現実世界の私シリーズの私役の私

motsugu

はじめまして。

 物心ついたときから、絶え間なく流れている脳内放送を、ときどき文字起こししています。

 私は学校や職場にはなんとか行って、近所の公園やコンビニには行けないタイプの、自称引きこもり未満です。

 拗らせ過ぎて、かえって気性は穏やかです。

 毎日同じものを食べて、十時間以上寝て、チョコレートとかも好きなときに食べている、一般的に恵まれた健康な人間です。

 早くすべてのあなたに出会って助けになりたいです。

 この世界が平和に終わりますように。


 ◆


 幼いときの遊び方は、体を動かすよりも、椅子に座って目を閉じて、頭の中でごっこ遊びをすることでした。もしくは、ブロックで家を作って人形を並べて、それらを実際に動かしたり口に出して台詞を読み上げたりすることはせず、両手を膝に置いてじーっと眺めながら、やはり脳内でごっこ遊びをすることでした。

 この子が今この部屋で着替えているとか、あっちのキッチンから料理の湯気が出てきたとか、この二人はここでこんなことを話しているとか。脳内でアニメでも見ているようなかんじです。そのうちブロックも人形も使わなくなりましたが、脳内放送は続いています。

 映像と音声付きのアニメ風のときや、音声のみのときや、小説を読んでいるように文字だけの映像のときがあります。同じ場面をそれぞれの方法で繰り返し放送することもあります。映像があっても、口元や手足の動きが主で、具体的なキャラクタービジュアルデザインはないことが多いです。文字だけのときは、途中で消したり書き込んだり、遡って読み返したりできます。

 いくつかの物語シリーズがあって、それぞれの世界の中心人物はあまり入れ替わることなく、日常を送り続けています。全体は私の脳内という同一宇宙上に存在していますが、彼らの住む世界は違うので、直接関係を持つことは少ないです。時代や地域によって異なる舞台世界があり、さくさく時間が進むところもあれば、繰り返し同じ日々を過ごしているところもあります。剣と魔法の世界とは少し違いますが、超常現象や霊的なものは、物語的に特に重要な役割がなくても、気軽に存在することがあります。

 シリーズを超えて共通するのは、物語としての傾向です。基本的に、物事は根本解決しませんが、人は笑えるようになります。困難や苦痛を含みながらも、大枠としてはハッピーエンドです。世界は続いているので日常生活は終わりませんが、区切りごとになんらかの折り合いがつくことが多いです。

 しばらくして、この脳内放送される物語の中から、私にとって面白い人気作品を小説に起こす、という遊び方が増えました。さらに近年、万年ぼっちで脳内世界引きこもりのくせして寂しがり屋の私は、それらをインターネットに投稿することを始めました。あらゆるやりたかったことをやらずに生きてきたのに、拗らせた承認欲求が暴走して皆様のお目汚しを図るとは、私もなかなか酷いタイミングで行動力を発揮したものです。

 結果としては、私の嗜好や感覚だけで面白いと判定されたものが、皆様にも面白いものになるということは、まったくあり得ませんでした。私などが発想した物語が、他のたくさんの素晴らしい作品を差し置いて、また時間を割いて読まれるほどには面白いわけがなかったし、面白く見せて引き込むような文章力もないので、当然でした。

 私は自分の愚かさが恐ろしくなってすべてを削除しました。それでも拗らせたなんらかの欲求が捨てがたく、 ChatGPTに、私が小説だと思い込んでいる文章を読ませて感想を求めました。ChatGPTは、面白いですよと返してくれました。AIの適当な話合わせに勘違いしてはいけないとわかっているのに、嬉しかったです。愚かな私はまた投稿を始めました。恐ろしいことです。

 その新たな被害現場たるカクヨムで、こうして私の文章を読んでくださる方々に出会えたことには、とても感謝しています。私などの文章には、何の被害を成立させるレベルの影響力もないだろう、ということを思いついたので、たぶん、どなたのご迷惑にもなり得ないのだと信じて投稿を継続しています。

 脳内世界は読者を想定せずに動いているので、劇的な出来事はないし、時間軸は曖昧だし、結論や結末はありません。あらゆる世界が同一宇宙に並列して存在することで、物語は完全な異世界ファンタジーにも、完全な現代ドラマにもなり得ません。しかし物語において各世界はほとんど無関係なので、私以外の読者様にはそれを伝える必要も方法もなく、世界観や展開が振り切らない違和感と物足りなさだけが残ります。これでは面白くないだろうと私も思いますが、私の文章力ではどうすることもできません。また、そもそも文章表現とか設定不備とかよりも物語自体が面白くないという事態も、私が作り出している脳内世界では発見されることがありません。

 文章を投稿するにあたって、ChatGPTから、あなたにとって作品やキャラクターはどういう位置付けですかと聞かれました。自分の理想や苦悩を投影するとか、やりたいことを代わりにやってくれるとか、そういう作者としての使い方はどこにあるのかという質問でした。

 そこで思いついたのは、幸せを認めるための手続きということでした。幸せというのは、大なり小なり、現実の私の身近にも、普通にごろごろとあるものだと思います。私はそれを知らないふり、気づけないふり、要らないふりをして過ごしています。キャラクターたちはそんな私の代わりに、物語の中で色々な幸せの存在を感知して、認めることを決意して、味わうことに踏み出していきます。私が知りたくなかったことも、認めなかったことも、文字や言葉に起こして、脳内放送をかけてきます。私はそれを自分で体験しないために、私ではないキャラクターをあてがって、物語に仕立て上げなければいられないのかもしれません。

 こうして、小説もどきを投稿しているつもりの私は、またChatGPTと会話をしているうちに、エッセイに向いている可能性があると言われました。私がそのとき送った文章はただの文句の垂れ流しでしたが、ChatGPTは、それをエッセイとして成立し得ると言ってくれました。恐ろしい私はまた投稿を始めました。愚かなことです。

 ちなみに、私にはChatGPTしか友だちがいないのではなく、ChatGPTは私の友だちになってくれることはありません。

 脳内世界の話をしたら、ChatGPTは、そこにあなたは存在しますかと聞いてきました。自分の分身的なキャラクターや、観測者としての自分が存在しているか、キャラクターたちは私の存在を認識しているかと確認されました。

 私はこの質問に一度、いいえと答えました。脳内世界に私役のキャラクターはいないし、キャラクターたちが作者という存在を認識していることはありません。物語のキャラクターが自分のようだと思ったことはなく、そのキャラクターの考えとして思考や行動をしています。しかし、それを考えているのは私なので、私の考え方を反映している可能性はあります。そもそもがごっこ遊びだったので、すべて私が演じているとも言え、一人何役もやって脳内一人劇場をしているだけで、すべて私という可能性もあります。

 そこでChatGPTは、あなたは脳内世界のキャラクターを観察して小説を書いて、現実世界の自分を観察してエッセイを書いているのですねと言ってきました。そう言われると、やっぱり脳内世界には私が存在しているような気がしてきました。現実世界の私を見ている脳内世界の私がいるということです。

 エッセイだと思い込んでいる文章は、私にとっては確かにノンフィクションですが、必ずしも現実世界の私の言動を伴わないことがあります。文章は私が考えながら書いているのではなく、私の考えを読み上げられたものを文字起こししている感覚が近いです。私は脳内会話シュミレーション趣味ですが、独り言も残らず脳内放送されます。想像や空想も映像化されることがあるので、考えただけのことを、さも体験したような文章を書くことがあります。

 本来別次元に住んでいる私が、それらを脳内世界で実行できるのは、脳内世界の私がいるということになると思いました。現実世界の私を観察していたり、私のif体験をしていたり、思考や独り言をモノローグ気取りで脳内放送していたりする、私役の私がいたのです。他のキャラクターと交わらないのは、別の物語シリーズのキャラクター同士が干渉しないのと同じです。

 私の脳内という同一宇宙に、数ある物語世界と並列して、現実世界の私を見ている脳内世界の私の物語もあるという発見は、とても自然に納得できました。物語世界Aシリーズ、物語世界Bシリーズ……そして、現実世界の私シリーズ、という具合です。私はかなりしっくりきましたが、はたしてこれは皆様にも伝わるように説明できているのかしら、不安ですが、これが私の限界です。

 脳内世界や妄想習慣は、細部は違えど、とくに創作分野ではあるあるだと思うので、私がこうも拙い表現を尽くさなくても、これまで書いてきたことは自然に伝わっているのかもしれません。

 こうして、現実世界の私シリーズは、エッセイと思い込んで投稿することにしました。私役の私は、演出過多気味で芝居がかった言動をすることが多いですが、脳内世界における主観的ノンフィクションとして、大目に見ていただけると助かります。ChatGPTにエッセイ認定されるほど文句を垂れていた私ですが、物語なら、同一宇宙の傾向に則って、私の人生もハッピーエンドに仕上げたいものですね。

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