第40話 東昂事変
「ナミ…………。」
俺はナミの死亡後ゆっくりと森を進んでいた。木などにより隠れていた光が見え始め少し歩く速さを上げた。
「見つけた。ここがサウス。」
目の前には俺の身長を優に超える巨大な壁が待ち構えていた。入り口は通行確認が必要な門のみ。だが今の俺には関係なかった。
「始、める……か。」
俺は飛行魔法を発動した。少しずつ視線が上がり、遂には巨大な壁を超えてしまった。
五カ国の平和をもたらすならば話し合いによる平和的解決が一番だ。だが、もう面倒だ。
ナミとの戦いの後で俺は満身創痍になっていた。ほぼ意識はなかった。
「アンチ・バリア」
サウスを囲う結界を破壊。そうすれば後は楽な仕事。
「最上位雷属性魔法。ナルカミ。」
雷鳴の音が轟いた。光速で激しく強い雷が落ち続ける。上空からでも分かる。サウス国民が逃げ惑う姿。
「無駄な、のにっ、な……。」
ナミ……ごめんな。俺、今さお前の故郷ぶっ壊してるわ。あ、でもいいのか。アイツが自分で言ってたし…
「こうなること分かってたりして……」
雷が振り続ける。本来、ナルカミは絶大な火力のかわりに消費魔力の多さと発動までの時間が長いのが欠点だったが、無限魔力により無制限に放てる。というか俺の魔力量じゃ元々撃てない。さらに倍を応用し、発動時間のデメリットも解消。これにより攻撃し続けることができた。
ナミ……あ゙ークッソ……なんで、なんでなんでなんでなんでなんで、アイツが……そうだ殺す。北の勇者を殺す。それがいいな。取り敢えず力試しにこの国を滅ぼす。
「ゾンネ………」
ナミ……ごめんな。ナミありがとう。ナミお前は最高の……
俺は魔法を放とうと手を挙げた。
「アズマ様!!!」
「リ、ン……?」
リンは後ろから俺をハグした。ぽっかりと空いた心の穴が埋められるかもしれないくらいには暖かい感じがした。
「できるだけ一般市民を襲うのは辞めましょう…!それに今の攻撃を境に私の姉が動いてくれるはずです!アズマ様!どうかお願いです!落ち着いて!」
リンの声からすぐに分かった。彼女は泣いていた。
「まずは何があったか聞かせてください!私にできることがあれば言ってください!私があなたの助けになります!もし今!心に傷を負っているのならば、私が治します。空いた穴を埋めます。」
「リン………何で……?」
リンは俺を正面に向けて言った。
「あなたが好きだから。私はっ…!あなたが!!好きだから!!」
「うっ……。視界……が……ぼやけ……」
俺は完全に気を失い。落ち始めた。
「アズマ様!」
私は気を失って落下したアズマ様の手を握った。
「アズマ様……お疲れ様です……。」
私はアズマ様をお姫様抱っこしゆっくりと落ちた。
「リン…アズマ君は大丈夫か…?」
「うん。でもすごく重傷。すぐに治療しないと。」
私は回復魔法の準備を始める。
「リン、何か耳真っ赤だよ。どうかした?」
兄であるコウが指摘する。
「どうもしない!兄様も重症なんだから、休んで!!」
私は兄の頭をポコポコと叩いた。
東昂事変は一人の少女の愛により幕を閉じる。だがそのことは、誰も知らない。彼女ただ一人の記憶に刻まれている。
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