくれるかな。嫌な思い出だと思うが今後の対策になるようにしたいのだ。」

ネリーナが悲しそうな顔で話す。

「私達が外の世界に興味を持ったのが原因です。エデンから出なければ摑まる事も無かったと思います。私達五人姉妹は皆で親の制止を聞かず。エルフ国エデンを飛び出し外の世界を旅している時に捕まりました。」

バーンが詳しく尋ねる。

「ネリーナ達程の魔道士なら簡単には捕まらないと思うのだが、どうやって捕まったのか詳しく教えてほしい。我等も気になっている。」

ネリーナが暗い顔で話す。

「五女のネーセルが人質になり救う為に捕まりました。私達エルフ族は身内を守る事は命に代えてでも守ります。ですがネーセルは玩具にされてその場で殺されました。」

バーンが愕然とし苦しむ。若きバーンは感情が表に出てしまう。

「すまない。悪党の毒牙にかかった妹に私が謝罪する。どうか人間種を忌み嫌わないでほしい。私達はそんな悪魔達を倒す為に戦っている。信じて欲しい。」

バーンの謝罪にネリーナ達が応える。

「バーン様は私達を救ってくれました。人間種全てが悪意の種族とは思いません。」

ネリーナの言葉に泣きながら感謝するバーン。ネリーナがあやしている。

弟子がバーンに駆け寄って話す。

「バーン様。アレク王が到着しました。」

バーンが喜んで答える。

「早く御連れするんじゃ。ネリーナ達と面会してもらう。」

弟子が慌ててアレクを迎えに行く。バーンがネリーナに話す。

「アレク王が到着した。必ずネリーナ達の力になつてくれる方だから安心してくれ。」

ネリーナが頷き、答える。

「はい。私達を実験施設から救った方達も話していました。心配していません。」

バーンがネリーナ達を見て笑顔になる。屋敷の玄関が開いてアレクが現れる。ネリーナ達には自分達を救う為に戦ってくれた王様が光に包まれて現れた姿に涙していた。アレクの体中に精霊が集まり遊んでいる光景がエルフ族には見える。ネリーナ達はアレクに跪いて祈っていた。エルフ族にとって精霊は神の使いであり自然界の大切な子供達なのだ。

アレクがバーンに近づき、ネリーナ達の祈る姿に驚きながら話す。

「バーン。この方達がエルフ族の魔道士達かな。」

バーンが答える。

「主よ。お待ちしておりました。彼女達がエルフ族の魔道士達です。」

アレクがネリーナに話す。

「この度はエルフ族の皆が苦しめられた事に我々は心から謝罪したい。どうか人間種を怨まないでほしい。悪事を働き貴方達を苦しめた者達は俺達がこの世界から滅ぼし消し去った。全ての人間種があのような醜悪な悪党では無い。直ぐには許せないと思うが今後の我らの行動を見て決めてほしい。俺や俺の仲間達は皆、世界を混沌に堕とそうとする悪意と戦っている。エルフ族もその悪意の渦に巻き込まれている。俺はその戦いを止めたい。」

ネリーナが頭を下げて謝罪するアレクを起こして話す。

「精霊に守られるアレク王様の想いは伝わりました。私達姉妹は人間種を許します。」

他の妹達も頷きアレクを見て祈る。アレクが困惑して話す。

「すまないが祈るのを止めてもらいたい。俺は神でも何でもない。」

ネリーナが話す。

「私達エルフ族は精霊達と供にいるアレク王様は神の使いと同じと考えています。」

妹達もアレクを魅入っている。アレクが言う。

「ふぅぅ。止めてくれそうにないな。お名前を伺ってもいいですか?」

ネリーナが妹達と応える。

「私はエルフ族族長ネイルスの五人姉妹長女のネリーナです。」

「次女のネーシスです。」

「三女のネールーです。」

「四女のネーレです。」

アレクがバーンに小声で聞く。

「五女殿はどうした?」

バーンが悲しく答える。

「エルニアの人攫いに殺されたようです。惨いことです。」

アレクが怒り握った拳から血が流れる。ネリーナがアレクの手を広げて手当をする。

「アレク王様の御気持が判ります。どうか御自愛下さい。」

アレクが彼女達の腕や足、体の傷を見て悲しく話す。

「俺はエルニアとの国境近くから感知能力で奴等の悪逆無道な行為を見た。その時の傷だね。助けるのが遅くなった。すまない。」

ネリーナ達が答える。

「いいえ。救って頂きました。感謝しています。」

妹達も頷き抱き合っている。アレクが話す。

「俺からの謝罪と貴方達の心の広さに感謝を込め、俺からの気持ちを受け取ってくれ。」

アレクが黒霧で彼女達を包み込む。ネリーナ達がダークエルフの闇魔道と同じものに驚き怯える。アレクが話す。

「大丈夫だ。楽にしていればいい。何も怖くないよ。」

皆が寄り添いながらアレクに頷く。

「ネリーナ姉様。私の無くなった指が生えてきました。」

「私の足の大きな傷が消えました。痛みもありません。」

「私も背中の痛みが無くなりました。手の傷もありません。」

ネリーナが皆の体を確認する。妹達が言う。

「ネリーナ姉様の綺麗な耳が戻ってます。顔の傷も消えましたよ。」

ネリーナが部屋の鏡を見て泣き出す。妹達が集まり抱き合っている。アレクがバーンと話し彼女達を休ませる事にする。


二人は静かに部屋を出て他の魔道士に確認する。

「皆に確認したい。俺は黒竜王アレク。この世界の悪意を滅ぼす者だ。エルニアの実験台にされた諸君達に聞きたい。この世界を変える為に戦う意志はあるか。エルニアのような悪意の塊を倒し、自分達のように魔道士を道具にするような世界を変える気はあるか。」

魔道士達が応える。

「私は体中を切り刻まれ腕がありません。ですが、出来るならば戦いたいです。」

「私も同じです。足がありませんが少しでも手助けしたいです。」

「我等も同じです。皆、戦いたいと。アレク王様と共に戦いたいと思っています。」

アレクが頷き皆に言う。

「その気持ちに感謝する。決して無理強いはしない。戦いは恐ろしいものだ。逃げ出したい者や怖くて動けなくなる者もいる。それでも立ち向かおうとする気持ちがあれば、そんな事は些細な事だ。皆がお互いに助け合えば怖くも無くなる。仲間とは助け合うものなんだ。仲間を置いて逃げることだって考えなくなる。俺は君達の気持ちを聞きたかった。」

アレクが集まっている実験台にされた魔道士達を黒霧で包み全員を完全に治療する。

「わぁぁ。あ、足が生えてきたぁぁ。」

「俺は腕が元に戻った。あはは。治ったんだぁ。」

「体の傷が消えた・・・アレク王様の奇跡が治してくれた。」

皆が自分達の体が完治し驚きアレクに感謝する。

「アレク王様の治癒魔道に感謝します。」

アレクが話す。

「光魔道の実験台にされた少女を誰か知っているか?」

救出された魔道士の一人が話す。

「彼女は私達が救出される少し前に南の国の王に連れていかれました。詳しくは聞けなかったのですが看守たちがそう言っていました。ですが少女ではなかったです。」

アレクが話す。

「ああ。子供の頃から実験台にされて今は二十だろう。救いたい女性だった。」

魔道士が言う。

「はい。それ位の年齢でした。いつも傷だらけで自分では歩けなかったです。」

アレクが上を見上げて悲しみを堪える。バーンがアレクに聞く。

「主よ。その者を捜索しますか?南の国ならば数は多くないと思います。」

アレクが話す。

「これは海洋アルノの戦いだろう。俺は手助けに行くが雌雄を決するのはサイファの仕事だ。南に連れ去られたのなら彼女が救ってくれる。俺達はエルフ軍との対決が先だ。」

バーンが頷き指示に従う。アレクが回復した魔道士達に言う。

「今後はここにいる竜魔道士バーンが諸君等の長となる。指示に従い各自の出来る事を成してほしい。それは戦う事だけではなく困っている者を助ける事でもいい。それが魔道士を良い道に導く事に繋がる。次の魔道士達の道が広がるんだ。」

皆がアレクの言葉に感動して跪き感謝する。アレクが困った顔で言う。

「皆、救われたんだ。跪かずに立ち上がってくれ自分の足で立ち歩き出すんだ。」

皆が言う。

「アレク王の御慈悲に感謝します。必ず魔道士の道を広げます。」

アレクは魔道士達をバーンに任せて飛行艇の確認に向かう。リアとカリナが飛行艇に乗りロックと話をしていた。二人は自分の飛行艇の要望をロックに依頼していた。ロックが困っているのを見かねてアレクが話す。

「こらっ。ロックに無理を言うなと言っておいただろ。何を頼んでいるんだ。」

リアが答える。

「アレク兄さんの言う通りに無理強いはしてないよ。素材の調達について聞いたんだ。」

カリナが言う。

「そうなんだ。あたし等の船も黒蝶と同じにしてもらいたくて聞いてたんだよ。」

アレクが謝る。

「そうか。悪かったな。ロックが困ってたから心配したんだ。」

ロックが話す。

「アレク王。彼女達の飛行艇を黒蝶と同じ黒金剛で造るとなると、この飛行艇の格納庫に満載で三回以上運ばないと足りないじゃろう。そんなに埋蔵量があるのか儂には分からんので困ってたんじゃ。」

アレクが頷き話す。

「リアとカリナが飛行艇で新国スプラードの発掘現場に行って確認してくるといい。俺が管理しているジェイドに連絡しておくから確認ついでに回収してくるといい。」

 リアとカリナが大喜びで飛行艇を始動させる。蓄電担当の魔道士を三人同乗させて出発する。アレクがイザークとジェイドに連絡して発掘現場で合流して黒金剛の埋蔵量の確認と搬入を依頼する。アレクはロックと話し合いドレルに戻り今後は製造を重視してもらう。今後の製造資金を用意するようにヒュースに指示して、高速輸送でドレルに運ばせる。当然、魔道士組合に依頼して輸送の為の付与魔道士を依頼する。

 リア達が大喜びで帰還する。アレクが確認すると飛行艇の満載四回分が既に発掘済みで輸送待ちだった。ロックと共にドレルに向かい次の回収に戻る。ロックはドレルに残り、製造に参加する。アレクはリアとカリナが飛行艇を乗り回して輸送を手伝っている事が嬉しくて好きにさせておく。彼女達が海洋アルノ飛行艇団を最強の部隊にする事を望む。


 アレクがエピンの街を視察する。十字にエピンを走る街道が美しい。街の中も綺麗にされて荒廃して滅びる寸前の街だったとは思えない。ジェイドが準備しロイドが完成させた環境整備はその後も住民が懸命に引き継いでいる事が解る。その事業は無駄な工事でエピンの予算を食い潰すような悪事を働く役人と関係業者はいない。その間で寄生虫のような屑人間が金を吸い上げるような事はさせない。

 町の住民達は皆が住民同士で助け合って生きている。アレクには眩しい光景だ。ラースの街がこれからのルーマ国の未来なら、エピンの街はダロス大陸西域の未来の街なのだ。新国スプラードもエピンのように滅亡から始まる街造りなのだ。新興国・自由貿易国アルノも同じだ。軍国政策を進めた陸アルノに生活の為の街造りは無い。軍事目的の砦や駐留施設が点在しているだけだった。国民が必要とする生活する為の街ではない。今後はエピンのような環境整備をした街造りが必要なのだ。

 アレクは綺麗な街を散歩する。住民達がアレクを見て手を振る。アレクも皆に手を振る。アレクは楽しそうにエステルのお薦めの食堂に向かう。店の前に行列はない。アレクは店に入り店主に訊ねる。

「店主。揚げパンはまだあるかな?」

店主がアレクに気づき慌てて駆け寄る。

「はい。あ、アレク王様ですね。今伺います。」

アレクが話す。

「あの美味しい揚げパンが食べたいんだがまだ残ってるのかな。」

店主が答える。

「本日分は売り切れましたが、今仕込みが終わりましたから直ぐに揚がります。」

アレクが言う。

「では窓際の席で街を眺めながら待つとしよう。楽しみだ。」

アレクが街を眺める。昼が過ぎて皆が働き始める。街を掃除する者。新たに水道を繋げ拡張工事をする者。子供達が街中を駆け回り燥いでいる。とても楽しそうだ。エピンの孤児院にも出向いて現状を知っておこうと考えていた。店主が調理を終えパンを渡す。

「店主はエピンの孤児院は何処にあるか御存知だろうか?」

店主がアレクの話に答える。

「はい。この十字街道を西に向かった元貴族の屋敷の下にある教会が隣の施設で孤児院を管理しています。エピン騎士団のダルス様が支援されていますので、以前のように餓死寸前の子供達はいなくなりました。」

アレクが店主に感謝する。

「あなたも手を貸しているのでしょう。ありがとう。」

店主が話す。

「私もこの店の店主に拾われて今があります。私は幸せでした。アレク王が救われる以前も何とか支援したかったのですが食材も無く。野の食べられる野草や小動物を捕らえて食材にするしかなく限界でした。アレク王が救われた命は数知れません。私からも感謝をさせて下さい。頂いた食材で皆がお腹一杯になったのを見て嬉しかった。感謝します。」

アレクが店主の肩に手を当て話す。

「貴方こそが彼等を救ったんだ。俺達は手助けしただけで生き繋いでくれたから救えたんだ。誰かの力が彼らを助けていなければ俺達の戦いは勝つ事は無かった。救えなかった命が多ければ俺達の戦いは意味の無いものになっていたんだ。救う者の屍の前で勝利を告げてもそれは敗北でしかない。貴方達が本当の勝者だ。ありがとう。」

店主が泣き崩れる。アレクが起こして席に座らせる。

「俺はエピンが生まれ変わり心から感動している。住民も職人も騎士団もエピンという街を皆が支えて育て生きている。街道整備と水道工事の時の小さな手が運んだ瓦礫が街を創ったんだ。子供達が生き夢を叶える街になって欲しい。これからも頼むよ。」

アレクは揚げたての揚げパンを有り難く受け取り金貨の詰まった革袋を手渡し店を出る。店主が慌てて追いかけるが、アレクは手を振り合図する。店主は深々と御辞儀をする。

 アレクは揚げパンを食べながら孤児院に向かう。中央広場で黒雲とビートに会って孤児院に向かうと話し歩いて行く。先程の元貴族の屋敷の直ぐ下に教会がある。隣の施設が孤児院で子供達が元気に走り回る。アレクは気配を消して暫く眺める。十字街道沿いにある施設の横の木陰に座り眺めていた。教会のシスターが面倒を見ているが中に少し大きな女の子が手伝っている。アレクには何故かその子を知っている気がした。

「セリーナお姉ちゃん。遊んで遊んでぇ。」

アレクは子供達に遊ぶようにせがまれている少女セリーナが気になった。彼女が子供達の面倒を見て一緒に施設に戻り、暫くして施設から出てきたので声をかけて確認する。

「突然すまないが聞きたい事がある。いいかな?」

アレクが声をかけると驚いて振り向きセリーナがアレクを見て挨拶する。

「はい。あ、貴方様はアレク王様ではありませんか?」

驚きながらも丁寧な物言いの彼女にアレクが聞く。

「ああ。そうだが。君はアリシア殿の御身内かな?」

セリーナが頷き答える。

「はい。アリシア母さんは私の養母です。」

アレクが納得して話す。

「先ほどの孤児院で見かけて彼女と同じ色の君が気になって確かめさせてもらった。」

セリーナが話す。

「私はアリシア母さんの施設で育ったセリーナと申します。エピンの子供達が大変な状況だと聞いて他の姉妹達とエピンに手伝いに来ています。」

アレクが感謝して話す。

「セリーナさんだね。私はアレク。一緒に来た姉妹達と家を借りているのかな?」

セリーナが答える。

「騎士団のダルスおじ様が家を用意してくれたので皆で住んでいます。」

アレクは安心して笑顔になる。

「そうか。ダルスが支援しているなら安心だ。セリーナ達が心配で聞いてしまった。」

セリーナが不思議そうに聞く。

「アレク王様とは初めてお会いしましたが何故心配されるのですか?」

アレクが笑いながら答える。

「そうだよな。勝手に心配してしまった。オーディスとアリシアの子供達がいつの間にか自分の身内に思えるようになっていた。不思議だ、カイルとニヴンとケインが俺の子供に思えたからかな久しぶりに会いたくなったな。」

セリーナが喜びながらアレクに聞く。

「アレク王様。カイル兄達は元気ですか?騎士団に入ってからは会ってないから、今何をしてるか心配で特にケイン兄は一番下だし無茶ばかりするし教えてください。」

アレクが頷き話をする。

「ああ。色々話してあげたいが、まだやる事だらけでゆっくりできない。三人共元気に魔道院で学んでいるよ。セリーナ達もエピンとラースの魔道士学校に行くといい、」

セリーナが不思議そうに聞く。

「私は魔道士ではありませんけど・・・。」

アレクが言う。

「ラースで適性検査は受けなかったのかな?セリーナも魔道適正があるよ。」

セリーナが答える。

「はい。ラースの施設で御手伝いしていたので検査に行っていません。施設の子供達や兄や姉もまだ受けてないと思います。外に出た兄弟達は受けたと思います。」

アレクが話す。

「そうか。子供達も早目に検査するといい。怖い事じゃないんだ。自分に適性がある事を早く知る事で色々と学べたり、知らぬ間に他人を傷つける事が無くなる。必要な事だ。」

セリーナが頷き応える。

「解りました。施設の皆と検査を受けます。でも王様は検査をしなくても適正者が判るのですね。孤児院の子供達に適正者はいましたか?」

アレクが笑いながら答える。

「セリーナが連れて行って確認してくれ。勉強になるから良く見て色々聞くといい。」

アレクはセリーナに次にエピンに来た時にゆっくりと話をする事を約束して別れる。


 アレクは次にハーディ達が管理する傭兵達の収容所に向かう。エルニアから救出した少年兵は洗脳されて浅い為、生活の安全が保障され落ち着いてエピンで暮らしている。怖い大人達に無理やり殺しの技術を教わる事が無くなり普通の子供達になる。暴力衝動が出ないようにハーディの仲間達が全員で監督する。子供達は回復し素直に育つ事が解りアレクは安堵する。問題は傭兵家業が染みついた大人達だ。

 アレクはハーディ達と話し合い。アレクが洗脳を解いた後の処遇を話し合う。アレクの要望は全員をハーディの部隊に編入させて部隊を分け傭兵達が軍務に携わるようにする事だ。ハーディ達も賛成し編成の計画を練る。砂竜部隊はそのままに別動部隊を五部隊に分ける予定になる。今後も各地に派遣されている元傭兵を回収する予定なのだ。

アレクがハーディに話す。

「では洗脳を解きに行こう。何名いるか教えてくれ。」

ハーディが答える。

「大人の傭兵達が男女合わせて百名います。傭兵機関に待機中だった者だけですので派遣されている者は何人いるか解りません。」

アレクが話す。

「ハーディ達と同じで各部隊以外とは交流が無いはずだ。誰が傭兵かも判らないだろう。救い出した時も何故集められていたかも知らされてないだろう。侵略軍に編成される寸前だったんだろうな。間に合っていなかったら俺達の誰かに消滅されただろう。」

ハーディ達が頷く。

「私達もサーレで全滅していたでしょう。アレク王の御慈悲で生かされた事を自分達の最大の幸運だと感じます。彼等を救って下さい。」

 アレクが収容されている施設に入る。建物は大きく元は貴族が使用していた別邸の様だった。収容されている元傭兵達は男女別に分けられて生活していた。彼らはハーディ達が監視して暴動などを起こさない様に厳しく管理されている。中には脱走を企てる者もいたがハーディ達は先輩傭兵達だ簡単に拘束する。アレクはまず男の傭兵達の洗脳を解く。

 彼らはエルニアの傭兵育成機関の時から食べ物を与える代わりに戦いを強要される。訓練を積んで力を付ければ食事が与えられ次に進む。戦闘技術が一流に達すれば次は実戦訓練になる。殺し合いだ。ドルマに潜入して戦い、戦果を上げて帰還する。帰還後は休息と食事が好きなだけ与えられ至福を味わう。これが何年も続けば人間は壊れてしまう。

 餌付けされた戦闘兵器が完成する。ハーディ達が話した恐るべきエルニアの悪行だ。子供を買い、悪魔に仕立て各地で稼がせ、更に子供を買う。無限に回収する悪行は終わる事は無い。アレク達が滅ぼさなければルーマ国は乗っ取られ隣国の陸アルノも属国にされていただろう。ただ腹を満たす為に殺しを請け負い微々たる報酬で永遠に使われる。常人には耐えられない苦痛を何年何十年と繰り返しすり込まれ自我は無い。

アレクが男の傭兵達を集めて話す。

「傭兵の皆はまだエルニアに戻るつもりなのか?」

傭兵達が答える。

「我等は傭兵が仕事。戻らなければ食事ができない。だが捕まっている事が知られれば我等は任務失敗と同じで見せしめに殺される。だが帰らなければ生きてはいけない。」

アレクは傭兵の言動が支離滅裂で悲しくなる。

「君達の帰るエルニアは滅びた。国王も消滅した。傭兵機関も壊滅し存在も無い。」

傭兵達は信じようとしていない。アレクが続けて言う。

「信じられないと思うが君達は自由になった。食べる為だけに戦う必要は無い。だがそれも信じられないだろう。今までの人生を簡単には否定できない。そうやって育てられたのだ。皆の昔の思い出があれば、エルニアに売られて行く前の思い出があれば聞かせてほしい。どこが故郷なのか聞きたいんだ。」

傭兵達の中の一人が答える。

「私の記憶ではここエピンが故郷だと思います。ですが見た事がある景色を懐かしいと思う程度です。思い出はお腹が空いていたという思い出だけです。」

アレクが頷き傭兵達を黒霧で包み込む。彼らは驚き騒ぎだすが黒霧の精神操作で大人しくなる。傭兵達の中には過去の任務で負った深手の傷が回復し驚いている。部位欠損も回復し無くした指が生えて驚いている。皆の顔から険しさが無くなり穏やかな顔になって行く。ハーディ達は自分達と同じ状況を見て自分もアレクによって洗脳が解けた事を理解する。

「これで自分達の考えを縛られる事無く話せるだろう。現状を理解して受け止め考えられれば今後の身の振り方も変わる。好きにさせてやればいいが傭兵として生きてきた力を世界の為に使って欲しい。ハーディ達が管理して彼等の指導をするといい。」

ハーディが仲間に頼み洗脳の解けた元傭兵と話し合う。アレクとハーディは女の傭兵達に会いに向かう。彼女達は戦闘訓練された女戦士達だが傭兵家業の中では間者になる為の部隊のようだった。身軽な戦闘技術で各地に潜入し内部工作や要人の誘拐をする部隊だ。

「貴方達はいずれエルニアの間者になる為に傭兵として働いているのかな?」

アレクが女の傭兵達に聞く。彼女の中の一人が答える。

「私達は傭兵で実戦訓練をし各地を知り、間者として送り込まれる部隊になります。」

素直に答える女戦士にアレクが聞く。

「君はあまり洗脳されていないようだ。昔の名前を憶えているかい?」

彼女は頷き答える。

「私はサーレからエルニアに売られて行きました。ここにいる彼女達も同じ出身です。私の昔の名はジェーンです。」

アレクが聞く。

「ジェーンはエルニアの洗脳に耐えたんだね。他の娘達はどうなのかな?」

ジェーンが答える。

「中には混ざっている娘もいます。食べる為には仕方ないと思っています。」

アレクが聞く。

「どうやって洗脳に耐えたのかな?」

ジェーンが答える。

「初めから大人の手口を知っていたので皆にはいつも話していましたが長年の餌付けで耐えられない娘もいました。私達は孤児でしたので食べる為に理解して傭兵をしていました。育成機関は辛かったのですが任務で各地に向かえば自由になれるので皆と一緒に頑張って生き抜きましたが、中には命を落とした娘もいました。」

アレクが言霊を贈る。

「これより後は使われる事無く自分の旅を続けてくれ俺も後から追いかける。」

ジェーンが泣き出す。仲間の娘達が抱きつく。アレクが話す。

「この言霊には仲間への想いが詰まっている。大切な言葉だ。きっと黄泉の道を迷わず進めるし、来世への旅も苦しまないだろう。」

ジェーンが頷く。アレクが皆を黒霧で包む。優しく温かな黒い霧に彼女達は救われる。

「アレク王様。これは何でしょう。温かな黒いものが体を包んでいます。」

ジェーンが聞く。アレクが答える。

「それはジェーン達が苦しんだ分の想いが回復する俺からの贈り物だ。少しそのままでいるといい。体が回復する。」

彼女達の傷だらけの体が治癒され傷が消える。欠損した体の一部が生え驚いている。片目の娘も目が完全に治り両目から涙が溢れだす。ジェーンは顔の大きな傷跡が消え仲間が鏡を渡して教える。ジェーンがアレクに泣いて感謝する。アレクは笑顔で応える。

アレクはハーディに話す。

「彼女達は軍務には就けたくない。孤児院か少年兵の管理を任せよう。それも大切な仕事だ。まだ苦しむ子供達は減らないだろう。」

ハーディが頷き彼女達の今後の話し合いをする。彼女達も納得しアレクの勧める仕事に全員で就く事を決める。アレクに感謝し喜ぶ彼女達に戦いの匂いが消えている事を感じる。

アレクはエピンでの目的を終わらせダークエルフ族の国アモンに出撃する準備を始める。


 リアがカリナと黒金剛の輸送を四回終わらせてエピンに帰還する。ドレルからの帰りの便に魔道石とルーマの王都で新国スプラードに駐在する騎士団を乗せて届ける流れを繰り返し、王都の軍営に魔道石を確保し、新国スプラードには治安維持騎士団を送り届ける事が流れるように完了する。

アレクが帰還した二人と疲労困憊の充電担当の魔道士達を労う。

「皆ご苦労だったな。休息をとってくれ。リアとカリナ以外は暫く休日にしていい。」

リアが聞く。

「アレク兄さん。この後はどうするんだい?」

アレクが答える。

「エルフ軍との決戦になる。二人には魔道士達を飛行艇に乗せて移動して決戦時には飛行艇の操縦を任せる。その前に砂竜部隊と傭兵部隊をアモンに送ってもらう。」

カリナが言う。

「もう一艇あれば戦術的にも色々出来るのにね。ロックに頑張ってもらわないとね。」

アレクが話す。

「黒蝶で無理させたから後は待つしかないな。ドワーフ達には高級酒を大量に御礼しないといけないな。」

リアが言う。

「大型船の貨物に大量の高級酒があるよ。重すぎて船でないと運べないからガレルに降ろしたらいいんじゃないかな?」

カリナが言う。

「それだとロックに届かないと思うよ。酒には汚いドワーフ達だから届けないで飲み干しそうだよ。」

アレクが笑う。

「それはありそうな話だ。とりあえずルーマ国の王都に降ろして小分けで送ろう。」

カリナが聞く。

「アレク兄さん。ルーマの王都に名前は無いの?他の王都と混ざるから決めて欲しい。」

アレクが驚いたが頷く。

「そうだな。俺も話し辛かったし考えてみよう。自分の居城じゃないから気にしてなかった。そう、首都ソーサー。ルーマ国首都ソーサーとしよう。」

カリナが喜ぶ。

「これで分かり易くなったね。首都ソーサー。海洋アルノのスィードと似てるかも。」

リアが言う。

「どこがだよ。でも呼び名があった方が出航時に掛け声が出やすくなるね。」

アレクも頷いて二人と決戦の打ち合わせを始める。

 暫くしてバーンがネリーナ達と飛行艇に現れて今後の話し合いを始める。アレクはネリーナ達をエルフ族の国に送り返す約束をするが現在の状況を話して皆が考えを共有する。バーンはエルフ軍との戦闘で被害が拡大する事を懸念し話す。

「エデンとアモンの国境付近での戦闘以外は非戦闘員に被害が出るでしょう。避けるべきです。国境の川を挟んでの魔道決戦になると思います。」

アレクが話す。

「ネリーナはどう思う。エルフ軍の指揮官も誰か解れば教えてほしい。」

ネリーナが答える。

「エルフ軍を率いているのは多分、ネスレムです。私達の五女ネーセルの婚約者です。」

アレクがネスレムとネーセルの悲惨な運命に心を痛める。アレクがネリーナに聞く。

「ネーセルは何処で亡くなったのか教えてくれ。」

ネリーナが説明する。

「私達の国エデンから北のテイリュ川を渡りアビス山脈群の麓を川沿いに西に向かった辺りで亡くなりました。私達はそこで捕まり、川を下りエルニアに連れて行かれました。」

アレクが想像して話す。

「ではネスレムはネーセルを見つけたのだろう。遺体は弔われたかもしれないな。ネリーナは確認しに行くかい?」

ネリーナは頷き、話す。

「私だけでも祈りを捧げに向かいます。」

アレクが応える。

「俺が連れて行こう。他の姉妹達は残ってくれ。ビート。直ぐに発つ。」

黒雲が目の前に着陸する。アレクが乗りネリーナを引き上げる。

「直ぐに戻る。バーンは魔道士達と飛行艇の配置を確認してくれ。ハーディ達の部隊を輸送する準備もするように伝えてくれ。」

アレクがビートにエデンの対岸の山脈の麓に向かわせる。黒雲が飛び立ちテイリュ川を溯る。高速で移動する黒雲はエデンの北の対岸に到着する。アレクが確認する。

「ネリーナ。どの辺りか解るかい。」

ネリーナが見覚えのある場所を指さす。

「あの辺りです。木の並びに覚えがあります。」

アレクはエルフ族の木々に対する見方や感じ方が違う事を知る。人間種には全て同じ景色に見える。川沿いに茂っている草木や雑木林、森林の違いが解らない。

「ビート。ネリーナの指示した場所に着陸してくれ。森が邪魔だが頼む。」

黒雲が木々を躱して着陸する。見事な着地だ。アレクが言う。

「俺達は少し捜索するから上空で旋回待機か、安全な場所で待機してくれ。エデンには近づくなよ。あちらも警戒してるはずだ。」

ビートが頷き黒雲と飛び立つ。アレクがネリーナに言う。

「どの辺りか案内してくれ。」

ネリーナが頷き走り出す。森林の道など無い木々の隙間を流れるように駆けて行く。アレクはエルフの美しい走りを眺めながら追い駆ける。木々を避けられないアレクは一直線に進む。通過した場所は獣道のようになっている。ネリーナが立ち止まる。

「ここにネーセルは捨てられまし・・・た。」

ネリーナが言葉に詰まる。アレクが優しく慰める。

「ここに居たのが解る。少し残留思念を追ってみる。」

アレクが静かに自然に溶け込んで行く。ネリーナは目の前のアレクが消えて行くのが解った。まるで存在が消え実体が透明になるような感覚が目の前で起こっている。

 アレクは時間を溯るような感覚で自然に溶け込みその場を見ている。以前古代文明の滅びた城で見た光景のように、その場で起きた事を見る。ネリーナ達が盗賊風の人攫いに捕まっている。アレクの足元にネーセルが倒れている。酷く傷つけられ全身が血まみれであった。ネリーナ達は川に停泊してある船に乗せられ連れ去られて行く。倒れたままのネーセルを触れないアレクは暫くその場に立ち時間の流れを待つ。刻が流れ、エデンの方角からエルフが五人現れ一人がネーセルに近づく。傷だらけで血まみれのネーセルを泣きながら抱きしめ悲しみで狂いだす。悲しみが怒りに変わり辺りを魔道で干渉する。草木が枯れ木々が割れる砕けて周りに植物の生命反応が無くなる。彼がネスレムだ。

 彼はネーセルを魔道で綺麗にし抱きかかえて仲間に話している。仲間が破壊してしまった辺りの木々を修復させて皆でエデンに飛翔して行く。風魔道が彼等を上空に飛び立たせてテイリュ川を跳び越して行く。ネスレムは血の涙を流していた。

アレクが現世に戻りネリーナの目の前に姿を現す。驚くネリーナが訊ねる。

「アレク王様。今まで何方に行かれてたのですか?」

アレクが話す。

「ネーセルのその後を見ていた。この辺りの残留思念を追いかけて過去の映像を見て来た。ここの空間の意識というか景色を見て来たんだ。解らなくていいよ。」

ネリーナが頷きながら話す。

「それはエルフ族の交霊術に近いものですね。その場に残る過去の意識を捉えて見たり聞いたり出来る術です。精霊との繋がりの強い方が使う事ができる神秘的な術です。」

アレクが話す。

「そうなのか。俺は何故かその時の、その場の景色が見えるんだ。不思議な感覚だ。」

ネリーナがアレクを見て言う。

「私の個人的な見解ですがアレク王様はこの大地、ダロスと繋がっている感じがします。何処にいらしても精霊が集まっているのが判ります。」

アレクが話す。

「エルフは自然と共に生きる種族だから不思議な感覚の持ち主なんだな。話を戻すとネーセルはネスレムが連れ帰ったようだ。激情に呑まれて我を見失っていた。この辺りも怒りの波動で干渉した魔道が破壊して植物も枯れていたがネスレムの仲間が修復していた。」

アレクが辺りを確認して枯れ果てた木々を見つける。ネリーナも気づいて辺りを確認した。

「アレク様。此処にも干渉して枯れた木々があります。」

アレクが話す。

「エルフ軍は止まらないな。最終局面まで進みそうだ。俺は意味の無いこの戦いを止めたいが無理かもしれない。ネリーナの父親はエルフ族の中では話が通じる方なのか?」

ネリーナが話す。

「はい。父は好戦的な方ではありません。反対に保守的過ぎてアレク様の話も聞かないかもしれません。私達姉妹も逃げ出すほど石頭です。」

アレクは悲しい現状でもネリーナの言葉に笑ってしまう。

「ふっ。すまない。ネリーナの父は石頭か、それは逃げ出すな。それも困るな。」

アレクはエルフ軍との決戦の見通しが立たずにエピンに帰還する事を話す。

「ネリーナ。戻ろうか。ここに残っているネーセルの魂を来世に送ろう。」

アレクの言葉にネリーナが驚く。

「アレク様にはネーセルの魂が見えるのですか?」

アレクが両手でネーセルが倒れていた場所から魂を救い上げる。アレクが優しくネリーナの元に連れて行く。ネリーナには見えない魂を見せる為に周囲の精霊に頼んで魂に触れてもらう。白く綺麗に光る魂がゆらぎながらアレクの手の中から現れる。ネリーナが魂を確認し泣き出す、アレクが話す。

「彼女の魂は穏やかだよ。ネリーナに会えたからだろう。嬉しそうだ。」

ネリーナが優しく触れて話す。

「ごめんね。ネーセル。助けられなかった。他の子はアレク様が助けてくれたわ。心配しなくていいからね。」

アレクがネーセルに話す。

「ネーセルの魂よ。今生の別れだ。貴方の清らかな魂は来世に生まれ変わる。次の世界は貴方を幸せにすると我アレクが誓い旅立ちを見送ろう。温かな光だけを目指して進んで行けばいい。そこに君の宿る場所がある。さあ旅立ちだ。」

アレクが天に向けて魂を解放する。ゆらゆらとゆらぎながら輝く魂が昇って行くその魂を精霊達が優しくあやしながら話しかけながら楽しそうに一緒に昇って行く。ネリーナは魂を見送りながら祈りを捧げる。アレクが葬送する優しい光に包まれて魂が天に消える。

「アレク様。ありがとうございました。ネーセルが笑っているのが見えました。」

ネリーナが感謝し、アレクが話す。

「ああ。笑っていたな。苦しんだ分、必ず幸せになる。俺が彼女の魂を見守ると誓おう。

さぁ、ネリーナ。戻って作戦を立てようエルフ軍を止めないとネーセルが悲しむ。」

二人は上空に跳び黒雲の背に乗る。アレクがビートに言う。

「さぁ。エピンに戻ってエルフ軍との戦闘準備だ。ランドも呼ぶ。戻るぞ。」

ビートが頷き黒雲がエピンに向けて加速する。横目で眺めたアモンでゴードン達がエルフ軍を撃退しているのが見える。エルフ軍が本隊を動かす気配を感じていた。


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